第20話 悪夢の終わり
ユニークスキルの発動。
それは、相手の"確実な死"を意味する。
この戦いが終わったことを確信したウィルは、勝利の雄叫びをあげた。
ウィル「っしゃぁぁぁぁぁぁああ!!!」
(本当に.......これで終わったんだ......!)
ふと、スピカに視線を向けるウィル。
そこには______
涙を浮かべる彼女の姿があった。
ウィルはスピカの元へと走り出した。
それに合わせてスピカもウィルの元へ駆け寄る。
洞窟の裂け目から覗く満月。
月明かりに照らされる幻想的な舞台の上で___
ふたりは強く抱きしめ合った。
スピカ「ウ......ウィルさ~ん......やりました.......私たち.......やりましたよ~..........」
ウィルの腕の中で、顔をくしゃくしゃにしながら泣きじゃくるスピカ。
そんな彼女を抱きしめながら、ウィルは先ほど終わった戦いを思い返す。
(今回の戦い........スピカがいなきゃ絶対に勝てなかった。徹夜で覚えた魔法......水の精霊を呼び寄せた優しさ........そして______恐怖に立ち向かう勇気。ひとつでも欠けていたら.......)
ウィル「スピカ......本当にありがとうな」
ウィルは更に力強くスピカを抱きしめた。
イリア「イチャついてるところ申し訳ないんだけどさ.......」
イリアがふたりに顔を近づける。
その言葉を聞いて急にこっぱずかしくなったウィルは、慌ててスピカを引きはがした。
ウィル「イ.......イチャついてなんかいないだろうがよ!!」
イリア「へぇ........鼻の下伸びてるけど?」
イリアがため息交じりに呟いた。
スピカ「鼻の下が伸びる......ウィルさんもしかして.......ゾーイに変な魔術でもかけられたんじゃあ......!?」
イリア「ブッ!」
スピカの大真面目なボケに、イリアは思わず吹き出してしまう。
ウィル「あ~!うるさいうるさい!!」
顔を真っ赤にして慌てるウィル。
その様子を見ているスピカの顔は、いつもの笑顔に戻っていた。
イリア「そんなことよりさ......あれ、放っといていいの?」
イリアは結界に囚われているカーティスをゆび指した。
(そうだ~!! カーティス! すっかり忘れてた~!!)
慌ててカーティスの元へ駆け寄るウィルとスピカ。
ウィル「ごめんカーティス! あんたのこと放って.......」
カーティス「頑張ったね」
ウィルの言葉を遮ると、カーティスは言葉を続けた。
カーティス「ふたりとも.......本当によく頑張ってくれた。君たちは......」
「最高の仲間だよ」
カーティスが優しく微笑む。
その言葉を聞いた瞬間______
ウィルの緊張の糸が一気に解けた。
仲間______
前の世界で築くことができなかった特別なもの。
ずっと欲していたその言葉を初めてもらったウィルの目からは_______
自然と、涙が零れ落ちた。
ウィル「あ~くそ! .....なんなんだよこれ!」
ウィルは流れる涙を懸命に袖で拭う。
イリア「男のくせに随分と泣き虫なのね」
小ばかにするように両手を広げるイリアに、スピカは大真面目な顔をして答える。
スピカ「ダメですよイリアさん! ウィルさんは純粋なんですから!」
ウィル「お......おまえら~!!!」
ウィルは再び顔を真っ赤にして怒り出した。
その様子を見て「クスッ」と笑うと、カーティスはイリアに視線を向けた。
カーティス「それにしても、水の精霊とは........まさかこの目で見られるなんてね」
イリア「あら? もしかして見惚れてるの?」
カーティス「いや、単純に興味があるんだ。君の様な存在は、大変希少なんでね」
イリア「ふ~ん......つまらない男」
イリアは少しガッカリした素振りを見せると、軽くため息をついた。
カーティス「色々と話を聞きたいところではあるが______まずは村の人たちに知らせてあげよう」
「......悪夢は終わったと」
(そうだった! 早くみんなに知らせて安心させてやんね~と!)
ウィル「でもよ、まずはこの結界をどうにかしないと!」
ウィルはカーティスを覆う結界をまじまじと見つめた。
カーティス「それなら問題ない。術者はもう死んでいる......しばらくすればこの結界も消えるだろう」
「私はあとで合流するから、先に戻って楽しんでいてくれ」
イリア「ん? 楽しむって?」
スピカ「村の人たちがご馳走を用意して待ってるんですよ!」
イリア「ご馳走.......だと?」
イリアの目がキラーンと光る。
イリア「ならこんなところでボケっとしてらんないわね!ホラ!さっさと行くわよ」
イリアは洞窟の入口目指して一目散に飛んで行った。
スピカ「え? あ! 待ってください! ご、ごめんなさいカーティスさん! 先に行きますね!」
「待ってくださ~い! イリアさ~ん!」
ウィルは心配そうにカーティスを見た。
笑顔で頷くその顔を確認すると、ウィルもふたりの後を追った。
カーティス「.......さて」
ふたりの姿が見えなくなるのを確認すると、カーティスは右手で結界に触れた。
すると_______
パリーン........
覆っていた結界は、ガラス細工のようにいとも簡単に崩れ落ちた。
まるで______
最初から存在などしていなかったかのように。




