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魏延が行く  作者: あひるさん
第十章 激震
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掌中で踊らされる

ご覧頂きまして有難うございます。

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

黄皓一行は楊儀の知人宅に旅装を解いた。この知人宅は魏延が上庸太守時代に住んでいた屋敷で魏延の補佐をしていた役人に譲り渡したものである。魏延は先触れと称してその役人を訪ねて段取りを説明してあたかも楊儀の知人であるように振る舞わせていた。


魏延は楊儀と黄皓が密談を始める際に楊儀から金を渡され酒家で暇を潰せと命じられた。魏延は酒家に向かう振りをして政庁に赴き、費禕と関興に面会を申し入れた。二人は魏延が現れたと聞いて慌てた様子で広間にやって来た。


「魏延将軍、どうされましたか?」


「今日は火急の要件で参りました。」


魏延は二人にこれまでの経緯と上庸北部に有る間道に晋軍が居る事を説明した。


「将軍から間道の存在を聞いていましたので適宜巡回をさせておりましたが実際に使ってくるとは…。」


「太守殿、襄陽と江陵に使者を走らせて増援を要請致しましょう。」


「関将軍、直ぐに手配して貰いたい。但し使者には近郊に出るまで慌ただしい動きは禁じさせるように。」


「承知致しました。」


関興は費禕の指示を受けて広間を出ようとした。


「関興、江陵へ向かわせる使者に一言付け加えて欲しい。呉にも晋軍の大攻勢がある可能性を至急伝えてくれと。」


関興は無言で頷くと駆け足で広間を後にした。


「将軍、晋はこの上庸を足掛かりにして多方面で攻勢を仕掛けると?」


「恐らくは。費禕殿に悪いが貴殿の名を使って南鄭から長安に使者を走らせた。晋の攻勢がある可能性大だと。」


「国の根幹を守る為なら某の名前くらい幾らでも使って頂いて構いませぬ。」


魏延は費禕に詫びる為に頭を下げようとしたが費禕は笑みを浮かべながらそれを止めた。


「将軍、今後の動きはどのように?」


「それについてだが…。」


魏延は費禕と途中から関興も交えて夜遅くまで対応方法について協議した。


◇◇◇◇◇


「楊儀殿、知らせが届きました。」


「漸くですね。」


一行が上庸に着いて半月後に晋側から準備が整ったと知らせが届いた。


「楊儀様、段取りはこのようにしたいのですが。」


黄皓は晋から届けられた知らせに記されていた計画を楊儀に説明した。


「某が成都の使者を名乗り城門を開かせれば良いのですね?」


「その通りです。」


黄皓から聞いた作戦は次の通りである。楊儀は成都に帰ると称して城を一旦離れる。晋軍が城外に布陣を終えてから楊儀が成都からの使者を名乗り城門を開かせる。それと同時に軍が城内になだれ込み電撃的に上庸を落とすものである。制圧後は増援を迎えて襄陽と南鄭方面に兵を動かし蜀軍を牽制しつつ他方面に向かう自軍を助けるという。


「上庸は重要拠点になるので晋の上将が選ばれたようです。」


「お会いするのが楽しみですね。」


「楊儀様の事はきっちり伝えてありますのでご安心下さい。」


黄皓は楊儀が楽しみだと言っているのは自身が晋内部でどれだけ重用されるのかだと思っていた。しかし黄皓の思惑は大いに誤っており、楊儀は何としてでも司馬懿の謀略を打ち破り晋内部に動揺を走らせる必要がある事のみを考えていただけである。


◇◇◇◇◇


知らせが届いた翌日の夜更けに黄皓と楊儀の姿が上庸の城外にあった。知らせを受けた二人は旅装を整えると成都に戻ると周囲に伝えて城を出て郊外に向かい夜が来るのを待って再び帰ってきたのである。


「楊儀様、晋軍から合図を待つと知らせが。」


「承知しました。」


楊儀は黄皓からの知らせを受けて城門の方へ馬首を向けた。


「成都からの急使である。至急開門されたい!」


「承知した!」


門が開いて中から馬に乗った兵士が現れた。黄皓はその兵士が誰なのか見極める事なく門が完全に開ききった事だけを確認した。そして城とは逆方向に向かって手にしていた松明を大きく振り回した。


「楊儀様、あちらに逃げましょう!」


「分かった。」


黄皓は楊儀の袖を掴んで門の正面から端へ逃げるようにして走った。しかし馬上の兵士は二人には一切目をくれず正面を向いていたのが黄皓の目に入り、不自然に見えた。


程なく北の方から地響きと共に歓声が聞こえてそれは瞬く間に城に迫って来た。黄皓はいよいよ自分の手で蜀漢が滅びるのだと思うと身体が震えて来た。


「黄皓殿、今から面白い事が始まりますよ。」


「えっ?」


楊儀は不意に黄皓を取り押さえると口笛を吹いた。途端に暗闇から数名の兵士が現れた。黄皓は何が起きたのか全く分かっていない。


「この男は反逆を企てた大罪人だ。厳重に縛り上げて将軍の指示を仰ぐように。」


「承知致しました。」


黄皓は全身を縛り上げられると共に猿轡を噛まされた。声を上げようとするが猿轡に邪魔されて唸り声しか出なかった。

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