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失われた未来を頂きにあがります。 Part.4



 ◇



 回廊を進むアキラとオズワルドの視線の先にレオーナはおらず、行く手を阻もうとする男性教徒達が湧いて出てくる。

 彼等もまた、レオーナの魔眼によって魅了されているのだろうが今は一刻を争う。

 オズワルドは剣の柄で殴り、アキラはアクロバットな技の数々で蹴り飛ばし、先を急いだ。


「上へ行くのか?」


 数歩ばかり先を走っていたアキラの足が階段へ向かうのを察したオズワルドが問いかける。


「祈りの塔の最上階に行く方法は下から昇るか、この上の渡り廊下から行くかのどっちか、下からの道は私とガーゴイルが壊したからあいつも渡り廊下から行ったはずよ」

「なるほど」


 螺旋状の階段を駆け上がっていく最中、狭くなった階段を塞ぐように大人数で立ちはだかる教徒達が二人の視界に飛び込んできた。

 どうやら自分を追う二人がここを通ることは読んでいたようで、レオーナが足止めに設置したらしい。


「止まれ!」


 すぐにでも張り倒して進みたいが、ここは階段。槍を構える教徒達は上でアキラ達は下だ。


「ったく、邪魔なのよ!」


 華麗にこの場を駆け抜けることは困難だと判断したアキラは、単身教徒達の中に飛び込んで赤いローブの上から『speed』と書かれたカードを抜き取った。


「にゃははっ! 怪盗ハンター様はあんたらみたいなんじゃ止めらんないっての!」


 重たくなった体で必死にアキラを捕まえようと槍を突き出してきたが、その柄を握って次から次に階段の下へ落としていく。

 教徒が転がる先にいたオズワルドは慌てて教徒の身体を飛び越え、アキラに怒号を飛ばした。


「待てハンター! 僕の方に飛ばすんじゃない!」

「そんぐらい自分で避けてよぉ! そんなんじゃハンターの助手は一生務まんないよ」

「いつから僕が君の助手になったんだ!」


 アキラの奮闘もあって階段を塞いでいた教徒達の数も減ってきた頃、それを瞬時に判断したオズワルドが飛び込む。


「そこだっ!」

「ちょいちょいちょい! 頑張ったの私!」


 こじ開けた突破口を見つけ、即座に教徒達の包囲を抜けたオズワルド。アキラも続こうと試みたが、教徒の握る槍が彼女の命を狙い続ける。

 更に彼女の仮面の下にある顔を歪めさせたのは、オズワルドが突破した後にやってきた増援の教徒達だった。


「オズワルドくーん! ちょっとこっち人増えてきたんだけどー! 助けてくんなーい!?」


 アキラの悲痛の叫びは石造の壁に反響し、勿論先を行くオズワルドの耳にも届いたが何の言葉も返そうとはせず一心不乱に回廊を駆け抜ける。

 道中で幾人かの教徒を薙ぎ払ったが、どうやらアキラのいる階段に大体の人員を回したらしく今までに比べて少なく感じた。


「あれは……レオーナ!」


 ようやく窓から祈りの塔へ繋がる渡り廊下が見えたと思ったその時、廊下を渡り切ったレオーナの姿が何やら聖堂の方を振り返っているのが視界に映る。

 すると次の瞬間、レオーナが放った魔法が渡り廊下を粉々に破壊してしまったのだ。


「何ッ!?」


 レオーナが祈りの塔の内部へ足を踏み入れ、オズワルドが渡り廊下に到達した時、既に祈りの塔へ渡る手段は失われていた。


「祈りの塔に閉じこもるつもりだろうが、そうはさせんっ!」


 魔法で壊したのならば魔法で再生するだが、オズワルドがスキルとして体に刻んでいるのはどれも氷属性に限る。

 自身の手持ちでできるできる限りのことを尽くした結果、オズワルドの前には祈りの塔へ繋がる氷の渡り廊下が構築された。


「これだけできれば十分か」


 まだ余力を残しながら作られた渡り廊下は、造形など全く気にしない無骨なものだが人が渡るには十分過ぎるほどの出来。

 オズワルドはすぐさま氷の廊下を渡り、祈りの塔の重たい扉に全身をぶつけた。


「レオーナ・ミルドバーグ! そこまでだ!」


 勢いよく開かれた扉の先、ラグ・マリアを象ったステンドグラスから差し込む彩り豊かな日光を浴びながら聖杯を握るレオーナの姿がそこにはあった。


「もう遅い! 指輪も聖杯も、全ては私の手の中! ようやく、ようやくこの時が来たのだ」


 熾天使の指輪を薬指にはめた左手で聖杯を握り、天に向けて掲げるレオーナが顔をグシャグシャにして笑みを浮かべる。


「三年前、貴様ら帝国軍の手で母はこの世を去った……母の願いをかなえる為、そして母の復讐を果たす為、私はこのネフティスで貴様らを滅ぼす!」

「待ってくれ! あなたの母、ベルディヤヒ・ミルドバーグのことは僕も聞いている……悲惨な話だと同情もする」


 剣を下ろし、眉をひそめて告げたオズワルドの言葉はレオーナの怒りの炎に油を注いだ。


「同情だと? 笑わせるな!」

「本心だ! ベルディヤヒ氏のことは私から帝国軍の方に話を入れよう、今この地に足を運んでいるカルネル将軍は話の分かる聡明なお方だ……きっと話せば分かってくれる」


 必死に頭と口を動かして説得するオズワルドは、何とかレオーナの猛禽に似た鋭い眼光から視線を逸らす。


「何故……何故なんだ」


 眉間に皺を寄せたレオーナの声が怒りに震える。


「何故母は死んだ! 何故殺されなければならなかった!」


 彼女の口から怒号となって飛び出したのは心の奥底から出てきた素直な叫びだった。



 ◇



 一方、ようやく渡り廊下へ到達したアキラは氷で作られた渡り廊下に驚きの声をあげる。


「これオズワルド君が作ったの!? 凄くない!?」


 改めてオズワルドの持つポテンシャルの高さに監視しながら、氷の渡り廊下に一歩踏み出した。

 ――――が、踏み出した足がツルツルした氷の表面に滑り、転倒したアキラは後頭部を地面に強く打ちつけてしまう。

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