六百四十一話 ハートミットの圧倒的なバイク剣術
「うあぁ、小さい! 多過ぎだし――」
「気を付けろ」
「了解――」
ハートミットは強いと分かるが、できるだけ彼女を守る。
血を血魔剣に流す。
俺の濃厚な<血魔力>が剣身を鮮烈に駆け抜けて、峰と切っ先を真っ赤に染め上げた刹那、十字の髑髏の柄の両端から勢いのあるプラズマ的な血の炎が迸った。
まさに血魔剣の名の通りの吸血王の剣だ――。
「赤十字のブレード!」
ハートミットが叫ぶ。
<血魔力>を纏う吸血王の血魔剣だ。
古の外魔アーヴィンの髑髏の杯と合体した血魔剣の柄は目立つし見た目は強烈だろう。
この血魔剣の十字の形をした髑髏の柄を活かす!
髑髏の柄を突き出した――。
ヒトデの一部と髑髏の柄が衝突。
すぐに柄を握る手ごと肘を捻りつつ血魔剣を横に払った。
柄の両端と剣身から迸る血の炎が唸りを上げて小さいヒトデを襲うと、そのヒトデを溶かし燃やす。その血魔剣を返すように<水車剣>を繰り出した――。
ブゥゥゥン、ジュァァァ、ブゥゥゥンと、ヒトデと真っ赤な血魔剣のブレードが交差、衝突する度に鈍い音が響いた。
小さいヒトデを処分。
小さいヒトデ軍団は、まだ下に控えているが少し距離ができた。
すると――頭上で口笛の音が響く。
興奮したハートミットだ。
「――凄! 柄の両端に放射口を備えているの?」
「ムラサメブレード・改とは違うが似たようなもんだ」
「へぇ、真っ赤なブレードは銀河帝国のセーモス卿と似ていて怖い」
銀河帝国のセーモス卿?
宇宙の何処かに、そんな強者がいるのか。
が、【修練道】の目隠しした状態の訓練の〝追連獄〟を思い出す。
丸太の上に乗って刃を備えた木人拳と網が迫る光景。
それら激しい訓練が――。
今、迫り来るヒトデ軍団とリンクした――。
血魔剣を振るう――。
<水車剣>から<飛剣・柊返し>でヒトデを両断しまくる。
あの時の厳しい訓練があっての――。
――今の俺がある。
――ありがとうございます。アキレス師匠。
――ラ・ケラーダ。
俺を鍛えてくれたアキレス師匠に感謝――。
ムラサメブレード・改を振るいつつヒトデを倒して違うヒトデの攻撃を避ける。
風槍流の基本の避けてからの攻撃――。
<鎖>と<導想魔手>を支えに壁を走りつつ――。
<血外魔道・石榴吹雪>を発動。
百目血鬼を出そうか迷ったが――。
血の石榴の嵐が吹き荒れる。
点点と消えては追尾する血の石榴吹雪がヒトデの群れを一掃した。
が、小さいヒトデの群れは切りが無い。
血魔剣を右に払ってから、左に素早く血の峰を返して、ヒトデを両断。
右手のムラサメブレード・改でも、小さいヒトデを、たたっ切りつつ壁を蹴って跳躍軌道の移動――。
血魔剣とムラサメブレード・改を腰の下で交差させつつ――。
カルードの剣術『振り草』を真似るように振るい回した。
続けて、右手のムラサメブレード・改で、目の前のヒトデを貫く。
貫手のように突き出た右手を引きつつ血魔剣の<水車剣>の連続斬りを敢行――。
逆袈裟のモーション中――反応できない速度で飛来したヒルのような小さいヒトデが――。
俺の首と手首に絡みつく――。
痛っ、つうか牙が鋭いのか――が、俺の血に触れた小さいヒトデは爆発。
んだが、光を内包する血に耐性があるヒトデもいるのか無事な奴もいる。
数も多いし、首が喰われる感覚は嫌すぎる――。
刹那、上のハートミットに向かうヒトデの群れが――。
<超能力精神>で対処――。
<超能力精神>の衝撃波で、無数のヒトデを下から潰した。
黄金色のブレードでヒトデに対処しようとしたハートミットを守ることに成功。
「んもう! 自分が傷ついているのに! 優しすぎ!」
ハートミットの声が響く。
が、無視だ――。
爪先半回転を実行しつつ壁を走って<血魔力>を意識――。
<血道第四・開門>――!
<霊血装・ルシヴァル>を発動――。
一瞬で口元を覆うルシヴァル宗主専用吸血鬼武装を出現させる。
同時にルシヴァルの血の魔力粒子が口元に吹き荒れた。
首と顔に付着したヒルのようなヒトデは燃えて消えていく。
――俺の血に耐性を持つヒトデだったようだが、消えてくれた。
――他のヒトデには<血鎖の饗宴>と血魔剣を振るって対処する。
そして、<血獄道・序>を意識。
――血獄道の大魔導師ソトビガから受け継いだモノを試そうか。
攻撃スキル<血獄魔道・獄空蝉>を試す――。
同時に、獲得した際のメッセージを思い出す。
『……相性云々の前に、血道を扱う導師の中で我の実力は一番劣るがゆえ……シュウヤに血月陰陽を授けることができなんだ。しかし、レキウレスが語るように、この質の<血魔力>を持つ者はそうはいない。だから、血月陰陽の名にかけて吸血王と認めよう。そして、血月陰陽は少しずつ学んでくれればいい。アーヴィンの髑髏の杯と血魔剣は融合したのだからな』
ソレグレン派の吸血鬼の言葉。
血月陰陽の魔導師ゼノンは過去に語っていた。
そして、風槍流の訓練は――。
剣と槍だろうと武術のすべてに通じる――。
――<血獄魔道・獄空蝉>を繰り出した。
血魔剣の周囲に細かい血の礫が無数に発生。
女帝槍レプイレスの幻影と血の槍で城のような造形を作りつつ突進した<女帝衝城>のような範囲攻撃ではないが――。
凄まじい数の<血獄魔道・獄空蝉>としての血の礫が飛翔していく。
それら<血獄魔道・獄空蝉>がヒトデたちと衝突。
――ヒトデたちは爆発しながら消えていく。
しかし、いい加減ヒトデは多い――。
続々と下から湧いてくるヒトデのモンスター。
問答無用で潰すか――左手の血魔剣を消去。
竜頭金属甲を意識。
一瞬、素っ裸となりつつ一回転。
服の形を変えた。
ついでに<霊血装・ルシヴァル>を解除。
「わ?」
俺の生尻でも見たのか、上からハートミットの女子の声が響くが気にしない。
足下に<血鎖の饗宴>を発動――。
無数の血鎖を下に出しつつ一気に下降――。
ドドドドドドドドンッ――。
――鈍い音が響く。
ヒトデが消えていく際に発する蒼い閃光を身に纏う――。
<血鎖の饗宴>で無数のヒトデを踏むように溶かしつつ下降だ。
「なんていう強さよ――」
遙か上からハートミットの声が響く。
彼女の口笛は心地いい。
刹那、俺が通り過ぎた上のほうの壁の中から、また違うヒトデの群れがハートミットに襲い掛かる。
やべぇ、調子に乗りすぎた――。
「任せて――」
え?
ハートミットは自信ある表情のまま――。
一瞬で近未来的なバイクに跨がる。
そのバイクは小型オービタルのフォルムを一段階コンパクトにしたような印象を持った。
女性らしさのある渋いバイク――。
格好いいバイクだ。
エンジン音も独特。
俺は足下の<血鎖の饗宴>を解除しつつ壁に<鎖>を刺した――ターザン移動をくり返す。
――横の階段の上に戻ってから、ハートミットの機動を見学。
血魔剣を振るって身に迫ったヒトデを処分しつつ、見学を続ける。
ハートミットはそのままバイクで空中滑降――。
――おおお。
スパイクを備えた前後の車輪で軟体動物のヒトデを踏み殺しつつ横壁を伝う。
なんて機動だ。
「<桜花式形態・雷翔車>――」
ハートミットの声が響く。
バイク専用のスキルがあるのか。
バイクの後輪が壁を蹴っては――反対側の壁に両輪でスムーズに着地。
するや否や急回転しつつバイクの横っ腹のプレートから出た両刃でヒトデの群れを両断。
バイクのステアリングを両手で押さえた操作が巧みだ。
続いて、前輪だけで、急停止――後輪を上げた。
バイクごとハートミットは前のめり。
バイクで、ジャックナイフの型を作ると、片手で黄金色のブレードを振るい横のヒトデを斬りながらバイクのエンジンから魔力粒子を噴出させつつ片手ハンドルのまま前輪だけで走り出す。
しかも、途中から片手も離した。
バイクの支えは太股だけか?
そして、バイクの質量の運動エネルギーを使ったように体ごとバイクを横回転させて――踊るような機動で――黄金のブレードを振るう。
鋼の柄巻を口に咥えて――。
――ハンドルを両手で握るとバイクが強力な内向性を得たように後輪が壁に付く。
そのままエンジンを噴かせて前進を開始。
また急停止。
ダブルディスクブレーキ以上のブレーキ機能がありそうな前輪のホイール機構だ。
再び、急加速するハートミット。
勢いに乗って階段に乗り移っては――。
その階段をハートミットが乗る近未来的なバイクは疾走していく。
群がるヒトデを吹き飛ばす。
振るった黄金色のブレードで、ヒトデを切断しては、また階段の端から穴に向けて跳躍。
エンジンとマフラーから噴き出た魔力粒子を輝かせて滑空――。
また横壁に両輪を付けて着地すると、その壁をタイヤが抉る勢いで駆けていく――。
凄まじい機動力だ。
キャブレターっぽい部品から魔力粒子が迸る。
エキゾーストパイプと推測できる部位のハートマークの部品が煌びやかに光った。
露出したスプロケットから出た半透明なチェーンと幅広なタイヤが高速で回転。
とにかく――軌跡が綺麗だ。
優れたダンサー的なアイソレーションのような感覚で渋い近未来バイクを乗りこなしている。
俺と相棒の人馬一体的なスキル<神獣止水・翔>の効果でも得ているような機動だ。
と、このままだと出遅れる――。
魔脚で強く床を蹴った。
――階段から飛び下りる――。
滑空状態から<導想魔手>を蹴って、更に加速――。
バイクに乗るハートミットに近付いた。
そのハートミットは黄金色のブレードを振るいつつ――。
「ひゃっほー――先にいくわよ――」
ウィンクをしながらそう快活に喋りつつハンドルを動かして加速。
内壁を斜め下に疾走していく。
螺旋状の魔力粒子の軌跡がタイヤ痕と混ざって青白い炎に見えた。
すぐにアクセルマギナを意識――。
そう、俺もだ。
――小型オービタルが股下に出現。
小型オービタルに跨がった俺もアクセルを強くした。
空中滑降しつつ小型オービタルを加速。
瞬く間にハートミットの横合いに並ぶ。
同時に左手で握るムラサメブレード・改を振るった。
ハートミットに絡みつきそうだったヒトデの一部を溶かす。
更に、小型オービタルを回転させた。
ウィリー機動から、後輪と前輪を活かすように小型オービタルごと俺は縦回転。
一瞬、足で挟んだシートから腰が浮いて、頭部の髪に壁が擦れてヒヤッとしたが――。
俺たちに高速染みた速さで近寄ってくるヒトデを次々とひき殺すことに成功。
そのまま回転した小型オービタルの前輪から壁に着地して加速。
ハンドリングを操作して――ハートミットの近未来バイクの横に付けた。
そのハートミットは双眸が輝いた。
風を受けて彼女の髪はオールバックに靡く。
そんなハートミットは興奮したような面を浮かべていた。
小さい唇が窄まると、
「ひゅ~」
と、口笛を吹く。
「――凄すぎ! なんてラメラル機動なの! かっこ良すぎて、惚れちゃう!!」
バイクを操作しながら大声で褒めてくれた。
俺も小型オービタルのハンドルを片手で持ちつつ、
「――そう言うハートミットも格好いい女だ!」
そう叫ぶ。
ハートミットは笑顔で、
「ありがと――」
と、礼を言いながら黄金色のブレードを振るった。
飛来してくる大小様々なヒトデを斬りつつバイクを寄せてくる。
ハートミットは汗を掻いている?
フェロモンと香水的な女の匂いも漂った。
その魅惑的なハートミットは、俺が乗る小型オービタルを見て、
「――そのシュウヤが乗る中型の桜花型ラメラルは最新式? 前後のタイヤは見たことがない機構なんだけど――」
と、大声で質問してきた。
地下遺跡の内部に彼女の声が響く――。
が、彼女の乗る桜花型ラメラルから出る稼働音のほうが大きい。
「――いや、名前は小型オービタルだ。そのバイクは、ラメラルって言うのか」
「うん。あ、敵――」
「おう」
と、ハートミットと俺は不思議と息が合う――。
互いに乗る小型オービタルと桜花型ラメラルが空中交差――。
俺は、回転しながら血魔剣とムラサメブレード・改を振るった。
宙空で、俺と視線を合わせたハートミットも黄金色のブレードを振るう。
その一挙手一投足が目に焼き付く。
おっぱいと腰のくびれに太股が悩ましく挟む桜花型ラメラルのシート。
スローモーション的に感じた――。
即席のバイク剣術を実行――。
バイクに乗ったまま横の壁を駆けては跳躍――。
互いの頭上を、小型オービタルと桜花型ラメラルに乗った状態で行き交う――。
ハートミットの心と通じ合ったような感覚を得た。
楽しい――。
ハートミットも同じ感覚のようだ。
自然とアイコンタクト。
彼女は白い歯を見せる。
「ふふ――」
「はは――」
そうして俺たちに絡むヒトデを二人で処分しつつ――。
桜花型ラメラルの後輪と小型オービタルの後輪を付けつつ回転し合いながら――。
遺跡の底に着地――。
互いのマシンのフロントフォーク的な部位から魔力粒子が迸る。
床の霧が散った。
「――シュウヤ」
「ん?」
と、振り返った直後にハートミットに唇を奪われていた。
不意打ちキスを喰らうとは! 一瞬、目が点となったかもしれない。
男としての意地があると、お返しに、ハートミットの唇を労ると――。
刹那、ハートミットは唇と体をブルッと震わせた。
濃厚な女の匂いが漂う。<分泌吸の匂手>をしなくてもハートミットの感情は分かった。
同時に彼女の胸の鼓動を強く感じ取る。
抱きしめて首筋に牙を立てたくなったがハートミットは、反らしていた体を元に戻す。
桜花型ラメラルのハンドルを握るハートミット。
その細い腕と背中と肩は少し揺れている。
肩を震わせていたハートミットが背中を見せつつ、
「――ごめんね、急に……我慢できなかった」
と、切なく語る。
「いや、むしろ嬉しいキスだ」
「ありがと……」
振り向くハートミットは恥ずかしさと嬉しさを合わせ持ったように、優し気に目尻を下げる。
正直、続きを楽しみたいが――。
ここは遺跡の広間で、魔素がうじゃうじゃだ。
塔雷岩場の地下にあったような空間。
「ハートミット。分かっていると思うが、ここも魔素が多い」
「うん」
「右――」
血魔剣の切っ先が差すのは――勿論、ヒトデだ。
俺たちに卵を産み付けるような勢いで飛来した。
――エイリアンかよ。
俺は小型オービタルに乗りながら――。
<光条の鎖槍>を発動――。
<光条の鎖槍>が大きいヒトデを撃ち抜く。
続いて、ぬっと迫力を伴って現れたのは……。
人型っぽい、巨大なヒトデの集合体。
「さっきも思ったけど、威力の高い光魔法の槍ね」
「大本はクルードって名の教会騎士が使っていた《光槍の罰》を吸収した形で覚えたスキルだったりする」
俺が何気なく語ると、ハートミットはまた鳥肌が立ったらしく、そんな仕草を見せて、
「――上級魔法級の威力を超えたスキル? 魔道具もなしに、魔法染みたスキルを扱えるって……ただ者じゃないわね。やはり選ばれし銀河騎士」
「それより、敵はまだいるぞ」
「あ、うん。人の形? 大きい敵。でも、今度はわたしが倒す――」
そう宣言したハートミットは、片手で握る鋼の柄巻を回転。
横に黄金色のブレードを寝かせてから――。
桜花型ラメラルを直進――マフラーから炎のような魔力が噴き出る。
アクセル全開的な急加速のバイク機動だ。
巨大なヒトデの横を駆け抜けながら振るった黄金色のブレードが、巨大なヒトデを撫で斬って、巨大なヒトデの体を両断した。
バイク剣術の胴抜き――。
同時に――桜花型ラメラルが急に逆側へと横回転。
突起物を生やした桜花型ラメラルの後輪ホイールが斬ったヒトデの下半身と衝突。
――ヒトデの下半身を吹き飛ばした。
すげぇ。すこぶる冴えたバイク剣術だ。
そして、彼女が持つ鋼の柄巻を注視。
黄金色のブレードを生む光刃放射口の輪が円筒状になっていてブレードを保つ仕組みだろうか。
しかも、今の持ち手は逆手。
グリップの下のパワーセルを備えているだろう柄頭にも、光刃を出す放射口を備えているのか、黄金色のブレードが出ている。
俺の独鈷魔槍と似たような両端からブレードを出せる作りのようだ。
そのハートミットはヒールプレートを押し込む動作から桜花型ラメラルを操作――。
巨大なヒトデの下半身を吹き飛ばしたバイク技と同じ機動だ。
前輪と後輪で、床に円でも描くように急回転――。
魔力の粒子を放つタイヤが床を擦って、床とタイヤから独特な煙を立ちのぼらせつつバックの姿勢のままギュィーンと音を響かせて戻ってきた。
ハートミットの髪が舞う。
その近寄った可憐なハートミットは笑顔満面。
掌を翳すように俺に腕をさし向けた。
俺も笑みを意識しつつ――。
即座に両手から武器を消去してから――。
右手をハートミットの手に合わせた――。
ハートミットの片手と、ハイタッチ――。
互いの手から「パンッ」と小気味よい音が響く。
そのハートミットの手を握ったところで、そのハートミットの細い腕を引いた。
「――え?」
驚いているハートミットの腰に反対の手を回す――。
「あぅ――」
と、強引に抱き寄せて、ハートミットの唇を奪った。
さっきのお返しだ。
そして、すぐにハートミットから離れた。
「――その鋼の柄巻は、ギミックが多い?」
と、さり気なく質問。
「……もう!」
ハートミットは、少し怒ったように頬を膨らませる。
んだが、すぐにハートミットは自らの唇に指を当てて、にっこり顔。
そして、ふふっと可愛らしく笑ってから、
「でもさ、わたしも中々の銀河戦士だと思わない? えっちな銀河騎士様?」
と、語るハートミット。
ギミックに関しては答えてくれないようだ。
しかし、魅力的な女性だなぁ。
と、考えながら、
「あぁ、キス魔で、えっちなハートミットちゃん」
「なんで、えっちで、ちゃん付けなの! 渋い顔して!」
キスしていた時よりも顔を真っ赤に染めたハートミット。
なんで怒るのか分からんが――。
俺は小型オービタルから下りた。
その小型オービタルをアクセルマギナに仕舞う。
「あ、わたしも――」
ハートミットもバイクの桜花型ラメラルをアイテムボックスに仕舞う。
俺はアーゼンのブーツ越しに床の感触を確かめた。
――素材は石のようだが、鋼鉄っぽい。
すると――奥の中央と左右から巨大なヒトデの集合体たちが現れる。
「ぐおぁぁぁぁ」
「ぐあぁふぇあえげぁあ」
「げぁぁげあぁ」
「げふぇあげあふぇわ――」
と、威嚇か悲鳴か分からない気色悪い声を発した。
声帯があちこちにあるのか、エコーが掛かってすこぶる不気味。
ハートミットがバイク剣術でぶっ倒した巨大なヒトデの集合体とはまた違う。
上半身は人の頭部と腕が異常に多い。
人の体も混じっているのか。
とにかく……気持ち悪いモンスターだ。
他にも天井と床から、小さいヒトデがわらわらと湧いてきた。
――またか。
相棒のロロディーヌが、この場にいたのなら〝汚物は消毒〟の出番だった。
まずは、一際大きいデカブツか。
その巨大なヒトデの集合体に向け――。
<光条の鎖槍>を――。
が、
「待って、エレ銃の威力を見せてあげる――」
と、ハートミットの声が響くと――。
「ギュノスモロンか分からないけど! 死になさい――」
巨大なヒトデの集合体から閃光が生まれた――。
胴体の真ん中が真っ赤――。
その真ん中の真っ赤な部分が、そっくりそのままドロリと溶けた。
周囲の内臓も溶けて肉と肋骨が爆発していく。
「――決まった♪」
凄い威力だ。
機関銃ではないが、『快、感♪』といった声に聞こえた。
――刹那、その巨大なヒトデの集合体は痙攣して「ウガァォオォォォ」と叫び声を発しつつ、連鎖的に爆発――。
「え?」
大量の紫色の血肉と骨の欠片が爆発をくり返すたびに――。
血肉と骨の欠片が降り掛かった。
周囲のモンスター仲間の小さいヒトデと巨大なヒトデの集合体にダメージを負わせている。
小さいほうのヒトデは耐えきれず爆発。
「デカブツは、まだ健在だ。油断はするな――」
そう言いながら、即座に血魔剣に魔力を通す。
ハートミットを守るように前進――。
鋼の柄巻にも魔力を通して、ムラサメブレード・改を起動――。
背後のハートミットに破片がいかないように――。
上下左右に血魔剣とムラサメブレードを振るった。
しかし、爆発するごとに散る骨の欠片と血肉が増える――。
血肉は大丈夫として、骨のほうは、ショットガン攻撃の質だ――。
赤と青緑と黄緑に色が変化する左右のブレードを振るいまくった。
――<水車剣>と<飛剣・柊返し>を実行。
ブゥゥゥン、ブゥゥン、ブゥゥゥンと小気味いい旋律が周囲に響く――。
続いて、《氷矢》を無数に発動――。
狙いは、他の巨大なヒトデの集合体ども――。
大量の《氷矢》が他の巨大なヒトデの集合体に突き刺さる。
ドドドドドドッと重低音が遅れて響いてきた。
数体の他のヒトデの集合体の動きを鈍らせた。
一瞬、腰の閃光のミレイヴァルが脳裏に過るが、止めた。
左手が握る血魔剣を使う。
再び――<血獄魔道・獄空蝉>を発動――。
無数の血の礫が、迫る骨の欠片を溶かす。
俺は<シュレゴス・ロードの魔印>を意識しながら少し後退――。
左の掌の魔印から半透明な蛸足の一部が出現。
その半透明な蛸足は、桃色の魔力粒子を纏いつつハートミットの左側に展開。
一瞬で、そそり立つチンコの壁を形成。
え? 亀頭から桃色の粒子が迸っている。
半透明だが、妙に――恥ずかしい。
『フハハハ、主の気持ちだ』
シュレゴス・ロードは渋い思念の声だが、嗤っている。
ハートミットは唖然としていた。
形はアレだが、ちゃんと、骨の欠片を防ぐシュレゴス・ロードの蛸チンコ。
「……」
『なんで俺の気持ちなんだ!』と念話でツッコむ気力はない。
俺は、その恥ずかしさを消す。
もとい、同時に血魔剣とムラサメブレード・改を振るった。
――赤と青緑の軌跡をかき消すように――。
両手が握る赤と青緑のブレードを目まぐるしく動かした。
続いて、左右の血魔剣とムラサメブレード・改を<投擲>――。
狙いは、遠くの巨大なヒトデの集合体だ。
横回転して飛翔する血魔剣とムラサメブレード・改。
青緑色のブレードと真っ赤なブレードの血魔剣が――。
巨大なヒトデの集合体をぶった切った。
<超能力精神>ですぐさま――。
その血魔剣とムラサメブレード・改を引き寄せる。
が、俺は気まぐれを起こしたように側転――。
ブーメラン軌道で、側転する俺を追い掛けて引き戻る血魔剣とムラサメブレード・改のダブルブレードを活かすように――。
周囲の小さいヒトデを、その俺に引き戻る軌道を描く二つのブレードで処分した。
「素敵――」
笑顔でハートミットの声を応えつつ両手に戻った血魔剣とムラサメブレード・改。
側にあった桃色のシュレゴス・ロードの半透明な変なチンコは普通の蛸足に戻っていた。
安心した。
鋼の柄巻と血魔剣の柄の握り手に力を込めつつ――。
すると、ハートミットは勘違いしたのか、
「もう……そんな笑顔を寄越さないでよ!」
また怒っているというか、照れている。
気にせず防御を意識した<超能力精神>を実行。
飛来する骨の欠片を吹き飛ばした。
が、まだ爆発音が響く。
巨大なヒトデの集合体からだ。
最初にエレ銃のエネルギー弾を体に喰らったモンスター。
その巨大なヒトデの集合体は、まだ鈍い音を発して、爆発をくり返している。
しかし、その爆発の規模は縮小。
ボロボロな血肉と骨は、粘液に変化しつつドロリと床に広がると粘液は空気を内側から漏らすようにぷっくりとした気泡を表面に出しつつ、その気泡が弾けて散るボコボコとした音を立ててから静まった。
「シュウヤ……守ってくれて、ありがとね」
背後のハートミットだ。
俺の背中に頬を寄せて抱きつきながら、そう呟く。
「……おう。まだ敵がいる」
「うん」
ハートミットは微笑む。
手には銃身が伸びたエレ銃を持っていた。
しかし、撃った銃を持つ右手に、龍の紋様のような形の傷ができていた。
エレニウム重水放射粒子の余波か?
放射能を近くで浴びたように、爛れて、骨が露出しては……。
女性の細い手が痛々しいのは、正直心に来る。
「――大丈夫か?」
と、ハートミットの腕に近寄る。
ハートミットは一瞬、ドキッとしたような表情を浮かべて俺を凝視した。
「……うん、大丈夫だから」
すると、その言葉通り、骨と血肉が活性化。
魔力の粒子的なモノが、その傷口の繊維質となって傷を覆う。
瞬く間に傷は再生した。
ヴァンパイアよりは回復速度は遅いが、それでも十分すぎる回復力だろう。
「凄い回復力だ……」
ハートミットは腕を上げた。
赤いマニュキアが綺麗な指だ。
その細い指と女性らしい手首の細さを自慢するように腕を伸ばす。
前腕と二の腕の締まった筋肉は女性らしいが、人工筋肉を備えた義体の腕だろうか?
「いいでしょう? さっき見てたから分かると思うけど、こんな機動も可能――」
ハートミットは脹ら脛の一部がスラスターと化して魔力粒子を出して浮く。
と、またエレ銃をぶっ放す――。
遠くの巨大なヒトデ集合体にエレニウム重水放射粒子が派手に衝突。
ヒトデ集合体だったモノは、肉片が溶けつつ散って弾け飛ぶ。
要するに爆発しながら吹き飛んだ。
また、ハートミットは手に傷を負う。
そして、幸い吹き飛ばした血肉と破片は遠すぎて飛来してこなかった。
手の傷もさっきと同じく癒えたハートミットは腰のアイテムも起動中。
見た目は薄いスカート。
だが、端のひらひらに近未来的なスラスターが装着されている。
その噴射口から細かい魔力の粒子が放出中。
「腰の装備といい、足も普通じゃないのか」
「うん。LED繊維にナノカメラを仕込んだインビジブル・マントもある。遺産神経と独自に連結した<魔強化サイキック・コディアック>は、かなり高レベルだと自負がある。魔重DNAポリメラーゼシータ(POLQ)も相まって、全身の魔細胞レベルも強化してあるから♪ 他にも最新と未知の魔内臓と魔義体も組み合わせてあるからこそ……超能防力ポリメラーゼDNAも活かされるってこと」
ハートミットは、にこやかに語る。
銃をしまいつつ足を普通の状態に戻すと、スキップするように、俺の隣にきた。
気になるフレーズがある。
「その魔義体だが、電脳化はしているのか? 膨大なネットワークの海を利用できるとか」
と、質問。
ハートミットは視線を鋭くさせて、
「……また詳しいわねぇ。電脳は勿論可能。この戦闘型デバイスもある意味そうだし。でもね、基本有効なのはローカルの範囲まで。広大なネットワークの海と繋がることのできる電脳アイテムに自らの意識を融合させるようなことは、まず素ではしない。やったら、その電脳の仕組みを司るAI=神に乗っ取られる可能性が高い。他にも、神とはいかなくても仕組みを作り上げた攻撃的な意志を持つ張本人のゴーストが眠る電脳に接続を試みた場合、防壁がないと、自分の脳が逆にハックされる可能性も……」
「怖い。ハックを受けたら、自意識が飛ぶ?」
「もっと怖いことが起きたのを見たことがある」
聞かなかったことにしよう。
「無数の魂が交じった状態の〝集合電脳塊〟の場合だと、本人があらゆる意味で強くないと、その魂と魂たちとの衝突が起きて本人が混沌と化す。個人としての精神性が埋没するか、他の魂に呑み込まれて崩れてしまう。ゴーストハックも起きるし記憶が混乱する。勿論、その記憶を司る脳幹を弄る特殊な魔機械もあるし、種族ごとのRNAとDNAポリメラーゼか、ナノマシン入りの魔脊髄液か、専用の防壁魔機械を用意すれば……大丈夫なことも多いんだけど……そういった集合電脳塊に挑戦するとしたら、その防壁魔機械の質がキーポイントかな。AIも性能差が激しいからね」
と、俺のフィナプルスの夜会を見るハートミット。
この魔界四九三書も……。
ある種の量子コンピュータを超えた〝集合電脳塊〟ってことを言いたい?
まぁ、フィナプルスの夜会は、一つの異世界が内包しているような、とんでもないアイテムだからな。
そのことは告げずに、
「高度すぎる……」
「うん。高度なナノマシン生成技術と惑星間を繋げるほどの電脳の海は、一部の魔商人と銀河帝国とナパーム統合軍惑星同盟が持つ〝プロジェクト・ルッキング・グラス〟を含めた電脳研究を行う専門機関に限られる。立体的な時間軸のメタファーを弄るメリットは多々あるけど……リスクが高いから研究できる存在も限りがあるし当然なんだけどね。そういう危険な研究をしている銀河騎士のグループは同盟or帝国以外にもあるらしい……ま、危険なことはしないほうが身のため」
そう語るハートミットは奥のほうを見て、
「……中央の奥の壇が、ミホザの鍵を置く祭壇かな? でも、右の端にまだ巨大なモンスターがいる。シュウヤが倒す?」
「左にもいる」
「え? 本当? あ……」
と、掌握察に微かに感じ取った左のモンスターを指摘した。
濃厚な闇の魔力を感じる人の形。
ローブ姿。
「――不思議、わたしの索敵から漏れている? 隠蔽型にしては……有視界のみ?」
自らのスコープと、ディメンションスキャンの反応を見て、動揺したハートミット。
やや遅れて、右手に握る鋼の柄巻から黄金色のブレードを出す。
「隠蔽型……アンノウン・ソルジャー!」
アクセルマギナの機械音が響く。
そのローブ姿の怪しい者が、
「……ダレダ……」
と、声を発した。
「驚き、マハハイム共通語……」
「こいつは俺が担当しよう」
「うん、それじゃ、右の巨大なモンスターはわたしが」
さて、ローブ姿のアンノウン・ソルジャーは、濃厚な闇の魔力を出しているが……普通の人族ではないだろう。
魔族か?
そして、掌握察では魔力を感知できたが……。
ナパーム統合軍惑星同盟のレーダー網を弾く能力を持つ存在か。
俺は一歩、二歩と風槍流歩法で、その怪しい人物に近付いた。
交渉できるか試すか。
「どうも、とある槍使いでシュウヤという名があります。貴方はここで何を?」
続きは来週。
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