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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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577/2028

五百七十六話 勝ち鬨とデスハートに皆の戦い

2024年3月15日 19時03分 修正

 悠然としたロロディーヌは風を受けたように胸元の黒毛と触手たちが靡く。

 相棒は蜂式ノ具の魔宝石を翳す。


「ンンン」


 と、喉を鳴らして、


「にゃ、にゃ~、にゃお」


 鳴き声を連続的に発した。

 表情は誇らし気だ。


 『ロルガ討伐&キッシュたちの秘宝を取り返した』


 と〝にゃん語〟で喋っているのかも知れない。


 残念ながら<翻訳即是>では理解できず。

 相棒の鳴き声を言語として捉えることは難しい。

 ま、基本はネコ科。

 相棒の気持ちは見た目でだいたい分かる。

 光彩の散大と収縮。

 髭の下がり具合と喉の音。

 尻尾と全身の毛の動きといったように、感情の表現を実に細かく体で表現する。


 それに……俺たちは相棒同士。

 互いの気持ちを伝え合うことが可能だ。


 だから、にゃん語で構わない。


 すると、光神ルロディスが相棒を祝福するかのように……。

 依然と輝きを放ち魔宝石から出ていた光のカーテンが相棒を包むように靡いていく。

 それはあたかもロロディーヌの頭部を、掌で、優しく撫でているようにも見えた。


 その靡く光のカーテンには、キッシュの家族たちとハーデルレンデの祖先たちが映っている。

 キストリン爺と、聖槍アロステと関係のあるイギルと似た聖戦士たちの姿も見えた。


 彼らは、神獣ロロディーヌに手を伸ばす。

 相棒を撫でるような仕草をしてくれていた。


 相棒も目を細めて幸せを感じているような優し気な表情を出して応える。


 微笑ましい。


 蜂式ノ具を地底神ロルガに奪われたエルフ氏族のハーデルレンデ。

 魔竜王バルドークに故郷を滅ぼされたハーデルレンデたち。

 魂の黄金道となって、俺たちをここまで導いて下さった方々の魂たち……。


 ……その思いは浮かばれたと思いたい。


 ――キッシュ。

 取り返したぞ。

 その瞬間、俺にも光のカーテンが降り掛かる。


『英雄よ、我らは聖域に戻れた。本当にありがとう』

『我らの光の聖歌を捧げるよう――』

『讃えよう、本当の英雄を、聖者の再来を――』

『約束は果たされた――英雄よ、我らの思いを果たしてくれた――ありがとう』

『聖者の存在は、我らの魂をハーデルレンデの聖域へ誘った――ありがとう』

『英雄の存在は、我らの魂をハーデルレンデの神殿へ誘った――ありがとう』

『――ありがとう』

『『ありがとう……シュウヤ様、キッシュを頼みます……』』


 荘厳な歌声に、ラシュさんたちの声が、直接心に響く。

 カーテンは引いていった。


 その直後、カーテンの真上に空間の干渉を受けたような痕が生まれる。

 そこから巨大なデボンチッチらしき幻影が覗かせる……が、その姿は虚ろだ。


 『イギルを超える聖戦士。我はしかと見たり――これを――』


 今までと違う声。

 そこから、光り輝く紙片が落ちてきた。

 紙片は、自然と俺の目の前で止まる。


 紙片の文字が光り輝いていく。


 □■□■



 わたしは聖戦士の連盟者が一人。

 イギルの名がついたデスハートである。

 帝都キシリアに向かう途中、地底神たちの争いに巻き込まれた。

 地底湖のような場所に落ちてしまった……。

 そして、この傷は深い……。

 いかに聖戦士が一人と呼ばれた、特異な血の回復能力を持つわたしでも、この傷だ。


 あぁ、今も片目が腐った。

 だが、まだ奇跡のような光景は見えている。


 これもルファの言葉通りかな。

 ……はは。

 この手紙がルファに届くか不明だが……。

 書くだけ書いているように……片腕と片足だけが、動くのみ。


 体は朽ちていく。


 ……ルファ。

 ……わたしのルファ・クリストン。

 お前との約束を果たせず、ここで朽ち果てることを許してくれ。


 お前も幸せにすると、サデュラの森で誓いを果たすと……約束をしたが……。

 してやれなんだ。すまない……。

 だが、この死を前にした状況で、分かったことがあるんだ。


 目ではなく、感覚で理解できることがある、と。

 目に見えるものだけがすべてではないんだ、とな……。


 ルファがわたしに……。


『目で見える物がすべてではないのよ』


 と、語ったことを。


 あの時、わたしは『どういうことなんだい?』と聞いたな。


 ルファは『心で見るの。そうするとね、自然の大地の神ガイア様の息遣いを感じられる』


 『理解できんよ』


『ふふ、デスハート。大切なことは目に見えないのよ。植物の女神サデュラ様の美しい言葉も心の目で見ると、聞こえてくるんだから……』


 あの笑みは忘れない。

 そして、その言葉は本当だった。


 今、目の前に落ちた場所は綺麗な地底湖で、奇跡を見ている。

 片目だけで、だ。

 頭も打ったから幻覚かと思ったが違う。


 しかと、見えている。

 感じられている。


 この地底湖は、どうやら、光神教徒のような魂たちが集まる場所のようだ。

 天道虫が沢山集まっている。


 だからこそ、今、書いている。

 ……光神ルロディス様。

 わたしには、愛の女神アリア様の力はありませんが……祈ることはできます。

 この手紙を愛しいルファに届けてください。

 そして、奇跡が成し得て、この手紙を見た方……。

 わたしが血の集積から得て獲得した技術を、この紙片に託す。

 血の技術を流用できるスキルの者よ、利用してくれ。

 ま、無駄なことになる可能性が高いが……。

 どうせ死ぬのだ。構わない……。

 最後の魔力を込める。


 ……その前に、あのドワーフの語っていた地底湖がここなら、聖槍ソラーはここに眠っていることになる。

 同時に、わたしの愛用した魔槍グンダファと、皇都までの地下地図にアロトシュの血衣と、他の装備もここに眠ることなるだろう。


 オークたちを含めたダークエルフたちが奪うかもしれんが……。

 神々が力を貸してくだされば、光神の導きを持つ聖戦士が見つけてくれるはず……。


 だから、ここに使えるアイテムが眠る場所を記しておく。


 そして、わたしのすべてを込める前に……。


 ルファ愛している。

 幸せになってくれ……。



 □■□■



 すると、書物から光に満ちた血が溢れた。

 その光の血を自然と吸い取る。


 ピコーン※<死の心臓>※スキル獲得※

 ピコーン※<光穿>※スキル獲得※

 ピコーン※<光穿・雷不>※スキル獲得※


 おぉスキルを獲得した。

 デスハートさんの貫手技か。

 光穿も獲得できた。

 刺突系の上位クラスと感覚で理解。


 そして、ルファさんとデスハートさんか。

 ルファさんが帝都に居たとなると……大破壊があったから生きているとは思えない。

 魔界の傷場となった場所のはずだ。


 そのデスハートの紙片は、自然とハルホンクのポケットの中に収まった。

 ホルカーの欠片とレーレバの笛と一緒だ。


 すると、神獣ロロディーヌは、ピンク色の鼻孔を拡げて窄める。

 強い鼻息で光のカーテンたちを泳がせていた。


 そして、


「にゃおおおおおおん」


 大きな遠吠えを響かせた。

 その声は、神界、魔界、邪界、獄界エセル界、無数の次元たちに棲まう神々たちに通じる勢いだ。


 胸元の黒毛と触手たちが震えていく。

 凄まじい神獣の勝ち鬨。


 相棒ロロディーヌの勝利宣言が独立都市フェーンに響き渡る。


 同時に、下の静寂も崩れた。

 戦場らしい喧噪が再び巻き起こる。


 同時に蜂式ノ具を内包した魔宝石から出た光のカーテンも巨大な戦旗のように揺れた。


 しかし……地底神ロルガが倒されたとしても……。

 素直に逃げる怪物たちではないか。

 そして、壁の中のマグルのグンドァンが居るように……。


 一枚岩ではないことは確実。


 さて、俺の眷属たちと仲間たちの戦場を把握しようか。

 と思ったところで、沙、羅、貂の三人が、飛翔しながら寄ってくる。


「器よ、三叉法具サラテンの確認の前に――」


 天女のような姿の沙に唇を奪われた。


「ええ! 沙、離れなさい!」

「あぁ~あたしも~」


 と、俺の腕を取り合う羅と貂。

 その度に、左手の王牌十字槍ヴェクサードと、右手が握る新しい神剣が揺れた。

 血魔剣と閃光のミレイヴァルに魔軍夜行ノ槍業は微かに震える。


 沙の唇の感触を味わいつつも、俺は魔力と血を、その沙に口内に送り込む。

 彼女はびっくりしたようだ。


 目を開け、瞬き。


「ぁぅん、器……ぅん」


 感じ入るように、紺碧色の双眸は潤んで揺れていた。

 俺は唇を離す。

 血と唾の糸が、唇と白い歯から引いている。


 沙は、頬から首に鎖骨までを朱色に染めていく。

 うっとりとした沙は、俺の唇を求めるように、唇を見ていた。

 視線が重なると恥ずかしそうに微笑む沙。


 瞼をゆっくりと閉じた。

 お望み通り、その沙の唇を奪う。

 その小さい唇を、引っ張るように力強いキスに切り替えた。


 再び魔力と血を直に送ると沙は「あん!」と甘い吐息を出し、柔らかい豊かな胸を押しつけてくる。

 体をぶるっと震わせていた。


 沙は、恍惚な表情を浮かべて、


「もっと……」


 と言いながら、背筋を反らし、崩れるように腰を落としてしまった。


「足下から血が……びしょびしょに漏れているけど、沙……大丈夫?」

「感じすぎてしまったのね……」


 沙に寄り添う、羅と貂。

 沙の肩を支えながら立ち上がった羅と貂が、俺を見て、


「器様、わたしの神剣・三叉法具サラテンの能力<瞑道・瞑水>の着心地はいかがでしょうか」


 羅の言葉だ。

 彼女は、傷ついたハルホンクの防護服を見ていた。

 半透明の和風防護服を指摘してくる。


 俺は頷きながら、


「いい。それよりも加速を得たが、羅の能力か」

「はい、器様の三叉魔神経網を生かす形です」


 三叉魔神経網?

 そういえば、ステータスにもあったな。


 そう語る羅の虹彩を凝視。

 彼女の瞳は、二人の沙と貂とは違う。


 細かな円が無数にある。

 無数の漆黒色の粒と、水銀の粒のようなモノが銀河を描くように回っている。

 不思議な虹彩だ。


 羅をじっと見ていると、貂が尻尾を絡めてくる。


「器様~あたしの仙王鼬族の力を披露したい! 下の戦いに混ざりたいです♪」

「大主さま、ロルガの討伐! おめでとうございまちゅ」


 傾城の狐獣人にも見える貂。

 と、その細長い首にくっ付いていた白鼬ちゃんのイターシャだ。


「おう、イターシャもありがとう」


 イターシャよりも、やはり、貂の姿を凝視。

 鼬系らしいが、見た目は九つの尻尾を持つ妖狐っぽい。

 九本の尻尾、妲己を連想する。

 日本なら忍者漫画か、能楽でも「玉藻前」は有名だった。

 元は古代中国で「酒池肉林」の言葉を生み出した王と王妃の話だったはず。


 貂の種族はステータスで見たが、一応、聞いてみるか。


「で、貂、仙王鼬族とは神界に存在するような種族?」

「はい、嘗ては神界の【仙鼬籬(せんゆり)の森】という場所で暮らしていました」


 へぇ、神界の地名か。

 仙王スーウィン家が住む【白炎王山】とかならステータスにもあった。


 俺は半透明の和風防護服を見ながら、


「仙魔術の力を感じるが、俺の知る仙魔術とは、また違う」


「わたしたちでは〝仙王術〟と呼ばれることが多いのです。そして、器様が違和感を受けているように個人によって、技の名は微妙に変化する場合もあります。神通力と呼ぶ方も」


 へぇ、と、その時、下の喧噪がより激しくなる。

 と、下の戦いを見学。

 俺の眷属たちと仲間たちが戦っているのは、ロルガの大眷属とは思えない。

 地底神ロルガと同規模の凄まじい魔力を持つ巨大な怪物だった。

 まぁ、ロルガがいた神殿のような建物は複数あるから、あんな怪物もいるだろう。

 ルゲマルデンより強いかもしれない。

 巨大な怪物以外にも魑魅魍魎たちのオンパレードだ。

 古代魔法を連続で撃てば……。

 いや、規模のコントロールがまだ甘いし、人族の存在もチラホラとあるからやめておく。

 と、状況次第だな。皆が苦戦している大眷属は四角い。

 中央は窪んでいる。

 肋骨のような太い骨と肉腫と触手群が集結して四角い体を構成していた。

 体の左右から兜の飾りのような太い角骨が伸びている。

 角の下部の孔から触手が出ていた。

 触手の先は、大きな魔法陣を幾つも生み出している人の手。

 その掌の中に魔眼の眼球もある。

 しかも、眼球からドリームキャッチャーの形をした巨大な触手があった。

 無数の剣刃と、人の脳と、オタマジャクシのようなモノと繋がっているし、魔法陣を周囲に発している魔術師のような人が、両手を拡げながら触手と一体化。

 全長はどれくらいあるのだろうか。

 ネームスとビアにロゼバトフが小さく見える。

 剣刃は鋭そうだ。 飛来している剣刃を沸騎士たちは盾で防いでいるが、傷だらけ。

 あの長い触手とドリームキャッチャーは〝手〟の役割なのか?

 体は分厚い骨兜とぶよぶよとした肉と内臓が犇めき合っている。


 とにかく、異質極まりない巨大で四角い怪物だ。

 更に、肋骨の間から覗かせている内臓のような肉腫が蠢く。

 骨と骨の間から青蜜胃無(スライム)のような肉腫が突出。


 肉腫はしゅるしゅると伸びた蛇のような触手となって、エヴァたちのことを攻撃している。他にも、窪んだ裂け目のような部位には宇宙空間のような膜がある。あそこが弱点か。

 エヴァたちを攻撃している肉腫のような触手は、至る所に小さい口があった。その口の中は三百六十度びっしりと牙が生え揃っている。 


「あのゴジラ級の大眷属といい、まだまだ下の怪物たちは健在だ。射手は減ったようだが……」

「ふむ、魔印は今度説明しよう。妾たちは、その神剣に戻り戦いに備える――」


 沙は元気になった。


「そうね、皆と器様の合体です」

「うん、沙、羅、合体!」

「貂、それは妾の言葉ぞ! で、器よ。妾たちを存分に扱うのだ、ぞ!」


 実体化していた仙女のような沙、羅、貂たちは、そう語る。沙が可愛い。

 瞬間――それぞれの力の象徴を背景に映し出しながら少女のような姿に変身。


 きらきら光る天女のような羽衣が似合うサラテンたちは、重なり合うと光り輝く粒となった。軌跡を宙に残しながら新しい神剣サラテンの中に戻る。

 ()()(テン)の新しい形の神剣サラテンだ。

 炎のような魔力がブースト。

 魔力の幻影は少女たちが人柱になったような姿。


 その神剣サラテンは右手から離れて漂う。

 俺は第三の腕に王牌十字槍ヴェクサードを移す。


 フリーハンド状態から神剣サラテンを操作。

 左手の指先を右肘の下に当て、自然と、その右手を杖のように動かす。


『右に――』


 思念操作で神剣サラテンはスムーズに動いた。

 下の怪物たちに向けて突進――さぁ皆の戦いに参加だ。

 四角い体の大眷属は皆を苦戦させていたようだが……狙いは、あの片腕。

 ドリームキャッチャーの形をした触手の網を貫く神剣サラテン――。

 触手と繋がる魔術師のような方は囚われているか、不明だが、その人物は発狂したような表情を浮かべながら、上半身を漆黒色に変える。と、その漆黒色が裂けた。

 一瞬、サラテンの操作を躊躇するが――その裂けた部分はミミズの群れ。

 ミミズが蠢く中から複数の眼球を晒す。

 外面は魔術師だが、触手と繋がった武器の怪物か。

 元は、生贄か何かで吸収された魔術師系の人族だったのかもしれない。


 ――南無。と、神剣サラテンで、その眼球ごと触手の群と繋がる魔術師系の形をしたモノを斬る。あやとり遊びでもするように、切断しまくった。


「ヌガァァッァァァァァ」


 痛覚があるのか、大眷属の悲鳴が響く。

 ヴィーネはラシェーナの闇腕輪を用いて、大眷属の動きを鈍くした。

 傷だらけのゼメタスとアドモスを乗せた黄黒猫(アーレイ)白黒猫(ヒュレミ)も、突進しながら、それぞれに武器を用いて大眷属の体に攻撃を喰らわせて駆け抜ける。

 レベッカは、すぐに沸騎士たちを援護。

 巨大な蒼炎弾を、肉腫が集結していた部分に三つ衝突させて、閃火を生み出す。

 続いて、魔笠が似合うソロボが、


「オレもだぁぁぁぁ! ライヴァンの世の道神セレクニよ、オレたちに加護を!」


 オーク語で大咆哮するや銀太刀を左右に振るう。眼球を切断。

 仲間に影響を与えているが、ソロボの凄い声が轟くと、ビアが負けじと、


「ヌォォ! 我が、引き受けた怪物たちを引き剥がすな!」


 ビアが頭部を振るいながら叫ぶ。


「大丈夫ですよ!」


 リサナが叫びつつビアとソロボをフォロー。

 波群瓢箪の漆黒色の巨大な手が上下に振るわれて、怪物をクチャおじさん顔負けの如く潰して倒していた。その隙に前に出たソロボが魔刀を振るう。

 銀太刀の名は妖刀ソエバリだったか。

 耳を塞ぐ仕草を取っていたサザーも続いた。

 水双子剣(セルドィン)を交互に振り下げつつの前進。

 連続の下段斬り。延焼した大眷属の下部位を三枚下ろし。

 大眷属は四角系の怪物、切断した辺りは下腹部か?

 人の内臓の位置でたとえても意味ないか。

 更に、ネームスの巨大な腕が動く。鋼鉄のような柱の拳パンチがドリームキャッチャーのような物を構築していた腕触手を潰した。

 そこに、駆け戻っているゼメ&アドの騎兵の動きに合わせて骨笛を吹くクエマ。

 灯りを発した魔術と似た音波攻撃を出していく。

 周囲に<血魔力>と連鎖した音叉的な結界が作られるようだ。

 音波の攻撃も加わって、肉腫の分裂した手から生み出した魔法陣を弾き飛ばす。

 ゼメタス&アドモスのシールドバッシュが、大眷属の胴体から出た骨牙を破壊。

 俺も神剣サラテンを操作。

 神剣サラテンで、大眷属の反対側の腕から展開しているドリームキャッチャーたちが、飛ばしている剣刃の群を切断していく。

 撃ち漏らした剣刃の群が、アドモスの近くに衝突して、衝撃波が出ていた。

 衝撃波を喰らったアドモスを乗せた大虎ヒュレミは動きを止める。

 魔線と繋がった剣刃の群は一つ一つ威力がある。

 しかし、やはり、地底神ロルガ並みの魔力規模だ……。

 なんつう都市なんだよ。魔神帝国恐るべし。

 と、一瞬の思考の間に、イセスのゴレアックブレイドが大眷属に決まった。

 うむ、おっぱいさんがいい! いや、戦いに集中しないと――。

 後方支援の戦いは見えるだけに少し余裕を持ってしまう……。

 イセスの強烈な薙ぎ払いを喰らった大眷属は、肋骨風のモノに付着していた骨肉団子が潰れて、大量の肉腫が弾け飛ぶ。

 刹那、右のほうで、肉腫怪人を始末していた異獣ドミネーターの姿を視認した。

 異獣ドミネーターたちはレドームを討ったようだな。


 ドミネーターは魔獣タイプだ。

 大眷属の四角い体から、歪な姿と変化しつつあった体に飛び掛かる。

 四肢の紫電が走る爪で引っかくように骨と肉を削る。

 後脚の蹴り突きも、肉厚な部分に繰り出した。その蹴りの反動で跳躍。


 体を捻り着地した異獣ドミネーターは、やはり相棒と似ている。

 ドミネーターを見ているバーレンティンも嬉しそうな表情を浮かべていた。


 しかし、そんな異獣ドミネーターに大眷属は気に食わなかったのか――。

 骨を脇腹に集結させると、骨は出っ張りつつ巨大な骨剣となって、異獣ドミネーターを追尾した、直ぐにバーレンティンが反応。

 ネモフィラのような鮮やかな青瞳を輝かせながら、骨喰厳次郎の魔刀を縦に振るった。

 両手が握る骨喰厳次郎から出た魔刃の一閃が、巨大骨剣をぶった切る。

 切った巨大骨剣は落下、角を切られた大眷属はロゼバトフからも攻撃を喰らう。

 ガントレットの豪快な一撃――ドッとした鈍い音を響かせる。

 その間に、異獣ドミネーターは華麗に着地。ターン機動で、周囲の肉腫怪物を倒しているレベッカとエヴァたちの下に駆け寄っていく。


 一方、ロゼバトフの拳攻撃を喰らった大眷属は、脊髄があるのか不明だが、仰け反って、振動を起こした。体を構成していた肉腫と骨が飛び散っていく。

 大眷属は姿が小さくなった。

 その様子を見たバーレンティンは大眷属ではなく味方の位置を把握。

 襟のバッジが渋く輝く。銀髪を靡かせて宙を飛翔しながら骨喰厳次郎の柄頭を蹴った。


 <投擲>か。

 紫色に輝きを発しながら飛翔していく骨喰厳次郎――。

 フーに近付いて、フーの体を厭らしく拘束していた肉腫怪人の胴体を見事にぶち抜く。


 バーレンティンはそのままネモフィラ色が綺麗な双眸から魔線を放つ。


 同時に、胸元から魔弩の紋が浮き上がる。

 双眸から出た魔線と指先から出た魔線に、その胸元のクロスボウのような魔弩が合体。


 バーレンティンは十本の指と連動したレーザー光線を発していく。

 クロスボウのような魔弩から出る照準としての魔光線だ。


 そして、手首を曲げ、親指を掌に納め、引き金を引く。

 指先と連動した魔弩から射出していく魔力の矢は、肉腫怪物たちを一瞬で屠る。


 バーレンティンは周囲で肉腫怪物と戦うママニとビアにモガたちの安全圏を作る。

 そのバーレンティンは地面に刺さった骨喰厳次郎を回収しに向かった。


 エヴァの姿も把握。

 紫魔力が作った円盤武器で、ハンカイの足を掴んで動きを止めていた、足下の地中から誕生していたマスクのような布防具を備えた怪人たちを輪切りにしていく。


 俺は、ユイとキサラとヘルメの戦いにも注意を向けつつ……。

 神剣サラテンで大眷属が召喚した肉腫怪物を屠る。


 眼球お化けも始末する。

 眼球の縁からプロミネンスを表現するような触手の爪剣群ごと、眼球を細切れにした。


 眼球お化けはアービーターとはまた違う怪物。

 三角形の魔法陣のようなモノの上に漂っている眼球お化けだった。


『――器よ。神剣サラテンの秘術は、こんなモノではないのだぞ』

『ほぅ』

『妾にキッスを連続でしてくれたら、特別に『御剣導技』の訓練をしてやろう。特別な(しとね)も用意し、妾を……むふふすれば『神仙燕書』や『神淵残巻』がなくとも〝天地の霊気〟を扱えるようになるかもしれぬ。ぐふふふ』


 少し、寒気がしたが、まぁ……強くなるなら、


『……了解した』


 と、サラテンを操作。


 長細い杖を持ったキュイズナー系の魔術師も居る。

 ママニのアシュラムで、その頭部が破裂。


 ユイは単独で建物が入り組む場所で戦っている。


 一方、相棒はまだ戦いに参加していない。

 俺の近くで待機。


 興奮したような鳴き声を上げている。


 気にせず――神剣サラテンを操作しながらモガとハンカイを守る。

 二つの蛸頭を持つキュイズナーをサラテンで斬った。


 そして、小さくなった大眷属が、周囲に、結界のような小さい魔法陣を出す。

 その魔法陣ごと、操作した神剣サラテンでぶった切る。


 次々に生まれ出る小さい螺旋した魔法陣。

 それら、魔法陣を正確に斬っていく。

 傷を負っていたハンカイとモガに《水癒(ウォーター・キュア)》を送る。


 皆をフォローしていった。


 後衛として魔法攻撃も撃つかと、思ったところで――。

 フーが土属性の魔法で、壁を作る。

 その壁の合間に肉腫怪物と単眼怪物を誘い込むようにママニとビアが挑発。


 血獣隊としての連係か。

 ネームスとモガの叫び声も聞こえた。

 サザーも声を出しているようだ。


 フーの土魔法で造り上げた、簡易迷宮の中へと怪物たちを誘導していく。


 サザーが高台で、ヘルメ立ちをして、怪物たちを誘う。


「ンンン、にゃお~ん」


 見ていたロロディーヌが反応していた。


 魑魅魍魎たちが狭い場所に押し寄せた。

 そこでスゥンさんが指環を翳す。

 その瞬間、レベッカがグーフォンの魔杖の力を発動。


 巨大な火柱をフーが簡易的に作った壁迷宮に誕生させた。

 空に図形でも描くように、次々と火柱を作るレベッカ。

 ムントミー装備に蒼炎を身に纏う姿のレベッカから少し畏怖を感じた。


 いつも、のほほんとしたレベッカだが……。

 やはり、光魔ルシヴァルの<筆頭従者長(選ばれし眷属)>の一人だ。


 炎の精霊に好まれているだけある。


 混乱した肉腫怪物と単眼怪物を屠る。

 混乱が効かない五つ目の肉塊怪物を狙うように火柱を誕生させた。

 小さくなった大眷属から、他の怪物たちを上手く分離させていく。


 火柱を使いつつフーの土壁も利用する。


 戦場の動線を考えているなら、優秀だ。

 やはり、魔法学院で成績優秀だったのも分かる。


 魔法使いとしての教えを実行か。

 そして、ヘルメが逃げている。

 かなりの規模の炎。


 肉腫怪物の大半を燃やしたレベッカは神剣サラテンを操る俺に向けてウィンク。


 目元に指を当て、可愛いポーズを繰り出してきた。

 プラチナブロンドの髪が揺れて、とても可愛い。


 そのレベッカはジャハールを生かすつもりなのか、


「サーニャ師範の教えは大事!」


 と大声を叫ぶと、正拳突きで、まだ残っていた肉腫怪物の胴体を破壊。

 レベッカはジャハールに蒼炎を纏うと、走る。


 小さくなった大眷属と間合いを詰めた。


 蒼炎ジャハールで、小さくなった大眷属の体を貫く。

 更に素早いレベッカは、体術の進化を感じさせる。

 足下から蒼炎の軌跡を生みつつの滑る機動で後退した。

 そして、フーの位置に後退しながら蒼炎槍を発動。


 大眷属も、迎撃の骨の牙を、その素早いレベッカに向かわせる。


 が、蒼炎槍に触れた、その骨の牙は爛れて溶けた。

 そのまま蒼炎槍は、大眷属の体に突き刺さる。


 トーリの氷礫も突き刺さった。

 エヴァの紫魔力が包む金属群も突き刺さる。


 金属が刺さり、蒼く燃えては、凍り付くをくり返す大眷属。

 攻撃を浴びるたびに大眷属は体が更に小さくなっていく。

 左右にあった角骨は巨大なままだ。バランスは悪いはず――。

 と、考えたところで燃えている大眷属は体勢を崩した。

 そこに大蝙蝠のキースが急降下――。

 大眷属は巨大な角骨が前がかりになった。

 キースは、口に咥えた魔刀を振り下ろす。魔刀が大眷属の角骨を捉えて真っ二つ。

 俺も神剣サラテンを操作。エヴァに群がる丸い触手肉団子を攻撃。

 ピラニアのような口を持つ、触手肉団子怪物を潰すように倒した。


『ん、シュウヤ、すき』


 と、エヴァは律儀に血文字でお礼を伝えてくる。可愛い。


 肉腫怪物と対決しているヴィーネの姿も確認。

 左手が握る古代邪竜剣ガドリセスに血を流す。

 背筋が凍るほどのルシヴァルの血魔力が覆う古代邪竜ガドリセスの剣身か。

 すると、ガドリセスの剣身に稲妻が走る。

 口から触手群を生やす五つ目の怪物たちを、その稲妻が宿る剣で、連続的に斬りつけ倒し駆け抜ける。そして、切っ先が伸びる邪竜剣――<刺突>系の剣技を披露。

 五つ目の怪物を貫いて倒した。

 

 ヴィーネは標的を異質な怪物に変える。その対峙した怪物は……。

 左端に蝦蟇のような頭部があるが、体が、黒き環(ザララープ)の形。

 環状の体という……環の中は胴と呼べるか不明の薄い膜が張っている。

 その薄い膜か、薄い腹を、潜ればワープでも可能なのか?

 その膜から水鉄砲のような飛び道具を撃っていた。

 ヴィーネは華麗なステップを実行し、水系の毒々しい液体弾を避けると、古代邪竜剣ガドリセスの柄を起点に爆発的な放電を放つ剣技を繰り出した、必殺技か。

 稲妻を周囲に散らせる凄まじい剣技でガマ蛙系の怪物を倒していた。

 ヴィーネはガドリセスを振るう。銀色の髪が輝く。

 赤鱗が目立つ鞘の隣に差す黒蛇はそのままだ。


 そのヴィーネはガドリセスを鞘に戻し、翡翠の蛇弓(バジュラ)に切り替える。

 サザーとフーとハンカイに言葉を放ったようだ。

 狙いはキースが切断した角骨の根元だろう。戦場を把握しているヴィーネは偉い。


 番えた瞬間に生み出される光線の矢。

 その光線の矢は、切断した角骨の根元に突き刺さり、爆発した。

 大眷属の左右から出ていた角の骨は完全に崩壊。

 ヴィーネの言葉を聞いていたハンカイも連動。

 ユイと離れて肉腫怪物を片付けていたハンカイ。大眷属に走っていく。

 フーが作った岩棚の上を走りつつ二振りの金剛樹の斧を振るう。

 殻の無いアンモナイト型の怪物が伸ばしていた触手ごと、その胴体を金剛樹で破壊。


 そして、高台から跳躍。

 小さくなったが、まだ動いて反撃している大眷属に向け、


「ぬぉぉぉ」


 と、吶喊。


 大眷属の体に肩を衝突させる。

 金剛樹の柄をぶち当て、肉を潰し、蹴っては、回転しながら頭突き。

 回っての、肘打ちから、流れるように、連続的な打撃を繰り出す。

 ハンカイは、大眷属の反撃を躱しながら、背中の鎧部位を、大眷属の体にぶち当てた。

 背中をも武器にするハンカイは前転し、踵落としを繰り出す。


 大眷属の骨肉を踵で踏みつけてから、跳躍。


「動きが鈍ったぞ! デカ物がぁぁぁぁ!」


 ハンカイは気合い声を上げて、海老反りの体勢に移行した。

 大上段に構えた、その二振りの金剛樹の斧を一気に振り下ろす。


 豪快な斧技の<鬼颪(おにおろし)>だろう。


 ボロボロになった大眷属の胴体を抉る。


 大ダメージを喰らった大眷属は、中央の骨が密集し金色の粘液を生み出す。

 金色の粘液は分厚くなって防御を強化。

 厚い部分を増やして、魔力を集結させる。


 同時に、コアらしき巨大な骨心臓が露出した。

 膜のようなモノは薄まっていた。あのコアの力を使い、回復か攻撃を繰り出す気か。


 そこに、モガ&ネームスの連係攻撃がコアに滑り込んだ。

 二人組の曲芸染みた武術に、反撃もできない大眷属は怯んだ。


 コアの膜は消える。ママニの狙い澄ましたアシュラムが放たれる。

 コアに円盤武器のアシュラムがクリーンヒット。

 アシュラムは突き刺さらず、硬質な音を立てて跳ね返っていた。

 更に<従者長>ビアのシャドウストライクの斬り技が、コアに決まる。


 刹那、コアらしき心臓部に罅が入った。

 シャドウストライクから出た茨が、その罅の中に侵入。

 大眷属はコアとまだ残っていた体から閃光を発して倒れ掛かる。

 が、背中の部位から下へと大量の骨が突き出た。

 己の体を支えるが、もう虫の息だろう。


 大眷属の姿は、最初とかなり違う。

 肉も骨も触手も少ないし、小さい。


 紫魔力を纏ったエヴァが金属足で滑るように進む――。

 俺はエヴァをフォローしようと――。

 エヴァに近寄る肉腫怪物を狙う、神剣サラテンを袈裟懸けに仕留める。続けて数匹の肉腫怪物の掃除を行った。

 エヴァは<刺突>を繰り出すように、ヌベファ金剛トンファーを大眷属に突き出す。

 ヌベファ金剛トンファーの握り手は黒色の布が巻き付いている。金属の留め金が輝いた。

 見た目は〝こはぜ〟のような刻印だ。そのヌベファ金剛トンファーから剣が出ると剣刃が大眷属のコアに突き刺さった。

 コアが破裂するように破壊される。

 大眷属の体を構成していた無数の肉腫と骨が周囲に散るように落ちていく。

 エヴァに降りかかったが、エヴァはヌベファ金剛トンファーを振るい肉腫と骨を切断していった。

 大眷属はまだ生きている?

 エヴァは骨の両足に融合していた金属を剥がすように魔導車椅子へと金属を戻す。

 魔導車椅子を生成し、その魔導車椅子に座るや否や、体から紫魔力を発しながら高々と浮上し魔導車椅子を急降下させる。

 その魔導車椅子で大眷属の角ごと、大眷属を見事押し潰して倒していた。魔導車椅子を覆っている紫色の魔力が、大眷属だった血肉などを跳ね返している。まだ他にも、肉腫怪物とキュイズナーにアドゥムブラリのような怪物は複数いるが……隠れボス的な存在に勝利したし、この戦いは大丈夫かな。


 神剣サラテンの操作をサラテンたちに任せた。 


 俺の思念から離れた神剣サラテンこと、()()(テン)は、肉腫怪物たちを追撃していく。

明日も更新予定です。

HJノベルス様からノベル版「槍使いと、黒猫。」1巻~20巻が発売中。

コミックファイア様からコミックス版「槍使いと、黒猫。」1巻ー3巻が発売中。

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