↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍使いと、黒猫。  作者: 健康


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

576/2340

五百七十五話 地底神ロルガとの激闘

 

 枝先からアラジンのように出た幻影。

 胡坐の姿勢で浮遊した奇怪な人。

 修行僧のようなイメージ。

 前と同じく半分しかない口が奇妙に動く。


『光神の導きを進む狂戦士よ……お前に俺のヴェクサードを託す』


 そう喋る奇怪な人の幻影の背後にも、また違う幻影がある。

 前と同じだ。

 すると、


『……そうだ。ヴェクサードと共に、地底神ロルガを屠るのだ。征け、神韻を刻む魔槍使い!』


 植物の悪魔のようなモノを宿した頭部の方が、そう俺を評するように喋った。


 ――王牌十字槍ヴェクサードの本当の宿主か?

 ――ヴェクサードと同一人物ではない?

 ――王牌十字槍ヴェクサードの能力か?


 ――共生した別の存在か?

 ――神韻を刻むと俺を評した言い方から推測すると、地底神キールーか?


 ――その眷属か?

 ――分からない。


 謎な方は人型を軸としている。


 左手に杭のようなモノが刺さり飛び出ていた。

 腐食したような右手のほうは、蚯蚓群とムカデ群の触手が重なって構成している。

 下半身は歪で、切断面のある脊髄の一部に植物の根が絡まっていた。


『あなたは、ヴェクサード? キストリンの友?』

『……そうだ』


 脳内にそう思考を受けた直後、魔素が近付く。


 手に刺さった枝は、王牌十字槍ヴェクサードの柄の内部に引っ込む。

 その王牌十字槍の枝からランプの精のように出ていたヴェクサードと謎の存在の幻影も消えた。


 近付いた魔素は地底神ロルガだ。

 近距離戦を挑むつもりらしい。


 ロルガの髪の毛のようなモノは、すべて闇色の蜂だった――。

 動きが速い。

 

 その地底神ロルガに相棒の触手群が襲い掛かる。


「――甘いわ! ばか獣めが! もう何度も見たぞ!」


 ロルガの双眸に赤黒い魔力が縁取る。

 虹彩が血走った。

 しかし、その顔は美形だ。

 ロルガは細長い首を動かす。

 襟がカーテン状に変化し、斜め後方へと突出。

 襟の内側に規則正しく並んだ魔印が闇色に輝きを発しながら、踊るように、ぐわらり、ひらりと、波打った。


 波打つ襟から伸びたカーテンが、ロロディーヌの触手から出た骨剣を弾く。


 ロルガは硬質な音を楽しむような表情を浮かべる。

 相棒の攻撃を防いだかに見えた。


 が、ロルガは引っ張られるように、急激に動きを止めた。


「――ぐぬ!?」


 驚いている地底神ロルガ。


「さっきよりも重いぞえ!」


 相棒の触手骨剣をよく見たら、いつもの杭のような形の中に、分厚い鉤爪状の骨剣が混じっていた。


 カーテンの防御膜を引っ掛けるためか。

 神獣ロロディーヌも考えている。


 しかし、相手は地底神ロルガ。

 相棒の鉤爪剣と、肉球団子やらが、混ざる触手骨剣の連撃に対応。


 舌打ちと同時に、闇の蜂を放つ。

 波打つカーテンも、器用に使い、相棒の触手骨剣を弾き往なした。


 そのタイミングで<鎖>を射出。

 梵字に煌めく<鎖>は魔印のような文字を刻むロルガが扱うカーテンから無数に分岐した魔布の切れ端と衝突。


 あっさりと弾かれた。

 反応が速い地底神ロルガだ。


 特殊な防具を武器として扱う。


 更に、頬から闇色の蜂の幼虫を生み出した。

 うげぇ、頬から幼虫とかグロすぎる。


 そんな面で俺を睨むなよ……怖い。

 怖いロルガが、


「……生意気だ」


 そう幼虫を食べるようにクチャクチャ音で、呟く。

 と、闇の炎が縁取る長髪を靡かせつつ前傾姿勢を取る。


 額の魔宝石を覗かせながら、再び、飛翔してきた。


 精神波も出しているのか、恐怖した。

 ロルガは、背中と一対の足から闇の蜂を爆発させた。

 その爆発させた闇の蜂を燃焼剤としたのか、爆発的な加速で近寄ってくる。


 ――<脳脊魔速(切り札)>を使うか?

 が、まだだ。

 迅速なロルガは細長い右手を前に――。

 爪を活かした貫手か。

 ロルガは突きを出す所作から腕を、更に前へと伸ばす。

 その右手の指から、闇の炎を体に纏う蜂を、ブツブツと音を鳴らしつつ放出――。

 刹那、蜂を召喚する指の爪たちが、更に延びて絡まりつつ長太いランスと化した。


 右手をランス化。

 俺が槍を扱うからか? 

 

 蜂の造形が加わったフランベルジュ型の大剣にも見える。


「ロロ、一旦、離れる」


 二対一の状況に――。

 と、気持ちを伝えた。


「ンン」


 喉声を発した相棒から跳躍。

 慣性で落下中に<導想魔手>を蹴る。


 俺は空中での姿勢を維持――。

 突進してくる地底神ロルガを迎え撃とうか。


 ロロディーヌは迂回。

 ロルガの側面に回り込む。


 そこから触手骨剣を繰り出した。

 触手から出た骨剣が、キラリと輝きを放ちながらロルガの首や胸に向かう。


 しかし、ロルガは額の魔宝石を赤黒く輝かせて対応。

 連動し、煌めく側面の防護服から闇の炎を纏う蜂たちが生まれ出る。


 闇の炎を纏う蜂たちは、ブブブブブブブブブと、奇妙な翅音を立てた

 体を犠牲にしながら相棒の触手骨剣を弾く。


 防御か、自動ではなく意識して蜂を動かしているなら器用だな。

 相棒のお陰で、地底神ロルガの突進速度は極端に落ちた。

 ――その隙を突く。

 ――前傾姿勢から突進。

 左手の握り手を意識。

 握る武器は、王牌十字槍ヴェクサードだ。

 ――腰を捻り、風槍流の基本の<刺突>を繰り出す。

 狙いは地底神ロルガの額。

 

 その魔宝石をえぐり出してやろうと、その額に、杭状の矛を突き出した。

 地底神ロルガは右手のランスで対応せず。

 代わりに、額の魔宝石を反応させた。


 魔宝石から赤黒い塊が出る。

 赤黒い塊は縦の列となって両手剣のような形に――。

 その赤黒い両手剣は、王牌十字槍ヴェクサードの穂先の杭の<刺突>と衝突――。

 俺の<刺突>は額から生えたようにも見える赤黒い両手剣で防がれた。


 巨大な角持ちってか?


 三倍速にはさせないよ!

 っと、即座に《連氷蛇矢《フリーズスネークアロー》》を無詠唱で繰り出す。

 続けて<光条の鎖槍《シャインチェーンランス》>を発動。


 その間に槍の退き際を意識――。

 左手の王牌十字槍ヴェクサードを手前に引く。


 《連氷蛇矢《フリーズスネークアロー》》は、ロルガの肩と腋に防護服の隙間から、わらわらと出た闇の蜂の群れに相殺された。


 一つの<光条の鎖槍《シャインチェーンランス》>は違う。

 闇の蜂を蒸発させながらロルガに直進した。


 だが、


「――ウヌらの相手がだれであるか、身の程をしれ!」


 と、右手のランスを振るうロルガ。

 周囲の闇の蜂を爆発させた。

 連係攻撃を繰り出していた相棒のすべての触手群を打ち払う。

 凄まじい衝撃波も生まれ出る。

 衝撃波も通じない<光条の鎖槍《シャインチェーンランス》>だったが、その光槍を、ロルガは巨大なランスで弾いた。


 俺にも迫った縦横の衝撃波。

 衝撃波は、受けず、躱し、避ける。


 相棒は大丈夫か?

 相棒もびっくりしたように触手を退くが、あの神獣の大きさだ。

 衝撃波を避けることができずにダメージを受けていたようだ。


 ロロディーヌは回転して退く。

 相棒の黒毛が散り、血が舞っていた。

 やはり、ロロは傷を!


 イラッとしたが、我慢だ。

 冷静に、邪神シテアトップの時も互いに傷は受けたからな……。


 ロルガは前進してきた。


 ――迎え撃つ。

 槍使いとしての気持ちを込めて風槍流『枝崩れ』で槍の持ち手を変える。

 <導想魔手>の足場はまだ蹴らない。

 左手を前に出しつつ右の半身ごと右足を退く。


 右手の王牌十字槍ヴェクサードを右腕と脇腹で挟むように持った。


 そう、風槍流の基本構えだ。

 左の指先をちょいちょいと手前に動かし、〝攻めてこいよ〟と誘う。

 地底神ロルガの双眸が赤黒く輝く。

 額の魔宝石が同じ色合いで煌めいて、点滅。

 また〝生意気だ〟と怒ったか?

 チリチリとした膨大な魔力の圧力を皮膚に受ける。


 ――まだだ、まだ待つ。

 わざわざ右手をランス化させて接近戦を挑むロルガだ。

 そのロルガは右手のランスを突き出す構えを取る。


 そのランスの形状が変化。

 闇の蜂の力が宿るように、柄に翅が生えた。

 そして、その右腕が本当に一つのランスと化すように先端が伸びた。


 俺は咄嗟に風槍流『枝崩れ』を実行。

 右手の王牌十字槍ヴェクサードを左手に移す。


 右手に魔槍杖バルドークを召喚。

 風槍流は止めて二槍流を実行。


「ウヌらぁぁぁ――」


 ロルガが叫ぶ。

 ランスの先端に魔槍杖の柄を当て受ける。

 衝突した魔槍杖の柄から火花が散った。

 散った火花が、闇の蜂の姿を模り消えていく。

 いや、消える前に魔槍杖バルドークが吸収。

 火花が柄に触れるよりも、先に、魔槍杖から出た髑髏と身の毛もよだつ魔力が、それら微かな魔力を宿す火花に喰らいつく。


 魔槍杖はカラカラと嗤うような金属音も鳴らす。

 柄が呼吸でもするように紅と紫の微かな光を放つ。

 まさに魔竜王然とした魔槍杖バルドークだ。


 その魔槍杖を握る右手の角度を変えた。

 当然、勢いのあるロルガのランスの穂先はズレる。


 ランスの矛は魔槍杖の柄を滑っていく。

 指がランスの矛で切られないように、柄の握りを調整。


 つばぜり合いに移行する瞬間、


「……旺然たる槍使いよ――」


 ロルガがそう告げるが暢気に会話はしない。

 そのロルガ目掛けて、左の十字架の槍を差し向けた。


 王牌十字槍ヴェクサードの矛の<刺突>――。

 ロルガの額にある魔宝石が輝く。

 王牌十字槍ヴェクサードの十字架の杭は地底神ロルガの額に刺さらず。


 魔宝石と兜から出た細かな紐の群れで、王牌十字槍ヴェクサードの矛の<刺突>を見事に防ぐ。


 兜を解くように紐状の能力は、ロルガの新しい前髪のように靡く。

 ロルガは、その防いだ王牌十字槍ヴェクサードを細い左手で握った。


 刹那、ロルガの腰の細い腕たちが、刃を形成――。

 その刃の群れを突出させてきた――。

 更に、王牌十字槍ヴェクサードを引っ張る。

 ロルガは王牌十字槍ヴェクサードを奪うつもりらしい。

 が、俺の血を吸っていた王牌十字槍ヴェクサードが、青白い光を放ち反応――。


 その王牌十字槍ヴェクサードから光魔ルシヴァルの血が噴出。

 血が降りかかったロルガの左腕は蒸発した。


 俺の下半身を襲おうとした複数の細い腕たちも血を浴びて一瞬で破裂。

 ロルガの腰元のスカートにも見えた細い腕の根元までが、一気に消失していく。


 浅黒いパンティが丸見えだ。


「――ぎゃぁぁぁ」


 闇色の蜂を噴出させて、悲鳴を上げるロルガ。

 が、仰け反ったのは、一瞬。

 すぐに体を側転させた。


 無事なランスと化していた右手を変形させる。

 零コンマ数秒で、元の右手に戻していた。


 魔槍杖バルドークでロルガのランスを受け流し、カウンターを狙う戦術だったが、甘かった――。

 しかし、ロルガが奪おうとした王牌十字槍ヴェクサードを手前に戻すことに成功。


「ぬぉぉぉ」


 ロルガは唸る。

 その額の魔法石が赤黒色で輝いた。

 赤黒い魔力から少し恐怖を感じる。


 俺の表情を見たロルガ。

 ニヤリとしてから右手の掌を翳す。

 一見は、枯れた枝のような細い右腕だが――

 

 萎れているような皮膚が目立つ掌には……。

 象形文字風の魔印が無数に刻まれている。


「<アレウルの雨>を喰らえ――」


 ――スキルか。

 魔印が急回転。

 回転機動の魔印の中から闇の礫が出現。


 闇色の礫を無数に飛ばしてくる。

 バーレンティンが見せていたようなショットガンか!

 そんなもんは喰らわない。

 足に展開していた――<血鎖の饗宴>を発動。

 必殺技の<血鎖の饗宴(血の鎖たち)>は、流星群のような勢いでロルガに向かう――。


 <血鎖の饗宴(血鎖の群れ)>と衝突した闇色の<アレウルの雨(礫の群れ)>。

 その礫の群れ(アレウルの雨)は、一瞬で、血鎖に喰われるように蒸発。


 <血鎖の饗宴>を地底神ロルガに向かわせる。


「ぬぁぁん!?」


 ロルガは一瞬、呆然となった。

 が、それはフェイクか。


 俄に細長い一対の足から魔力を噴出。

 ロルガは細身の体をくねらせながら、また、襟と頭部の装備を紐と布切れのようなモノに変化させた。

 それら紐と布状に変化させた装備類で、<血鎖の饗宴>の血の鎖群を払う。


 特殊な装備を扱うロルガ――。

 奇妙に首をぐるぐると回しに回してから、俺に視線を寄越す。


 と、にやりと嗤う。


 ――切りがない。

 あの襟が特徴的な防護服、名はしらねぇが、確実に神話(ミソロジー)級だろう。

 <血鎖の饗宴>を解除。


「――にゃごぁぁ」


 相棒の螺旋する火炎柱が向かう。

 これもロルガは背中の防護服を扇状に変形させて、相棒の炎を往なした。


 しかし、地底神ロルガは、


「ぐぬぅぅ……すべては防げぬ……」


 と、相棒の炎を受け流しているように見えてダメージが蓄積しているようだ。


 苦しそうなロルガ。

 さすがは神獣ロロディーヌ。


 ロルガは俺に頭部を向けたまま、一歩、二歩、宙空だが蹌踉めきながら退いた。


 直後、両腕を交差。

 そして、襟のカーテン状の防具が、またもや細い刃へと変形を遂げる。

 その刃が、下の仲間の眷属のはずの怪物たちを仕留めながら弧を描く軌道で、持ち上がり、炎を吐くロロディーヌの下っ腹に向かう。


 相棒は、炎を吐くのを止めた。

 硬質化させた尻尾と胸から出した触手で、その下から来たロルガの襟から伸びている不思議な刃を防ぐ。


「にゃぉおぉぉ」


 悔し気なロロディーヌは退きながら距離を取った。


「チッ、逃げ足の速い……」


 そう地底神ロルガは喋りながら、俺を見る。

 神らしく、左腕はもう再生していた。


 ロルガは、その真新しい黒光りする腕越しに俺を睨む。

 その双眸が煌めいた。


「槍使いと、神獣よ……妾をここまで追い詰めるとは褒めてやろう……」


 その直後、ロルガは全身から闇炎を纏う蜂を生み出していく。

 それも、今までと違う――。


 もの凄い量の魔力を含んだ闇の炎を纏った蜂たちだ。


 零コンマ数秒で、地底神ロルガは、自身と俺を囲う巨大な球体を生成。

 闇炎を纏う蜂に囲まれる状況と化した……。


 反応ができないどころか、今のは何だよ……。

 時空属性とかというレベルじゃねぇ、神業、精神を圧迫されるような心が万力で押されている感覚もある……こりゃ、ヤヴァイ。

 視界は闇……攻撃ではないようだが……。

 邪霊槍イグルード戦を超えている、いつ何時攻撃が来るか……背筋が凍る、読めない。


 思わず、ツバを飲み込んだ。

 俺の<血鎖の饗宴>を見ているからか、地底神ロルガは用心した戦術を繰り出したようだ。


 もしかしたら奥の手か?


 ……まぁ、闇なら闇だ。

 <始まりの夕闇(ビギニング・ダスク)>を発動。


「……膨大な魔力を含む闇世界か……そして、光も扱う。まさに光魔よの……」


 真っ暗闇の世界の至る所から声が響く。

 反響する地底神ロルガの声。

 魔素もそこら中にあるから――。

 ロルガの位置の把握ができない。

 掌握察が機能しない。鐘が少し響く。

 いつの間に、仕込んでいたのか、幻惑攻撃もあるのか?


「だが、ここは地底神と呼ばれている妾の神域ぞ? 如何に強力な闇世界とて、神域には神域の深淵の闇世界があると知れ――」


 <始まりの夕闇(ビギニング・ダスク)>が崩れる硝子が破壊されたような音が響く。

 ――マジか。アドホックとゼレナードが苦労していた俺の<始まりの夕闇(ビギニング・ダスク)>をあっさり壊した。


 その瞬間――うげぇ。

 いてぇぇぇぇぇ――。

 気付いたら左腕が切断されていた。

 他にも、体に傷という傷を喰らう。


 無差別な攻撃だから読めない……。

 闇の蜂による攻撃か?

 <夕闇の杭《ダスク・オブ・ランサー》>と<光条の鎖槍《シャインチェーンランス》>で対抗するが、光槍が通った部分だけ、突き抜け、外の赤黒い空間が覗くだけ。


「ぐえぇ……」


 ロルガの痛みの声が響く。

 ダメージはあるようだ。

 しかし、ロルガが構築した闇世界の一部を崩すのみで、意味がない。


 その間にも細かな攻撃を浴び続けた。

 右半身はボロボロだ。


 竜頭金属甲(ハルホンク)と首防具のルシヴァル宗主(霊血装・)専用吸血鬼武装(ルシヴァル)も貫く攻撃。

 首も穿たれた。

 頭部にも、風阿ア名あぁ――。


 ぐぇ、クラクラする。

 痛みで混乱した……。


 傷は即座に回復し再生していくからこその、痛みの連鎖がヤヴァイ。

 しかし、ハルホンクの防護服が、こうもあっさりと――。


「ぬははははは」


 ……ロルガの声が響く。

 痛みが激しい。


 俺は自分の血塗れな左腕と、その左手が握っていた王牌十字槍ヴェクサードを見ながら逃げるように飛翔を続ける。

 魔槍杖を握る右手は再生しているから、闇雲に魔槍杖を振るうが……。


 紅色の嵐雲の矛に触れた闇の蜂が燃えて、軌跡を生むのみ、ロルガの位置は掴めない。


 全身に血鎖鎧を纏うかと、考えた。

 刹那――。


 飛んでいた俺の左腕が閃光を発した。

 え? 閃光? 

 そのエリアの闇の空間が歪に崩れる。

 だが、光神の類いじゃない。


 しかも動いて、王牌十字槍ヴェクサードを俺に向けて投げてくる。

 更に、俺の左腕は、俺の血肉を喰らうように俺の血を吸収した。


 その左手の掌の魔印から幻影のような泡のようなモノが急拡大。

 なんだ、魔力の泡?

 泡から蛸の足のようなモノが無数に出現した。


『沙よ、我が主は、左手だけなのか?』


 蛸の足が不気味な低音の声で喋っている。

 ロルガよりも恐怖を感じたが、まさか……。


 あれが、シュレゴス・ロードの一部か?


「なんだ? なんだ?」


 姿を見せない地底神ロルガも驚いているようだ。

 俺に繰り出していた無差別な攻撃が止む。 

 魔槍杖を右腕にイモリザの第三の腕へと移し替えつつ――。

 飛来してきた王牌十字槍ヴェクサードを右手で掴む。


 切断された左腕は、まだ再生していない。


 あの浮いて閃光を発し続けている血塗れの俺の左腕と関係があるようだ。

 邪神シテアトップと争った時と同様に、血鎖を左腕に刺せば……操作は可能だと思うが、今は浮いた左腕の操作はできない。


 すると、王牌十字槍ヴェクサードを寄越してきた左手は向きを変えた。

 掌を翳す。

 運命線のような傷を晒して、その傷が開いた。


 仏陀の瞼がゆっくりと開いていく印象だ。


 <サラテンの秘術>。

 そう、やはり掌の傷から現れたのは、神々しい光を宿す神剣サラテンだった。


 子分のイターシャも柄にくっ付いている。

 左腕の魔印から出た蛸の魔力と繋がっていた。


 そのサラテンは、


『ヌハハハハハハ――妾、妾とうっさいんじゃぁぁぁぁぁぁぁぁ』


 と、叫びつつ闇世界を駆け抜けていく。

 瞬く間に、地底神ロルガの闇世界を壊した。


「うげぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ」


 地底神ロルガの悲鳴があちらこちらから響いた。

 刹那、姿を晒す地底神ロルガの胴体に風穴が空く。

 突き抜けた神剣サラテンは、ターン機動から地底神ロルガの横っ腹の防護服を喰らいつく。続けざまに、三重に分裂したサラテンは、袈裟斬りから逆袈裟斬りを実行。

 ロルガの体を防護服ごと細切れにしていった。


 が、ロルガは神としての力を見せるように――。

 細切れとなった体から煌めく生命感溢れる幼虫を出した。

 その幼虫を接着剤とするように体を繋ぎ合わせた。

 一瞬で、回復を果たす。

 が、動きは鈍くなった。

 俺の腕と体を貫いた、あの闇世界の構築は、相当な力を消費するようだ。


 神剣サラテンの攻撃は止まらない。

 動きの鈍った地底神ロルガの首を刎ねた。


 が、「ぐぉぉぉ、妾の<死蔵>が追いつかぬだと――」と


 頭部だけとなった地底神ロルガは、器用に喋る。

 そして、闇の蜂を切断された首から大量に出して逃げた。

 だが、飛翔速度は異常に遅い。

 出した闇の蜂は、ぴよぴよと、痙攣しつつ萎れていく。

 頭部も徐々に溶け始めていた。


「ヌゴォォォ……妾……は……」


 地底神ロルガは、最後の魔力を出しつつも、急激に腐敗が進む。


 その頭部にロロディーヌが、触手骨剣を突き刺した。

 しまいには、叩いて、吹き飛ばし、また違う触手骨剣で叩いて遊びだした。


 ロルガから傷を受けた相棒だ。

 暫くは、アイスホッケー遊びをよしとしよう。

 神剣サラテンは追撃せずに、華麗にターン。

 そして、サラテンを掌から出した左腕も、浮遊しながら戻ってくる。


 俺は左肩の断面から血を放出。宙空の位置で、その左腕を出迎えた。

 その左腕の断面と、肩から出た血を通わせた。

 瞬く間に、左手の感覚を得る。

 エヴァも、遠隔で金属を操作する時は……。

 こんな感じなんだろうか、と――。

 その左腕をドローンでも念じながら操作する。

 一瞬、その左手で自分の鼻の孔を刺すとか、アホなことを想像したが、自重した。

 素早く左肩に戻した。

 傷の断面にぴったりと、左腕をくっつけた。


 左の掌を、開き、閉じて、握る。拳を作った。

 感触は普通。魔力が溢れ出た。

 第三の腕のイモリザが文句を言うように蠢く。が、無視だ。

 同時に、感覚を戻した掌の<シュレゴス・ロードの魔印>から……。

 小さい蛸の足と似た触手群の幻影が出た。

 幻影というか、魔力で構成した蛸のような触手の群れか……。


 一見すると<霊呪網鎖>にも似ている。

 飛行してきた神剣サラテンは近くで止まった。


『――器よ、妾の本当の姿を見たいかえ?』

『見たい』

『ふふ』


 その神剣サラテンは、また眩い光を発した。

 サラテンは三つに分裂。


 神々しい光となって俺を包む。


「沙(サ)――」


 と、声を出して綺麗な女性が左手を掴む。

 第三の腕が持っていた魔槍杖と王牌十字槍ヴェクサードを交換して魔槍杖を消去。

 左手に形の変わった神剣が出現。

 自然と柄を握っていた。


 俺の掌に合うのか、魔印と繋がっているような特異なフィット感がある。


「羅(ラ)――」


 と、声を出した、これまた綺麗な女性が、俺を抱く。

 ボロボロだったハルホンク、意識すれば元通りだが……。


 そして、そのボロボロな部位を補完するように半透明な帷子系の和風防具を俺は纏った。

 羅さんの能力か。


「貂(テン)――」


 と、イターシャが首に巻き付いた……。

 これまた綺麗な衣が似合う尻尾を無数に生やす美女が抱きついてくる。


「貴女たちは……神剣サラテンなんですか?」

「そうじゃ、妾は沙である! 器よ、妾だけを見よ」

「ふん、沙は黙って、わたしは羅」

「あたしは貂よ。器様、あたしを使役してね♪」


 貂か。

 人族だが、尻尾だけ狐さん的な傾国の美女だ。


 長細い尻尾たちが、俺を包む。

 幾つ尻尾があるんだ……。

 とりあえず、サラテンの主格だったと思う沙に、


「この剣は、これも神剣サラテンですか?」


 見た目が長く少し幅がある。

 沿ったブロードソード系か。

 渋く洗練された剣。


「器よ。サラテンで構わぬ。いつもの調子で喋ってくれないと、困るのだが……」


 そう語る沙も仙女のような姿で、美人すぎる。


「すまんな、見た目が変わったからもある。気を付ける」

「よし、器よ、苦戦していたようだが、ここはどこぞ?」


 沙は下の戦場を見ながら語る。

 眷属たちと仲間たちが怪物たちと戦い勝利を収めつつあるが、ロルガがまだ生きているから、抵抗は続けていた。

 地底神ロルガが、生きても死んでも関係ないかもだが。


「地底世界の独立都市フェーンの中心だ。が、まだ仕事は終わってない、この魔印に関してと、お前たちの説明は後で聞こう」


 俺は王牌十字槍ヴェクサードを握りながら、沙、羅、貂たちを置いて、相棒が宙空アイスホッケー、もとい、ロルガの頭をお手玉している場所に向かう――。


「相棒、それを寄越せ――」

「にゃおぉぉ――」


 尻尾で叩かれた地底神ロルガの頭部は飛翔してくる。

 それを、見据えながら……。

 王牌十字槍ヴェクサードに魔力を込める。

 羅の半透明な和風防護服の効果で速度が上がったか?

 そのまま腰を落とし、左手を引く。

 右手に移した神剣サラテンの刃を王牌十字槍ヴェクサードに沿わせる。

 王牌十字槍ヴェクサードから枝と芽が生えた。

 そして、ゴルディーバの里で最初に、アキレス師匠から槍について習ったことを思い出す。


『突きには〝捻り〟が大事なのだ。槍系統の基本だな』


 そう、風槍流の構えからの基本の捻りだ。

 迫る地底神ロルガの頭部。


 まだ微かに生きているようだ。

 俺は睨みを強めて「アディオスだ、ロルガ!」と叫びながら体幹を軸に腰を捻る――。

 ――王牌十字槍ヴェクサードを前に運ぶ。

 片腕が一つの槍と化す。

 一の槍の<刺突>を繰り出した――。

 地底神ロルガの口内に王牌十字槍ヴェクサードの杭が侵入――。


「ひぎゃァ」


 その、すだく悲鳴を穿つ!

 王牌十字槍ヴェクサードはロルガの喉頭蓋を抜け頭蓋骨を突き破る。


 まさに、<刺突>に始まり<刺突>で終わる、だ。


 微かな魔力は王牌十字槍ヴェクサードから出た植物の枝たちが吸い取った。

 王牌十字槍ヴェクサードの杭から下は……。

 茨染みた植物の枝と硬い骨が無数に絡まった天然釘バット。

 それら釘バットの枝の群に魔力を吸われたロルガの頭部は一気に萎れた。


 すると、あの胡坐をかいて浮かぶ怪人の幻影が現れる。

 何処となく艶がいい。


『善くぞ、ロルガを討ってくれた……我の思いは成就され足り、残りの狂戦士の装備も汝らならば……』


 そう語ると艶のある怪人は消えた。

 ロルガの崩れた顔の一部から闇の蜂と幼虫が生まれていたが、ドロリと溶ける。


 直後、ロルガの額の魔宝石が溢れ落ちた。 


「にゃぉぉぉ」


 外から見ていた相棒が、落ちた魔宝石をゲット。

 刹那、魂の黄金道が、真上にロロディーヌを追うように伸びた。

 魔宝石と繋がった。

 周囲の赤黒い太陽が残した光は、瞬く間に、セピア色に変化。

 色彩を塗り替えるように、魔宝石から眩い光が溢れ出た。

 更に、魔宝石を起点とする眩い光は、オーロラのような形で、視覚化。

 そのオーロラの中に、エルフたちの姿が映る。

 あ、ラシュさんと、キッシュの家族たちもいる。


 皆、笑顔だ……。


 そして、魔宝石から生まれていく光は強く明るく眩しい……。

 やはり蜂式ノ具の聖域なんだろうか?


 ……地下都市に似合わない光だ。


 そして、下の戦場の時間が止まったように静寂が広がった。

HJノベルス様から書籍版「槍使いと、黒猫。」1~10巻まで発売中。

最新刊11巻が、2020年6月22日に発売。

コミックファイア様から漫画版「槍使いと、黒猫。」1巻発売中。

最新刊2巻が、2020年6月27日に発売。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] >神韻を刻む 細かいことで恐縮です。これは神印とは別の表現でしょうか。 胸の光の十字のことかと思いましたのでお問い合わせいたします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。