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槍使いと、黒猫。  作者: 健康


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2211/2214

二千二百十話 大平原コバトトアルの戦場に帰還

 傷場の中心の色合いが白銀と暗紫に変化。

 フロルセイル地方の傷場に特有の相転移現象だろうか。


 と考えながらキュベラスを促してその渦中へと足を踏み入れた。

 

 魔界セブドラの【デアンホザーの地】に戻った。直ぐに、デアンホザーの地に満ちる濃厚な魔素が肌を撫でる。

 肌を粟立たせるのは暴力的なまでに濃密な魔素の圧力――。

 全身の細胞、筋肉、丹田などが変化すると言うより、受け入れていく感覚。

 セブドラの物理法則を受け入れるように細胞が切り替わった感覚と言えばいいか、神格を失ったから得られる感覚でもあるんだろうな。

 神格を得て大規模に強化される、それは普遍的なこと。しかし、逆に、失うことで、内生的な内生変数が洗練されると言うか、細胞レベルの何かが起きているのは確実だろうな。色々な<魔闘術>系統を得られる切っ掛けとなっていると分かる。これも一種の修業か、力を得て失う、また力を得る……こりゃ、深すぎるぞ、武の頂は……。

 と、己の両腕を見ていると、前方にいる魔皇メイジナ様が、


「早いな! では、すぐに戦場に行くのだな」


 と聞いてきた。頷き、その魔皇メイジナ様、神魔の女神バルドーク、ルヴァロス、レガランターラを見ながら、


「その予定だ」


 レガランターラが、


「これほどの強者たちが揃って現れると壮観です」

「ふむ、南の大平原コバトトアルの戦場に必要な人材は、それでも足りんぐらいだろう」


 魔皇メイジナ様の言葉に、神魔の女神バルドークが、


「主よ、セラからの手土産がそれほど上等なら文句は言わん。だがな、南東のドミエル領域が消滅したせいで、あの一帯は今や血を流し合う巨大な坩堝だ。魔蛾王ゼバルや魔公爵ゼン、更には暴虐の王ボシアドの狂戦士どもから、王魔デンレガ、闇神アスタロト、悪神デサロビアの屍兵に至るまで、手負いの獣のように狂ってこちらの領域へなだれ込んできている。群れるモンスターどもの数も尋常ではないぞ」

「分かっている。厖婦闇眼ドミエルは倒れたからな、ドミエルが支配していた領地は荒れるだろう。だが、こちらに流れて来る勢力や、侵略者への対処は可能だろう?」

「ふっ、心配するな。この八尖魔迅両刃槍で、領域を侵す不届き者はことごとく両断して塵にしている」


 バルドークが不敵に笑うと同時に、細い右腕にパッと螺旋状の蒼白い魔力が走り、それがバチバチと爆ぜながら神槍『八尖魔迅両刃槍』が姿を現した。


 穂先から放たれる圧倒的な神威の残響。

 その武威に呼応するように、背後に控える八槍卿のシュリ師匠やイルヴェーヌ師匠、そしてハンカイ、カリィ、ママニ、バフハールたちが、それぞれの得物の重みを感じながら満足げに深く頷いた。


 強者たちが放つ闘氣が互いに干渉し、デアンホザーの空間が静かに軋む。


 すると、ハンカイが、


「ふむ。ルグナドの類縁地、マセグドの大平原の北東、光魔ルシヴァルの北方~東~南にかけて点々と戦ったが、たしかに一騎当千のような能力を持つ個はもっと多いほうが良いだろうな」

「それはそうだな。だからこそ、お前のように地を這ってでも敵を叩き潰すハンカイのような漢が、この混沌とした魔界には必要なのさ」


 俺の言葉に、ハンカイは不敵な笑みを浮かべ、愛用する金剛樹の斧を軽々と肩に担ぎ上げた。その巨躯から放たれる大地の如き重厚な魔力が、周囲の魔素を優しく弾く。


「………おう! 主がそう言ってくれるなら、俺のこの斧、骨の髄まで使い潰して貢献してやるさ!」


 クレイン、カリィ、ママニ、フーも頷いている。

 八槍卿の師匠たちとバフハールとシャイナスは静かに見守っていた。

 ハンカイは、


「バルドークの女神とメイジナよ、俺がいた北方戦線は順調なんだな?」


 魔皇メイジナは、


「戦況は我らに味方している。吸血神ルグナド、恐王ノクター、そして悪夢の女神ヴァーミナの同盟軍が、王魔デンレガや魔蛾王ゼバルの領域を次々に喰い破り、その支配権を剥ぎ取っている最中だ。現在も、北から東、そして南東にかけて、アチ率いる黒狼馬の機動力を活かした奮闘により、我が光魔ルシヴァルの版図は急速に拡大を続けている」

「ふむ」

「その影響もあり、この【デアンホザーの地】の傷場の守りは、安泰。しかし、先程も言ったように厖婦闇眼ドミエルが倒れた影響で、東の魔蛾王ゼバルと、ここから南東のバーヴァイ地方、その東~南の国境を巡る争いが、激しくなってきたところだった」


 神魔の女神バルドークがそう語った。

 ルヴァロスとレガランターラも頷く。

 皆に、


「今、俺たちが最優先すべきは、ここから南。暗剣の風スラウテルの傷場を中心とした、大平原コバトトアルの大戦区だ。その北西地方を完全に死守し、我が陣営の不壊の楔とする。そして次なる狙いは、ここから少し東に外れたルグファントの森の奥――魔城ルグファントの奪還だ。あの城を我らの手に取り戻す」

「はい、魔界の神々と諸侯だけでも、八つ以上の勢力で争い合っている状況ですから、主たちの健闘を祈りますよ」


 魔皇メイジナの言葉に頷いた。

 シュリ師匠が赤紫の髪を靡かせながら前に出ると、メイジナたちに軽く片手を上げた。


「魔皇メイジナに神魔の女神さんと、レガランターラちゃんと十二樹海使い君、あなたたちに、後方の守りは任せていいのよね?」

「「無論だ」」

「「はい!」」

「うん、では、私たちは前線で一暴れさせてもらう」

「ふぉふぉ、手っ取り早くて良いわい。記憶で視たあの闇神の陣営やら、魔城ルグファントに巣食う輩やら、獲物には事欠かんようじゃからの」


 飛怪槍流グラド師匠が髭を撫でながら笑い、獄魔槍流のグルド師匠や悪愚のトースン師匠たちも、すでに各々の得物に手をやりながら臨戦態勢の空氣を纏っている。彼らにとって、ここは「久々の魔界」というよりは「大連盟の次なる仕事場」に過ぎない。その頼もしい実戦モードに、自然と口角が上がった。


 挨拶もそこそこに、人差し指から極細の<血魔力>を滲ませ、宙へ滑らせるようにして深紅の血文字を走らせた。


『エヴァ、キサラ、レン。今セラから戻った。八槍卿の師匠たちに、ハンカイやバフハール、シャイナス、ママニ、クレイン、カリィたちも一緒だ。そっちの状況はどうだ?』


 血の文字が空間に溶けて数秒後、網膜の端に紫がかった銀色の血文字が浮かび上がった。


『ん、シュウヤ、おかえり。先生も来たのは嬉しい! こっちは砂城タータイムと魔導要塞陣地の防衛線を維持してるけど、闇神リヴォグラフの配下の残党と、十層地獄の王トトグディウスの別働隊がまた活発にちょっかいを出してきている。後、ここから東のほうの戦場の空に、悪神デサロビアの巨大な眼球お化け軍団が増えてきて、眼球の瞳から遠距離攻撃が地上に降り注いでいた。その攻撃を喰らったのは四眼六腕の魔族集団たちで、一氣に数を減らしていくのを遠くから見ていて怖かった。後たくさんの戦いがあって、語るのが難しい』


 そりゃそうだよな。あの戦いという戦いの連鎖が続く場所だ。

 続いて、キサラからの冷静な報告が連なる。


『シュウヤ様、お疲れ様です。敵は魔導要塞陣地近くには踏み込んで来ることは少ないです。魔導要塞陣地の東、東南、南、西南にかけてのエリア内の地面か隆起した魔皇碑石の幾つかを奪取、確保するための陣形を再構築、その陣形を破壊しようと攻撃する諸勢力が多い状況です。師匠方が合流されたのなら、ここから一氣に押し込む好機にはなるはず』


 続いてレンが、


『ここから東南、ライムランの方角にて、黄色と蒼色と漆黒の魔力を纏う狂気の王シャキダオスの軍勢が、闇神リヴォグラフ側の魔街異獣ゲルマドーを要した遊撃部隊に攻撃を仕掛けているのが一度見えました』


 レンの血文字に、ミトリ・ミトンが表情を暗くした。


「……状況は変わらず、か」


 血文字を読み終え、背後の師匠たちとキュベラスを振り返った。


「皆、休む間もなくて悪いが、前線の砂城タータイムでは敵がまた活発に動いているらしい。このまま一氣に飛ぶぞ」

「クハハ! 休む必要などあるものか。さっさとその砂城とやらに案内しろ、シュウヤ!」

「準備は万全だ。弟子、妙神槍流の無覇と夢槍は敵に飢えている」

「ふっ、断罪槍もだ。血を啜りたがっています……」


 妙神槍流のソー師匠と、断罪のイルヴェーヌ師匠が即座に応じる。

 断罪槍の吸血神ルグナド様の印は健在。


「メイジナ、バルドーク。ここは引き続き頼む」

「承知した。背後は我らに任せ、存分に光魔の武威を示してこい」


 ルヴァロスとレガランターラも、


「何かあれば、援軍に向かいますので」

「師匠、何かがあればすぐに、眷属たちに血文字で連絡をしてください。そこから知らせが来れば、直ぐに飛んで行きます」

「おう。頼む」

 

 すると、西から見知った魔素を感知した。

 皆も西の魔夜を見ると、レガナと魔界騎士ハープネス・ウィドウとハドベルト、銀灰虎(メト)、大魔獣ハウレッツ、大きい黄黒虎(アーレイ)白黒虎(ヒュレミ)も一緒に飛んでいた。


 銀白狼(シルバ)や法魔ルピナスはマセグドの大平原側に残ったか。


 先頭の大きいドラゴンのハドベルドは、


「ガォォォォ~」


 と、大きい鳴き声を響かせつつ砦の大きい壁の天辺に四肢を突いて、着地した。巨躯のドラゴン、ハドベルトの背から軽やかに飛び降りてきたのは、魔界騎士ハープネス・ウィドウだった。


 彼は不敵な笑みを浮かべ、甲冑を軋ませて俺の前に片膝をつく。


「よう、主! 南の大戦区でルシヴァルの旗が嵐を呼んでいるって噂は、この耳にも届いているぜ。大人しく留守番なんて性に合わねぇ。俺もその戦に、連れて行ってもらうぜ。……よろしいか、我が宗主!」

「ガォォ」

「おう、こちらこそ頼む」

「あぁ、銀白狼(シルバ)たちは、マセグドの大平原の防衛の要として残っている」

「了解した」

 

 レガナも傍に来て、


「シュウヤ! 私も参加するぞ!」

「おう、危険度は高いが、まぁ、レガナはパディラ騎士ガトランスだ。大丈夫か」

「ふふ、心配せずとも、ルグナドの類縁地とマセグドの大平原の戦いでは、それなり貢献したつもりだ。大丈夫」


 頷いた。レガナは対宇宙装備用ブリーザーを口元に展開した。

 魔剣サビュラに魔力を注ぎ、赤い魔刃をブゥゥゥンと伸ばした。


 そこに銀灰虎(メト)が着地。

 尻尾をピンと立てている相棒が「ンンン」と喉声を発し、黒豹の体を大きくさせながら、その銀灰虎(メト)に近付く。


 黒豹(ロロ)銀灰虎(メト)は互いに「にゃおぉ~」と低く、しかし甘やかな声を響かせながら歩み寄る。巨大な魔獣二頭が、お互いの鼻先をそっと合わせる「鼻キス」を交わした。

 

 銀灰虎(メト)は「ンンン」と喉声を響かせつつ、相棒の頭部と、鼻先の匂いを嗅ぎながら体を猫に変化させる。


 黒豹(ロロ)も一瞬で黒猫に戻した。


「にゃ~」

「にゃァ」


 二匹は鳴き合うと、また、鼻を突き出し、鼻キスをしていく。

 鼻をフガフガ動かし、一生懸命に匂いを嗅いでいる。

 互いのフェロモンから、健康チェックだな。

 そして、いつものように、「ンンン」と喉声を響かせ、何かを喋りつつ、お尻の匂いを嗅ぎ合う。



 互いのフェロモンを確かめ合うように、フガフガと鼻を鳴らして首元やお尻の匂いを嗅ぎ合っている。それは人族の言葉に翻訳するなら、


『ここ。くちゃい~、けど、健康とわかるにゃよ~』

『くちゃぁ~、癖になるにゃ、だけども、お腹の調子に、感情もわかるにゃおぉ~』


 といった、野生の可愛さと絆に満ちた対話を行っているに違いない。


 二頭は何度も「ンンン」と喉声を響かせては、頭部を擦り付け合って、可愛い仲良し猫ちゃんモードとなったように体を寄せつつ、こちらに頭部を向けると、長い尻尾を宙でふんわりと絡ませて、美しいハートの輪郭を描き出しながら歩いてくる。


 素直に可愛い。

 

 その二匹の近くに、黄黒猫(アーレイ)白黒猫(ヒュレミ)と、子鹿(ハウレッツ)も近付いて、鼻キスの挨拶していく。


 相棒軍団の久しぶりの集合だな。

 その皆は挨拶を終えると、俺の足下に近付いて、


「ンン、にゃぁ~」

「グモゥ~」

「ニャォ」

「にゃァ」

「ニャァ」


 鳴くと、俺の足に頭部をぶつけてくる。

 続けて、ハンカイたちの足に頭部をぶつけては、


「ぬぉ、ロロすけ! 俺の足の時だけ噛むのはやめろ!」

「ンンン、にゃぉ~」


 黒猫(ロロ)の尻尾を掴むハンカイと、そのハンカイに猫パンチを繰り出す黒猫(ロロ)が面白い。


 銀灰猫(メト)黄黒猫(アーレイ)白黒猫(ヒュレミ)は、ママニたちにも挨拶をするように頭部をぶつけていく。

 そして、俺の右足と左足に、また頭部をぶつけてくる。

 と、銀灰猫(メト)が肩に乗ってきた。

 頬をペロペロと舐められた。黄黒猫(アーレイ)白黒猫(ヒュレミ)も肩と背に乗ってきたから、姿勢を斜めすると、三匹に後頭部、耳と頬を舐められまくる。くすぐったいが、ざらざらとした感触が少し氣持ちいい。


 そんな状態の俺の右手をハウレッツが舐めてくれた。

 懐いていたミスティはここにはいないが、その分、マセグドの大平原でがんばったであろうとことを考え、頭部を撫でていく。

 そして、


「はは、皆、久しぶりだな。銀白狼(シルバ)と法魔ルピナスは留守番か」

「ンン、にゃ~」

「にゃァ」

「ニャァ」

「ニャォ」


「メトたち、俺たちは戦場に向かうんだが、いいんだな?」

「「にゃごぉ~」」

「「ンンン」」


 銀灰猫(メト)は、一瞬で、大きい銀灰虎に姿を戻す。

 黄黒猫(アーレイ)も大きい黒黄虎に変化。

 白黒猫(ヒュレミ)も、大きい白黒虎に変化する。

 三匹は、大きい黒虎に変化している相棒の背後に並んだ。


「では、皆で、戦場の砂城タータイムに移動だ」

「「「はい!」」」

「「おう」」


 皆の声を聞きながら、キュベラスに目配せをした。


「キュベラス、砂城タータイムへ」

「はい、シュウヤ様――」


 キュベラスがスッと前に出ると、指先から紫を帯びた<血魔力>を放出し、空間を歪めて<異界の門>を生成する。蔦と樹が絡み合う堅牢な石門の向こう側には、すでに戦火の余熱が漂う魔導要塞陣地の光景が透けて見えていた。


「行くぞ!」


 相棒の黒虎(ロロ)が「にゃごぉぉ~」と咆哮を上げ、先陣を切って門へと飛び込む。


 ヴィーネ、ミトン、そして八槍卿の師匠たちがそれに続き、魔界騎士ハープネス・ウィドウたちも続く。

 左手に神槍ガンジスを召喚し、<握吸>を実行しながら柄を握り直して門を潜った。


 視界が切り替わった先は、砂城タータイムの白亜の城壁の上。

 目の前には、魔導車椅子に座りながら白皇鋼(ホワイトタングーン)の螺旋を操るエヴァと、白銀の翼のような<血魔力>を背から放っているキサラと対の存在にも見えるほどのフィナプルス。そして魔斧槍を肩に担ぎ、煙管から紫煙をくゆらせるレンの姿があった。


「シュウヤ様!」

「ん、シュウヤ。師匠たちと先生も! 本当に来てくれた」


 エヴァが紫の瞳を輝かせ、レンも口元に笑みを浮かべて一礼する。


「エヴァッ子が、神様だよ! ふふふ、はは」


 クレインが少しエヴァの様子を見てツボったようで腹を抱えて笑っていた。

 エヴァは頭部に疑問符を生むように、少し傾げながら、顎先に人差し指を当て、俺を見る。


 頷いて、


「エヴァに威厳さが増して、嬉しくて仕方がないんだろう」

「ん!」

 

 エヴァの少し恥ずかしさを覚えたようなそうでもないような笑顔が可愛い。


 と、和んでいる間にも、背後、広大な大平原コバトトアルの中央では、赤黒い魔力と紫の瘴氣が入り混じる混沌とした戦場が広がって、爆発音が連鎖しては、やや遅れて、轟音と地響きがここまで響いてきた。


 そして、近くに火柱が数十と発生、その火柱も斜め横からの複数の怪光線のような太い魔線攻撃を浴びて、火柱が小型核の攻撃を受けたように爆発連鎖していく。そこにレベッカの《炎塔攻防陣エンフリート・ネイルディフューザー》が周囲に展開、囲んだ火柱の中心に、<光魔蒼炎・血霊玉>が衝突すると、大爆発が起きるが一瞬でそれが中心の<光魔蒼炎・血霊玉>の勾玉に収縮するように納まっていた。一つの火柱は消えたが、他の無事な火柱から、数百の二眼六腕で大柄の赤黒い肌に漆黒の鎧を着た猛者集団が現れていく。


「あぁ、また来ました、十層地獄の王トトグディウスの軍隊です。双頭の獄炎竜騎士たちも混じると厄介です」

「ん、インディウス系統もいる。第七と八地獄層の魔族兵士たち」


 キサラとエヴァの言葉に、シュリ師匠が眼下の戦場を見下ろしながら、楽しげに舌なめずりをした。


「ふふ、良い眺め! 早速掛かるわよ――」


 シュリ師匠が先に急降下――。

 トースン師匠と、ソー師匠も斜め前方に駆けていく。


「ルグファントに続く道も前途多難そうだな、だが、ここらへんの掃除も俺たちに掛かればすぐだろう――」


 獄魔槍のグルド師匠が螺旋状に回転しながら加速し、二眼六腕の魔族へと肉薄、炎に包まれている獄魔槍は、相手の得物、その半身と地面の一部をくり抜くように突き抜けて、一度に複数任の二眼六腕の魔族を仕留めていた。


「ふっ、全部まとめて薙ぎ払う――」


 レプイレス師匠が、跳躍。

 雷と<血魔力>を体から放出したレプイレス師匠。

 雷光と血霧の螺旋を描きながら、宙空にいた二眼六腕の一人に近付いた。

 そして、敵の得物ごと女帝槍で半身を穿ち抜くまま、身を捻り、地上に多い二眼六腕へと直進しながら巨大な金色の魔法陣を展開させる。


 ――あれは、妙技<女帝天墜・衝城>の予兆!


 レプイレス師匠が女帝槍を天へ掲げると――。

 彼女の背後に水墨画と唐絵が旁魄するような墨炎が立ち昇る。

 

 それを切り裂くように黄金の光輝が爆ぜた。

 

 大氣を震わせて出現するのは、彼女の歩んだ武の歴史を体現するかのような、金色の光を放つ無数の漢字の群れ――。


 『槍皇降臨』の文字が天蓋を圧し、『血茨城塞』が地脈を縛り、『雷光審判』が空間を裁く。漢字の群れが最高点に達した刹那、彼女を起点として、戦場全域を覆うほどの巨大な黄金の魔法陣が展開された。


『女帝衝城極意――天地融合之型』

 

 天空へと黄金の輝きが収束し、巨大な城塞がその姿を現した。

 林立する無数の槍は、さながら女帝の命を待つ忠実な軍勢。


 その屹立する城壁の表面に金色の魔力で構成された新たな文字が刻まれる。


 『血晶壁』『雷鳴塔』『茨縛門』『覇道城』――。


 浮かび上がる峻烈な漢字の一文字一文字から、戦場を支配する圧倒的な威圧感が放たれた。城門からは血色の茨が生き物のように這い出し、空にいた十層地獄の王トトグディウスの勢力と悪神デサロビアの眼球お化け軍団の魔族たちを絡め取っていく。


 レプイレス師匠は、女帝槍を突き出しながら急降下。

 血の螺旋と雷光が絡み合う体に茨が螺旋状に巻き付く。

 三つの力が完全に融合し、一本の巨大な血雷茨槍となって敵の火柱が生まれている陣営に直滑降、突き出され衝突した瞬間、火柱の陣地が一瞬で爆発し、消えた。周囲に衝撃波を生み出していく。


 やはり凄まじい。


 八大師匠という規格外の戦力がいれば、確実に勝てる!


 

続きは明日更新予定です。


【書籍&コミック情報】

・HJノベルス様より『槍使いと、黒猫。』1巻〜20巻 絶賛発売中!

・コミック版 1巻〜3巻 絶賛発売中!


【お知らせ】

設定資料・外伝等の公式保管庫(note)を開設しました!

https://note.com/kenkou_novel/n/n745c32bdb4ba


最初の投稿として、書き下ろし限定SS『迷宮都市イゾルガンデの裏側で』(ロロとフォティーナの活躍劇)を公開しています。

今後は、シュウヤ視点の小話や、本編では書ききれなかった設定をまとめた「槍猫」の総合アーカイブとして、無料・有料を織り交ぜながら更新していく予定です。


※保管庫内には「魔界の最新地図」も掲載しております。


また、今回は「槍猫」とは関係のない完全新作のSF短編――


『たとえ世界が消しゴムで消されたとしても、僕が引いた黒煙の線だけは、君たちの明日に残る』


(※実際のタイトルは『黒鉛の祈り』ですが、この紹介文のフレーズのままで完璧にフックになります)

も同時に掲載しております。


皆様に楽しんでいただけたら幸いです。

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― 新着の感想 ―
魔皇メイジナが、 「お帰りです。早いですね。では、すぐに戦場に?」 あれ、こういう喋り方でしたっけ? 「バルドークの女神とメイジナよ、俺がいた北方戦線は順調なんだな?」 両方女神だぞ。 「師匠…
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