二千二百十一話 神座の復帰と新たなる強者
眼球系の魔族たちが悲鳴を上げて地面ごと陥没し、塵となって霧散する。
すると、今までとは毛色が異なる深紫の水晶状の地殻が隆起してきた。
「――ふん、地脈の残響が結晶化したか!」
隆起した水晶の一部が内圧に耐えかねて激しく破裂し、魔界の濁った大氣と不氣味な魔力的ケミストリーを起こしながら、鋭利な極光を放つ石の欠片となって戦場に降り注ぐ。その光の嵐をものともせず、レプイレス師匠は嵐の如き踏み込みで周囲のクリスタル状の岩を粉砕。片手に掲げた、白銀の雷光を帯びる女帝槍を天へと突き上げながら、重力を嘲笑うかのような超絶的な跳躍で蒼黒の天蓋へと上昇していく。その鋭い双眸が狙うのは、上空で不氣味な魔導光を収束させている、単眼球の大型アービターの部隊だ。
すると、
「ちょっ、もう、しつこいんだから!」
宙空で魔杖を構えるレベッカの愛らしい悲鳴が聞こえた。
先程の強烈な<光魔蒼炎・血霊玉>と《炎塔攻防陣》の猛火を逃れた、無数の不氣味な火柱。その爆炎の奥から這い出してきた、異形の二眼六腕の魔族連中が、レベッカの華奢な体を標的にして一斉に宙空へと突進していく。
レベッカを守るように、<雷光ノ髑髏鎖>を意識――。
両手首の<鎖の因子>から<鎖>を射出した。
梵字『バイ・ベイ』が黄金色に煌めく二条の<鎖>が、先頭を駆ける二眼六腕の魔族たちの分厚い背甲を貫き、肉と骨を穿つ鈍い音が響く。
だが、奴らは痛覚を麻痺させているのか、背を貫かれてもなお、狂気的な執念で前進を止めない。
「通さない!」
疾風の如き速度で踏み込んだユイの神鬼・霊風が閃き――。
バフハールの巨大な大太刀が空間ごと敵を両断する。
カリィの怪士ノあやかしによる<一崩流剣>が決まる。
カルードの流剣フライソーと幻鷺による<暗刃>を繰り出し、<血魔力>と共に影のカルードが出現し、影と同時に幻鷺と流剣フライソーが猪の頭部の魔族の胸元を突く。と影の中に吸い込まれるように消える、〝星影の隠れ蓑〟を使ったか。
【天凜の月】筆頭顧問を務める影鬼カルードの名を想起させる剣術は戦場でも映えるのはさすがだ。
ハンカイも両手に持つ金剛樹の斧を振るいながら、次々と魔族の肉体を両断していく。
更に妙神槍流ソー師匠、イルヴェーヌ師匠、塔魂魔槍のセイオクス師匠の神速の槍撃が空間ごと敵を穿ち、銀灰虎の背に跨がったキサラが、ダモアヌンの魔槍から白銀の<血魔力>を放ち、二眼六腕たちを攻撃していく。
黒い着物ドレスの裾を激しく翻したレンが、獄魔槍流のグルド師匠の右側へと滑り込む。
太股に刻まれた『血闘争:権化』、『血鬼化:紅』の文字が深紅の輝きを放ち、周囲に血の暴風を巻き起こしていた。そのレンは襲いかかる四眼四腕魔族の魔剣を魔斧槍サキナガの鋭い刃で見事に払い落とすと、流れるような身のこなしで柄を返す一閃――重厚な石突が腹部を強烈に捉え、甲冑ごと体を陥没させて遥か後方へと吹き飛ばした。レンたちが戦うのは統制された動きを見せる四眼四腕魔族の精鋭部隊。
どこの諸侯が差し向けてきたか分からぬ新手だが、最高眷属の一人レンの前には、ただの肉塊に過ぎない。
「閣下ぁぁ!! お帰りなさいませ! この骨の髄まで響く主の御氣、しかと受け取りましたぞ! ここの雑兵どもは、我ら光魔魔沸骸骨騎王のゼメタスとアドモスにお任せを!!」
魂を震わせるような骸骨騎王たちの咆哮が戦場に響き渡る。
愛盾『光魔黒魂塊』と『光魔赤魂塊』を構えた二人はレンが切り開いた血の道を埋めるように猛進し、背後の敵を盾で叩き潰していった。
「にゃァ~」
「ニャォ~~」
黄黒虎と白黒虎が、獰猛な咆哮を上げながらヘイバトの片腕の部隊や仙妖魔の戦士たちと並走し、右翼の平原を電光石火の速度で駆けていく。
一方、左翼ではルリゼゼとキスマリが、新手の一団と激突していた。
凄まじい地響きと共に隆起した土柱を突き破り現れたのは、背に不気味な岩の甲羅を背負った、大柄なモンスター兵の群れだ。
ルリゼゼの額に走る銀緑色の細い縫い目――鳴神シクルゼの加護の徴が、鋭く光り輝く。
「我が祖の刃、その体に刻んでくれよう!」
ルリゼゼの四つの腕に握られた、シザヨイ、シギルア、シアババ、シトトメの四魔剣が銀緑色の雷光を帯びて共鳴した。
<鳴見・四魔剣陣>の妙技が冴え渡る。
神速の突き、防壁を切り裂く斬撃、死角からの音速の突き、そして脳天を粉砕する叩き付け。四方同時の超絶的な連続攻撃がモンスター兵の巨体を捉え、肉と甲羅を木端微塵に四散させて絶命させた。
空からキュベラスがそのルリゼゼたちの増援に向かう。
左右の腕に召喚した魔杖から生やした真っ赤な魔刃と紫の魔刃で、甲羅を溶かすように斬り捨てていく。
トースン師匠は右――。
新手の牛の多頭を持つ魔族兵士へと遠目から〝魂喰いのイーター〟を放ちつつ、前進し、突き出した悪愚槍の<悪式・朧穿>で、牛の多頭魔族の得物を弾き、そのまま腹を穿つと吹き飛ばす。
シュリ師匠は<雷飛>と<雷炎縮地>を使いながら「――レベッカちゃんは、そのままで大丈夫よ!」とレベッカに近づき、そのレベッカに群がっていく二眼六腕の魔族たちを振るった雷炎槍エフィルマゾルで薙ぎ払っていく。
一瞬で、五人の二眼六腕の漆黒鎧を着た魔族を薙ぎ払った。
すると、ナイトオブソブリンとペルマドンが低空から飛翔し、ペルマドンが、レベッカの足下を掬うように頭部に乗せて、レベッカと共に高く飛翔していく。
先を直進していく獄魔槍のグルド師匠の真上に移動した、闇雷精霊グィヴァが《雷膜》を展開し、グルド師匠を守る。
砂城タータイムの左側に展開していた人造蜘蛛兵士たちが大柄の獅子モンスターに攻撃されていた。そこに向け<鎖>を射出――。
「ヘルメ、外に出てエヴァの盾を補強してくれ」
『はい、閣下! 常闇の水を、あの美しい鋼へと捧げましょう!』
左目から滑り出るように実体化したヘルメが、宙空で渦巻く常闇の水流となり、エヴァが<霊血導超念力>で構築した白皇鋼の幾何学的な盾の群れへと、清冽な水飛沫を衝突させた。
エヴァの構築した絶対質量の防壁にヘルメの高密度な常闇の水魔力が吸い込まれるように溶け込んでいく。水和反応を起こした白皇鋼の表面に深みのある藍色の魔力光が幾重もの層となって走り、それぞれの盾の物理、魔法防御強度が飛躍的に、かつ不可逆的に強化されていった。
「ん、精霊様、冷たくてとっても気持ちいい、ありがとう!」
そのエヴァの無防備な背後に、不氣味な影状の人型黒霧が複数、音もなく急襲してきた。だが、クレインが、その金朱髪を激しく靡かせて割り込む。左右の手に持つ金銀のトンファー『金火鳥天刺』と『銀火鳥覇刺』が、フェンロン流棒術の流麗な円軌道を描いて虚空を切り裂いた。炸裂した風牙の衝撃波が、人型黒霧を跡形もなく掻き消し、四散させる。
エヴァとクレインは、長年の信頼を示すように自然と背中を合わせ、
「――ん、先生もありがとう!」
エヴァは愛用のヌベファ金剛トンファーを、念導力による超高速の回転を乗せて振り抜き、真上から落下してきた眼球モンスターの粘膜を強烈に潰し、肉片へと変えて叩き落とす。
「――ふっ、お安い御用さね、エヴァッ子。それにしても、この影の人型どもは、一体どこの勢力の端くれなんだい?」
クレインは、弧を描く軌道で逃れようとしていた別の眼球モンスターを、<風神・風牙>の風圧を纏わせた銀火鳥覇刺の鋭い一突きで正確に仕留めながら、老成した、だが茶目っ気のある口調で問いかけていた。
「ん、分かんない! でも、シュウヤを狙う者を倒すだけ!」
そのあまりにもエヴァらしく、かつ迷いのない答えに背を合わせるクレインは「くすっ」と肩を揺らし、戦況を見守る俺も思わず笑みをこぼしてしまった。
エトアとラムーの背後に奇襲してきた丸い眼球型魔族兵に向け――右手に魔槍杖バルドークを召喚し、<刺突>で、眼球型魔族をぶち抜き倒す。
エヴァはクレインと分かれる。
新・魔導車椅子を引き寄せ、その車輪を巧みに操る。
急速接近してきた猛獣の影のようなモンスターに衝突させては、消し飛ばす。
更に、宙空にいる猛獣の影に向け金属の片足を瞬時に、<血魔力>を込めたクロスボウ型義足変化させると、そこから鋭い魔力杭を射出していく。
その猛獣の影を何度も穿ち抜いて絶命させる。
俺は「ヴィーネ、付いて来い、砂城タータイムに入る前に少し掃討戦に参加する――」
「はい――」
エヴァたちの後方を駆けていく。
トラップ解除と鑑定を担当しているエトアとラムーの背後に、奇襲を仕掛けようと滑空する丸い眼球型の魔族兵の姿を<闇透纏視>に捉えた。<握吸>を発動。
魔槍杖バルドークの握りを強めた。
「エトア、ラムー、しゃがめ――」と叫ぶ。
二人は「「はい!」」としゃがむ。その真上を<雷飛>で飛び越え――。
右手に握る魔槍杖バルドークを振るう<魔皇・無閃>――。
丸い眼球型の魔族兵の真芯を、紅斧刃が捉え、豪快に両断した。
着地際に前進し、眼球型魔族へと肉薄した。
踏み込みと同時に極限まで研ぎ澄まされた<刺突>を繰り出す。
一回り大きい眼球型魔族の瞳のど真ん中を豪快に穿った。
ミキサー氣味に紅斧刃が回転し、眼球型魔族をくり抜いたが、それを振り払うように魔槍杖バルドークを消し、再度魔槍杖バルドークを召喚。
バックステップで、後退、へどろのような血飛沫は吸い取らず――。
空にいる深淵のネプトゥリオンたちの動きを把握しながら、《氷竜列》を狙うが、また発動せず。
膨大な<血魔力>を魔槍杖バルドークに込める。
右斜め上に蝙蝠のような翼を持つモンスター兵が、フィナプルスの周囲に舞っているのを確認――<雷光跳躍>を使い、一瞬で、高高度に到達した。高い位置から味方の位置も確認――蝙蝠のような翼を持つモンスター兵の機動を<隻眼修羅>で読む――動きに合わせるように<仙魔・龍水移>を使い、背後に転移――そして、<血龍天牙衝>を放つ。
穂先と螻蛄首に龍のような<血魔力>が咆哮を発するまま、龍が喰らうように、蝙蝠のような翼を溶かしながら、背を豪快に貫くまま、直進し、背後にいた蝙蝠のような翼を持つモンスター兵たちをも<血龍天牙衝>は貫いていく。
複数いた眼球型魔族をも溶かすようにぶち抜いた。
膨大な血、魔力を吸い寄せて、一氣に回復――。
左下にいる黒虎と銀灰猫が視界に入る。
聖槍シャルマッハを突き出しているミレイヴァルの間を駆けていた。
「にゃごぉ――」
「にゃごぁ~」
眼球モンスターに飛び掛かって喰らい付く。
ミレイヴァルは、<一式・閃霊穿>で、下部に複数の海月のような触手を持つ眼球モンスター兵を穿ち倒していた。
そのミレイヴァルの左前に、カメレオンの頭部を持った魔術師たちが転移。
即座に、魔槍杖バルドークを<投擲>――。
一体の魔術師を屠り、<ブリンク・ステップ>で、右手前の魔術師の前に転移しながら左手に召喚した聖槍ラマドシュラーに<血魔力>を込めながら<刃翔刹閃・刹>、魔術師の魔法防御陣ごと体を聖槍ラマドシュラーの橙色の炎が宿る穂先が捉え、両断し倒した。
「陛下、ありがとうございます――」
もう一体の魔術師の首はミレイヴァルの聖槍シャルマッハの穂先が穿っている。
「おう――」
と跳躍しながら魔槍杖バルドークを<握吸>で吸い寄せて消す。
ミトリ・ミトンが見えた。
彼女は大厖魔街異獣ボベルファの背の上で、四つの腕のうち二つの手で輝く杖を宙空へと掲げている。
「……わたくしの中に生まれた、純粋な光よ。<聖膜眷獣・ブッティ>!」
彼女の祈りに応じるように純白の『聖なる膜』がキラキラと星屑のような粒子を散らしながら、分子レベルで自己と非自己を識別する免疫ネットワークを戦場に展開し、魔界の濁った大氣を物理的に弾き返していく。
膜の中から新生した灰銀色のスライム『ブッティ』が跳ね、ミトンの肩のシルと戯れるように跳躍する。同時に杖の先端から多重展開された無数の黄緑色のビーム状魔線が天蓋から襲いかかる獅子の頭を持つ大柄なモンスターたちに向け降り注いだ。強烈な光の雨がモンスターたちの体を浸透、神経網を魔力的に縫合、縫い止めることで、その巨体の動きを完全に封じ込めてみせた。
そのミトリ・ミトンたちを狙うように地面を這う影のような魔力目掛け、<仙魔・龍水移>で転移し、影の魔力の根元に<神聖・光雷衝>の平手を叩き付けて、地面を陥没させると共に影のような魔力を霧散させる。
「シュウヤ様、ありがとう――」
「おう」
左にいるユイ、カルード、ハープネス、ママニが見えた。
魔界騎士ド・ラグネスも紅蓮の劫火を纏う魔大剣を振るい、近付いてきた二眼六腕の魔族を肩口から斜めに両断。ザンクワたちが、新しく飛来してきた火柱ごと、複数の二眼六腕の魔族を個別に倒していく。
ザンクワは蜘蛛娘アキ、アチュード、ベベルガの近くにいた獅子の頭部を持つ大柄モンスターに近付き、双魔刀で腹を斬り倒す。
逆手に握り直し、右にいる獅子の頭部を持つモンスター兵の足を斬る。
その背後から、トモンが、
「シュウヤ様、見ていてください! 我が一族の誇り、この戦場にてしかとお見せいたします!」
獄猿双剣を突き出しながら、左翼へと突進し、
ジェンナもまた香華魔槍を旋回させながらその後に続く。その時、戦場の大地に激しい轟音と共に、複数の巨大な火柱が激突するように着弾した。爆炎が激しく揺らめく火柱の奥から、不気味な鎧を纏った二眼六腕の魔族たちが次々と姿を現していく。
――<隻眼修羅>の焦点を絞り、その魔力の流れを看破する。
あの火柱は単なる攻撃魔法ではない。
空間を一時的に熱量的な魔力で相転移させ、遠方の陣地から近接兵士を直接座標転送する、魔力の質からして十層地獄の王トトグディウス側の能力、魔法だろう。
ジェンナは、獅子型モンスターではなく振り向きざまに、二眼六腕の魔族へ香華魔槍を振るい吹き飛ばす。ミラシャンとシュレとザガとボンが、その二眼六腕の魔族たちと戦い始めた。そして、すぐ背後にいたレガナが、魔剣サビュラを振るい、飛んできた火柱を両断し、着地。
付近にいた蛸の吸盤触手を持つ眼球のモンスター兵をラヴァン煌波流の魔剣術で薙ぎ払っていた。
魔将オオクワは魔太刀を振るう。
ジェンナの左を駆けて、獅子の頭部を持つモンスター兵を次々に薙ぎ払う。
ズィル、インミミ、ゾウバチ、イズチと魔犀花流の部隊と射手のアラ、副官ディエ、鬼魔・幻腕隊ガマジハルの部隊も、人造蜘蛛兵士の部隊を救出に動く。
鹿魔獣マバペインに乗る魔界騎士ド・ラグネスは紅蓮の劫火を纏う魔大剣を振るう。その一振りで、数人の多頭の猪頭の魔族兵士を屠る。
<鎖>を各所の戦いのフォローに繰り出しながら、
「――皆、少しの間、戦線を維持してくれ。俺とヴィーネは一時的に戦場を離脱し、砂城から神格を再回収してくる。ヴィーネ、行くぞ」
「はい――」
差し出されたヴィーネの白く滑らかな手を、力強く握り締める。
上空からゆっくりと降下してくる、我が移動要塞【砂城タータイム】。
その天蓋から白銀の光の道が延びてくるのが見えたが、今の俺たちなら、その道を歩むラグすら必要ない。
繋いだ手から互いの魔力を同期させ、砂城の心臓部へ向けて意識を集中する。
――『中へ』。
視界が瞬時に相転移。
一瞬で砂城タータイムのコントロールルームの中へと転移を遂げた。
中心に〝星霜の運行盤〟などの横に鎮座している魔皇碑石へとヴィーネと共に移動した。
その表面には、俺たちの魂の盟約を示すルーンが刻まれ、青白い光の脈動を刻んでいる。
迷わず、「神座:神律の適格者」に掌を当てた。
ヴィーネも「神座:神眷の射手」の理が封じられている碑石の掌を当てる。
神座:神律の適格者と神座:神眷の射手が記されている魔皇碑石に手を当て<血魔力>を流すと瞬時に神座:神律の適格者を取り戻した。
「還れ――ッ!」
「神座よ!」
丹田から<血魔力>を流し込んだ瞬間、碑石から狂暴なまでの黄金と蒼白の光の奔流が噴き出し、俺の腕を伝って全身の経絡へと逆流してきた。
――脳髄が焼け付くような骨髄が歓喜に震えるような、圧倒的な「神格」の回収。
一時的に失われていた、世界そのものを支配下に置く全能の感覚が体の全細胞へと満ちていく。自然と、体表から暴理の狂氣の黄色が混じる、禍々しくも神々しい<血魔力>が爆発的に噴き上がった。
ヴィーネの体からも銀を帯びた<血魔力>が放射状に放出されていた。
前よりも洗練されているような印象だ。
やはり、一度、得た神格を自らの意思で落とすように魔皇碑石などに封じることで、知的生命体の心技体の器が拡張されやすくなるってことだろうな。
同時に他の宇宙次元に移動するってことも重要なのかもしれない。
隣を見れば、ヴィーネの体からも銀を帯びた、かつてないほど洗練された光魔の<血魔力>が放射状に放出されている。肩の中庸の徴が、極小の魔皇碑石のように強く、美しく輝いていた。
やはり、一度、得た神格を自らの意思で魔皇碑石などに封じることは重要か。
更に、他の宇宙次元への静と動の相転移をすることで、知的生命体の心技体の器、魂の器などが、拡張されやすくなるんだろう。
そう考えたところで、<血道第三・開門>――。
戦場へと打って出る前に強化しておく。
<魔闘術>系統の多重駆動を意識――。
<血液加速>を起動――。
全身の血流が沸騰し、世界が引き伸ばされたスローモーションへと変化する。
脳内に<魔技三種・理>のイメージを走らせ、自己強化スキルを連鎖的に、寸分の狂いなく重ね合わせていく。
<魔闘血蛍>
<魔銀剛力>
<トガクレの魔闘氣>
<水神の呼び声>
<滔天神働術>
<滔天仙正理大綱>
<経脈自在>
<月冴>
<紫月>
<煌魔葉舞>
<無方南華>
<魔闘術の仙極>
<龍神・魔力纏>
<水月血闘法>
丹田から脳天を貫くように、薄い蛍と龍のモノが泳ぐ高密度な湯氣――。
<魔闘血蛍>の魔力が吹き荒れ、<魔銀剛力>と<トガクレの魔闘氣>が、俺の筋肉と骨格の潰裂強度を鋼鉄のそれへと変えていく。
水神アクレシスの加護が<水神の呼び声>として周囲の水分を支配下に置き、<滔天神働術>と<滔天仙正理大綱>が、神と仙の理を俺の槍撃の軌道へと強制付与する。<経脈自在>によって全経絡の魔力伝達ラグをゼロにし、<月冴>と<紫月>の冷徹な魔力が視界を紫色の冴え渡る戦術空間へと相転移させた。
更に<煌魔葉舞>の歩法が足元に血の葉を散らし、毛穴から周囲の魔素を貪欲に喰らう<無方南華>が呼吸を代替する。
仕上げに、<魔闘術の仙極>、<龍神・魔力纏>、そして<水月血闘法>を重ね、俺の全身を「中庸の嵐」で満たした。
周囲の空間が、深紅の血魔力と青い雷霆、そして暴理の黄色が混ざり合う。
「ご主人様、最初から八割前後の<魔闘術>系統を使うのですね」
「あぁ、中には強者の将校、無名の魔傭兵も混じっている印象だったからな。ヴィーネは俺のことはいいから、ナギサか、エトア辺りのフォローを頼む」
「はい! お任せを!」
ヴィーネと共に砂城タータイムの外に転移。
戦場の熱氣を感じるまま、戦場を見渡す。
砂城タータイムの外壁から、新生した戦場へと一歩を踏み出す。
竜頭の四腕魔族の目立つ存在が目に付く。
激戦区の中心で、キサラ、ユイ、カルードの三人がかりによる、目眩くような波状攻撃を強靭な膂力で制し、三人まとめて力ずくで吹き飛ばしてみせた。
ユイとカルードの〝神仙燕書〟の<神式・一点突>や<白炎一ノ太刀>を浴びても傷を回復させている。
更に、シュリ師匠が放った雷炎槍エフィルマゾルの一撃や、師匠たちの無覇と夢槍の凄まじい連続攻撃をも、二腕に握った巨大な大斧の面で完璧に防御しながら、残る二腕に持つ魔剣を払い、横と斜めに激しく回転させる。
魔界騎士ド・ラグネスの一撃も大斧で弾く。バフハールの一撃とアドゥムブラリの偽魔皇の擬三日月の大斧を魔剣で弾く、ハープネスの魔槍ナーガシェルの一撃も魔剣で横に弾いていた。
周囲を寄せ付けない絶対的な死の旋風を維持している。
竜人、龍人?
竜魔族、龍魔族かな。光魔武龍イゾルデは人の頭部だったが、あのような魔族も魔界にもいるんだな。
「おい、竜頭の四腕魔族!」
標的を定め、左手を虚空へと伸ばす。
召喚に応じ、漆黒の闇から滑り出るように実体化したのは、蜻蛉切的な穂先に『バイ・ベイ』の梵字が黄金色に煌めく――無名無礼の魔槍だ。
魂の深淵に眠る、ウロボルアスの始原の闇の残響が、大笹穂の表面で水墨画の如き墨色の炎となって静かに揺らめき始めた。
竜頭の四腕魔族はユイとカルードの<バーヴァイの魔刃>を大斧で防ぎ、接近したカルードの斬撃を避ける。
カルードは身に纏う〝星影の隠れ蓑〟の魔力を排出し、周囲の光を歪め自身の輪郭を完全に消失させながらの袈裟掛けを仕掛けるが、竜頭の四眼を光らせると、カルードの斬撃を正確に大斧で防ぐまま、こちらを凝視し、「――お前が、光魔の大本だな?」
と聞いては、バフハールの一閃を浮遊して避けていた。
「あぁ、お前は?」
「我は、魔戦神キヴェレイ様の大眷属キル・ドッポ……」
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https://note.com/kenkou_novel/n/n745c32bdb4ba 書き下ろし限定SS『迷宮都市イゾルガンデの裏側で』(ロロとフォティーナの活躍劇)を公開しています。また「槍猫」とは関係のない完全新作のSF短編――『たとえ世界が消しゴムで消されたとしても、僕が引いた黒煙の線だけは、君たちの明日に残る』
(※実際のタイトルは『黒鉛の祈り』ですが、この紹介文のフレーズのままで完璧にフックになります)
も同時に掲載しております。
皆様に楽しんでいただけたら幸いです。




