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第一章 最初のウソ

第一章!

自分の書くキャラがどんどん増えてって違う小説のキャラ出しちゃいそうで怖い!

楽しんで!

 幼馴染のひまりのことが、ずっと好きだった。

 幼稚園の時から数えて、もう十何年になるだろう。

近すぎる距離のせいが半分、俺の意気地なさのせいが半分。あと一歩がどうしても踏み出せない。そんなもどかしくも愛おしい日常が、この先もずっと続くのだと信じて疑わなかった。


 ――あの日、彼女がトラックに跳ねられるまでは。


「……ごめんなさい、どなたですか?」


 白い病室。独特の消毒液の匂いが満ちるベッドの上で、頭に白い包帯を巻いたひまりは、怯えたように俺を見て小首を傾げた。

 絶望が胸を深く刺した。医師の説明によれば、頭を強く打ったことによる一時的な記憶喪失。特に直近の、俺と二人で過ごした高校生活の記憶がすっぽりと抜け落ちているらしい。

 ひまりの瞳に宿る俺への光は、親しみでも好意でもなく、完全に初対面の人間に対する警戒の色だった。


 その瞬間、俺の脳裏に、どす黒いほどのチャンスが閃いてしまった。

 今なら、関係を書き換えられる。

 ただの「幼馴染」から、もっと特別な関係に。


「れんだよ。……冗談だろ、ひまり。俺の顔、本当に分からないのか?」


「れん、くん……? ごめんなさい。頭がぼんやりして、何も思い出せなくて」


 ひまりは不安そうに、自分の白い布団の端をぎゅっと力任せに握りしめた。

 その細い肩を抱き寄せたい衝動を必死に抑え、俺はベッドの傍らのパイプ椅子に腰掛けた。優しく、どこまでも誠実な男の声を意識して、言葉を紡ぐ。


「そっか。……じゃあ、これも覚えてないんだな」


「これ、って……?」


「俺たち、付き合ってるんだよ。半年前から」


 ドクン、と心臓が爆発しそうなほど激しく脈打つ。

 ひまりは大きく目を見開いた。驚きで頬をわずかに赤く染め、俺をじっと見つめる。


「えっ……? 私と、れんくんが……恋人?」


「ああ。嘘なんかじゃない。お前が忘れても、俺が全部覚えてるから」


 嘘つきの顔を隠すように、俺は精一杯の微笑みを浮かべた。そして、彼女の小さくて震える手をそっと両手で包み込む。

 最悪の嘘をついた。長年の歪んだ片思いが、ひまりの純白の記憶に泥を塗ったのだ。でも、もう引き返せない。引き返すつもりもなかった。


「私、れんくんみたいな優しい人と付き合ってたんだ。なんだか、すごく安心しちゃった」


「ひまり……」


「思い出せなくてごめんね。でも、また一から教えて? 私、れんくんの彼女、がんばるから」


 はにかむような笑顔。それは、俺がずっと片思いしていた、世界で一番大好きな笑顔そのものだった。

 罪悪感が胸をチクリと刺す。けれど、それを遥かに上回る幸福感が俺の全身を支配した。

 ごめん、ひまり。

俺はお前を騙している。だけど、絶対にそれ以上の幸せにするから。


 ――それから一週間後。


 ひまりは無事に退院し、俺たちは「恋人」として初めてのデートに出かけた。

 行き先は、お互いによく知っているはずの、いつもの駅前商業ビル。だけど、今日のひまりはいつもと全く違っていた。ただの幼馴染だった頃なら、隣を並んで歩くだけで一定の距離があったのに。


「れんくん、その……手、繋いでもいい?」


 上目遣いで、ひまりが俺のコートの袖を控えめに引いてくる。

 心臓が止まるかと思った。


「あ、ああ。もちろん」


 差し出した俺の手を、ひまりの小さくて温かい手がぎゅっと握り返してくる。指と指が絡み合う。

 ただの幼馴染だった俺の片思いは、最悪の嘘によって、本物の「恋」のように鮮やかに咲き誇り始めていた。

 この幸せが、たった一年で、すべて消え去るリセットの足音なんて、この時の俺はまだ知る由もなかったんだ。

ご覧いただきありがとうございました。

どうだったかな?

次回もよろしく

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― 新着の感想 ―
これからどうなっていくのか楽しみ!たぶん私が一番うれしい推しの作家だからこれからも応援してます
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