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我々青春同好会は、全力で青春を謳歌することを誓います!  作者: こりおん
我々青春同好会は、全力で新入生を勧誘することを誓います!
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1.入学、陽碧学園です!

青春ドタバタラブコメ、始まり!!

 俺の名前は、「御形(ごぎょう) 伊久留(いくる)」。

 超人気マンモス校、陽碧(はるあ)学園。

 今日から俺は、陽碧学園の一年生となった。


「ああ、ようやく勉強地獄から解放されるんだ……」


 無人島一つ丸ごと敷地の陽碧学園。

 その島へと続く橋に一歩足を踏み入れて、感慨に耽った。

 

 陽碧学園はスペシャル難関校だが、俺はそこまで賢くない。

 全国統一模試でも平均点ぐらいしか取れない。

 そんな俺がどうして陽碧学園に足を踏み入れることができたのか。


「あ、いっくん!」

「初衣ねえ、その呼び方はやめてくれよ」

「ふふ、いっくんだって『初衣ねえ』だなんて可愛い呼び方してくれるじゃない?」

「それはそれ、これはこれだ」

「じゃあ、私も。それはそれ、これはこれ、ね?」


 鐘撞初衣(かねつきうい)

 俺の二個上、つまり陽碧学園の三年生だ。

 近所に住んでいる気の合うお姉さんで、幼馴染。


「それで、陽碧学園生徒会長がこんなことで油を売ってていいのか?」

「だって、いっ君の制服姿だよ! 早く見たかったんだもん!」

「卒業してから昨日まで毎日毎日制服着させられたんだけど」


 そして、陽碧学園生徒会長。

 俺の幼馴染は学園一の有名人なのだ。

 

 俺が陽碧学園を目指すことになったのは、初衣ねえが原因だった。

 

「私が生徒会長になって、いっ君に最高の学園生活をプレゼントする!」


 なんて宣言して、俺の受験勉強全てを見てくれたのだ。

 初衣ねえが高校二年で、俺が中学三年の時。

 結局有言実行で生徒会長になってるし、俺を入学させるし。

 初衣ねえはあらゆる面でハイスペックなのだった。


「ふふ、私たちのことをみんな噂しているね」


 初衣ねえはとても嬉しそうにしている。

 俺はとても恥ずかしいのに。


「ほら、初衣ね……会長はさっさと仕事に戻ってください」

「あ、もお! ちゃんと私のことは名前で呼んで」

「一応体裁ってあるだろ? 名誉ある陽碧学園の生徒会長様を、名前で呼ぶなんて恐れ多いと思って」

「いいのよ、いっくんは特別だから」

「特定の生徒を優遇するのは、生徒会長としてどうなの?」

「今は生徒会長じゃなくて、ただの一般生徒だから!」

「腕にしっかりと生徒会の腕章をつけているけどな」


 ああいえばこういうし、こういえばそういうのだった。


「会長、何をしてるんですか?」


 初衣ねえが固まる。

 喜びの表情が一気に崩れ去った。


「あ、あらあらあらあら、(えん)ちゃんじゃないの? どうしてそんなに怖い顔をしているのかなぁ」

「他の生徒会メンバーが働いているのに、どうして会長はこんなところで遊んでいるのでしょうか? 確かに生徒会長は陽碧学園の代表であり普段自由があまり効かない立場ですから、こういった時間も大切です。ですが、流石に時間を費やしすぎですよ。生徒会メンバーはもちろん、その支持の下働いている風紀委員の方々に失礼だとは思いませんか?」

「う、うぅ……」


 タジタジな初衣ねえを初めて見た気がする。


「それで、この新入生は知り合いですか?」

「……前話した、いっくん」

「ああ、この子が」


 冷たい視線が俺に向く。


「どうも、初めまして」

「生徒会副会長、大導寺掩(だいどうじ えん)。話は全て会長から聞いています。会長には会長の仕事がありますので。入学式もありますから、早く校舎に向かったほうが良いと思いますよ?」


 スッと、校舎のほうを指差す大導寺先輩。

 いや、呼び止められていたのは俺。


「そもそも、そのつもりでした。すみません。生徒会の仕事、頑張ってください」

「はい」

「いやだぁ、いやだよぉ、やあああああああ!!!!」


 初衣ねえの絶叫。

 大導寺先輩にそのまま引きずられて、どこかへ行った。

 初衣ねえの生徒会長としての姿を、実は楽しみにしてたんだけど。

 なんだかなぁ。

 新入生や先輩たちから変な視線を向けられてるし。


「ったく」


 さて、そろそろ俺もちゃんと入学式のために向かうとするか。


「そこの君! ちょっと待って!」


 背後から誰かに呼び止められる。

 ……次から次へと。


「なんでしょうか?」

「これ、チラシよ!」


 とても美人な女子生徒がいた。

 活発そうな見た目と、元気な声色。

 太陽みたいな人だと、直感的に思った。


「受け取ってくれないの?」

「い、いえ、全然。欲しいです」


 目が合う。

 目を逸らす。


「それじゃあ、またね!」


 女子生徒はチラシを渡して、さっさとどこかへ行ってしまった。

 他の人の勧誘にでも行ったのだろうが、

 ちょっとだけ残念に思う。


「なんだこれ」


 もらったチラシに書かれていたのは、端的にこの一文。


 『青春同好会、メンバー募集』


 達筆な文字でそう書かれていた。

 この青春同好会には、書くのがえらく上手い人がいるようだ。


 とりあえず、チラシを鞄の中に仕舞い込んだ。


「青春同好会なんて聞いたことないけど」


 初衣ねえから、部活とか同好会についての話は一応聞いている。

 初衣ねえの口から、そんな同好会の名前は出てこなかった。


「……え?」


 ふと周囲を見渡す。

 青春同好会のチラシがいたるところに貼られているところに気づく。

 橋の壁。

 地面。

 新入生達が持つ鞄。

 生徒の背中。


「見境なさすぎだろ!」


 思わず突っ込んでしまった。


 青春同好会とは何なのか。

 俺はその同好会の恐ろしさを、学園生活初日から思い知ることになる。

読んでくださり、ありがとうございます。

かなりの長編作品になる予定なので、面白いと感じていただいたら、ぜひブクマや評価をよろしくお願いします。

とても、めちゃくちゃ、励みになります!

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