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「苦しんでたんですね、彼も」


「うん……」


「自らの間違いに気付いてしまった、でも自分の命令を取り消す手段がない。人間を見つけ次第殺傷指示が出され、全員を殺めるまで止まれない。だから"命令してくれる人間"が必要だった、でもあなたは、自分の事しか考えていないような人をここに連れて来たくなかった」


「うん……」


「なら私が取り消します。アステル、最初からそのつもりだったんですね、言えばよかったのに」


「うん……」


「ああ、いや、それも言えなかったんですね、ごめんなさい」


「うん……いま私が両手両足縛られてなければかなりの美談だったんだろうね……」


「ふふっ」


「その微笑は何」


 静かになった地下空間、管理者のサーバーを見上げていた鈴蘭は言いながら地面に転がるアステルへ目を移す。「大丈夫…スタンバイモードになったから…ほどいて……」とのことなので、一応シオンがライフルを向けつつ、フェルトがガチガチに縛ったワイヤーを切断していく。


「命令権は?」


「今は鈴蘭」


「じゃあ私に切り替えて貰って」


「…………」


「信用がねえ……」


 どうやら現状、すべてのAIに命令する権限が鈴蘭にあるらしい、何をどうすればいいかわからないが。円滑に処理を進めるためメルが命令権を要求するも、ジト目になったアステルを見て断念、鈴蘭へ寄ってくる。


「とりあえず上の戦闘止めよう」


「アステル」


「全武装ロックする」


 と、メルに言われてから立ち上がった彼女へ目を向けた。地上の喧騒がぱたりと止んだのはその直後だ、1発の銃声も聞こえない。


「よぉーし終わりだ!」


 シオンがライフルを放り捨てる、そして仕事を放棄してヒルズの方へ向かっていこうとした。しかしヒナにとっ捕まえられ、ぶすくれた顔で戻ってくる。


「何が欲しいの?」


「甘いならなんでも!」


 苦笑するアステルに言われればシオンの機嫌は跳ね上がった、忙しい奴だ。間も無くドーナツ満載の屋台車両が現れ、それに3人吸い込まれていく。


「これからどうなるんです?」


「部隊の撤収、再編成、余剰装備の解体、戦闘用以外の機材製造、仕事は山ほどある。とにかく命令して? 今、あなたの声がないと私達は動けない」


「あ、はい。現時点で存在するすべての命令をキャンセル、アステルの提案を通してください」


「うん、もう大丈夫」


 とりあえず、といった風にハッチが閉まり始めた。


 騒音が始まる前、中隊の歓声が聞こえた気もする。


 無意識に、鈴蘭も笑顔になって、


「さ、忙しくなるよ。ここに街を建てないと、人間の邪魔にはならないでしょ」


「頑張ってくださいね」


「みんなも頑張るのよ」


「え?」


「え?」


「「「え?」」」


「え???」

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