新たな未来を
「大体わかったぞ! お前達が仲間として既にいるから存在自体を否定できないんだな!? 和解の道を探っているんだあの指揮官は!」
「いやこき使いたいだけだろ! そういう女だぞあいつは!」
クリサリス上部にどうにかよじ登って、
爆薬仕掛けようとしたら妨害を受けた。
「管理者だけを止めればお前らに命令を出す奴はいなくなる!」
「その通り!」
「お前らも自由に行動できる!」
「その通り!」
「存分にこき使える!」
「それはちょっと待て!」
もはや射撃精度を気にしても仕方ない、アンチマテリアルライフルは鈍器になった。正面のティオが大剣と打ち合う中、隙を突いて殴り飛ばそうとするも、アトラのセッティングは近接向けではない、ティオのようにはいかず。
「待ってるんだろうよ! 下のカタがつくのを!」
もう一度、銃口で思い切り刺突する。難なく大剣で防御され、こちらが引くと剣身が回転、方向を見せる。咄嗟に回避するも狙いは最初からアトラではなく、後方で爆薬設置を再開しようとしたクロ、砲弾の至近爆発を受けやむなく中断した。
「っ…!」
その後の格闘戦再開をティオは許さず、大剣を引き戻した頃には直刀がヴァニタス右腕を直撃していた。切断には至らず裂傷を与えたのみ、しかし明らかなパワーダウンを起こし、苦虫を噛み潰した顔で数歩後退、守りの姿勢を取る。
「今!」
と、そこで榴弾砲部隊最後の1発が撃ち上がった。ヴァニタスの背後にある山の反対側から現れた赤光は上空で弾道を変更、クリサリスへの直撃コースを取る。加速を開始したか、と思った次の瞬間には閃光が頭部に突き刺さっており、轟音と爆炎が噴き上がる。クリサリスは大きく揺れ、大剣を構えるヴァニタスの姿勢を崩す。続けて下方からレールガンと40mmグレネードが撃ち込まれれば、交戦の構えを見せていた彼はとうとう大剣を手から滑らせた。
「終われ!!」
次の瞬間、若干曲がったアンチマテリアルライフルのトリガーを引く。25mm弾は減速しつつも銃口から抜け出しヴァニタスへ、腰に命中し、下半身を不随へ追い込んだ。
「ぐ…ッ!」
もう彼は動けない、仰向けに倒れ伏す。
「よぉし! 自爆装置は積んでないな!?」
「あぁ……」
「自己消去プログラムも起動してないな!?」
「あぁ……」
「では昼寝の時間だ。何心配するな、一瞬で目が覚める、私もそうだった」
「そうかい……じゃあ代わりに答えを聞いといてくれ、こき使う以外で」
「善処しよう」
なんて話した、その背後で、
クリサリスの脚が崩壊した。