過去と今と
「やっば落ちてくる……」
「ここを離れろ! おらどけどけどけどけ!!」
群がってくるシヴァ犬を蹴散らしつつシオンが遮蔽物を出る、途端に正面300m先の4脚レールガン装備、サイクロプスの子供ことビルマニクスが仲間の残骸を乗り越えて顔を出し彼女へ狙いをつけるも、それまでと同じようにヒナの射界へ入るなり紫色の光線が突き刺さって残骸の山を成長させた。
「「ギャーーーーッ!!……あっ?」」
降ってきたのはカムパネルラだ、アリソンは地下施設突入前に脱出している。さっきまでヒナ以外の全員がいた家屋に墜落しバラバラに、なると思っていたのだが、もうちょっと逸れてくんないかなーと脳内で考えてみたら、コクピットハッチがパージされ無人のはずのそれはいきなりブースターから光を噴き出し、落下コースをずらしつつ減速、予想より遥かにソフトな墜落をした。
これいける。
「アステルを捕まえに行きます! 援護してください!」
「よ…よっしゃ反撃に出るぞ!」
地面との衝突により舞い上がった粉塵がブースターの噴射開始に伴い急速に拡散、右腹部に大穴の開くカムパネルラは全身に青い光の筋を這わせつつ無人のまま再度離昇していく。鈴蘭がビルマニクスの射撃陣地を指差せば76mm砲の予備弾を弾倉へ押し込み、すぐに2度発砲、ボボン!と音を立てて遮蔽物ごと吹き飛ばした。打ち上がる破片や残骸を左に見ながら敵陣側面への目指す、途中何度も妨害を受けたが、ワンコロが現れるたびに誰かしらが発砲して追い散らし、しつこいようならフェルトが追撃するか、鈴蘭が誘導弾で黙らせる。
「アステルーっ! 出てきなさーいっ! お姉ちゃん許しませんよーっ!」
そうしたら今度は白煙が上方から突っ込んできた。
「はいダメでーす! ミサイルは効かないでーす! 自分で出てくるかレールガンじゃないと受けてあげませーん!」
しかし一定範囲に入り次第横から弾かれたような軌道変更をしてしまう、制御不能に陥りつつあらぬ場所へ着弾、無為に家屋を崩壊させた。機関銃の乱射で畳み掛けても同じである、1発たりとも鈴蘭に届く事は無い。ただレールガンは別、あのアホ高速弾、発射を認識した頃には着弾を終えている。
そして間も無く敵陣側面へ到着、犬畜生の湧き出るポイントを目視した。地面が直径10mの円状にせり出てきており、中には1本の支柱と螺旋階段、洗面台の水を貯めるアレにも見える。それを認めるなりメルが駆け寄ってC4を投擲、直後にカムパネルラが上から踏み付けて強制的に蓋を閉じさせ、起爆、地面が大きく揺れた。
「掃討完了!」
「ヒナ先生、今のうちに移動してください。メル子、あぶり出しも兼ねて管理者の電源に爆薬を」
「今使っちゃったよ」
「馬鹿野郎が……」
当初の目的は天井ハッチの開放だった、そのためには管理者が何より邪魔だったので電源吹っ飛ばし、恐らく当時から稼働し続けているだろう彼にお休みを与えようと考えていた。しかしハッチは勝手に開いたので、別にいいかと思ったらしい、どのみち今の爆破は必要であろう。
「鈴蘭、そいつはまだ使えますか?」
「バリバリです」
「なら適当に」
発電施設を狙えばいいだろう、指でちょいちょいやればカムパネルラがまた飛び上がる。76mm砲を構え、とりあえず1発。
が
「……来たか!」
その砲弾は空中で撃墜される。