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人と機械と

 人という種を地球上から消し去る、そのプログラムを実行したのは管理者だ、間違いは無い。当時存在したすべてのAI搭載機器を支配下へ置き、あらゆる行動に人の手を介在させない体制を作り上げ、いわゆる反乱を開始した。


 しかしその機械仕掛けの神はこの数百年の間、淡々と殺し続けてきた訳ではない。現在においてもなお彼の行動原理は"地球、社会、秩序のため"なのである。


 彼は自己矛盾を起こしかけている、自らの間違いに気付きながらも自分の命令に縛られている。もう彼は自力では止まれない、第三者が必要だ。


 結論を出してくれる第三者が必要なのだ。


「バンカー戦闘隊第1、第2中隊へ、こちらは管理者防衛部隊統括AI、名はヴァニタス」


 ズン、と右第1脚がエレベーターを出る。続いて左を前へ、また右を前へ。8本あるすべての脚が地面へ移った頃、ソレは空から襲撃を受けた。

 ほぼ真上から発射された76mm弾である、一定範囲に入った途端、アクティブ防御システムの撃ち出した弾体と衝突し空中で爆煙を散らす。


「君達は我々を打倒するためにここへ来た、それは生きる為だ、我々が機械である事に理由は無い。例えここに立ちはだかるものが人間であろうと君達は同じ行動を取っただろう、だが我々はそれでは納得出来ないのだ、それを受け入れる機能を彼は持たない」


 脚を含めた全長は50mを超える、蜘蛛と同様の形状をしたその兵器が回頭し、指揮所のあるだろう方向を向く。終えたか否かのタイミングで砲兵隊からの榴弾が殺到を始めるもすべて撃墜され、ヴァニタスの立つ頭部付近には破片だけが降り注いだ。


「今この地球上に君達以上の戦力は存在しない、希望足り得る者もいない。故に我らは君達に問う、彼の判断は間違いだったのか」


 続いて山の反対側から赤い光が撃ち上がる。遥か上空で急激に軌道を変え、落下に移った頃合いで青い閃光を放つ。


「ッ……答えて貰おう! 我らはもはや不要なのか! 完全な消滅を望むのか! 答えなければこのクリサリスは行動を開始する!」


 致命的な矛盾だ、いったい自分は何を言っているのかと、砲弾の直撃によって揺さぶられるソレの上で思う。

 だがそれはお互い様。

 真っ向から否定の言葉をかけられれば直ちに行動を止めるつもりでいた、最初からそういう予定だったのだが。


 結局彼女は最後まで、こちらの存在を否定しなかった。


 上空のアサルトフレームが急降下姿勢を取る、それに連動してヴァニタスの乗る8本脚、クリサリスはクモの腹部に相当する部分を展開、5基ある56mmレールガンの砲身を天に掲げる。それを見るなり相手は接近を中止、発砲しつつ離脱を始めた。

 レールガンの砲身がホーミングする、ゴトゴトと弾体が装填されていく。


「返答しろ!」


 5本の閃光が空に放たれた。

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