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待ち受ける静寂

「速かった、位置も完璧だな、だが二度とごめんだ」


『声が震えてるよシオン』


「たりめーだろうが100キロは出たぞ! ソリで!」


 などというシオンとティーの会話を尻目に、いち早く射撃位置へ向かうフェルトとメルである。ソリでの移動は非常に静かで目立たなかったが、フェンスを突き破る際に結構な音が鳴った、数部隊が接近してくるだろう。敷地内に敵の姿はまったくなく、複数ある建物はすべてドアを閉めきって沈黙、中にもいないのか、立てこもっているのかはわからない。


「地下の様子、探れない?」


「無線は切ってるよ、ハッキングクラッキングされそうなのは全部ね。一瞬でもネットワークに繋いだら乗っ取られる確信がある、しかもまったく気付かないうちに」


 一応聞いてはみたものの返答は予想通り、今日のメルはタブレットをまったく使わない。普段は定期的にアンドロイド衆のパラメーターをチェックしているのだが、彼女らも状態をスタンドアローンに設定しているので報告が届かないしタブレットも受信を拒否する。例外なのがランドグリーズとカムパネルラ、あれらは外部から送信される人の手を介さない操作の一切を受け付けないので、この状況下でも安全にデータリンクを展開できる。操縦系統の一部に魔力を用いるカムパネルラは特に。


『東から敵、距離200メートル』


 コンクリートの壁に張り付き、サブマシンガンのストックを展開、セレクターをフルオートにして銃口と照準器だけを陰から出す。『150メートル』『やってください』と通信機から聞こえるなり走ってきていたバトルドール1体が8.6mm弾を受け真っ二つになって、それを合図にフェルトとメルも射撃、全滅させた。

 何の音も鳴らない銃撃である、撃針が雷管を叩いて起爆する音だけは消せないので、カカカン、カカカンという連打音が射手には聞こえるものの、数十mも離れればそんなものは耳に届かない、ただ弾丸だけが飛んでくる。向こうとしてはたまったものではなかろう、察知手段が無いのだ。


『メル、時間を稼いでる間に入口を作ってください』


「はいよ」


 重アサルトライフルと予備弾倉をその場に置き、爆薬を引っ張り出しつつ彼女は走っていく。サブマシンガンをしまってフェルトがアサルトライフルを持ち、警戒を継続。


『ランドグリーズが支援攻撃を行う、注意』


『言うのが遅い!!』


 30mm弾の帯が雪原を薙ぎ払った、雪と共にバトルドールやらグリムリーパーの残骸が天高く打ち上がる。生き残りが逃げてきたので素早く処理、念のため位置を変えておく。


『シオン、ソリにクレイモアが積んである、いくつか仕掛けるといい』


「もうやってるよ」


 シオンが走ってきて、板とピアノ線を置いていった。数百発のベアリング玉が詰まる板だ、起爆すれば前方60度の範囲に玉をぶちまける。本体は雪に埋め、信管にピアノ線を繋いで、反対側を適当な場所へ。これでいい、ピアノ線に足を引っかければ起爆する。


 と、そこで敵の砲撃が来た。


「ひえぇぇぇっ!」


『おうシット! 躊躇いなく本拠地に榴弾ぶちこんでくるとは思わなかった! カムパネルラ緊急だ! 今から指定するターゲットを撃破してくれ!』


 それも間も無く発射点を潰され飛んでこなくなる。どさくさ紛れにまた数部隊が接近してきたので弾幕を張り、弾切れと同時にその場を離れる。空弾倉を投げ捨て予備を装着、ボルトリリースした頃にクレイモアは起爆した。さらにヒナが追い討ちをかけ、残りをフェルトが始末しておく。


『開いたよ!』


 建物のひとつで爆発が起きた、咄嗟に目を向けると爆煙向こうの反対側から接近する敵の姿。あれを退けてからでないと落ち着いて侵入は出来なさそうだ、仕事を終えたメルに重アサルトライフルを投げ返して射撃位置へ。


 と、そこで聞き慣れた、非常に聞き慣れた4脚走行音がして、


『ヒャッハーー!!』


 そろそろ聞き慣れてきた雄叫びがして、


『ファイブナインは東から接近中、撃つな』


 耳タコなレールガンの射出音と閃光がして、


『案ずるな私が来た!!』


 雪原の稜線からサイクロプスが現れた。


「何それぇ!?」


「説明しよう! コイツは先行量産型が故にナンバリングがされなかった真の初号機、プロトタイプだ! 倉庫で埃をかぶってた!」


 間も無くフェルトの眼前までやってきたソレの上にはクロが仁王立ちしており、高笑いしながら反転、猛然と連射を始める。その間にクロは降りてきて、今開けた穴にこちらを押し入れようとしてくる。


「さあ行った行った! 時間稼ぎはボクらがやるよ!」


「大丈夫!?」


「データのバックアップは取ってあるよ! 鈴蘭だけ連れてってね!」


『あー、ティー?』


『第1中隊もじきに到着する、行っちゃって』


『よし全員! それと鈴蘭! 中に入れ!』


 離れ側に小さな金属製のカードを渡された、やたらと長いパスワードが記載されている。すぐに駆け込んできたシオンへパス、全員入り次第プロトサイクロプスがこちらを向いて前脚を振り下ろす。


 轟音を立てて入口は崩れ落ちた。

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