姉妹発掘
「どうしよう…鈴蘭差し出せば許してくれるかな……」
「嫌ですよ! アステルにあんなことやこんなことされちゃいます!」
「最近の流行りでいえばそれが正解のような気もするが」
「ちょっと!!」
ファイブナイン、現状。
無駄に突出したため包囲されつつあり。
「合図したら撃ちまくれ、ティオをドアまで特攻させて、その後私らが走る」
「言葉遣いに悪意を感じる……」
「そんな事はないぞあわよくば面倒な妹を亡きものにしようなんて考えは微塵も」
4人は森の中、雪に埋もれて敵部隊の接近を待っていた。さっきまではめたくそ撃たれていたのだが、こちらを見失ったらしい、今は静かに横隊を組んで少しずつ近付いてくる。合図に備えて鈴蘭がライフルの銃口を上へ、ティオが抜刀、アトラは後方迂回しようとする敵を狙う。
クロも、正面へマシンガンを向けた。
「レディ」
50m先に掘っ立て小屋みたいなのがあった、隣には地下へのハッチがあって、グリムリーパーがのそりと這い出てきている。早めに破壊しないともっと増えるだろう、だから無理して近付いたのである。
「よし行け!」
まず鈴蘭が発砲、ライフルグレネードのような姿勢で連射を行う。上から降ってきた赤光が敵の前衛を一掃して、すかさず普通に構え直し雪の中から顔を出す。クロも同じく小刻みなバースト撃ちでと突撃するティオを援護、迂回組は25mm弾を受けて爆散したのでその場を飛び出し後を追う。
「臨検の時間だコルァ!!」
数体のバトルドールをバラして小屋に一番乗りしたティオは壁に張り付いて停止したため、内部突入はクロが先陣を切った。ドアに跳び蹴りかまして押し入り、当たり所構わず乱射して室内をうろついていた作業用ユニバーサルドールをスクラップに変える。安全確保、残り3人が中に入り次第タンスほどのサイズを持つ武器ラックを移動させて入口を塞いだ。
「よし内部を掃討する、これを持ってけ」
その武器ラックにかかっていたショットガンをアトラが投げ渡してきた。セミオート式、ゼンマイ給弾の24連発ドラムマガジンを備える対装甲ショットガンである、主に壁を崩すのに使う。一般的なショットシェルの倍近い口径を持つシェルが装填されており、詰まっているのは12.7mm尖頭弾、とどがつまり.50BMGをぶちまける銃なのだ。マシンガンを背中にやってそれを握り、同じものを構えるアトラと一緒に地下への階段手前へ。丁度、バトルユニバーサル問わずあらゆる人形が殺到してくるところだった。
「初めまして死ね!」
1発で十分、銃声というか砲声みたいな音がして、すべての敵がバラバラになった。跳弾は無い、発射した弾はもれなく跳ね返らずに壁へと突き刺さっている。階段を転げ落ちる残骸と共に駆け下り、その先でもう一発撃ちこんで壁に凄惨な弾痕を作成、出撃待機状態にあったグリムリーパーの列にも数発、穴だらけにし、これ以上外に出れないようにしておく。
「ティオ、ハッチを閉めろ。手作業でやれよ、サーバーに繋いだら管理者に侵入されるかもしれん。クロは鈴蘭を連れて下の格納庫を見てこい、私はこいつらのメモリを抜き取ってラジコンにしておく」
どうやら再利用するつもりらしい、AIを削除して、遠隔操作でしか動けないようにすれば味方になる。それならグリムリーパー以外にも何か無いか探してみよう、床を見回してハッチを見つけ、こじ開けて下を覗く。
「……おあッッッ!!」
「ひぃっ!?」
まるで予想していなかったモノが安置されているのを見つけてしまい、奇声を上げつつハシゴを降りる。わたわたとグリムリーパーの群れを乗り越え一番奥、かぶせてあったシートを引き剥がした。
「鈴蘭! 見て! すごいのあった!」
「暗くて見えないー!」
グリムリーパーが環境に合わせて真っ白な塗装なのに対し、死蔵されていたそれはフラットダークアース、スパイクアームの脚を4本持ち、武装は56mmレールガンと4連装対戦車ミサイル。初期状態だ、榴弾の設定も重機関銃も無い。
「ほら!」
懐からフラッシュライトを取り出して照らす。
4脚三角錐がそこにあった。