2302
廃基地 中央司令室前
308部隊"サーティエイト"
ヒナ
「最初から知ってた?」
「え……?」
「ここが襲われるって」
ようやくというかなんというか、戦闘は終結を見た。鈴蘭の自爆を境に残敵は撤退を始め、目立った被害といえばランドグリーズの損傷のみ。あれだけの戦闘に関わらず被弾した者こそあれ死者はいない、つまりは手加減されていたのだ、相手の目的は最初から鈴蘭との接触、及び交戦するという行為自体にあったようで、他は別にどうでもよかったのだろう。無論、手を抜いていればそれで済まなかったろうが。
「……いや、聞かされてはなかった。君達がここに来る前に彼女と会ってたのは本当だけど、すぐに離れろとだけ言われてて。言われた通り離れようとしたらバイクが」
ユウヤの言う"彼女"とは鈴蘭の横に転がっていた残骸の事だろう、とりあえずボディバッグに詰めてあるが、もはやただのスクラップだ、メモリーも機能停止と同時に消去されている。詳しくは鈴蘭の回復を待たねばならない。
「何か言ってなかった?」
「人類に問いたい事がある、とか」
それだけじゃ何もわからない。
「ま、いいわ、今は。アイツを迎えに行くのが先」
で、
ようやく落ち着いて立つ事のできた中央司令室前、すぐ口に入れさせるゼリー飲料も持ってきた。どうやっても開かなかった扉を何度かノックすると、すぐに鍵の開く音がして、ゆっくりと内側に開いた。
立っていたのはひっでえ顔のメルである、さすがに30時間以上も飲まず食わずならこうもなろう。何か言おうとしたようだが声が掠れて言葉にならず、なのでヒナは彼女の口にゼリーパックを押し込む。弱った喉を刺激しないよう少しずつ飲ませていって、それでひとまずは安心。
「あの……」
「ん?」
相変わらず弱々しいが、喋れるようにはなったようだ、乱れた髪を整えるように撫でるとぽつぽつ話し出した。
「電波塔動かして、敵呼んだの、私だけど、いたずらとかじゃなくて……」
「ん」
「逃げるか隠れるしかない日常が嫌だったから……仲間、見つけたくて……」
だってさ、という意味を込めてユウヤに目配せ、彼は小さく息を吐く。怒りだす様子は無い、むしろ逆に微笑んだ。
「もういいよ、俺の事は」
まぁこれに関しては心配していなかった、戦闘前から。
「じゃ、行くわよ」
「でも……」
「大丈夫だから、ほら、いつも通り」
両頬をぐりぐりやって無理矢理笑わせる、そのうち、というかようやく表情がほぐれてきた、完全に安心して、ヒナも顔が緩む。
「へへ……」
「ふふ」
「へへへへ……」
「ふふふふふ」
「気持ち悪い」
「なんだとコラ」