2205
廃基地 車両基地
308部隊"サーティエイト"
ヒナ
「よっしゃー!! たどり着いたー!! 完璧なタイミングのワーム通過だー!!」
同時である、車両出入り口から敵が殺到し、通用口からワームが侵入してくる。直ちにその場の全員が野外なり廊下基地外への退避を開始、囮としてチャフキャニスターを1個投げて、サーティエイトも廊下に戻る。
「やれーー!! 吹っ飛ばせーー!! ひと思いにぶべばっっ!!」
3人揃って、いきなり床がトランポリンになったような打ち上がり方をした。強靭な軍事基地でなければまるごと木っ端微塵だったろう大爆発に車両基地は崩壊、轟音と地震が続く。
『効果確認』
『予定した爆薬量より少なかったため車両基地建屋は完全なぺしゃんこには至らず、8割を確実に撃破するも破壊を免れた敵もいるでしょう。しかし地下施設に通じるすべての出入り口が塞がったので大した違いなどございませぬ、外の部隊は後続の味方にシバかれるしかないでござるよ』
『上の中ってとこかな、後でキャンディをあげよう。サーティエイト、ワームの状態を確認してくれ』
「ちょっと待って今空飛んだから……やっちゃいけない落ち方したから……」
ズズン、と反響しまくる音が収まると廊下は静かになった、見ればさっきまで車両基地と繋がっていた通路は瓦礫に塞がれ、向こう側がどうなっているかはまったくわからない。
「いっつ……今見えてる胴体は停止してるけど…ちょっと辿ってみる」
『シオンとフェルトは?』
「顔面から落ちたからまだかかるかも」
少なくとも今すぐ喋るのは無理だろう、シオンは悲鳴も上げず顔を押さえ震えていて、フェルトはヨガの途中みたいなうつ伏せポーズで動かない。仕方ないのでヒナは1人でサブマシンガンを拾い、沈黙するワームのコンテナへ近付く。前回は頭部のCPUを破壊した時点で動きを止めていた、今回もシールドマシンが吹っ飛んだ瞬間にバトルドール共々この有様だ、このまま再起動しないで欲しいが、一応バトルドールは撃つなり捻るなりして頭を破壊しておく。
『レア中隊、中に入るわよ』
『はいよ。気をつけてね、中は安全じゃない』
手を触れられる位置まで行き、尾部方向を見て左眼を拡大してみる。やはり動きはない、屍のようだ。
と
『え、何…?』
またサイレンが鳴った。先程と同じだ、警戒しろ、という意味である。
「メル、そろそろ出てこない? 怒ったりしないから」
ひとまず通信機にそう言っておき、レアへの説明はティーに任せ、急いで戻ってシオンの肩を揺さぶる。「大丈夫…? 潰れてない…? 放送できる…?」とか泣きそうに呟く彼女を無理矢理起こしてライフルを持たせ、その後周辺警戒。
「フェルト…敵だ…また来るぞ……」
「鼻血……」
「……あ、駄目だこれファンに見せられねーやつだ拭け拭け詰めろ」
「あぅぅぅ……」
すぐにガコンと、電車が連結解除したような音が響く。視界内のコンテナに未だ動きは無いが、破壊しておいたバトルドールが動こうとする素振りを見せたのでもう数発撃ち込んでおき、フェルトの立ち直る時間を稼ぐ。
「レア、こっちに」
「私が来る前に片付けておいてよ……」
「何を甘ったれた事を……だぁークソ!」
ようやく到着した後続部隊が基地内への展開を始め、そのうち赤髪ツインテールが見えたのでシオンが手招き。武装は例のリボルバーグレネードランチャー、前回はすべての弾が白くマーキングされた魔力炸裂弾だったが、今回ベルトに詰まった弾頭は黄色に着色されているので、これは魔力貫通弾、弾道がほぼまっすぐになるだろうそれに合わせて照準器も調整されている。ワームと聞いて切り替えたのだろうが、こんな閉所でそんなもん使うか?とまず思ったものの、使うタイミングはすぐやってきた。
「こちらサーティエイト! たぶん胴体のどこかに予備の頭があって! そこを切り離して再起動してる!」
『うっわめんどくさ』
「めんどくさいで済ますな!!」
通路ギリギリいっぱい使って横たわるコンテナをバトルドールがよじ登り越えてくる。直ちにレアが1発撃ち込み、コンテナの反対側に貯まっていた連中含めコンテナごと爆殺した。炸裂弾と比べ破壊力は劣るものの、発射後急加速、残光を引いてコンテナに着弾、起爆前に貫通し、反対側を吹き飛ばす。
『だってそれ絶対一定間隔で予備の頭あるでしょ……施設内の全隊、敵を押さえ込む事に集中しろ。サーティエイトはワームの侵入ポイントへ、そこを塞いで、これ以上のコンテナ輸送を止めないとキリがない』
まぁそうなるか、仕方ない、頭のすげ替えが可能なら元を断たなければ。
奴は地下鉄道からのエントリーだったはず、そう遠くない。
「よーしよし! ファイブナインは戻ってますね!! 奴のボディを破壊できるのは鈴蘭とレアだけだ! 目的地で合流しますよ!」
「ちょ……私中隊長!」
『指揮はやっとくよー』
「ちょっとーー!!」