2127
廃基地 廊下
308部隊 "サーティエイト"
ヒナ
「うわぁぁぁぁぁぁ増えたぁぁぁぁぁぁ!!」
「喋らせろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
シェパードくらいの犬が4体、それぞれがマシンガンを背負う。咄嗟に弾丸をぶちまけるシオン、手近なドアを斬り破るティー。ヒナも別の部屋に逃げ込んで、弾切れを起こすシオンに代わりサブマシンガンを射撃する。
「誰かC4を持ってヒナんとこまで走れ!」
「後ろからクロちゃんの子供みたいなの来てるよぉ!?」
「だぁぁぁもう忙しいんじゃぁぁぁぁ!!」
シオンとティーの部下数人が駆け込んでくるまでワンコ共を曲がり角の向こうに留め続ける、その後シオンと再度交代、引っ込み際に反対側を見てみると、この廊下をギリギリ無理なく通れるサイズの非装甲なサイクロプスが、背中に載せるガトリングガンを始動する前に12ゲージ魔力貫通散弾を受けて銃身を吹っ飛ばされ、さらにフェルトに脚を斬り落とされた。残骸と共に床へ散らばり、動かなくなる。
『ボク子作りした覚えないよ?』
「知ってっから!!」
「ファイブナイン!? そっちの状況は!?」
『オッチャンとティオの戦闘機動が激しすぎるから頑張って食らいつくだけしてる』
「無理せんでいいからね! 振り切れるようならそうして! フェイに地面ごと耕してもらうから! そんでもってシオンはウォールブリーチだ! 壁吹っ飛ばしてワンコロの背後に回れ!」
言われる前にいつもの兄ちゃんが爆薬設置を終えていた、設置なんて丁寧なもんじゃない粘土を叩きつけただけだったが。他の誰かに制圧射撃を任せ、いつも通り爆発危険範囲の遥か内側で申し訳程度に隠れ伏せる。
「起爆!」
コンクリートの壁は崩壊し、敵背後へのショートカットコースが開通する。ヘッドギアが減殺してなお鼓膜に突き刺さる耳鳴りに襲われつつ、吹き飛んだ瓦礫の着地を見計らってシオンが突入、犬ロボットを追い散らした。音から判断して1体を破壊、残りを通路へ押し出し、逃げていく間に他の誰かがもう1体撃ち抜いたらしい、床に残骸が散らばる。2体健在だが、本来の出入り口から飛び出しても立ち止まって撃ち返してはこなかった。
「よーし移動再開だ。…ってシオン、王妃様もびっくりの真っ白さ加減じゃん、何、ギロチンされるの?」
「オメーの雑な命令が原因でしょうが……」
瓦礫は待ったが、粉塵は待たなかった。コンクリート粉の舞い上がる中に突っ込んだので新しい出入り口を使った彼女は一瞬にして全身白くなっており、警戒を他に任せて小走りに移動しながら髪やら服を叩いて粉落とし。
「……え、何?」
で、ヒナも背中を手伝ってやり、大分マシな見た目になった頃、この廃基地の警報が鳴った。
「ちょい、何の合図かねこれは」
「いや鳴らし方知らんし」
少なくとも火災時のベルとは違う、ビー!ビー!と繰り返す音だ、そして施設全域ではなく一箇所がピンポイントで鳴っている。咄嗟にその方向を全員で見、そうしたら視線の先で廊下の照明が点滅した、やはり一箇所のみ。
「メル?」
『あーあーこちら100年に一度のイイ男、一部の監視カメラ使用権限が解放されてたのに今気付いたので確認したところ、真西の鉄道トンネルからなんか電車みたいなやつが……』
なんて、
ヒナがぽつりと呟いて、通信機からポニョ男の声が聞こえ、目の色変えたティーが詳細を要求した直後、
ズシンと、基地が揺れた。
「なんだ? バンカーバスターでも撃たれた?」
「にしちゃあ小さすぎる揺れでしたが…………あっ」
続いたのは天井の崩壊音ではなく床の掘削音だ、ガリガリガリガリとコンクリートが削られていく。音源が上ではなく下だと気付いたティーと彼女の部下は困惑し始めたが、それ以外、すなわちサーティエイトは顔を見合わせて生暖かい笑み。
下から現れる、電車みたいな。
「あいつだ」
「あいつが来るぞ」
「え、ちょっと何さ、私にもわかるように言うわーー!! いややややややややややや!!」
ほぼ時間を置かずに轟音を鳴らして床が崩壊、シールドマシンが現れた。ゴジラの鳴き声が空耳で聞こえるレベルのご登場に全員揃って逃走開始、電車芋虫はゴリゴリ言わせながら追ってくる。
超巨大地中輸送機だ、バトルドールやその他AI兵器を積んだコンテナをこれでもかこれでもかと繋げたもので、ああやって下から奇襲をかけたのち積荷を展開、自身を盾にして侵攻する。弱点はコンテナとシールドマシンの間の細いシャフト、なものの、そもそも狭い、上になんかカバー付けてきていらっさる。
「あれか! いつかの報告にあった! ワーム!」
「レアー! レアレアーー! 魔力誘導弾ーー!」
『もうないって言ってるでしょ……』
「すーーずらーーーーーーん!!!!」