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2115

 廃基地北西2km

 57部隊 "ファイブナイン"

 ティオ




 直前に音波探信(ソナー)を打たれた、人間の聴覚が対応できる範囲外の周波数で。周りに味方がいない事は知られた筈だ、高速接近する足音の主は安心して突っ込んでくる。


「デコイ頂戴!」


『わかった!』


 サーマルとナイトビジョンを併用して観察した限り相手は男性型のバトルドール、銃火器を持たず、いや火器は持ってるかもしれないが少なくとも銃ではない、中華包丁や菜切が如く切っ先の無い長方形状の白い大剣だ、縦横の比率そのまま刃渡り150cmは超えている。厚みも相当なものがあり、柄は半ば埋め込まれる形、というよりは峰部分に取手が付けてある。相手は右手で柄を、左手で取手を握り、接触直前に急停止、ライフルの腰だめ射撃に似た姿勢を取った。

 取手の近くに弾倉と、先端に砲口があるのである、どう見ても直径はサイクロプスの56mmより上、76mmか88mmのどちらかだろう。


「頭おかしいのが来た!」


 レッグホルスターからサブマシンガンを抜き、照準せずにフルオートで発砲、砲撃を邪魔する。即座に引かれた大剣からはあさっての方向に砲弾が発射され、体勢を戻される前にサブマシンガンと予備弾倉をクロに投げ、抜刀、ブレードレンジまで接近した。


「おかしいとは心外だな!」


 あんな鉄塊と細身の直刀を打ち合わせたら諸共挽き潰されるに決まっている、迎撃の叩き下ろしは避ける、以降のすべても避けるしかない。

 オッサンだ、お兄さんと呼ぶのはギリギリはばかられるオッサンである。くすんだベージュの短髪で身長190cm、全身を可能な限りプレートアーマーで覆っていて宇宙服を着ているかのよう。手足は太く、しかしそれでもあの大剣を振り回すには足りないように見えるが、人間でないならそんな事はどうでもいい。


『アトラ! 助けに…!』


『いやありゃ駄目だ、常識の範疇を超えてる。クロは現状待機、状況次第では横槍を入れろ。私らは周辺警戒する、敵を近付かせるな』


 地面を大きく抉る一撃は風で髪を舞わせるに留まり、間髪入れず突き出したこちらの直刀も無為に空を切る。足元の大剣が一部埋まった状態から力づくで横薙ぎに振るわれたので剣身を踏み最小限、最低限に跳躍、空中のティオを掴もうとする左腕へ向け刃を払い引っ込ませた。

 着地するも、攻撃に移れない、振り終えた大剣の砲口が丁度良く射線にこちらを捉えている。横へ1歩、砲撃をかわし、さらに3歩、距離を取る。


「ッ……仕留めるつもりだったんだが、BD-3の運動性能を超えているな。そちら側についてからどんな改造を……いや、違うな、これは経験値の差というやつか」


 仕切り直しとなった途端、男は喋り出した。排莢と再装填を行いつつ大剣は顔の横、東洋剣術の八相に近い剣身をやや傾けた構えを取り、すぐにでも振り下ろせる体勢。

 対しティオは直刀を片手で握った、相手と同じく顔の横で構えるも、刀身を大きく前に倒して切っ先を向ける。打ち合ったら負けなのだ、両手で握る必要が無い、それより瞬発力を重視した姿勢を取るべきである。


督戦隊(とくせんたい)?」


「裏切り者を始末しに来たわけじゃないさ、純粋に、お前が敵だからだ」


 今更ながらこの男、喋る、感情がある。


「ヴァニタス、使用機体はBD-2改。管理者直属の個体だ、この部隊の指揮官とも言える」


「何しにこんな前線まで?」


「下された命令がある、としか」


 ザリ、とヴァニタスなる男の足が鳴った。


 考えるのは後、

 上空でチャフディスペンサーの破裂音がした直後、両者共に地面を蹴り、


「行くぞ!」

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