2111
廃基地北西2km
57部隊 "ファイブナイン"
クロ
砲撃が止んだ
敵外周に穴が開いた
サイクロプス2がキルゾーンに入った
攻撃許可が下りた
「よっしゃーーーー!! ぎゃはははははははは!!」
『ティオ』
『ごめんなさい姉様、止めろというなら言うのが10秒以上遅い』
まったくの減速無しで斜面を駆け下り、地面が平らになる間際で跳躍、真下にいたバトルドールの分隊に8.6mm弾をぶちまける、コンマ数秒ですべて片付け、着地後すぐに銃口を暗闇の先へ。
サーマルを起動、グリムリーパーの影が視界に現れた。今度はしっかり狙って一度だけバーストショットすれば、目玉に直撃を受けたそれは気持ちよく爆発する。
『そうやって突っ込むから毎回毎回負けてたんだろうに』
「なーんの事かなボクわかんないわかんなーーい!」
右目をサイトに合わせたまま、次を求めて視界を左右に振るも、アトラからの25mm弾でゴライアスが爆散したのを皮切りに味方からの半包囲攻撃が始まり見る見る敵が減っていく。追い打ちにランドグリーズから30mm弾が薙ぎ撃ちされればクロの進路を妨害するものはいなくなり、ティオの合流を待たずまたも突撃していく。
敵主力の撃破のみを考えた一時的な総攻撃だ、味方のほとんどが参加しており、そのため敵がフォローを始める前に片付けなければならない。クロの現在地から見てサイクロプス2は正面600m、森の先で熱源反応が見え隠れしている。
『ミニガン射撃姿勢』
後方でティオが告げるや否や、7.62mmの雨が真横から襲ってきた。これはさすがに前進継続不可能、枯葉のマットにヘッドダイブして半ば埋まる。
『撃った』
『撃ちましたね、その対応の早さが命取りです!』
曳光弾混じりのそれにより射線上の木々が破片を撒き散らして次々倒壊するも、そう置かずに射撃は止んだ。
光の尾を引く曳光弾を使えば可視光による弾道確認ができるので、AI側であっても命中率向上が期待できる。しかし同時に発射点を晒す事にもなる、夜間に連射となればなおさら。そのため、ずっと森の中で姿を隠していたサイクロプス2はこの時点でナイトビジョンやサーマルを持たない者にも位置を暴露した。具体的に言うと、鈴蘭に捕捉された。
当然受けるのは魔力誘導炸裂弾による猛烈な攻撃である、完全に姿を認識してはいないので命中率はちょっとアレだが、直ちにミニガンを止め、赤光の雨から逃れようとする。
「おい待てコラ逃がさんぞ妹ォォォォォォォォ!!」
『姉様、私の姉様が姉様でよかった』
『そうかい、わたしゃ絶対に払い終わらない負債を背負った気分だよ』
枯葉から抜け出し全速で走る、走りながらロケットランチャーを引き出し、走りながら展開、そのまま距離200mまで詰め、跳躍しながら発射と投棄を行った。奇跡と言えるレベルで木々を避けて飛んだロケット弾は直撃と言わないまでも爆風で機体を煽る、減速の瞬間を逃さずさらに肉薄、マシンガンを弾切れまで撃ちながらもう1本のランチャーを片手で準備。
と、そこでレールガン発射の兆候
「当たるかぁぁぁぁッ!!」
弾体がレールを走る音と火花が出るよりずっと早く、ジャストタイミングで横っ飛び回避、ついでにマシンガンも投げ捨てた。 レールガンは木を数本吹っ飛ばしたのみで終わり、さらに接近して、機体下へ。
「悪足掻きは無駄だテメエの弱点なんかなぁ!! もうわかってんだぜぇぇぇぇ!?」
左後脚の第二関節、ロケット弾が直撃すればいとも簡単に断裂した、サイクロプス2は強制お座りの刑に処される。間髪入れず折れたクローアームを入手、機体の上に上がってCPUユニットのあたりへ突き立てる。
「ハハハハハハハハハハハハ!! 姉より優れた!! 妹なんて!! 存在しねえんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
『そろそろ本気で止めるね?』
『遅すぎるぞマイシスター』
突き立てる、何度も、何度も何度も何度も。ピクリとも動かなくなってからアームを手放し、唾を吐きかけたかったが出ないので断念。
「ん、よし……サイクロプス2撃破! 撃破ー! 残党狩りは任せまーすボクは武器がないので元の位置に戻りまーす」
「クロ!」
「へ?」
で
すっきりしたところで、何かの急速接近を察知した。