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2034

やあ、メル1人いないだけでやれる事が激減することに今気付いたプロットなんざ作ろうと思ったこともない作者おじさんだよ。

 廃基地 ミサイルサイロ

 308部隊 "サーティエイト"

 ヒナ




 ハシゴを登って外へ出る直前、少年が1人駆け寄ってきた。


「これティーって人から、チャフディスペンサー」


「お、あざまーす。と言いたいところですが、使いこなせる奴がいない」


 ユウヤがシオンに見せたのは組み立て式の発射台とロケットキャニスターのセット、対レーダー用の欺瞞装置である。1個あたりのサイズが2Lペットボトルより一回り小さいくらいの限定的な誘導能力を持った飛翔体で、組み立てたレールに乗せ、ロケットモーターを点火すれば最大500m先まで届く。中にはアルミ蒸着のプラスチックシートがこれでもかと詰められており、500m飛ぶ間に小出しする事もできるし、空中分解させれば一気に放出される。それで何ができるかと言うと囮の作製、または味方の隠匿。アルミ箔は電波を乱反射するので、適切な量をピンポイントに投下すればレーダー上では敵反応があるように見えるし、帯状に散布すれば電波的な壁となり反対側の捜索ができなくなる。

 ただし今のサーティエイトはこれを効率的に使用できない、というか遠隔操作できない。アトラあたりに頼めばやってくれるだろうが、その場にいない人物にどこへどういう飛ばし方をして欲しいか戦いながら伝えるのは非常に難しい。


「俺がやる、使い方は教わってきたから」


「マジで? 外に出なきゃならなくなりますよ」


「いいんだ」


「いやしかし……」


「何かを見捨ててまで生きる理由はなくなった」


 通信機一体式の小型端末を操作しながら言う彼にシオンは沈黙、「まぁ……」とだけ残して発射台を組み立て始めた。続いてフェルトがキャニスターを掴んでぽーいとほん投げ、真上にあるハッチの向こうでガチャコン鳴ったのを聞き届けてから残りも連続投球。


 その間、代わりにヒナが話しかけてみる。


「……いいの?」


「そうだな…正直よくはないんだけど……もっと自分勝手な奴を想像してた、そしたらあんな子で……恨む相手を間違えてるって言われたばかりだったしな」


「じゃあ、これからは?」


「落ち着いてから考えるさ」


 まぁ、それでいいのなら言う事はもう無い、思い返せばヒナもそうだった、大した手がかりもなく具体的な復讐手段もなく、何年も怒りを保ち続けるのはそれはそれで才能が要るのだ。少なくとも自分には無理だった、まして相手が特定の個人ではなく壊しても壊しても沸いてくる連中では。

 組み上がった発射台に適当なヒモをくくりつける2人を横目にハシゴの真下へ、ライフルをスリングで背負って手と足をかける。フェルトがヒモの反対側を渡してきたのでそれを握って地上近くまで上がっていく。


「サーティエイト、外に出る…あっ……」


『あ?』


 で


 ティーに連絡しつつマンホールみたいな円形のハッチから顔を出すと、さっきフェルトが投げたキャニスターを訝しげ?に見つめるバトルドールに出会った。

 皮膚を持たない装甲むき出しのタイプ、簡素な各部構造から自律行動できない遠隔操作オンリーのラジコンと思われる。彼我の距離1m以内、ヒナは穴から顔を出したまま、バトルドールは片膝をついたまま見つめ合うこと数秒。


「あ……ハロー」


『いま夜だけど……』


 幼い少女みたいな透き通った声が返ってきた。


「じゃないわボケナス!!」


 両手を地面に叩きつけ、両足でハシゴを蹴る。倒立前転の要領で足を天に向けつつハッチから抜け出、勢いそのまま回転、バトルドールへかかと落としを見舞う。もつれる形で両者倒れるも、ヒナは素早くサブマシンガンをホルスターから抜き発砲、頭部を破壊した。


「マジかよもうここまで攻めてきてやがんのか!?」


「ちょっと待って喋った! 今の人形女の子の声出した!」


「何だって!? 人形が女……いつも通りじゃないすかね?」


「言われてみればそうだわ」


 バトルドールの停止を確認、急ぎ発射台を引き上げ、これから向かうべき方向へ向ける。上がってきたシオンとフェルトに守られつつ手早く杭の打ち込みとキャニスターの搭載までを済ませ、「ペットボトルロケットにしか見えないわね」とか呟いたのちユウヤへ合図。


「ファイブナイン、敵の情報を」


『先陣が味方の防御陣地300メートル手前まで接近、そこから南西へ迂回する兆候を見せている。おそらく別の出入り口から内部侵入するつもりだろう、通気口あたりじゃないか?』


 そうしたら今の1体は何だったのか、ここは交戦地帯から真東、後続も連れていない。偵察にしても不自然だが。


「ま、いい。さっそく一発だ、欺瞞モードで通気口付近にチャフ散布」


「わかった、撃つぞ」


 発射の様子はまさにペットボトルロケットか、もしくは巨大ロケット花火である、尻から火を噴き勢いよく離昇、数秒で燃料を使い果たした後は目的地まで無音で滑空する。まもなく敵のレーダーには謎の影が出現するだろう、進行を遅らせるには十分な筈。


「よし、では私らは行きます、危険を感じたら身の安全を優先するように」


「ああ」


「サーティエイトからランドグリーズ、目標のマーキングを始めます、5機タグ付けするまでは動かないで……」

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