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再会

 セリフのみお楽しみください




「やぁ、この熊鍋はサービスだから、まずは食べて落ち着いてねぇ」


「あぁああのあのあの……ててて手縛られてて食べられ食べ……」


「どうしたのぉがたがた震えてぇ(雑草を衣液に浸す)」


「ははは……僕は屈しない、屈しないぞ、そこにかかってる鍋どうせ熱湯でしょ? またかけられるんでしょ?」


「ねっとぉ?」


「二度同じ手はつつ通じないぞぉ? かけてみるがいいさぁ」


「……(雑草を鍋に入れる)」


「……(揚がっていく音を聞き届ける)」


「ふぅん、そういうのリクエストなんだぁ(天ぷらを皿に並べる)」


「リクエストはしてないしてない!!」


「もっとソフトなの用意してたんだけど、じゃあまた熱湯にしようかぁ」


「それ熱湯じゃないよね!!?」


「えぇーー?」


「待って来ないでカップ一杯すくわないで!! わかった何が望みだなんでも喋る!!」


「教えてほしいことは別にないかなぁ」


「じゃあどぼじでごんなごどずるのぉぉぉぉ!!?」


「熱かったら言ってねぇーー」


「いや絶対に熱




















 で


「あった」


 施設の電子的な掌握を終えた後、使えるアンテナを探して山の向こうに電波を飛ばしてみた。そうしたら味方からの応答が返ってきて、仮拠点に辿り着いたところだという。

 この基地と山のトンネルは本当に線路で繋がっていた、暴れ牛の解体をする意味はほぼ失われている。食糧事情もとりあえず改善したし、焦る理由は無い。

 なのでメルは電子部品を探していた、中型バイクの制御装置に使えるコンデンサやら何やら、新品とは言わないが少なくとも消耗しきっていない部品である。セルモーターも見つかったし、ポニョいじめを終えたフェルトが既に交換を始めている。


「直ったらどうすんの? もうすぐここ、人でいっぱいになるけど」


「決めてないな、長距離を走れるようになったら考えるよ」


 ポニョが居座っていた中央司令室の機材をひとつ解体して出た電子回路基板をユウヤに渡し、近くのパソコンデスクに腰掛ける。タブレットを引き出しサーバーと無線接続できるか試したりしつつ、出口付近に立つ彼へ話しかけた。


「山越えはお勧めできないかな、敵が多過ぎる」


「ああ、聞いてる。……それで、間違ってたら悪いんだけど、もしかして俺たち、出身地近い?」


「ん? まぁ、たぶんね」


 顔の特徴から割り当てたのだろう、こちらは名前を聞いた時点でわかっていた事だが。近いといえば近い、間に海があるにはあるけども。


「こんな遠い場所で同郷の相手に会うとは思ってなかった、大変だったろ」


「そうだった気もする」


 サーバーとは繋がった、施設の全機能を操作可能だ。監視カメラがやたらめったら多い、どれだけ設置したのかあの男は。内部だけでなく外にも数台、これは監視に使えそうだ


 と、考えていたら早速役に立った。


「おっ……姐さん、北東から接近する敵あり。巡回してるユニバーサルドールみたいだけど」


『近付けたくねーですな。ファイブナインを向かわせます、メル子も戻ってきといてください』


 鈍器だけを所持する家庭用の人形である、戦闘力は無に等しい。映像では同じルートを回り続けるタイプに見えるが、こちらよりかは地の利があるユウヤは「初めて見た」とのこと。なんとなーく嫌な予感がしてデスクから飛び降り、ほったらかしていた重アサルトライフルを掴む。


「さっき電波出してなかったか? アンテナがどうとか言ってたけど」


「それで寄ってきた訳じゃないと思うよ、必要最低限の出力だったし、電波出したら寄ってくるっていうなら私らとっくに襲われてる」


 ユウヤが聞いてきたので初弾装填しながら返す。

 トンネルを抜けてからというもの、一切の電波管制をしてこなかった、一切の敵影を見なかったし、傍受されても逃げ切る自信があったからだ。先程行った長距離通信もなるべく手短に済ませたし、あの人形が巡回ではなく、こちらの存在を確信して放たれたものだというなら、我々は今、敵の罠にはまりつつある。


「考えすぎだって」


「そうかな……」


 警戒はするが、躊躇うには早すぎる。そう思って部屋を出ようとし


「故郷がそれでやられたからさ、電波塔から電波撒き散らした奴がいて」


 そこで全身が凍りつく感覚がした。


「ぇ……」


「言ってなかったっけか? その子を探してここまで……うわっ!?」


 ほぼ無意識、自分が出るのをやめた代わりにユウヤを押し出し扉を閉める。直ちに施錠されて、反対側で彼が叩く音と声。


「あの、それ、小島が集まってるとこ……?」


「え? あ、あぁ…島が橋で繋がってて、ビルがたくさん……」


「"リン"でしょ…? 探してるの、カ・リンシン……」


「なんで知って……」


 彼がこじ開けようとするそれを開けようとはせず、こつりと頭をつける。

 小さく、小さく呟く。


「それ…私だ……」

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