一斉攻撃
『サーバールームの位置を特定した、廊下の先にある階段を一番下まで』
「充電は?」
『戦闘行動可能なレベル』
「じゃ、ポニョのいる部屋に物理的な攻撃をかけよう、ヒナちゃん以外の3人、正面からね。10秒後に全力DOS攻撃、60秒後に最短ルートで殴りに行って」
『殴るだけじゃやだぁ……』
「アトラー、妹から目離さないでねー」
『お前は満面の笑みで万力のサビ取りしてる幼女を止めろーー』
それは無理。
「姐さん姐さん」
「おっ?」
ここなら捕捉されないだろう倉庫っぽい小部屋でメルと鈴蘭は待機していたが、カメラを壊して回るシオンの気配を察してドアをちょっと開けた、廊下の天井に向かって1発だけ撃ってから滑り込んでくる。
入室してすぐ、拾ってきたらしいポニョの使うテーザー銃を見せてきた。トラップとして置かれていたもので、モーション感知センサー付き、前を横切ると発射する。
「なんか言われた?」
「"口塞ぎたい"言われましたが」
とりあえず聞いてみたがそれはいい、本人も意味がわかっていない。
同時攻撃だ、本陣を狙いつつメインサーバーへの接触を試みる、サーバーを乗っ取れれば本陣は丸裸になるが、その前に本陣を落とせるならサーバールームへ行く必要は無い。本命はどちらでもよく、状況に応じて、という感じ。
なんでさっさと行かないのか、というと、サーバールームの位置特定を待っていたのもあるが、道中はトラップまみれだろう事がわかりきっていたからだ。相手は1人、先程のようなドローンは1機ずつしか動かせないので、テーザー銃はもちろん同じくセンサーで作動するタイプの電流マットやらトラバサミで防衛しているに違いない。スピーカーを使った精神攻撃も1人ずつしか行えないし、あくまで自律制御は使わないようだし、となればアナログな手段に頼るしかない。手に入れたサンプルを簡単に調べると普段は電源が落ちていて、無線で起動信号を送れば作動するタイプだと思われる。そして安全性確保のため制御機器との無線リンクが途絶えれば停止するらしく、うまいことアンテナだけ壊されたそれはセンサーを遮っても動かない。やはり有能は有能なのだなあのデブ、だがその賢さが命取りだ。
「EMPグレネード用意」
『できてるぞ』
「投下、ゴーゴーゴーゴー!」
言うや否や、メルは部屋から飛び出した。トラップの心配はもういらない、ポニョの『ノオォォォォォォウ!』という悲鳴と共に全滅した。
『アイエエエエエエ!? EMP!? EMPナンデ!?』
『効いたか!? 効いたな!? 逃げるぞ!』
『オウシット! 野郎なんか画面に映したくないからフィルターかけてたのが仇になったぜベイベー! まさかこんな近くまで忍び込まれてたとは!』
実は別働隊がいたのである、絶対追跡されないという確信のあったユウヤを本陣裏に回らせ、強烈な電磁波で機材を破壊させた。放送機器は生き残ったようだがトラップ制御装置は死亡、彼はヒナが拾いに行く。こちらは可能な限り素早くサーバールームを制圧、ロックされた扉を開ける。
『まだだまだ終わらんよ! バンカーバスターの直撃にも耐えるこの壁は破れまい! そして目覚めよ我が最終兵器アルティメイタムロングホー』
「うるせぇ!!」
「いい加減黙って!!」
階段を降りきった直後、40mmグレネードマシンガンを非殺傷化したやつ載せた大型UGVが通路を塞いでいたのだが、シオンが魔力貫通弾を連射、マシンガンを吹っ飛ばし、続いて鈴蘭が散弾をぶちまけ、さも当然のようにキャタピラを蜂の巣にした。残骸を飛び越えてメルが先行、サーバールームのドアを蹴り破りタブレットをサーバーに接続。
はい終わり。
「ロック全開放!」
『やばいやばいやばいくぁwせdrftgyふじこlp』
『熱湯風呂の時間だコラァ!!』
『ギャーーーーーーッ!!』