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第二次デジタル戦争開戦

「ほぼ種ですね」


 とんでもない広さを持つ地下基地だった、半分開いたシャッターからバギー2台を侵入させ、すぐ近くにあった配電盤のスイッチを適当に切り替えれば照明も点灯する。

 鉄道車両の整備場だ、複数の線路が並列に並び、電車の残骸が何両か。安全を確認したのちキャンプを移設、その他監視カメラ設置やらトラップ設置やら済ませていると熟練ハンターも真っ青の速度で熊肉の塊が届けられた。ごく一部の部位のみだが30kg以上あり、休憩したらまた取りに行くとのこと。


 なので鈴蘭とかがアケビの実から種を抜き取る作業をしている間に調理をしよう、今夜は熊鍋だ。

 まず下処理を行う、ほとばしるケモノ臭をどうにかせねばならない。お湯を沸かして熊肉を入れ、ドン引きするレベルのアクを取り、お湯を入れ換えてショウガとアサツキを投入、しばらく煮る。

 それを終えれば後は普通の料理だ、キクイモとポルチーニとクローバーも使用、シチューを作る要領で、ルーの代わりに醤油を使えばいい。


「しかしこりゃ助かった、なんだかんだでテントは辛い」


「お前らはそうだろうが私らはまだ充電、充電ができてなくてだな……」


 とかアトラが言うので仕方なしと、次のフェルト不在に備えて調理工程をじっと見ていたメルは立ち上がった。そこらのコードを切って電圧を整えればいけるだろう。


「ちょっと待ってね、これでも食べてて」


「お、ありがとう。……種の周りにこびりついてるのが食えるのか?」


 手持ち無沙汰なユウヤにアケビを渡し、要約すると「ほぼ種」と言うのを聞き届けたのち車まで工具を取りに行く。必要なのはニッパーとトランスと


『うおおおおハーレムチャンスよ! 私は帰ってきたーー!!』




 おい帰ってくるの早すぎだせめて充電して食事してバイク修理してからにしろ。




『説明しよう! 山のトンネルこと僕の城とこのミサイル基地は地下鉄で繋がっているのだ! という訳で今度こそゲハハハハハハ!』


「…………フェルト?」


「さすがに水かけられたくらいじゃなぁって」


「なんでそこで冷静になったの……」


 前回の被害者がとてつもなく嫌そうな顔をしている。

 という訳でスピーカーから聞こえるのは例のアイツ、トンネルでフェルトに熱湯風呂された小デブの声である。「自力で立ち直ってトラウマを振り払い火傷を押して我々を追跡し先回りして施設を掌握したんすか?」「有能すぎるだろあのデブ」などと聞こえてきたので確かめてみようと配電盤まで駆け寄る。近くにLANポートがあった筈だ、見つけてタブレットを接続。


「おっと」


『それじゃあゲームスタートだよ! まずは光を失ってもらう! それで暗闇の中1人ずつ……あれ……』


 確認のつもりだったがタイミングが良かった、中央司令室なる部屋からのコマンドである。直ちに今いる車両基地の権限を書き換え、照明の切り替え命令を拒否する。


『あれなんで? 車両基地がまるごとネットから消えたよ? ぬぉーいどこいったー、鉄ちゃんよー、お前はこの僕の胸に帰ってくるしかな』


 スピーカーも切っておこう、何か情報を吐くかと思ったがヒナのヘイトを集めるだけだ。一応、電子的な防御を固めた上でネットワークを調査する。

 想像以上にこの基地は広かった、もはや地下都市と呼んでもいいかもしれない。ケーブルの断裂によりネット上から確認できない場所もあるとしたらどこぞの夢の国以上、そしてそれと同じ規模の基地がいくつも地下鉄道で繋がっている。生憎、作るだけ作ったところで力尽きたようだが。


「ご飯はお預けみたいだね」


「やり合うのか? 得るものがあるとは思えんが」


「いや、この基地は本拠点として確保したい、それに面白そう。充電の目処が立ったらここから中央司令室へ攻撃をかけて、処理速度的に突破はできないだろうから、嫌がらせするだけでいい」


 寄ってきたアトラにはそう指示、接続を切って皆の元へ戻る。

 これから始まるのは銃撃戦ではない、目に見えない電気信号の飛ばし合いだ。だが完全勝利には物理的な攻撃が必要だ、中央司令室に踏み込んで奴を拘束する。その旨をシオンに伝え、前回ほど態勢不利ではないが同じような戦いが必要とも告げた。


「どうすればいいんすかね?」


「原子炉区画になーんか違和感あるけど……いいや、電子的な安全を確保しつつサーバールームまで向かう。直接接触できればコントロール奪う自信あるから、捕まえるのはその後」


「オーケー、じゃあ細かい指示は任せるぞ、連れていきたいのを連れてってください。フェルトは……」


「ちょっと準備がいるかなぁ」


「料理の?」


「うん、料理って呼ぶ人もいるよねぇ」


「あはーはははははひは…………行動開始!! 以後奴の事はポニョと呼ぶ!!」


「ぶっは!!!!」


 なんか鈴蘭が種吹いた。

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