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(じゃあひと思いにやっちゃお)

 電源の生きている扉があった。


「開かない」


 中型トラックくらいなら通れそうな、おそらくトンネルに繋がっているだろうスライド式の扉である、すぐ隣の壁にモニターとキーボードが埋め込まれている。モニターにはパスワードの入力システムらしきものが映っており、これを解除しないといけないのだろう。


「C4持ってるよボク」


「それを使うのはまだ早いわね、この分厚い扉を吹き飛ばせるだけ仕掛けたら天井崩れそう」


 発電機が稼動しているなら他に人がいる筈だ、まずはそれを探し出しパスワードについて尋ねよう。ここを住処にしている者なら食糧か何かを駄賃に渡せばよし、クレムリンの兵士ならシバけばよし。

 軍事基地だったようだ、天井の照明で照らされたその空間には装甲戦闘車両が残されている。ずっと屋内にあっただけあり状態は良く、レストアすれば動くだろう。壁にはシャッターが並んでいて、開いている箇所を覗くとバンカーのヘリ格納庫みたいな感じ。そこ以外には木材でバリケードを張られた箇所がひとつ、後は閉まっている。


「誰かーー! 誰もいないのかーーい!?」


 車両の間を走り回るクロから目を離し、やや上の方を見てみる。駐車場の管制をするらしい部屋がひとつ、天井に張り付くようにあり、そこも明かりがついていて、遠目には影が揺らいでいるように見える。


 と、考えていたら、その部屋の近くにぶら下がるクレーンが急に動き出した。


「クロ!」


「へっ……」


 アームを開いて、掴んでいた鉄スクラップを落としたのである、下には丁度クロがいた。狙われたのが人間だったら絶対に間に合わないタイミングだったものの、人間ではないクロはそこそこ余裕を持ってダイビング回避、無為に落ちたスクラップが轟音を立てる。

 続いて装甲兵員輸送車がバリケードを破って突っ込んできた、これも慌てず助走を開始、衝突直前に飛び上がって前面装甲上部に片手をつき、前方宙返りの要領で空中1回転、着地する頃には車両は進路上の戦車に馬乗りしていた。


『やあお嬢さん達! 僕の城へようこそ!』


 駆け寄ったフェルトがハッチを開けて車両の無人を確認、その後すぐにスピーカーが喚く。


『外に出たいのかい? ならそうだなぁ! 茶色い髪でコートの子が1人で一番奥まで来るんだ! 後の2人はいらないよ、適当なところで死んでくれ』


 全身から、いやまだ姿を見てないが頭の悪さを垂れ流す男の声だ、ここを根城にする奴らしい。女性に向かって1人で来いっつーのはつまりそういう事だ、ヒナをご指名のようである。まぁ誰を選んでも奴の望み通りな展開は絶対に無いので、別に従ってもいいのだが、どうしてこの地域の住人はフェルトのスイッチを入れたがるのか、目を離せなくなった。


「今日はあの人を(自主規制)すればいいのぉ?」


「絶対やめて」


「(自主規制)あるから(自主規制)してもいいけど」


「駄目だって」


 まず何よりも彼女を静止、ぶすくれるだけに留める。その間にクロが階段を駆け上がり管制室を調査、「逃した!」と叫ぶ。


「道はありそう!?」


「あるよ! 鍵かかってるけど! これは壊していいよね!?」


 なら仕方ない、追ってやろう。追いついた時が奴の最後だ、獲物を目の前にした拷問姫を止める勇気はヒナには無い。


「シオン、めんどくさい事になった」


『ええ聞いてました。外は片付いてますんで気にしないでください、こちらも出入り口を探してみます。後はアレかな、レーティングは守って欲しいかな』


 それは保障できない。


 とにかく道はひとつだけ、進むしかなかろう。

 爆弾を引き連れてヒナは管制室の先へ向かう。

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