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「電池……」

「こんにちは」


「「こんにちは……」」


 特に連絡は取らなかったのだが、ヘリコプターの着陸地点となるゴーストタウンの広場には、こちらの行動を予測していたようにヘリパッドが設置されていた。Hの文字が大きく描かれ、ご丁寧に誘導灯付き、当然ヘリはそこへ引き寄せられた。

 まず機外に吊り下げていた4人乗りバギーを接地させる、ホバリングしている間にバトルドールが駆け寄ってきてワイヤーを接続解除、バギーを退かした。続けてヘリコプターも着陸し、エンジンを止めれば今度はグリムリーパーが出現、バギーを吊っていたワイヤーをうまく使って機体を牽引していく。もう1機のヘリも同じ動作だ、無補給で帰還できる燃料が残っていないので、陸路で移動中の本隊が追い付くか、補給用の燃料を積んだ別のヘリが来るかするまでこの2機は動けない。


 で、その作業を終えた後、サーティエイトをキモカワ牛が出迎えた。


「第一に宣言しておきますが、我々は既に戦闘能力を放棄しています。我々は貴方がたを攻撃しません、我々は貴方がたの力となれません、覚えておいてください」


「「はい……」」


 初対面のシオンとメルが呆気に取られる中、uM17は移動を始める。「あちらの区画は人間の居住環境を整えてあります」やら「電力が必要なら先端がイエローに着色された柱を探してください」やら喋りつつ町外れの方向へ、これから向かうべき西の山肌を一望できる場所まで誘導された。


「自動車道は完全に雪の下です、しかし大隊規模の移動痕跡が残されているのでそれを辿れば迷う事はないでしょう」


「連中、拠点とか作ってないの?」


「トンネル手前に監視塔がありますが、76時間前を最後に動体反応を確認できていません。放棄されたのではないかと」


 きっと撤退したのだろう、こちらの反撃を恐れて。悪いが連中に興味は無い、いやどうせ本拠地には向かうのでとりあえず憂さ晴らしはしておくが、あくまで中継点であって目的地ではない。居ないのなら好都合だ、一気にトンネルまで行ってしまおう。

 で、足になるのが持ってきた4人乗りバギー。


「あの車両はどうやって動作させるのでしょう、少なくともガソリンタンクが欠如しているように見えますが」


「燃料がガソリンじゃないからね。積んでるのはモーターと魔力変換器、電気をその場で生成して走るんだ」


 uM17の問いにメルが答え、丁度よく2台同時にその場まで押されてきた。装甲という言葉をまったく使わず説明できる外観である、ボディを剥いだラリーカーという表現が正しいだろうか、電装系を水から守るカバーがあるのみでフレームに乗った座席もモーターもむき出しそのまま。悪路走行の要となるタイヤはえげつないトレッドが刻まれ、巨大なサスペンションを備えていて、片方についてきた鈴蘭が飛び乗ると車体が大きく沈み込む。


「だからガソリンタンクはないよ、鈴蘭(バッテリー)が近くにいて初めて動けるようになる」


「今ものすごく愉快なルビ振りしませんでした?」


「してない」


「しましたよね?」


「してないしてない」


 鈴蘭問う、メルすっとぼける。

 つまり、鈴蘭のアホみたいな魔力放射をその場で電気に変換、モーターを回すので、彼女やティーのような魔力操作可能な者が近くにいるか、もしくはバッテリーを外付けしないと動力を得られない。まぁ、その"近く"というのが鈴蘭の場合は数百mの範囲になるので、車列を組んで移動する分には実質的に航続距離無限といえよう。

 とはいえ念のため、サーティエイト車にはバッテリーを接続してある、例のシオンが買ってきた巨大乾電池。


「運転せんのか?」


「いいです、後ろで電池してます……」


 なお向こう、1人の人間と3体のアンドロイドで構成される食事に苦労しそうな(煮る焼くくらいはフェルトがレクチャー済み)新設部隊だが、番号は59となった、777は既に存在していた。服装をバンカー仕様のフリースジャケットとカーゴパンツで統一して、武器に関してはアトラはスナイパーライフル、鈴蘭はマークスマンライフルで変化無し。ティオは交戦距離を合わせるためサブマシンガンを追加、直刀を1本のみにし、代わりに大型ナイフを腕に着けている。それで問題のクロであるが、汎用軽機関銃、1人で扱うのは普通考えない本体重量10kgオーバーのマシンガンを担ぐ。使用弾薬はヒナと同じ8.6mmで、つまり射程1300〜1500m、銃身長から考えても十分狙撃に使用可能である。総合すると長距離偏重だ、後方に置いて他部隊を支援しつつ、接近されたらティオが対応、という形になるだろう。

 まぁ今から向かうのはトンネルなのだが。


「とにかく出発しましょう、全員搭乗」


「お気をつけて」


「そちらもね」


 シオンが乗ってアクセルを踏むとしっかり動いた、魔力放射をちゃんと受け取っている。放出元は電池扱いされてうずくまってしまっていたりするけど。


「電池……」


「電池は喋らんぞ」


「まぁ……慰めてるの煽ってるのどっち!?」

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