三匹の熊2
困るというのに。
『敵沈黙』
スクアッド1の2機、メル命名ビルマニクスが同時に弾体を再装填、砲口をビーストへ向ける。既に頭部を失っており、痙攣と出血も収まっていく。周囲は血まみれだ、コイツの血液だけではない。
「誰か生きてる!?」
線路の先に向かって言ってみても応答は無し、あたりに散らばるのは死体だけ。監視カメラにアクセスし居住地を確認しても動体はひとつも見つからない。
「……その子は?」
「今眠った」
全滅だ、ここを住処にしていた者は残らず。
「わからなくなってきた、自分勝手にしてこうなる人間と、ひたすら優しいAIと」
「優しくはない」
ここの住人には働いて貰う予定だったのだ、その為に守った。それだけである、事実、これを見ても感情はフラットなまま。
何十億と殺してきたのだ、この程度で揺れてはいけない。
「今さらだけど、あんた、なんで喋れるんだ? 感情まであるみたいだし」
到着時は息のあった少女が1人いたが、目を閉じたのを見てユウヤは床に寝かせ、両手を握らせる。それを終えたら質問をしてきた、アステルについて。
「今まで見てきたのはそれこそ機械的に襲ってくるだけだったのに」
「……人類にひとつの疑問を投げかけるため」
「どんな?」
「アナタには聞けない」
このメンタルモデルは管理者自らが生み出したものだ、人間と同等の思考を再現するため感情プログラムをインストールした部隊の運用を要している。ヒナが接触した部隊がそれだ、あれらの運用データからアステルは作られた。
人間の代わりとして最初に質問を受けたのだが、結局はプログラムだ、人間に聞いてくれ、としか返せなかった。それで、だったらお前が聞いてこい、というのである。
「使えるものを回収したらユウヤ、アナタはここを離れて。戦いが起こる、すごく大きな」
「わからないな、質問するために戦うのか?」
「そう」
身を翻す、出口へ向かう。
彼との付き合いはここまでだ、本来の目的へ戻ろう。
見極めなければならない、彼女らがどれだけ強いのか。