すり切れたディスク2
本当にクソ偶然ですが今回101話です
CAI-0、通称管理者はあらゆるAIへの命令権を持つプログラム群の事だ、グローバルネットワークを絶えず巡回し、バグやエラーの除去、不正行為の捜索を行う。
この使い方を誤れば世界を牛耳る事も可能な最上級AIはその性質上、誰のものであってもいけなかったため、自分自身で最適な判断をするよう設定してある。例え生みの親である私の命令でも社会全体に不利益をもたらすようなものなら拒否するだろう。
今回の事件はそのシステムが暴走した事にある、奴にとって社会とは地球そのもので、そこに人間の存在は必須ではない。悪化を続ける地球環境を見てむしろ不要と判断したのだろう、現在、奴は人間からのあらゆる干渉を受け付けない。
だが手はまだある、管理者の本体、サーバーに接触できれば直接強制停止命令を送り込める、もしくは物理的な破壊でもいい。命令コードを記した資料はこのディスクと一緒にしておく、それから見つけ出して欲しい。
管理者サーバーは高さ50メートルの円筒形、アクセス用端末は最下層にある。そこに辿り着くにはロックされた扉があり、残念ながら私はパスワードを教えられていない。現地政府の人間が知っている筈だ、この事態を見て私と同じ考えに行き着いたのなら死守してくれていると信じる。
まずパスワードは大統領府にあると思う、中世の宮殿を利用した政府中枢だ。周囲を城壁に囲まれているから防御力は高い、きっと残っているだろう、例え君が私よりずっと未来の人間でも。
施設に着いたら大統領執務室を目指してくれ、鍵はかかっているだろうが単なるドアだ、好きなようにすればいい。私は当時の大統領と面識がある、重要な物は執務机の引き出しにしまい込む癖があった、意図的に残すにしてもそこに入れるのではないだろうか。
すまない、こちらに関しては憶測以上の事は言えない。
そして肝心の、管理者サーバーの場所だが、そこからもっと北にある。話によるとテロリストがそう簡単に襲撃できない位置に置いたらしい、最寄りの都市から少し離れた、山の麓だ。入り口の周囲には防衛施設が点在している、きっとすぐ見つかる。
私が君に与えられる情報はこれですべて、もう手遅れなのかもしれないが、君がまだ諦めていないのなら、どうか奴を。
そして人類にもう一度栄光を。