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75話 麗しの主従関係……騙されるなよアメリ! その女は地雷だぞ!

地雷でも着いていくアメリ尊い……

みんなも、アメリを尊ぶべき。



 ――――沈黙は不吉なり。


 カミラとユリウスは今、身を以てその事を実感していた。


 ドゥーガルドの爆弾発言の後、サロンにやって来た王子や先生方にこってり怒られたカミラ達。

 次の日の放課後――――つまり今から東屋周辺の、補修作業……というより最早、一からの作り直しをするのだが。



「いったいあの男は、何がしたいんだ……」



「私の事を好きだと言ったわりに、話しかけて来たのは朝の挨拶だけでしたものね」



 カミラとユリウスは、ジャージ姿で東屋へ向かいながら、不可解なガルドの行動を話し合う。



「ああ言って宣戦布告したなら、次の日から積極的に来るんじゃないのか? ――お前みたいに」



「そうですわよねぇ……本当に好きだと言うなら、それこそ夜討ち朝駆けしても、いい筈なのに」



「…………おい、お前はそれをするつもりだったのか?」



「あら、大切なユリウス様に無用なストレスを与えない為に、観察する程度に押さえときましたわ私は――――えっへん!」



 アメリには負けるが、豊満な胸を張るカミラ。

 その姿に、揺れてしまった胸に一瞬視線を釘付けにするも、ユリウスは頭を抱えてしゃがみ込んだ。



「お前…………いや、わかってた筈だ俺。こいつはそういう駄目女だって、わかってた筈なんだ……」



 世が世なら、ストーカーで突き出されてもおかしくない。

 というか、親しき仲にも礼儀あり。

 今すぐカミラを檻の中に入れた方が、ユリウスはわりと真っ当な未来を歩める。

 ――もっとも、道を外れる事を選んだ故の現状なのだが。



 ともあれ、ユリウスは即座に妥協案を出す。



「…………取りあえず、お前が俺を覗き見している魔法を教えろ。俺もお前に使うから」



「まぁ! まぁっ! そ、そんな…………いやん恥ずかしいぃ…………」



「やられて恥ずかしいと思うなら、俺にもやるな馬鹿女ッ!」



 恥ずかしそうに頬に両手を当て、全身をクネクネさせるカミラに、ユリウスはベチコンと、白色のジャージに包まれた桃尻を叩く。



「――――ひゃうん! け、結構痛かったですわよユリウス様っ!」



「やかましい。――ほら、さっさとその魔法を教えるんだカミラ」



「うぅ~~、ユリウス様のいけずぅ…………」



 でもユリウスが与えてくれるなら痛みでも、と呟きながらカミラは少し背伸びして、ユリウスと額を合わせた。

 肉体的接触により、魔法の術式を過不足なく直に相手に送るのだ。

 ――なお、指と指の先をくっつけるだけでも可能な事を明記しておく。



「では、送りますわユリウス様……」



「ああ、何時でもいいぞ」



 接触伝達の魔法陣が、寄り添う二人の足下に浮かび上がる。

キスする様に二人は目を閉じ、情報を受け渡した。



「…………ん。――成る程、位置把握と小動物支配による音と映像の入手、いやそれだけでは無いな。……なんだこれ? 俺専用の行動予測の魔法術式!? お前そんなモノまで作ってたのか!?」



「愛故に、ですわ」



 伝達が終わってユリウスにぎゅっと抱きつくカミラを、ユリウスは呆れた目で見下ろした。

 この女の愛の深さはどれ程のものなのだろうか。



「お前……俺の事、好き過ぎるんじゃないのか……」



「ええ、私の全てを捧げても足りない価値があると思ってますわ」



 ごろにゃんと言う擬音が聞こえてきそうな程、素直に甘えているカミラを、ユリウスはため息を吐きながら抱き返した。



「正直重いが、男冥利に尽きる…………という事にしておこう。――――何を間違っても俺以外にするなよ」



「愚問ですわね、貴男以外は塵芥も同然ですか――――」



「――――ああーー! 酷いですっ!」



 東屋に行く足を止め、焼け落ちた花壇の脇で抱き合うカミラに、冷たい大声。

 瞬間、ばっとカミラとユリウスは体を離して声の方向へ顔を向ける。



「アメリ!? こ、これはそのぉ…………」



「お、おっと。待たせた様だな、すまない」



 しどろもどろな二人に、――特にカミラへとアメリはやはり冷たい視線を送り拗ねる。



「酷いですカミラ様、こんなにもわたしは尽くしていると言うのに…………!」



「誤解よアメリ、だって貴女の事を塵芥なんて言うわけないじゃない!」



「嘘です! ちゃんと聞きましたもーーん!」



 ぷいっとそっぽを向くアメリに、カミラはそっと寄り添ってその手を両手で掴む。



「アメリ・アキシア。貴女は既に、私の……、いいえ。私自身、大切な魂の片割れとも言ってもいいわ。そんな貴女が、塵芥な訳ないじゃない…………!」



「カミラ様……………………その本音は?」




「私に何かあったら、道連れで殺します」




「――――ホント、ブレないですねカミラ様は!? こんな主人の所にいられるかっ! わたしは逃げ――、って手を離してくださいよ! 何が悲しゅうてカミラ様と一緒に死ななきゃいけないんですか!? ブラック極まりないですよっ!」



 喜んだと見せかけて、鋭く本音を聞き出したアメリは、無理くりに運命共同体にしようとするカミラから逃げだそうとする。


 しかし、カミラもそれは予想済み。

 逃がすまいと、がっしと強く握って、手を離さない。



「いや、うん。カミラがアメリ嬢を大切に思っているのは解るが、何でそこまでするんだ?」



 傍観者となったユリウスの、素朴な疑問にカミラは答えた。

 勿論の事、アメリを捕まえたまま。



「何でって…………」



 カミラは言いよどんだ。

 アメリがカミラの下に来る事となったのは、本当に偶然の産物だ。

 長い繰り返しの中でも、今回が初めてのケースである。



(ゲームでも、特に思い入れのないキャラだったし、何でこんなに入れ込んでいるのかしら?)



 黙るカミラを、アメリがじっと見つめた。

 虚偽は許されない。

 するつもりも無い。


 だからカミラは、素直に気持ちを吐露する事に決めた。



「…………多分、アメリが私を慕ってくれているからね」



「それだけか? もっと他に特別な理由があるもんだと思っていたが」



 ユリウスの言葉に、アメリも首を縦に振る。



「細かい理由を挙げれば、もっと沢山あるわ。けど――――」



 カミラはアメリの頬に手を添え、柔らかく微笑んだ。



「本当に、感謝しているの。嬉しいのよアメリ。貴女が私を好いていてくれている事、側にいてくれる事。――――そのお陰で、私がどれだけ頑張れているか、どれだけ道を踏み外さずにいられたか」



 事実“独り”で居た時は、何度道を外して、悲しい結末にたどり着いた事か。

 今回だってアメリが一緒でなければ、どうなっていたか判らない。




「ありがとうアメリ、何度だって言うわ。――貴女の忠誠と献身に感謝を」




「貴女という存在があるから、それに誇れるように私は私であるよう正しく居られるのよ」




「――――身に余る光栄、過分なお言葉。ありがたく思いますカミラ様」



 嬉しそうに出されたアメリの言葉は、すこし震えていた。

 そんな可愛い従者を、カミラは大事そうに抱きしめる。

 ――――――だが、そんな優しい雰囲気を邪魔する様に、空気の読めないトランペットの音がぷわわ~~ん。

 カミラとアメリは抱き合ったまま、顔を見合わせる。



「仲良き事は良き事かな…………、しかし君達。何か忘れていないかーーい!」



「兄さんッ!? 何でここに――って、あああ! 東屋の修理ッ!」



「…………あ」



「そ、そうですよカミラ様、それでわたしは呼びに来たんですって!」



 我に返る三人を、エドガーは困った生徒に向ける視線で一言。



「まったく、ドゥーガルドは先に来てもう始めているぞ! ――――では、一同駆け足ッ!」



「「「はい!」」」



 カミラ達は、東屋へ一斉に走り出した。



気付きましたか?

割烹でも通知しましたが、タイトルちょい変えました。


※追伸、粗筋も内容そのままに、一新しました。


恐らく? これが最終形態である筈です。

ループ関係は、衝撃の真実関係と思っていましたが。

より広い人に興味を持って貰うには、そっちも入れておこうかな。

という判断です。


前のが超絶気に入っていた人は、すみませぬ。

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