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死せる少女と魔法の法則  作者: 西玉
死せる少女
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侵入 氏家邸

 ――久しぶりだな。

 五寸釘レオは、三メートルもの板塀を一切触れることなく飛び越えた。豪邸とはいえ一般人の民家である。要塞のような罠が仕掛けられていると考えたわけではない。足に意識を集中し、地面を思い切り蹴った結果である。

 屋敷の敷地内に足が付いた瞬間から、猛獣のけたたましい吠え声が聞こえてきた。番犬だ。氏家の番犬には二種類あり、吠えて人間たちに警戒を促すのが役目の犬と、ただ目標に接近し、一切吠えたてることなく相手の喉笛を狙う殺人犬だ。

 吠える役目の犬は普段はかわいらしいテリア犬などだが、攻撃の役割を担うのは闘犬で知られるドーベルマンである。

板塀を飛び越えたレオは怪しい人間だと認識されたということであり、その点で否定するつもりなかった。素早く周囲をうかがうと、遠巻きにほえたてる犬たちを飛び越え、俊敏な影のような犬たちが近づきつつあった。

犬たちの足音、荒い呼吸に耳を澄ませ、距離を測りながら足に意識を集中させる。筋肉の酷使する以上、一度の使用で筋繊維はかなり損傷する。回復させながらでないと、そのうち身動きすらできなくなる。

屋敷の建物はすぐ目の前だったが、すんなり入れてくれるとは思えない。

 古風な設えの日本屋敷の二階を見上げる。レイカの部屋は、幼いころから変わっていないとすれば二階だ。今レオが居る場所から窓が見えるはずだった。

 全力で跳躍すれば、屋敷の上まで飛び上がることも可能だ。筋肉の修復ができないほど追いつめられるとは思えない。レオは目標をレイカの部屋の窓から屋根の上に変えた。突然窓を破ってはいるほど、レイカの身に緊急事態が起きているという確信があったわけではないのだ。

 ――もう一度電話をかけてみようか。

 携帯電話を取り出し、少し考えた。耳に、近づいてくる軽快な足音が響いた。侵入者を行動不能にするために訓練された、氏家家の番犬である。

 話が通じない相手に、レオの精神誘導は効果を持たない。レオのような中級魔法使いの中にも、動物の精神支配を得意とする者もいる。人間の相手をするより、より確実に服従させることができるらしいが、レオは動物への命令を不得手としていた。

 事情もわからないまま、レイカの家の者を傷つけたくなかった。たとえ犬であっても、訓練にはレオの学費以上の資金がかかっているはずだ。

 犬と争わないため、レオは地面を蹴りつけた。体が浮き上がり、太ももの悲鳴と引き換えに、レオは氏家の本家を見降ろす屋根の上に至った。

 同時に、レオが片手に握りしめたままの携帯電話が鳴った。

 レイカの携帯からの着信だった。


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