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放浪魔女ソ・ウンジェ  作者: ソ・ウンジェ
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007 インストール(Install)

空気には消毒薬の匂いがした。


生命維持装置が稼働する集中治療室で、看護師がベッドの女性患者を横向きにしていた。背中を拭き、肌の状態を見る手つきは慣れていた。あどけない顔の目は閉じられ、胸が人工呼吸器に合わせてゆっくり上下していた。


二十二歳のこの患者は、交通事故で集中治療室に入ってから二年目だった。髪はほどよく切られ、肌にも手入れの跡があったが、意識は一度も戻っていなかった。


看護師が布団を整えようとした、そのときだった。


ベッドの上の指が、わずかに動いた気がした。


「あれ?」


看護師は手を止めた。脇のバイタルサインを確認し、また指を見る。少し待っても変化はなかった。整えられた手はそのままで、機械も同じ間隔で音を鳴らしていた。


「ああ……疲れてるのかな……」


一度首を振り、背中を拭き終えると姿勢を戻し、胸まで布団を掛けた。


「はあ……かわいそうに。見るたびに気の毒になる」


この病室を担当する人たちは、ソ・ウンジェがどんな事故に遭ったか知っていた。両親は共に亡くなり、父の弟が保険金を受け取って、二年間入院費を払っていた。


目覚めてほしいとは願うが、いざ目覚めた後のことは簡単に想像できなかった。両親が亡くなった事実を、誰がこの子に伝えるのだろう。


看護師はウンジェの頭を一度撫で、部屋を出た。暗くなった病室の影に黒猫が隠れていることには、最後まで気づかなかった。


――カチッ。


扉が閉まっても、猫はしばらく動かなかった。


廊下の足音が遠ざかると、ナビはベッドへ飛び乗った。


「ANOMALY SCAN」


ソ・ウンジェの肉体情報が、ナビへ送られ始めた。


年齢は二十歳前後。長く寝ていたせいか、筋肉の状態はよくない。だが、肉体全体の損傷は、最初に予想したほど大きくなかった。ナビは胸から顔へ視線を移した。


意識の兆候がない。


目を閉じて横たわる顔が、どこか見覚えのあるものに感じられた。顔立ちのせいではない。少し前、スライムの残骸から見つけたマジアンも、こんなふうに何の反応もなかった。


ナビはその考えを払い、スキャン結果をもう一度見た。


もともとこの建物へ入ったのは、この世界の医療魔法を確かめるためだった。病院という場所なら、損傷した肉体を治す方法があると思った。だが、隠蔽魔法を使って見て回ったどこにも、魔法の痕跡はなかった。


代わりに、機械がたくさんあった。


人の体に線をつなぎ、数字を表示し、絶えず音を立てる機械。


ナビはベッド脇の画面を見た。ここの治療を理解するには、まず数字の読み方から知る必要がありそうだった。アカシックレコードで資料を探そうかと考え、接続するのをやめた。


地球へ渡った瞬間の不吉さが、まだ鮮明に残っていた。


テレポートは成功した。一行を包む防御膜も無事だった。なのに魔法を使った瞬間、全身の毛が逆立った。何かが間違っているという警告が、魔法の作動と共に戻ってくる感覚だった。地球で試しても、魔法は使えた。


だが、そのぞっとする警告の感覚は残っていた。


〈くそ……やっと地平座標系を合わせたと思ったら、今度は魔法の使用制限か。厄介な世界だね〉


ナビは、知らぬ間にこみ上げる鳴き声を飲み込んだ。


この世界には、魔法を使う自分を制止する何らかの制約があるようだった。正確な仕組みは説明できないが、アカシックレコードに登録された自分の■■■■が脅かされているという感覚を、本能的に強く受けていた。


今使っている隠蔽魔法さえ、いつまで維持できるか分からなかった。


地球に着いてから、ナビはまずマジアンの元の肉体を隠した。赤ん坊の体をユジャと融合させ、低高度の衛星軌道へ載せるにも魔法が必要だった。設定したとおりにユジャが少しずつ軌道を修正すれば、しばらくはそこに留まれるだろう。


ナビは癖で上を見た。


見えるのは病室の天井だけだった。


マジアンを、こんなに遠くへ離したことはなかった。だが、猫一匹が赤ん坊とほうきを連れて病院を歩き回るわけにはいかない。隠蔽魔法が解けでもしたら、彼女の運命は明らかだった。


――魔女に優しい世界なんて、実際はそう多くない。くそっ。


ユジャは命令をよく聞くほうきだった。マジアンが乗っていたときもそうだったし、今もそうだろう。ナビは、それ以上考えないように顔を下げた。


首飾りが胸元の毛に触れた。


肉体はあの上にあるが、魂はここにあった。


ナビはまた女の子を見た。この患者の事情は知らない。なぜ意識が戻らないのかも、今のスキャンだけでは説明できない。ただ、目の前の肉体には、損傷したマジアンの肉体と違う可能性がある気がした。


――この肉体へ、マジアンの意識をインストールできるだろうか?


思いついても、すぐには動けなかった。魔法の失敗の副作用、Reboundを心配しているだけではなかった。


横たわっているのは人間だった。マジアンを入れるために用意された、空の器ではない。


ベッドの端に立ち、顔を見下ろした。マジアンと近い年齢に見える。誰かが髪をとかし、誰かが体を拭いていた。さっき出ていった看護師は、額まで撫でていた。


この肉体に別の魂を入れていいと、誰も言っていなかった。


ナビは前足を上げ、また下ろした。


――でも、意識はまったくない。ここで聞いたとおり、二年も寝ていたのなら……。


それは、今確かめた事実だった。だからといって、永遠に目覚めないとは断言できない。自分は、自分に都合のいい方へばかり判断している。マジアンを救えるなら、目の前の人間はどうせ死ぬはずだった、と結論づけようとしているのではないか。


ナビは、そんな自分の考えを不快に思った。


マジアンを救わなければならない。だが、今の肉体の脳損傷を治す方法がない。治療法を捜して一人で世界を探索するのは、危険で制約も多い。人間の仲間が必要だ。マジアン以外の仲間? この世界でそんな相手を見つけるのは、ほぼ不可能だ。


他の選択肢はあるのか?


状況は最悪だった。この世界で魔法に失敗すれば、Reboundは肉体の傷や精神錯乱では済まない。ナビにはそんな予感があった。


いつまで魔法を使えるのかも分からない。何百回使っても無事かもしれないし、次の一度でReboundが来るかもしれない。


それなのに、この確かな可能性を、なぜ見過ごさなければならない?


最後の可能性だけは、確かに光っていた。マジアンの魂は、まだ大部分が無事だ。自分に使用制限があっても、別の肉体に入った彼女が魔法を使う方法を見つければ? それができなくても、信頼できる人間の仲間がいれば、いろいろな手段を試せる。


そう考えると、ナビの尻尾が強く布団を打った。


――考えろ。まだ時間はあるはずだ。


自分に言い聞かせた。だが、何の時間がどれだけ残っているか知ったところで、何になる? 看護師が戻るまでの時間か? 魔法を使える残り時間か? 廊下から車輪の音がした。扉を振り返ると、音は部屋の前を通り、そのまま遠ざかった。


患者へ視線を戻しても、表情は変わっていなかった。返事がないと分かりながら、心の中で話しかけた。


――お嬢さん。僕がしようとしていることを説明しても、君には聞こえないだろうね。


マジアンを救いたかった。


それだけは確かだった。だが、その事実が、目の前の人間に何の意味を持つのか。ナビは、この女性の名前すら知らなかった。


長く見つめていたナビは、患者の顔へ近づいた。前足で布団を押すと、その下の腕が少し動いた。びくりとして足を離し、自分が触れたせいだと気づいて、また姿勢を整えた。決心はついた。


――いいだろう、お嬢さん。君の人生にどれほどの不幸があったかは知らないが、死はそれに何の価値も与えない。マジアンの人生が君の不幸にどれほど慰めを与えるかは分からない。でも、その肉体の価値は、僕たちの大きな助けになる。


そんな言葉が慰めになるはずもないと、ナビも知っていた。だが、もうためらわずに詠唱を始めた。


――すまない。そして、ありがとう。


「Soul Reinstall」


銀色の首飾りが白い光へ変わった。細い糸となってほどけ、女の子の唇の間へ入っていく。


ナビの背中から、毛が逆立った。


また、あの警告だった。


歯を食いしばって魔法を維持した。隠蔽魔法にも気を配るため、意識が分散する。扉が開かないことを願うしかなかった。


新しい肉体へ魂をインストールするのは、ナビも初めてだった。意識の抽出と保管には成功したが、他人の中枢神経系でも正しく働くかは分からない。


適合しなければ、どうすればいい? どこで止めれば魂を回収できる?


少し前まで、ナビはその問題を考えていた。


――何だ?


この状況は、予想よりはるかにおかしかった。


マジアンの魂は、故郷に戻った子供のように、ソ・ウンジェの肉体の隅々へ広がり始めた。中枢神経系へ定着する速度が、凄まじく速くなった。


ナビは、意識のインストールには調整が必要だと思っていた。多少の副作用で、この肉体に障害が出ることさえ考えていた。


なのに、調整しようと調べた部分は、すでに噛み合っていた。一か所を確認して次へ進むと、そこでも同じことが起きていた。むしろ、自分の魔法を疑った。


本当につながっているのか? これはインストールではなく、魂がこの女の子に呑み込まれているのでは? それを成功と勘違いしているのではないか?


だが、返ってくる反応は明確だった。マジアンの魂は、ソ・ウンジェの中枢神経系と融合していた。


――ありえるのか? ここまで完璧に同期するものなのか?


もう一度、顔を見た。ここで初めて会った人間だった。マジアンが会ったこともあるはずがない。少なくとも、ナビが知る限りでは。


なぜ、これほどぴったり合うのか。


疑問は浮かんだが、魔法を止められなかった。光は口へ流れ続け、それを調節する前足が少しずつ震えた。


再び警告が押し寄せた。


今度は首の後ろの毛まで逆立った。今にも魔法が止まり、Reboundで脳が焼けるような、ぞっとする感覚だった。


――もう少し。今は駄目だ。


何に向かって祈っているのか、自分でも分からなかった。自分自身か、アカシックレコードにある何かか。


残った光が細くなった。


首に触れる首飾りの感触も、ほぼ消えていた。最後まで流れを取りこぼさないよう、患者の顔を凝視した。まぶたに変化はない。胸はまだ、機械に合わせて上下していた。


――お願いだ。マジアン。


最後の光が、ウンジェの唇の間へ消えた。


魔法が終わったと確認しても、しばらく動けなかった。これで終わりか? なぜ反応がない? まだ何か調整が必要なのか?? だが、警告を無視して長く使いすぎたせいだろうか。体の方が先に力を失った。


前足が折れ、ナビはそのままソ・ウンジェの上へ倒れた。柔らかい布団が猫の体を包む。顔を上げようとしても、頭がうまく持ち上がらなかった。


病室では、相変わらず機械が音を立てていた。


そして

ソ・ウンジェの目が開いた。


[お知らせ]

誰が何と言おうと、この小説はフィクションです。作者が、とある女の子に賄賂をもらったり洗脳されたりして彼女の物語を書いているわけでは絶対にないことを、あらかじめ明記しておきます。どうか、どなたも誤解なさらないでください。


ソ・ウンジェのYouTubeチャンネルも、ご覧いただけると嬉しいです……。

https://www.youtube.com/@WESTEUNJAE


ソ・ウンジェのYouTubeチャンネルも、ご覧いただけると嬉しいです……。

https://www.youtube.com/@WESTEUNJAE


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