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放浪魔女ソ・ウンジェ  作者: ソ・ウンジェ
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005 界行子(Systemfarer)

界行子。


あるいは、


Systemfarer。


この言葉は、こう説明できる。


界行をする者。


あるいは、


Systemfaringをする者。


Systemfaringとは、世界と世界の間を渡り歩くことだ。


一般に、ある世界から異世界へ移ることは、通常の魔法では不可能である。超空間――Hyperspaceを通過するには膨大なエネルギーが必要なだけでなく、界を越えた瞬間、別の世界の法則が界行子を迎えるため、積極的な神経制御魔法を伴う。


そのため、Hyperspaceを越えるたびに、神経系を持つ生き物は、激しいめまいと吐き気を伴う不快感を、まず受け入れなければならない。


マジアンは、界を越えるたびによく吐いた。


初めてSystemfaringをしたときは、ゲートから出るなり草地にうつ伏せになり、長い間動けなかった。その後、少しずつ慣れはしたが、乗り物酔いのような感覚だけは、相変わらず避けられなかった。


ナビは、その感覚を無視できる存在だった。


少なくとも、これまではあえて気にする必要がなかった。


だが、今回は少し違った。


青いFORCE FIELDの中で、生後一か月ほどの赤ん坊の姿になったマジアンは、まったく動かなかった。酔うどころか、まぶた一つ動かさない。


その姿を見つめるナビの首には、マジアンの魂を収めた銀色の首飾りが掛かっていた。


〈待っていて〉


誰に向けた言葉なのか、ナビ自身にもわからなかった。


マジアンの肉体なのか。


首飾りの中の魂なのか。


それとも、自分なのか。


界を越えるときの時間感覚は、通常の世界でのそれとはまったく違う。一瞬のように過ぎることもあれば、永遠に近い退屈に感じられることもあった。だが、目的地に近づくと、いつも共通する現象が一つ起きた。ゲートの先端が、プリズムに反射した光のように、無数の色へ分かれ始めるのだ。


「設定座標に、もう着くのかな?」


ナビは、ユジャに乗っている自分とマジアンの状態を確認した。


Systemfaringの魔法には、使用者を無作為な異世界へ転移させるだけの魔法に加え、異世界へ渡るHyperspace内で座標を設定する魔法と、渡った先で使用者を守る高度な魔法が、すべて組み合わされている。


その魔法が、今、警告音を発し始めた。


▸警告。到着地点は生命維持が困難な環境です。


▸警告。到着地点は生命維持が困難な環境です。


「何?」


ユジャの先端に乗ったナビが、姿勢を低くした。


その瞬間、虹色の光が爆発するように広がった。


一瞬でもあり永遠でもあった時間が終わり、ナビとユジャ、マジアンの肉体がゲートの外へ抜け出した。Systemfaringの自動航行機能が、すぐに作動した。


新しい世界の到着座標に建物や山、生き物などの物質があれば、互いに重ならないよう空間を微調整する機能だった。


▸空間調整、11%


▸空間調整、34%


▸警告。到着地点は生命維持が困難な環境です。


▸空間調整、67%


▸空間調整、91%


▸警告。到着地点は生命維持が困難な環境です。


「何も見えない! いったいどうなってる? 戦場のど真ん中にでも落ちるのか? ひとまずFORCE FIELDを?」


▸空間調整、99%


空間調整がほぼ終わりかけたとき、不吉な感覚に襲われたナビは、すぐさま詠唱に入った。今、急ぐべきなのは物理的な防護壁ではなかった。


「VITAL SPHERE!」


ユジャに乗ったナビとマジアンの周りに緑色の球が生まれ、三者をまとめて包んだ。周囲はほとんど暗黒だった。


ただ暗いのではない。


夜でも、洞窟でもない。


大気がない。


地面がない。


頭の上も下も区別しにくいほど、四方に星の光が散らばっていた。


「……何だ、これ?」


少し下に、巨大な天体が一つ見えた。白と黒がまだらに混じった球で、遠いため小さく見えるだけで、その大きさは圧倒的だった。


そして、一行を包むVITAL SPHEREが、ゆっくりその惑星へ引かれ始めた。空中から落ちる感覚と、まったく同じだった。


「どういうことだ? ユジャは飛行中のはずなのに。飛行魔法が効かない?」


ナビはすぐにアカシックレコードへの接続を試みた。


▸ほうきの魔法パターン解析完了。現在、大気がないため、密度のトリックによる浮遊は不可能。「ほうきの塵力」による推力推進は可能。


▸冥王星の質量計算完了。重力圏からの脱出速度は約1.2 km/s。


▸衛星軌道へ入るには、落下方向と直角に860 m/sの速度が必要。


〈冥王星? あの惑星の名前? この異世界の名称?〉


〈銀河系(Milky Way Galaxy)? 太陽系(Solar System)??〉


「宇宙空間? いったい全部、何の話なんだ!」


そのときようやく、ナビは自分たちが来た場所をある程度理解した。まず今の状況への対策が必要だったため、アカシックレコードの情報をもとに計算した方策を、即座に実行することにした。


「FORCE FIELD! 追加実行! ユジャ! 今の落下方向から直角に向きを変えて、秒速八百六十メートルまで加速して!」


一行を包む緑色の半透明の球に青い光が加わり、青緑色に染まった。


落下中の球が直角に向きを変えるため、急旋回と急加速が行われ、すさまじい遠心力が一行を襲った。普通の肉体やほうきの耐久性では耐えられない力だったが、あらかじめ設定した防護壁が、ほうきの分解を防いでいた。


ナビは通常の肉体とは違うので十分耐えられたが、驚いたことに、マジアンの肉体も、微動だにせずユジャの上に留まっていた。


加速が終わると、ユジャは冥王星の衛星軌道へ入った。落下の感覚が消え、ナビはようやくため息をついた。


「うわ、Systemfaringでこんなに危険だったのは初めてだ。いったいここは何なんだ? 人間はどこにいる?」


スキャン範囲を大きく広げたが、この惑星には生命が一切検出されなかった。先ほどアカシックレコードからダウンロードした内容をもとに状況を検討し、人間を探すことにした。


「太陽系か……人間は地球という場所にいるんだね。なのに、どうして座標がそっちへ向かわなかった? 何? 地球が動く? 太陽も動く? 秒速二百三十キロメートル? ふざけてるのか!」


あまりにばかげた物理法則に、ナビは知らず知らず怒り始めた。


「何? 地平座標系を設定しろって? どこの狂ったやつが、そんな設定を作ったんだ。秒速二百三十キロメートルで動く惑星に、人がどうやって住むんだよ! 何? 相対性理論? 何だよそれ、このクソオタク!」


先ほどダウンロードした資料を分析しながら、ナビはこの世界が、これまでの世界とかなり違うことに気づいた。無限の宇宙の可能性を内包しながら、文明のデータはただ一つ。認知能力では想像することさえ難しいほど巨大な距離の単位は、ナビのような●●にも理解しにくいものだった。


「とにかく、人間のいる場所は見つかったから、テレポートすればいい。ユジャで飛ぶには、途方もなく遠い。百年以上かかるだろう……」


ナビはため息をついた。飛ぶのに百年かかる距離というものに、実感が湧かなかった。


「地平座標系か……ああ、人間が使うGPSというものがあるね。よし、これで設定して、空間調整魔法を追加して……気候の適した場所へ……北緯37.3520度、東経127.1233度。オーケー」


「Teleport!」


詠唱すると、一行を包んだ球はその場から消えた。


しかし魔法を使ったその瞬間、ひどく不吉な予感がナビの全身を包み込んだ。


[お知らせ]

この小説は問答無用でフィクションです。作者が、とある魔女に脅されたり洗脳されたりして彼女の物語を書いているわけでは絶対にないことを、あらかじめ明記しておきます。どうか、どなたも誤解なさらないでください。


ソ・ウンジェのYouTubeチャンネルも、ご覧いただけると嬉しいです……。

https://www.youtube.com/@WESTEUNJAE

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