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放浪魔女ソ・ウンジェ  作者: ソ・ウンジェ
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20/20

019 先輩

「だから、マジでクソかっこいいんだって」


ウニョンは同じことを三度目まで言っていた。

ウンジェはもうスマホを持っているのがつらくなり、スピーカー通話に切り替えて服を畳んでいた。


「わかったって。かっこいいんでしょ」

〈あんた前に、かっこいい先輩がいる大学に行きたいって言ってたじゃん〉

「あたしが?」

〈ねえ。受験が終わってからあんたが言ったこと、全部覚えてるんだけど?〉

「ああ、そうだった。うん」


ウンジェは畳んでいたニットを鞄に入れた。


〈とにかく、イ・ヒョンス先輩っていうんだけど、地理学科の二十二年入学。今回復学するらしくて、オリエンテーションにも行くんだって〉

「なんであんたが知ってるの?」

〈うちの学科の先輩たちと仲がいいらしいよ。その人、インスタもやってて、ほんとにかっこよかった〉

「どのくらい?」

〈こういう話にはすぐ食いつくね〉

「どのくらいかっこいいのかって聞いてるの」


ウニョンが笑った。

ヒョンスの外見から始まった話は、ソヒの知り合いの先輩へ、その先輩のサークルへ、さらにそのサークルで別れたカップルの話へと流れていった。


〈それで、アカペラサークルの部室を全部ぶっ壊して、大騒ぎになったじゃん〉

「完全にイカれた女じゃん」

〈そう。でも、そのあとガールクラッシュ系のイメージがついて、女子学生会にめっちゃ好かれてるんだって〉

「女子学生会って、また何?」

〈あるの。ちょっと変人の集まりではあるけど、面白い子も多いよ〉


ナビは机の上で時間を確認した。

四十七分目だった。

ウンジェはうなずきながら答えた。


「うん。え、マジ? ヤバいね」


声にはちょうどいい驚きがあったが、顔には何の表情もなかった。

ナビはその違いが不思議だった。

通話が終わったときには、五十三分が経っていた。


「全部覚えてるの?」

「何を?」

「誰と誰が別れて、誰と誰が付き合ってるって話」

「一つも覚えてない」


ウンジェはスマホをベッドに放り投げた。


「じゃあ、なんであんなに長く聞いてたの?」

「知らない。いつ切ればいいのかわかんなくて」

「僕も、あんなに長い通話に何の意味があるのか考えてたんだけど」

「あたしも同じこと考えてた」

「じゃあ切ればいいでしょ」


ウンジェは少し口をつぐんだ。

ベッドに広げたニットの袖に触れてから、ナビを振り返った。


「うーん……ウンジェは、普段からこのくらい話してたみたいなんだよね」


ナビが顔を上げた。


「あの子たちはソ・ウンジェと話してるんだよ。あたしが知らない人の話だからって切っちゃったら、変じゃない?」

「前の君だって、そういう話を聞くのが嫌だったかもしれないよ」

「そうだったのかな?」


ウンジェは考えてみた。

記憶の中では、友達と電話して夜を明かしたこともあった。何をそんなに長く話したのかまでは、よく思い出せなかった。

それはたぶん、ソ・ウンジェが戻ってきたとしても思い出せない気がした。


「とにかく、あたしのせいでまた変な気分にさせたくないんだよ」


ウンジェはもう一度ニットを畳んだ。


「友達に会ったら泣きそうって言ったのに、実際に会ったら笑ってばっかりだった。電話も嬉しいのに、長く聞いてると疲れるし。どっちがあたしの感情なのか、全然わかんない」

「両方かもしれないでしょ」

「両方?」

「嬉しくても、疲れることはあるじゃない」


ウンジェはしばらく考えてから、うなずいた。


「あたしみたいに生きてきた魔女には、ちょっと変なことだけど、それは一理あるね」


ナビが尻尾を動かした。

ウンジェは鞄のファスナーを閉めながら、また尋ねた。


「でも、そのかっこいい先輩は気になる」

「それは間違いなく君自身の感情だね」


―――


オリエンテーション当日、ウンジェは集合時間より二十分早く大学に着いた。

ジンバルは鞄にしまっておいた。

家で準備する姿と、大学まで歩いてくる場面はもう撮ったので、まずはみんなに挨拶するつもりだった。


バスの前には、学科名の書かれた紙が貼られていた。

名簿を持った学生が、ウンジェを見て手を上げた。


「地理学科ですか?」

「はい。ソ・ウンジェです」

「あ! 少々お待ちください」


学生の指が、名簿の下のほうで止まった。


「二十四年入学のソ・ウンジェ先輩ですよね?」

「あ……はい。でも、先輩?」

「あ、だいたいのお話は聞いてます。一緒に参加されるということで。ここのお名前の横にチェックだけお願いします」


ウンジェは名前の横にチェックを入れた。

先輩という呼び方は、思ったより妙だった。まだ建物も見つけられない人間が、誰かの先輩だった。


スマホにナビからのメッセージが届いた。


[バス乗った?]

[まだ。あたし先輩なんだって]

[後輩たちにいろいろ聞けばいいね]

[黙れ]


ウンジェは「黙れ」の下に、猫がにらんでいるスタンプを送った。


ナビは結局、家に残った。

バスや宿泊先に猫を連れていくより、遠隔で連絡を取りながら待つほうがいいという結論だった。

ウンジェも、鞄の中で一泊二日を過ごさせるつもりまではなかった。


ウンジェは鞄の中のAirPodsケースを指先で一度触り、バスに乗った。


―――


研修施設の講堂には、折り畳み椅子が並んでいた。

ウンジェは同じ班に割り当てられた学生たちの間に座った。

みんな少し緊張していたが、中には以前の歓迎会で会ったのか、知り合いのように挨拶する人もいた。

学生会長が、履修などの案内、部屋割り、班別活動の順に日程を説明した。

教授の短い挨拶が終わり、自己紹介の番になった。


「こんにちは。二十六年入学のチョン・ソミンです。よろしくお願いします」


拍手が起きた。

隣の学生も、名前と入学年を言った。


自分の番が来ると、ウンジェは立ち上がった。


「こんにちは。ソ・ウンジェです。二十四年入学なんですけど……」


いくつかの顔が上がった。


「通い始める前に事故に遭って、ちょっと長く休学していました。それで、大学に通うのは今回が初めてなので、皆さんと同じ一年生です」


誰かが小さく口を開けた。


「あ……もしかして、あの……飲酒運転の……」


その表情を見て、ウンジェはすぐに付け足した。


「はい。ニュースに出た人で合ってます。でも、今は退院して元気です。元気すぎて、体重計とちょくちょくケンカするのが問題ですけど……」


静かだった席から笑いが起きた。

ウンジェも笑った。


「あたしも何もわからないので、一緒に教えてください。よろしくお願いします」


座るとすぐに、隣の女の子が身を寄せた。


「先輩。お姉さんって呼んでもいいですか?」

「もちろん」

「あたし、二十六年入学のチョン・ソミンです。お姉さんの動画、見ました」

「ニュース?」

「いえ。無礼な体重計です。うちの子もちょっとあんな感じです。あはは」


ウンジェは一瞬黙った。

今日は、体重計とケンカする人として覚えられているらしい。


「あれまで見たんだ」

「面白かったです」


ウンジェの口角が上がった。


何だよ、こいつ。いいやつじゃん。


―――


問題は、履修などの案内からだった。


スクリーンに表が映った。

ウンジェは最初、熱心に見ていた。

地理学科の紹介と歴史までは、だいたい理解できた。


だが、教養必修、専門必修、専門選択、分野別の修得単位数などが並び始めた途端、頭が真っ白になった。

目が少しずつぼんやりしてきた。


「復学される方は、ご自身に適用されるカリキュラムを必ず確認してください」


ウンジェは顔を上げた。

自分に向けられた言葉のようだった。

画面が次のページに切り替わった。


ウンジェはメモに「履修の前提科目? クラス分け?」と書いた。

隣のソミンは表の写真を撮っていた。


ウンジェもすぐにまねして写真を撮った。

意味がわからなくても、ほかの人がしていることにはついていかなければならなかった。


「お姉さんは、二十四年入学の基準で見るんですよね?」

「うん。たぶん」

「じゃあ、学科事務室に聞かないとですね」

「そうだね」


ウンジェは写真をナビに送った。


[これ、何言ってるの?]


返信が来た。


[説明が終わってから連絡して]


ウンジェは最後まで、一生懸命聞いている表情を保った。

説明が終わるとすぐに廊下へ出て、AirPodsをつけた。


「ねえ」

「何?」

「あたし、大学通えない気がする」

「もう?」

「表を見ろって言うんだけど、自分の入学年で見なきゃいけないんだって。でも、あたしは一年生じゃん。何なの?」


ナビは少し黙った。

資料を読んでいるようだった。


「二十四年入学者向けのカリキュラムから確認すればいいよ。登録期間も別に印をつけておく」

「授業一つ受けるだけで、なんでこんなにやることが多いの?」

「大勢で一緒に受けるから」

「王宮の魔法使いは、来いって言えばよかったのに」

「ここの教授たちは、君が王国を救ったことを知らないでしょ」


ウンジェは廊下の壁に背を預けた。


「じゃあ、どうするの?」

「僕がだいたい調べて整理するから、今日は普通に楽しんできなよ。科目を選ぶのは、あとで一緒に見よう」

「ほんと?」

「さっき案内された連絡先だけ送って。確認することは確認しないと」

「愛してる」

「昨日もそう言って、二時間の動画を送ってきたよね」

「今回は本気」

「昨日は違ったの?」


ウンジェは笑いながら通話を終えた。

講堂に戻ると、ソミンが手を振っていた。


「お姉さん! 班の写真撮りますよ!」

「うん。ちょっと待って!」


―――


午後の班別活動で、ウンジェは思ったより役に立った。


大学に関するクイズでは、一問も正解できなかった。

その代わり、ジェスチャーゲームでは大活躍した。


「答え! トリケラトプス?」

「このイカれたクソ……後輩!」

「あははははは!」


ウンジェには正解する才能はなかったが、笑わせる才能は大いにあった。


休憩時間には、同じ班の学生たちに撮影してもいいか尋ねた。

顔が映るのは気が引けるという学生は画面から外し、手だけ振ってくれるという学生の手を撮った。

ソミンはカメラに向かって両手を振った。


「ウンジェお姉さんのチャンネル、登録してください!」

「ねえ、うまいじゃん。あんたもYouTubeやりなよ」

「編集できないんです」

「あたしもできない」

「じゃあ、誰がやってくれるんですか?」

「家に、クソかっこいい編集専用の奴隷がいるの」

「あはは! お姉さん、なんでそんなに面白いんですか」


ウンジェはこのオリエンテーションの流れを見抜いた。

この子たちは今、とても浮かれていて、機嫌がいい。

だから、適当に何を言っても大ウケする。


失言を心配する必要はないと気づいたウンジェは、暴言キャラを維持することにした。


撮影を終えたウンジェは、夕食の間、スマホを鞄に入れたまま笑っていた。


交流の時間が始まると、班ごとにテーブルを囲んだ。

飲み物と酒が置かれ、飲みたくなければ飲まなくていいという説明があった。

ウンジェはビールを選んだ。


「お姉さん、お酒強いんですか?」

「前はそれなりに飲んでたよ」

「えっ? まさか高校のときに?」


王宮の宴が、一瞬浮かんだ。

ウンジェはコップを持ち上げてから、下ろした。


「うーん……いや。今日は様子を見ないとね」


今の体でどのくらい飲めるかは、わからなかった。

ウンジェはゆっくり飲んだ。隣でみんなが騒いで笑っているだけでも、十分落ち着かなかった。


飲み会ゲームのルールは、もっと難しかった。


「ソミンの好きな、ランダムゲーム! 告白ジャンプ、告白ジャンプ!」

「一!」

「二!」

「バック!」

「……」

「ウンジェお姉さん!」

「このイカれ野郎、なんでバックばっかりなのよ!」


ウンジェは結局、立ち上がった。


「このままだと死ぬ。ちょっと休ませて」


また笑い声が弾けた。

ウンジェも笑った。

今度は、誰のまねをしているのか考える暇もなかった。


―――


ロビーに出ると、部屋の中より空気が涼しかった。

ウンジェは首の後ろに手を当て、ゆっくり息を吐いた。


遠くから男たちの話し声が聞こえた。

ソファに座った四、五人が、紙コップを持って話していた。


「二十四年入学なら、チョン教授の授業受けたよね」

「はい。先輩、復学したら絶対避けてください」

「そんなに?」


ウンジェが自販機のほうへ歩くと、ソファの端に座っていた男が顔を上げた。

目が合った。


「ソ・ウンジェ?」


ウンジェは足を止めた。

男が軽く手を上げた。


「さっき自己紹介のときに見たよ。有名人なんだね。涼みに来たの?」


近くで見ると、かなりかっこよかった。

黒い髪は額が少し見えるように整えられ、笑うと片方の口角が先に上がった。

ウンジェはウニョンの説明を思い出した。


「もしかして、イ・ヒョンス先輩ですか?」

「お、名前も覚えてくれたんだ?」

「前からの学校の友達が、教えてくれたんです」

「いい話だったら嬉しいけど」

「はい。顔の話でした」

「あははは! うわ、クソ人気者じゃん」


隣にいた人たちが笑った。

ヒョンスも笑いながら空いている席を指した。


「じゃあ、とりあえず悪い話じゃなかったんだね」


ウンジェはソファの端に座った。

一緒にいた学生たちは、二十四年入学だった。自分と同じ年に合格したのに、もう二年も大学に通っている人たちだった。


誰かが、ある教室は暖房がきかないと言った。別の人は、去年は逆に暑すぎたと言った。

彼らには、一緒に知っている季節があった。

ウンジェは知らない建物を思い浮かべながら聞き、少し遅れて笑いに加わった。


ヒョンスが尋ねた。


「今日、疲れたでしょ?」

「クソ疲れました。授業一回も受けてないのに、もうへとへとです」

「こういう合宿のほうが大変なんだよ。授業は寝ればいいし」


周りの男子学生がブーイングした。


「ブー、奨学生のくせに」

「じゃあ、安心ですね」


そのあとは、思ったより気楽に話が続いた。

ウンジェが履修登録の説明を一つも理解できなかったと言うと、ヒョンスも久しぶりだから見直さないと、と言った。


「復学すると、いつだって全部覚え直す気分になるよ」

「あたしは本当に初めてなので」

「じゃあ、混乱することは少ないね」


ウンジェはうなずいた。

正しい気もするし、違う気もした。

部屋のほうから誰かが出てきて、先輩たちを呼んだ。

ソファにいた人たちが、一人、また一人と立ち上がった。

ウンジェも空の水のコップを捨て、鞄のストラップを掛け直した。


ヒョンスが隣に来た。


「行こう。結構長く席を外してたね」

「ああ、今度またゲーム間違えたら、水飲みます」

「水を飲むほうが大変かもよ?」


先に歩いていた学生たちが、廊下の角を曲がった。

ウンジェは鞄のポケットから出かけていたAirPodsケースを押し込むため、少し足を緩めた。

ヒョンスも隣で歩調を合わせた。


部屋の中の笑い声が、ドアの隙間から漏れてきた。


ヒョンスはウンジェを見て笑った。


「でも、君って本当に面白いね。そんな体で、どうして界行子〈Systemfarer〉なの?」


「……何?」


[お知らせ]


うわ……クソ……


https://www.youtube.com/@WESTEUNJAE

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