序章
創世記:零落の種
序章:虚無の咆哮
始まりに、ただ「無」があった。
"To be, or not to be"――在るのか、在らぬのか。
その境界なき深淵こそが、全ての命題であった。
やがて静寂は破られ、無と有は混ざり合い、煮え立つ混沌へと変貌した。
そこから溢れ出したのは、純白の聖気と漆黒の邪気。相反する二つの力は、存在の座を懸けて永遠とも思える闘争を繰り広げた。
その衝突が限界点に達したとき、世界は未曾有の大爆発によって弾け飛んだ。
爆ぜた火花は時間となり、飛び散った破片は空間となった。こうして、冷え切った虚無の中に、熱き「宇宙」が産声を上げたのである。
それから百数十億年という悠久の刻を経て、銀河の辺境に一つの青き惑星が産み落とされた。
原始のスープから這い出した生命は、凄まじい速度で分岐と淘汰を繰り返し、やがて世界を分かつ四つの絶対守護者へと至る。
• 海王族: 母なる深海を統べ、水底に揺るぎない帝国を築いた者たち。
• 竜王族: 灼熱の地を支配し、圧倒的な武力で地上を蹂躙する者たち。
• 天王族: 自由なる天空を舞い、雲上から世界を俯瞰する高潔な者たち。
• 冥王族: 静寂なる地下に潜み、暗闇の理を解き明かした者たち。
だが、進化の光が強まるほどに、その影もまた濃くなる。
繁栄の果てに、地上の全てを脅かす異形の存在、「魔王族」が誕生した。彼らは破壊を糧とし、世界を混沌へと引き戻そうと牙を剥いた。
種族たちは互いに競い、増殖し、限界までその生命の格を押し上げた。
しかし、頂点に達した進化の果てに待っていたのは、さらなる高みではなく、皮肉な「退化」の始まりだった。
魔王族の血脈から、ある日、奇妙な変異種が生まれる。
彼らには竜のような強靭な鱗もなく、天を駆ける翼も、深海に耐えうる肺も、魔王のような圧倒的な魔力も備わっていなかった。
脆弱で、短命で、ただただ無力なその生物。
それこそが、最も神の理から遠ざけられた存在。
後にこの星の運命を狂わせる種族「人間」であった。




