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信頼と転校生 4/後

「理由」


ぽつりと呟いた理央が、じっと俺を見上げる。


「それは、どういう?」

「えっ」

「健太郎」

「それは、その」


さ、探るように見つめないでくれ。

やっぱり理央にもバレてるのか? だとしたら気まずい、居たたまれない。


「まあ、いいか」


見逃されてホッと息を吐く。

でも実際のところどうなんだろう、本当は分かっていて、敢えて触れないでいてくれるのか。

それとも、その、少しは見込みがあるって期待していいんだろうか。


「見届けて欲しいと言うなら、そうするよ」

「ああ」

「でもね健太郎、僕は個人的にも腹を立てているんだ、君を卑怯と愚弄されたこと、見下し侮辱されたことが、酷く憤ろしい」

「理央」

「僕の知る大磯 健太郎という人物は、そんな底の浅い卑劣漢なんて不届き者じゃない、懐の広い、情に厚い、誠実で優しい男だ」


面と向かって褒められると、その、恥ずかしいな。

だけど嬉しい。

理央は俺のことをそんな風に思っているのか。


「君の傍にいるよ、いつでも」


俺が肩に置いたままにしていた手に、そっと理央の手が添えられる。


「見守っている、この僕が、君という人物の証人だ」

「それは頼もしいな」

「だろう? なにせ僕らは、誰も知らない時を分かち合う仲だからね」


死ぬたびに、その記憶を持ってループする俺と、何故か巻き込まれた理央。

今じゃすっかり運命共同体のような関係だ。

俺の戦友にして親友、そして最愛の人。


ああ―――好きだ、理央。


「えーっと」


見詰め合っているうちに、なんだかおかしな雰囲気になってきた気がする。

これはちょっと、距離感を見誤ってキスするかもしれない。

いやキスはしたいんだが、流石にまずいだろ。

今、更に理央とまで拗れでもしたら目も当てられない。


「あッ、俺ッ、お茶淹れなおすよ! 喋って喉が渇いた」

「うん」


こくん、と頷く仕草が可愛い。

時々本気で男だってことを忘れそうになる。

実は理央は理央という性別で、最早男女の区別を超越した存在なんじゃないか?

こんなに可愛い生き物が存在していいのか、俺が国なら即刻保護対象に指定するぞ、絶滅危惧種の天然記念物だ。

はあ、今日も可愛い理央に感謝。

そして俺は、きっと理央が可愛すぎるからおかしくなったに違いない。


キッチンでお茶を淹れなおしつつ、少し頭を冷やす。

これからひと仕事待っているっていうのに、浮かれてうつつを抜かしている場合じゃないぞ、気を引き締めろ健太郎。


「あ、なあ、理央」

「なんだい?」

「今日も昼から登校することになりそうだし、もうちょっとしたら俺、飯作るよ、一緒に食べよう」

「そうか、いつも有難う」

「いいって、今日は鶏肉がたくさんあるから、俺の好物の唐揚げを揚げる予定だ」

「君の好物か、もう一つはカレーだね?」


えっ! 理央、俺の好物を覚えていてくれたのか!

嬉しいなあ。

でも惜しい、今は三つに増えたんだぜ?


「あと一つあるぞ」

「え?」

「理央が握ってくれたおにぎり、俺の一番の好物だ」


キョトンとなった理央の頬が、ふんわり赤く染まる。

か、可愛い。

胸にグワッと込み上げてくるこの想い、好きだ、愛しすぎる。


「そうか」

「おう!」

「わかった、そういうことなら、その」


また作るよ、と呟く理央の恥じらう仕草が堪らない。


理央。

―――これからもお前と一緒にいるために、俺は今度こそ磐梯の野郎に勝ってみせる。

そして待っていろ磐梯。

文化祭を待たず、お前とは今日決着をつけてやる。

何もかも一方的に決めつけて散々辛酸を舐めさせてくれたこの恨みを、お前のその傲慢さを、これから骨の髄まで分からせてやるからな。

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