第二章 『生き延びた子』
荒波が私達を引き裂き、ミーシアを乗せた樽は沖に流され、当てもなく大海を彷徨い続けているに違いない。それはあの後、カイルが矢の雨を掻い潜って私を陸まで運んでくれたが、ミーシアはその場にはいなかったからだ。そしてカイルは私の抜け殻に、何度も何度も蘇生術を行なってくれたが、私は、自身の抜け殻を見つめるばかりだった。
自分が死んだ事のショックより、ミーシアの事が心配で堪らなかった。
海面に落ちた衝撃であの子が怪我をしていないか……。
寒さに凍えていないだろうか……。
樽の中の酸素は大丈夫なのだろうか……。
樽に劣化が生じ、海水がミーシアの命を奪うのではないか……。
沖とは逆に岸壁に打ち付けられ、樽が粉砕し……。
それ以上は考えたくなかった。あの子がまだ生きていると信じたかった。あの子が生きている事を願わずにはいられなかった。
いくつもの辛く苦しい不安と、激しく危惧する心が私の意識を支配した。
早くあの子を探さなければあの子の命が危ない!
そう決意すると不思議な事が起こった。幽体になった体が宙に浮いたのだ。私は自身の抜け殻を置き去りにしてすぐさま沖へと向かった。だが闇雲に探し続けても、大海で樽を見つけ出すのは湖に落としたコインを見つけ出すに等しく、易々《やすやす》と見つかるはずもなかった。
どれくらいの時間海面を彷徨っていただろうか。ふと気が付くと、荒れていた海は平常を取戻し、水平線を見ると、永く暗い暗黒の海にぼんやりとした光が上り始めていた。暗闇から脱け出せた事はありがたかったが、日が上り始めた事に更に不安が募った。時間が経過すればするほど酸素が薄くなり、ミーシアの呼吸を苦しめると理解していたからだ。そんな思いを抱きながら辺りを捜し回ったが、ミーシアを乗せた樽は一向に見つからなかった。私は諦めきれず更に沖へと向かった。
沖に向かえば向かうほど光が鮮明になっていった。太陽が水平線から体の一部を出し、その太陽を背にした何かが見えた。
(ミーシアだ!)私は一縷の希望を胸に速度を上げた。
近付けば近付くほど辛く悲しい悔しさの波が押し寄せ、あの悍ましい惨劇がよみがえった。太陽を背にして私の瞳に映ったのは、クラーケンを背にしたドクロの旗を掲げた海賊船だったのだ。私は速度を止めその場に留まった。
言葉に言い表せない様々な思いが私の中に充満していた。報復する思いにも駆られた。しかしどれほど強い思いがあっても今の私には、もはや小石を投げつけてやる事さえ出来なかった。
近付きたくなかった。出来る事なら違う場所にミーシアを求めて捜しに向かいたかった。だけどもしかしてミーシアが捕らわれているのではないかと思うと、私は海賊船に向かわずにはいられなかった。
船首から突き出しているバウスプリットの上に私は浮遊すると、ゆっくりと甲板に進んだ。甲板では大勢の海賊達が一段上がった甲板の方を向いて、船長らしき男の第一声を待っていた。
「よくやった我荒くれどもよッ!」
船長らしき男の野太い声に、海賊達は片腕を上げて誇らしそうな叫び声を上げた。
船長らしき男は海賊達の喜びの声が静まるのを待ち、それが収まるとまた話し始めた。
「この勝利は貴様らがもたらしたと言っても過言ではないッ!」
船長らしき男が一声発する度に、海賊達は先程と同様に誇らしそうな叫び声を上げた。
「ガーゼン卿も貴様らの活躍に大変感服なさっている。よって貴様らは今日、栄誉ある褒美を賜るだろうッ!」
海賊達は腰の剣を抜き天高く掲げると、一斉に勝ち鬨を上げた。
ガーゼン卿? 以前どこかで聞いた事のある名だった。記憶を辿ってみたが、だがこの時はまだ思い出せなかった。
勝ち鬨が止むと、船長らしき男が海賊達に手をかざした。
「さあ今日という日を大いに祝おうではないか~ッ! さあ宴の準備だぁ~ッ!」
海賊達は喜びの声を上げ、それぞれが宴の準備を整え始めた。船長らしき男は踵を返して船室へと姿を消した。騒がしく宴の準備をする海賊達の頭上を私はゆっくりと浮遊し、船長らしき男の後を追った。
船長らしき男が消えて行った船室に続くドアの前まで来ると、私はドアに手を近付けた。手はドアをすり抜けて向こうの空間へと移動出来た。迷う事なく私は体ごとドアをすり抜けた。
ドアの向こうは通路になっていた。船長らしき男が通路を左に曲がるのが見えた。更に私は後を追った。男は突き当りの部屋へと入って行った。私も後に続いた。
「戻ったか、敬愛なる我同志よ! 祝杯を上げようではないか!」
部屋の中で、船長らしき男が戻るのを待っていた男が、両手に琥珀色の液体が入ったグラスを持ち、片方のグラスを私が付けて来た男に突出しながら言った。
「これはこれはガーゼン卿、ブランデーで祝杯とは嬉しい限りですなぁ~!」
二人がグラスを重ね合わせた。固く高い音が部屋に響いた。
(ガーゼン卿?)私は部屋に居た男をまじまじと見た。情の薄そうな薄い唇の上に、綺麗に整えられた髭を生やし、顎にもヤギのような豊かな鬚が生えている。鼻は鉤のように先が内側に曲がり、おとぎ話に出て来る魔女を連想させた。瞳はブルーで鋭さを兼ね備えた狡猾そうな切れ長な目だ。髪はウエーブの掛かったブラウン色の長い髪。見覚えはなかった。だがガーゼン卿の身に着けている鎧に刻まれた紋章は忘れるはずもなかった。敵対するザルーラ国の紋章だったのだ。これを見て記憶がよみがえった。以前エゼルドとカイルが会話していた中に、敵対するザルーラ国に、残忍極まりない男が兵を率いていると話していたのを思い出したからだ。そのとき聞いた名がガーゼン卿だった。
「ところでドルニック船長、エゼルド王の始末とその妻は抜かりなく済んだと聞いたが、娘も始末したのでしょうな?」
船長らしき海賊帽を被った男はやはり船長だった。名前もドルニックと解った。だがそんな事より、ガーゼン卿がミーシアの命まで狙っていた事には心底驚愕するばかりだった。
「その事なのだがガーゼン卿、女に弓を放った子分の話では、女は弓が刺さった直後、海の底へと沈んで行ったらしいのだが、娘の姿は見なかったと言っている。だが女が沈んだ近くに小さな樽が浮いていたらしく、念のため火矢を放っておいたという事だ! 万が一その中にプリンセスが入っていたとしても……」
ドルニックはそこで話を切ると、ガーゼン卿に向けて唇の片端を上げた。なんとも嫌らしい薄気味悪い笑みだった。
ミーシアの入った樽に、あの後火矢が放たれたのだと知った私は、魂が削られる思いだった。
「なるほど、だとすればもう一度祝杯を挙げねばいかぬな」
二人のこの後続く会話などそっちのけに、すぐさま私はミーシアを求めこの場を後にした。
私は先程の話を聞いても諦め切れなかった。
(ミーシア、私のミーシア! どこに居るのミーシア……)
私は強い不安と煩悶に押し潰されそうになりながらも、ミーシアを求めて海面を飛び廻った。だが闇雲にどれだけ飛び廻っていても見つかるはずもなく、景色は変わらず水平線が私を不安への迷路へと手招きするだけだった。
(どうすれば……、どうすればミーシアを見つけ出せるの……)
水平線を見つめ不安に駆られていると、そのとき私の心に突然声が聞こえた。
〘エレーナ……。私の声が聞こえるかい?〙
「エゼルドなの……?」
私は問い掛けた。
〘エレーナ、よく聞くんだ! もうあまり時間がない! 西に向かうんだ!〙
「どういう事なの?」
〘今は説明している時間がない。とにかく太陽を背に西に向かうんだ。わかったね!〙
行き詰まっていた私にとって、エゼルドの言葉は不安を消し去り希望を与えてくれた。
「わかったわ!」
私はすぐさま向きを変え西へと向かった。
〘あとはイルカが君を案内してくれるはずだ!〙
エゼルドはそれだけ私に伝えると、それ以上エゼルドの声は聞こえなくなった。
あの子には守りの指輪が付いている。それにエゼルドも天からあの子を見守っていてくれている。私は自分に言い聞かせるように強く無事を願った。
西に進み遠くに薄っすらと陸が見えた頃、海面に二頭のイルカが現れた。イルカは「こっちだよ!」と私に示すかのようにジャンプしながら北へと導いてくれた。海流に乗って魚の群れが泳いでいる姿も眼下に確認出来た。きっとミーシアを乗せた樽はこの海流に流されたのに違いない。私の心の中にある希望に微かな光が灯り始めた。
どれくらい北へと進んで来ただろう。そう思い始めた時、形ある物が私の瞳に映った。ミーシアを乗せた樽だった。
「ありがとね、イルカさん!」
私はイルカにお礼を告げると、逸る思いを胸に樽を目差した。
樽にはやはり数本の矢が刺さっていた。樽の表面はいく分焼けてはいたものの、損傷までにはいたらなかった。そして矢が抜け落ちた箇所もあった。だがうまい具合にその箇所が酸素を送り込んでくれていた。樽はその箇所を安定して青空に向けていた。その箇所に私は顔を近づけた、ミーシアのすやすやと眠る寝息が聞こえた。ホッと胸を撫で下ろし、そのまま樽を擦り抜け、あの子の顔を見ようとしたが、どういう訳か私の体の自由が利かなくなった。次の瞬間、眩いばかりの神々しい光に私は包まれ、導かれるように天に続く光の行路へと誘われた。
「ミーシアァァァーーーーッ!」
ミーシアを乗せた樽から引き離され、光の行路を通り、天界へと辿り着いた私は、その壮大な景観に目を奪われるばかりだった。エメラルドグリーンの果てしなく続く海、雲間から海へと流れ落ちる壮大な滝、足元の砂浜は一度見たら目の奥から離れない輝きを放っている。後ろを振り返ると七色に輝く大地の向こうに、見事なまでの光を放った平原が広がっていた。そのすべてが天から降り注ぐ眩い光に包まれ、ありとあらゆる物が幻想的な神々しさを帯びていた。清き光に包まれた世界は天界のみ存在するものだと知った。
それにしてもあと少しでミーシアの顔を見られたのに、あと一歩の所で天界へと引き寄せられてしまった。ミーシアの無事は確認出来たが、だけど怪我はしていないだろうか? お腹を空かせていないだろうか? 寒さに震えていないだろうか? やはりミーシアの事が心配でならなかった。
「エレーナ!」
ミーシアの事を考えていると聞きなれた声がした。振り返らずとも誰だか分かった。
「エゼルド!」彼の名を声に出しながら私は振り返り駆け出していた。
最愛の人に抱きしめられ、ひと時の安らぎに浸り、再会に安堵した私は、早くもエゼルドにミーシアの事を話した。
「エゼルド、ミーシアは生きていたわ!」
興奮気味に話す私に、エゼルドは温かく微笑んでくれた。
「だけどミーシアの顔は見られなかったの……。あともう少しの所で、あっ、あなたが言っていたのはこの事だったのね!」
エゼルドがあの時、もうあまり時間がない! と言っていた事を思い出した。
「エレーナ」
私はエゼルドに会った嬉しさから、エゼルドの言葉も聞かず矢継ぎ早に話を続けた。
「それとあの海賊はザルーラ軍と繋がっていたのよッ!」
「エレーナ、エレーナ! 私の目を見て、落ち着いて!」
エゼルドが私の両肩に手を置き、私の瞳を見つめ優しく言った。
「興奮するのも分かるが、落ち着いて私の話を聞いて欲しい」
エゼルドの言葉に、私は一呼吸置いた。
「君が今教えてくれた事は知っていた」
私は口を挟み掛けたが、エゼルドが人差し指を口に当てたので、私は口に手を当て言葉を飲み込んだ。
「君の大御婆様が教えてくれたのだよ」
「大御婆様?」
「そう、君はまだ会った事はないだろうが、聞いて驚くなよ! あの守りの指輪の持ち主だ!」
「もしかして!」
「そう、そのもしかしてさ!」
大御婆様の話は幼い頃からよく母に聞かされていた。守りの指輪の持ち主とは、私の高祖母に当たる大御婆様がお作りになり嵌めていた物だと、指輪を母から受け継いだ時に聞かせてもらった事がある。私の母国ミンティア連合王国の王家・ウォールデン家には、女性にのみ特殊な能力が受け継がれると言い伝えられて来た。私にはその能力は無かったが、双子の姉であるエリーザにはその能力があった。エリーザは占い術や魔術にも興味を抱き、次々に驚異的な能力を習得していった。ウォールデン家では大御婆様の再来とも謳われていた。
そんなウォールデン家に伝わる大いなる力は、遠い昔にミンティア国がまだ連合王国に替わる以前、周辺国との戦争が勃発し、他国を鎮め大いに力を発揮したのが大御婆様だと聞いている。それが後に語り継がれる神話になったほどだ。ミーシアの名は、その偉大な大御婆様の『ミーシア・ベネット・ウォールデン』から頂いた名だ。
「イルカでミーシアの所まで導いてくれたのも大御婆様さ!」
特殊な能力の中には、動物と会話する事も出来たと伝えられていた。お亡くなりになった今でも天界から動物を懐柔させる力を持っているとは、語り継がれて来た神話は本当だったのだ。
「でもエゼルド、ミーシアが生きていてくれた事にはホッとしたけれど、このままだとミーシアは……」
「そうだね、海を彷徨い続ける」エゼルドが私の言葉の続きを引き取ってくれた。
「大御婆様は何処なの? 今のミーシアの状況も知りたいわ!」
「その事なのだがエレーナ……、君に伝えなければいけない事があるんだ」
エゼルドは眉間に皺を寄せた。
「まだ何かあるのね」
言い出し難そうなエゼルドを見て、私は良い話ではないと察した。
「大御婆様は神界にいらっしゃる」
「神界……、この世界じゃないの?」
「あぁ、大御婆様の話では、君達の一族は神界に仕える『顕界の守り人』らしいんだ」
「顕界の守り人……」
「そう、数百年に一度下界では、人間の欲が生み出す、神界には予測できない事態が起こるらしいんだ。人は殺し合い、地球に帯びている愛が損なわれ、悪が蔓延しようとし始める。大御婆様が下界に降り立ったのは丁度その時らしいのだが、我々ムアール国とザルーラ国の戦争が始まったのもその巡りなのだそうだ」
「だからエリーザに不思議な力が宿ったのね」
「だがエリーザはその力を愛の為には使おうとはしなかった」
「どういう事なの?」
エリーザとは、私がムアール国に嫁いだ時以来会っていなかった。だけどあの優しかったエリーザが変わってしまったとは思えなかった。
「大御婆様がその事について話してくれたのはそこまでなんだ……」
「じゃあミーシアはどうなるの?」私は声を荒げた。
「大御婆様はミーシアを希望と言っておられた」
「ミーシアが希望」
「そして大御婆様はこうもおっしゃった」
エゼルドの表情が悲しく曇った。
「君は神界に招かれるべき人なのだと……」
「あなたはどうなるの?」
「私は神界に行きたくても行けないのだよエレーナ……」エゼルドが力なく言った。
「君は神界に行ってミーシアを見守る役目がある! 私が出来ない分、君がミーシアの力になってやって欲しい」
「でも大御婆様がこの世界に降りて来てあなたに会ったように、私も時折この世界にあなたに会いに来れるのでしょ?」
エゼルドは顔を背け、下を見たまま黙っていた。エゼルドの気持ちが私には痛いほど分かった。
「でもいつかは会えるわよね……」私は涙を浮かべてエゼルドを見つめた。
エゼルドは必死に涙を堪え、私を見て小さく頷いた。
大御婆様が私を迎えに来られたのは間もなくしての事だった。
「準備は出来たかね」
「はい」
「それでは参ろうか!」
エゼルドが私を見送る中、大御婆様がやって来られた光に私は包まれ、私と大御婆様は更に天高くへと導かれた。
神々が共存する世界は母の腕の中のように温かく、大いなる愛に満ち溢れていた。神界に着いてすぐに通された場所は、神々が集うオリュンポスという宮殿だった。その中で初めに御目通りさせて頂いた神は、全ての神々の偉大なる母、『ダヌ』だった。
私はダヌ様の御前で跪くと、ダヌ様は、
「よく来た、我子よ!」
と、そっと頭に手をかざして下さった。体中に、光に満ちた美しいエネルギーが伝わって行くのを感じた。言葉を語らずして自分の成すべき役割、神界における秩序、すべての事が一瞬にして理解出来た。そして顔を上げると、次々に他の神々が、先程のダヌ様と同じ言葉を述べて下さった。
「我子よ、すべき事は解りましたね」
「はい、ダヌ様」
「ではケリドウェンと共に行くがよい!」
ケリドウェンとは大御婆様の事だった。大御婆様は伝説の魔女にして月の女神、そして冥府の女神、その化身だったのだ。
私と大御婆様は、オリュンポス宮殿を出ると真実の泉へと向かった。
真実の泉とは、現世での出来事が水面に映し出され、更に水面に触れると、映し出された人の感情まで感じ取れ、動物の話す言葉も翻訳されるといった神造物だった。ダヌ様に手をかざして頂いた時、真実の泉なる物がこの神界に存在すると知った時から、私は早く真実の泉を使いたくて仕方なかった。それはミーシアの無事を知りたかったからだ。
「ケリドウェン様」
泉を前に私は大御婆様の名を口にした。
「早く使うがよい」
大御婆様は涼しい御顔でにっこりと微笑まれると、温かい眼差しを私に向け小さく頷いた。
「泉よ! ミーシアを乗せた樽を映し出して……」
私が泉に語り掛けると、水面にミーシアを乗せた樽が映し出された。最後に見た時と変わりなく海面を彷徨い続けていた。
これではミーシアの無事はわからない。ミーシアの顔が見たい。そう心に願うと水面が小さく波打ち、穏やかになるにつれ、樽の中のミーシアの姿を映し出してくれた。
空気孔になっている矢が抜け落ちた穴から太陽の光が射し込み、ミーシアの表情が確認出来た。すやすやと眠る天使のような寝顔は、きっと泣き疲れた後なのだろう。
このままではいけない。漂流し続ければミーシアの命が尽きてしまう。
私は近くに船が巡航していないか調べたくなった。すると水面が映像を変えた。樽が徐々に縮小されて行き、辺りを巡航している船を捜し始めたのだ。
映し出された樽が随分小さくなった時、北東の方角に一隻の船が見えた。航路もありがたい事に、ミーシアを乗せた樽の浮かぶ南西に向かっていた。後は船員が樽を見つけ、引き上げてくれるのを祈るばかりだ。
泉の水面を眺めていると、時間が経過して行くに連れ樽と船が近づいて行き、樽と船の映像も拡大されて行った。
次第に船の輪郭が大きくなるにつれ、運命の悪戯とはこれほどまでに皮肉なものかと愕然となった。樽に近付いて行くその船は、あろう事か、海賊船だったのだ……。
海賊姫ミーシアとは別に、コメディータッチの自伝、
レッツ ゴー トゥ ザ NY ウィズ 岸和田㊙物語シリーズ1『武士はピンク好き 編』
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作者 山本武より!