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フードコート2

【フードコート2】


『ねえ、何食べようか』


『定番はハンバーガーよね』


『うん。でも、行列が凄いよ』


『行列はどのコーナーにもできてるけど。ハンバーガーが一番長いね』


『私はピザにするわ』


『私、フライドチキン』


『私はハンバーガーね。そのあとは、アイスクリーム』


『アイスクリームははずせないよね』


『そう。チョコレート味』


『私はクッキー味』


『私はラムレーズンね』


『わ、大人ー』


 フードコートで展開する店は。

 待ちに待ったファストフード店だ。

 僕の感覚ではありきたりな店ばかり。

 でも、この世界の人にとっては、誠に斬新な食べ物ばかり。


【ハンバーガー屋】

【フライドチキン】

【アイスクリーム】

【ピザ屋】

【パン屋】

【お菓子屋】

【ステーキ】


 展開しているのは、こんなところだ。

 全て魔道具で調理する。

 学院の食堂とくらべると簡易な魔道具であるため、

 明らかに味が落ちる。


 しかし、その分誰でにも簡単に操作できるようにしてある。

 それに、素材自体は学院食堂と同等だ。

 多少のヘマをしても、素材の美味しさで押し切れるのだ。



【居酒屋】


『お坊ちゃま、居酒屋を作るのですか?』


『居酒屋というかね、ビアホール』


『ビアホール?』


『夏限定で、屋上にエールを飲むエリアを設けるんだよ』


『はあ、開放的ですね』


『うん。花火も打ち上げる予定だから、名物コーナーになると思うよ』


 ビアホールは単に僕が好きだからである。

 夏季限定で屋上に設けることを計画している。

 ビールは勿論、ドワーフ産だ。



『ドワーフたち、すごい勢いでお酒作ってるみたいですね』

 

 ドワーフに酒製造を依頼してから2年ほどが経つ。

 ドワーフ界では猛烈な勢いで酒製造が広まっている。


『だね。ドワーフ村の村長さんが言うには、大陸の半分のドワーフ村が装備を導入したとか』


『大陸の半分ですか?ひっきりなしに設備の注文が入ってくるんですが』


 ドワーフ関連の事務はエレーヌにお任せしている。



『僕もそこそこ急いで設備を作ってるんだけど。納入は村長さんとこだからまだいいけど、これで設置も、となるととんでもない話だね』


『そういう話なら、せいぜい王国の中でしか話をもっていけないですね』


『だね』


『それにしても、お金も怒涛の勢いで入金されるんですが』


『さすが、契約に厳しいドワーフだけあるよ。律儀に履行してる』


『でも、あんなに大量の金貨とかどうするんですか?』


 彼らの売上の3%が僕に支払われることになっている。

 あとは魔道具を動かす魔石費用。

 僕のふところには莫大な金額が毎月転がり込んでくる。

 弱小国家の税収など目じゃないぐらいの金額だ。


『学院にも一定率を収めてるんだけど、他に使う当てがないんだよねー』



 この世界では前世ほどお金が重要視されない。

 例えば、前世で個人が一番お金を使うのは何か。

 大抵は、自分の家だろう。


 その家だが、こちらでは安い。

 下手すると、自分で建ててしまう。

 毎日の食事だって、美食には程遠い。

 いい素材が流通していない。


 つまり、日常生活に必要なレベルにおいては、

 前世日本ほどお金を必要としない。



 ところが、少し贅沢したり非日常的なことを始めると、

 途端に金額が跳ね上がる。


 冒険者などが狩ってくる稀な高級食材。

 家なら、ガラスとか家のデコレーション、

 あるいは温水・下水・エアコンなどの家庭用魔道具。

 魔道具自体にも金がかかるが、魔石の値段が高い。


 だけど、僕は全て一人でできてしまう。

 お金の使い道がない。


 あとは医療か。

 これも、エレーヌやカトリーヌがいる。



『でも坊っちゃん。以前言ってましたよね。使わないと経済がどうとか』


『うん。僕も理解してるわけじゃないんだけど、金貨とかの流通が足りないと、支払いができなくなっちゃうでしょ』


『そうなると物々交換とかになるんですかね』


『最後はね。でも、そうなる前にお金の価値があがるから、見かけ上、物価が下がるんだよね』


『物の値段が下がるっていいことなんじゃないですか?』


『一見よさそうなんだけど、物を売ってる人の収入は下がるでしょ。それが回り回ってみんなの収入が下がるわけ』


『なるほど』


『値段が下がったということで、みんながたくさん買いだしたら、それはそれで結構なことなんだろうけど』


『はー、混乱してきました』


『あとね、お金を貸してる人なんかは相対的に収入が増えるんだよね』


『ああ、返済額は低くなるわけじゃないですもんね』


『そう。逆にお金を借りてる人は大変だ』


『で、どうするんですか』


『僕もお金を貸す側にまわろうかと』


『大商人みたいですね。悪徳商人として嫌われたらどうするんですか』


『お金は金持ちに貸すよ。大商人とか領主とか王国とか』


 大商人はもとより、

 領主とか国とかも特に防衛費に金がかかる。

 しょっちゅう隣国と戦争しては借金している。

 案外、赤字のところが多い。


 学園都市が独立を勝ち得ているのも、

 国への貸金が膨大なためだ。


 無論、担保は取る。

 徳政令を出そうとすれば、報復するための武力は十分だ。

 僕一人でも軍隊を相手にできるし、

 ロベルトのスパイ活動は巧妙だ。

 数に対しては、黒狼軍団も活用できる。


 ああ、そうか。

 僕たちは国を相手できるほどの力を蓄えてきたのか。


 僕は単なる力自慢だけじゃなくて、

 もっと広範囲な意味でこの国に立脚していることを

 感じ始めていた。



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

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