農業パックの発売 貧乏村が大変身
【農業パックの発売 貧乏村が大変身】
『なあ、A村の話聞いたか』
『あの貧乏村か。人がいなくなったか?』
『バカこけ。逆だよ。えらく羽振りがいいらしいぞ』
『何?俺が山にこもっている間にそんな話になってたのか?何がおきたんだ』
『あそこな、酷い不作が続いてもう村を捨てるか、まで行ってたよな』
『ああ』
『でな、村長の友人に学院の卒業生がいるんだと。そこから話がでてな。金がなくても出世払いで村おこしをしてくれる神様がいるんだと』
『ほう』
『騙されたところで失うもんはないし、村の意見を固めてその話に乗ったらしい。そしたら、一ヶ月で村の経済が好転。半年ぐらいからは大きな波が来てな、今じゃ人手不足で移民を募集してるぐらいだ』
『そんな美味い話があるもんか。お前も騙されてんだろ』
『嘘だと思うんなら、村へ見に行ってみろよ。うちの村長も見に行ってきて、あっちの村長さんと話をしたらしい。でな、すっかりその気になっててな』
『一体、何をするんだ?』
『いろいろさ。小麦生産、製粉、パン作り、畜産、村でやってることならなんでもって感じだな。ただし、食に関係すること限定だがな』
『ふーん。よし、ちょっと見に行ってくるわ』
上記A村は、このたび僕たちが発売した
農業関係の作業パックの成功例である。
例えば、畜産農家向けに“肉熟成パック”。
・地下室掘削・硬化魔道具
・冷風魔道具
・湿潤魔道具
・懸架魔道具(肉を吊るす)
・マジックバッグ
・転移魔法陣
といった魔道具と
・魔道具のエネルギーとなる魔石
これらを販売する。
勿論、鉄の誓約を結んだ上での取引になる。
各種魔道具とノウハウも販売・指導するが、
重要なポイントは、マジックバッグと転移魔法陣だ。
とんでもない流通革命を起こしている。
『結局、マジックバッグと転移魔法陣はアナウンス取りやめたんだ』
『うん。反響が大きすぎるのが容易に想像できるからね』
『商売人はゼッタイほしいよね』
『馬車でゴトゴト、から開放されるからね。運送中の事故とか襲撃とか多いし』
『腐らないしね』
『うん。軍隊も欲しくてたまらないだろ』
『補給の問題が一気に解決される。その分、兵力に回せるし』
『転移魔法陣であっという間に戦場を移動、なんて敵からしたら悪夢だよね』
『是が非でも欲しいでしょ。戦場の概念が覆るんだから』
『あらゆる手段を使って、ということね』
『ああ。ムリにでも確保しようとするだろうね』
僕はいずれ通信革命を起こすつもりでいる。
ますます戦争の概念がひっくり返る。
手に入れようと目の色変えてる奴らに対処していると、
そのうち国と戦争、なんてことも冗談じゃ済まなくなる。
ただでさえ、僕は堪え性がないのだから。
エレーヌやロベルトからも真剣に忠告されたので、
鉄の誓約を結んだごく限られた人にのみ、
その2つを紹介することにしたのだ。
農業パックは他にもある。
“小麦栽培パック”
“製粉・製パンパック”
“家畜飼育パック”(鶏・牛・豚/猪・水牛)
などである。
魔道具だけではない。
継続的に、魔石・魔石飼料・魔石肥料の販売も行う。
マジックバッグや転移魔法陣ほどではないが、
魔石・魔石飼料・魔石肥料も重要な取引品目だ。
仮に誰かが僕の農業パックを真似したとしても、
この3つの品目がないのなら、ペイできない。
魔道具を動かすには魔力・魔石が必要だが、
たいていの魔道具は燃費が悪い。
かといって、魔石は通常魔物からしか手に入らない。
対して、僕たちは魔石をロハで無限に生産できる。
また、魔石飼料がないと通常森に生息する魔獣を
森以外で生育させることは難しい。
また、魔石肥料・魔石飼料を与えると、
通常の肥料・飼料よりも数倍の効果がある。
『用心棒の黒狼、大はりきりだって。アンガスが言ってた』
『ああ。彼らにとっては魔石は大好物だからな』
『ケーキとかはなくても大丈夫だけど、魔石というか魔素は黒狼にはゼッタイ必要だからね』
農業パック購入者には、用心棒として黒狼を2体つけている。
農業生産が増えて豊かになれば、
それにつれておかしな奴らも集まってくる。
村であれば、よそ者はすぐにわかる。
おかしな真似をすれば、即座に捕獲、
森の奥に捨てに行ってもらう。
実質上の処刑だ。
黒狼たちには魔石飼料または魔石で
喜んで働いてくれる。
黒狼は森の魔素を取り込んで活動する。
魔素が食事なのだが、魔石は純度が高い。
黒狼たちは大喜びだ。
販売する村は、開拓中の村を選んだ。
王国には、無主の荒れ地を開拓すると、
自分の土地にすることができるという法律がある。
自分の土地だから、横暴な領主やギルドに左右されない。
しかし、ほぼ100%の開拓村は上手くいっていない。
廃村する場合も非常に多い。
僕はそこに狙いをつけた。
あとのない村人が多いだろう。
だから、僕たちの言うことを素直にきいてくれる、
そう思ったからだ。
金がないから、成功後に支払いを開始することにしている。
僕にはそもそも儲ける気がない。
お金はドワーフの酒事業でどんどん入ってくるし、
だいたい、お金を使う当てがない。
僕に必要なのは数多の手だ。
労働力を必要としている。
最低限でも、学院と学園都市の料理事情を改善する。
そのためには、生産拠点を数多く作る必要があるのだ。
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