お祖父様領の開発
【お祖父様領の開発】
『ジュノーや、お陰様でヘンシェン鶏の飼育が軌道に乗り始めたぞ』
『おもったよりも順調そうで何よりです』
『鶏肉・鶏卵ともに高級品だからの、引き合いが殺到しておるわ』
『次はシーナ糖ですね』
『うむ。来年の早春。あと数ヶ月だから、これも上手くいくなら領経営の単年度黒字化どころか、借金も数年で返却できそうだわい』
『まだまだ、領地に労働力は余ってますでしょ?』
『鶏もシーナ糖も意外なくらい必要な人員が少なくて驚いておるわ』
『魔道具様々ですね』
『ああ。あと、魔石な』
『稼げる事業はたくさんありますから』
『おう。貧する領民を助けてやってくれ』
【魔石肥料、魔石飼料】
『お祖父様、まずは畑の開墾をしましょう』
『森を切り開いてくれるのか?』
『ええ。これは僕とロベルトが中心となります。領民で土魔法の得意なものがいたら、回して下さい』
『うむ。何人かいるから使ってやってくれ』
僕の風魔法でどんどん木を切り倒し、
ロベルトたちの土魔法で根っこを掘り起こす。
耕すのも土魔法だ。
急速に森が切り開かれていく。
切り倒した木や根っこは風魔法で切り刻んでいく。
大量の木材チップに森の腐葉土や
ヘンシェン鳥の糞をまぜる。
そして、仕上げは僕の発酵魔法だ。
発酵魔法は、料理では使い物にならない。
発酵はするが、美味しくならないのだ。
発酵にはじっくりと時間をかける必要がある。
しかし、肥料にするのならば味は関係ない。
もう、バンバン発酵させていった。
森の腐葉土も魔素をたっぷり吸い込んでいる。
さらに、魔石水溶液を追加する。
かなりいい肥料になっている。
この世界ではどこでも肥料不足が深刻だ。
肥料不足⇒農業生産が伸びない⇒人口が頭打ち
となっている。
だから、肥料の大量生産は
後に僕の村計画を大いに推進させることになる。
魔石水溶液の利用は、飼料にも及んだ。
通常の飼料に、魔石水溶液を振りかけるのだ。
たったそれだけのことでも、飼料の栄養が増進した。
これで動物を飼育すると、成長が速く、
肉質も格段に向上する。
【小麦】
『この魔石肥料はまさしく魔法のような肥料じゃの。小麦畑にまいたら、小麦が飛躍的に増産したぞ』
『どのくらい増えました?』
『今までは1haで2トン程度、それが魔石肥料を与えたところ、7トン前後に増えたのじゃよ』
『それはすごいですね』
『他に、おまえの作ってくれた魔道具もあるからの。省人化と収穫アップの相乗効果が生まれておる。他からの視察者が増加しておるが、自慢できんのが残念じゃわい』
『魔石肥料も農機具魔道具もマル秘案件ですからね。まあ、バレてもいいんですけど色々とうざ絡みしてくる奴も増えますから』
農機具魔道具は、
耕運機
播種機
害虫排除機(ドローンによる農薬散布から結界魔法に移行)
草刈機
収穫機
といったところを開発・投入している。
いずれも、何百haという広大な畑に対応している。
必要な魔石はいくらでも供給できる。
この魔道具作成の経験は、後に馬車の魔道具化、
魔導馬車の生産につながる。
『小麦の増産も嬉しいんじゃが、味も向上しておる。グルテンの多いパン製造に向いた品種になっての。市場でも特等級で評価してもらえておるわ』
『グルテンが多いほど、等級があがるんですか』
『基本的にはな。グルテン量が同じなら審査会での食味で良し悪しを決めたりもするが』
小麦の製粉はすでに魔道具化している。
ただ、パン作りは魔道具化しにくい。
パンを捏ねるとかの単純作業では問題ないが、
発酵やパンを焼くとかになると、非常に難しい。
今のところは、人の経験が必要になる。
ここは今後の課題になる点だ。
【水牛】
『水牛を全てミルク専門に回したのも英断じゃったの』
『ええ。水牛が担っていた力仕事は魔道具が行いますから。水牛にはのんびりしてもらって、そのかわりに質のいいミルクを生産してもらうと』
水牛はこの国では普通に飼われている。
畑を耕したりするからだ。
力仕事から開放し、のんびりと野原で育てるのだが、
飼料は、魔石飼料が中心。
通常の飼料に魔石水溶液をふりかけたものだ。
これが牛の成長に大きな効果がある。
働く必要がなく、適度な運動もするため、
水牛からのミルクは、栄養分の濃い健康的なものになった。
このミルクから、ナチュラルチーズを作る。
乳酸菌や凝固酵素を混ぜて凝固させたものだ。
この凝固酵素、“料理人”の指示によって作られた。
チーズ業者は多々あるが、同業者には真似ができない。
このチーズは、前世ではモッツァレラ・チーズとか
クリームチーズとか呼ばれているチーズの仲間だ。
原料乳の味が強く感じられる、
くせのないあっさりとした風味が特徴だ。
『チーズの味が2ランクは上がったの。コクがあるのに、味が自然なんじゃよ。お前が教えてくれたピザ、もの凄く美味しくて、領民に大好評だぞ』
『チーズケーキもですわ。うちの犬が床に落ちたレアチーズケーキを食べたときなど、腰を抜かしてたのよ。みんなで大笑い』
【強兵策】
これらの富国策を背景に、領兵を整備する。
まず、農業生産が魔道具化したことにより、
余剰人員がかなりある。
それらのうち、子供やお年寄り以外すべてを
常備軍とした。
強化は僕のクラスメイトと同じ要領だ。
『うちの領は女が強くての。ワシの女房も訓練に参加して先頭にたって槍を振り回しておるわ』
『お祖母様は昔、冒険者をやっておられたとか』
『うむ。この領では昔は男も女も冒険者を経験する習わしがあっての。いつの間にか廃れてしまったのだが、女房はその習わしを復活させようとしておるわ』
『皆さんのステータスも上がってきて、領民の意気も盛んになって何よりです』
村の経済が急速に回り始めているので、
それにつれていろいろな人が領に入り込んでくる。
領兵は警備担当として、重要だった。
領兵はみるみるうちに強くなっていった。
性別を問わないので、女性が男性を上回る怪力を示す、
などという事例は日常的だ。
そもそも、女性も辛い農作業に従事している。
前世日本では想像できないような怪力の持ち主は
珍しくなかったのだ。
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