表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/122

母上の実家へ

【母上の実家へ】


 夏休みは7月下旬から9月中旬まで。

 僕はこの機会に、母上の実家を訪れることにした。


 行くのには馬車で約2週間近くかかる。

 距離でいうと、おそらく1500km。

 東京からだと、鹿児島へ車で行くような距離だ。


 あらかじめ便りは出しておいた。

 僕は、3歳ぐらいの時に行ったことがある。

 その記憶はあるが、流石に朧気だ。


 何にしても、10年ぶりということになる。


 ◇


『おお、セフィーナの息子よ、よくぞ参った』


 セフィーナは僕の母親の名前だ。


『ご無沙汰しておりまして申し訳ございません』


『いやいや、遠いからの。こちらこそ、なかなか城に参上できずに不義理をしておったわ』


 お祖父様はロベール・アンドレ。

 男爵である。

 この辺りの領主だ。

 まだ、50歳ぐらいで老いを感じさせない。


『エレーヌとロベルトも久しぶりじゃな』


『ご無沙汰いたしております』


 エレーヌとロベルトは僕たちの親戚だ。


『まあまあ、こんなところで立ち話はなんですから、早く家の中に入ったら』


 お祖母様はセリーヌ・アンドレ。 

 やはり50歳ぐらいで、母上に似て、

 上品な美貌の持ち主だ。


 しばらくは積もる話をいつ終わるともなく語り合った。



『お祖父様、お祖母様、僕がここに来た理由なんですが』


『うむ』


『勿論、ご無沙汰していたことがあります。もう一つは、僕の本当の姿をご覧いただこうかと』


『本当の姿じゃと?』


『僕の祝福が“料理人”ということはご存知だと思います。そして、おそらく残念なお気持ちであろうことも』


『いや』


 僕はお祖父様を静止して続けた。


『まずは、僕の授かった“料理人”のスキルがどんなものがお見せ致します』


 僕はみんなにやってきたように、

 僕の特製ジュースを渡した。


 今回のはマンゴーベースにバナナとヨーグルト、

 ミルクと砂糖をミキサーにかけたもの。

 それに、薄めた魔石水溶液を垂らしてある。


 魔石の魔力回復力については誰もが知ることだが、

 同時に体力回復力もあることも良く知られていた。


 だから、僕たちは魔石を少しだけジュースに含ませて、

 一種の健康飲料水みたいにしたのだ。



『おお、なんと美味いジュースじゃ』


『本当に。心から元気が出てくる気がしますわ』


『では、ステータスをご覧下さい』


『?……!』


『+20ってどういうことなの?』


『それが、僕のスキルの一つです。僕の料理には強化効果があります』


『え』


『現状では、最大+200まで強化することができます』


『200って』


『では、次に私の魔法をご覧頂きましょう。どこか広大な土地に地下室を作りたいのですが』


『うむ。どこでもいいぞ』


『では、この辺りで』


 僕はすぐさま掘削土魔法を発動した。

 あっという間に、縦横30mの地下室が出来上がった。

 そして、上モノを簡単に作り上げた。


『なんと、その大きさの地下室をわずかの時間で』


『僕は、4属性魔法全てで上級魔法を発動することができます』


『おお、4属性、しかも上級となると、国の魔導師のトップレベルでもできるかどうか』


『ええ。でも驚くのはこれからです』


 僕はマジックバッグから長い魔導紙を取り出した。


『これは転移魔法陣です』


『転移?そんなおとぎ話のようなものを?』


『これから一緒に魔術高等学院に向かいましょう』


 ◇


『ここが、魔術高等学院?なんと豪奢な校舎、優美な庭園、広大な土地じゃ』


『本当に私たちは転移したのですか?』


『はい。この学院にはアニエス教授という有名な先生がおられます。彼女とともに開発しました』


『信じられん。いや、信じざるをえんが、それでも信じられん。お前は小さいときから神の子とも言われた頭脳の持ち主じゃった。お前は本当に神の子になってしまったようだ』


『いや、お祖父様、それは大げさですよ。でも、この転移魔法陣を利用して、僕はいろいろなことしようとしています』


『うむ』


『まずは、お祖父様の領地に力をもたらしたい』


 ここ近年、彼の領地は大不作が続いている。

 理由は不明であるので、対策のたてようがない。


 ただ、何度か見慣れないものを見た、

 という目撃証言があり、外部犯行説を疑っている。


『お祖父様の領地で新たな事業を起こしたいと思っています』


『ほう。それはなんじゃ?』


『ヘンシェン鶏の飼育とシーナ糖の製造です』


『2つとも、森の奥に行かないと無理ではないか?難しい事業に聞こえるが』


『ええ。もう一つが領軍の強化です』


『お前がするのか?』


『はい。実績と言えるかどうかわかりませんが、僕はE組の劣等生をすべてベスト40に送り込みました』


 学院の能力別クラス編成は有名だ。

 入学者100名を成績順に、A~Eに振り分ける。


『ほう。素晴らしいの。確かに、最大+200の付与効果を与えれば即席でもかなりの人材が育成できるの』


『はい。ただ、ステータスを料理の力で上げただけでは永続性がありません。そこに適度な訓練が備わってこそ、力は本物になります』


『確かに。まがい物の力はかえって人をダメにする』


『それには、お祖父様とお祖母様にも参加して頂きたいのです。いえ、無理をされる必要はありません。健康増進法だと思って下さい。必ず、効果が出ます』


『うむ。まだまだ若いものには負けられんからの』


『はい。それに若返りますよ』


『そうかしら?』


『ええ、間違いなく。それに石鹸・リンス・精油なんてのもありますしね。まあ、それはエレーヌのほうからあとで説明させます』


 ◇


 領地に戻った一行は、次の日に領軍を呼び出してもらった。

 そこで、僕の力を見せつけ、ジュースを飲ませ、

 鉄の誓約で誓いを立てて、訓練に突入した。


 訓練は毎朝のランニング、剣や魔法の稽古、

 そして、夜の魔力吐き出し訓練である。


 1週間は僕が面倒を見た。

 僕もしばらくは毎週末に領地に顔を出すつもりだが、

 基本はお祖父様が中心となる。


 そのために、みんなに配るジュースを

 お祖父様に渡してある。

 マジックバッグとともに。


 マジックバッグは、エレーヌ、ロベルト、アニエス先生、

 そして、お祖父様とお祖母様が持つことになる。



 1週間ごとに、アニエス先生から借りてきた

 魔力測定器で魔力を測定する。


 1週間でも魔力が増大した。

 そして、一ヶ月が経つと、魔力だけでなく、

 基礎ステータスも伸びたことにみんなは驚いた。


 若いならともかく、加齢とともに、

 基礎ステータスは伸びないだけでなく、

 下がるばかりになるからだ。


 この結果を見て、みんなはさらに発奮した。


 僕は並行して、シーナ糖とヘンシェン鶏事業に

 乗り出していた。



ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。

励みになりますm(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ