名水ーエールの製造1
【名水ーエールの製造1】
さて、転移魔法陣で活動範囲が飛躍的に広がった今、
僕はそろそろ手を広げることを考え始めていた。
一つには、お金を少し稼ぎたいというのがある。
さしあたって、僕にはお金的に困ることはない。
でも、お金はあって困るものじゃないし、
数年後には独立することになる。
そこに向けて、貯蓄を増やしていきたい。
そこで考えたのが、ドワーフの酒解禁だ。
これは、ドワーフのダリアンから何度か
言われてきたことだ。
どうも、酒の匂いを嗅ぎつけてきたドワーフがいるらしい。
そっち方面から探りを入れられているとのこと。
だから、酒醸造所を建設してしまおうか、
と考え出している。
醸造所で一番大事なのは何か。
水だ。
上質の水を産出する場所。
それを見つけ出して、そこを醸造所にする。
それに、美味しい水を見つければ、
料理全般が美味しくなる。
その水は伏流水を見つけたことで解決した。
行き来は転移魔法陣だ。
輸送が楽なのと、場所を秘匿できる。
『お坊ちゃま、この水を飲むと、街の水は不味くてのめませんね』
『だよね。この水を料理や飲料の基準にしたいんだよ』
『ああ、やっぱり水は基本ですよね』
街の水は、美味い・不味い以前に、
衛生状態の怪しいものが多い。
だから、一度沸騰させる必要がある。
『この水でビールを作るとダリアンたちが狂喜するよね』
この世界では、ビール(エール)は、
酒というよりも飲料水の側面が強かった。
水の質が悪すぎるからだ。
酒の消毒効果によって消毒され、
不純物を濾過されたビールを人々は好んで飲んだ。
勿論、酒だから陽気にもなれる。
ただ、そうはいってもビールの品質は高いものではない。
貴族や金持ちはワインを飲み、
庶民はビールを飲む。
貧者のワイン、馬の飲む酒、などと馬鹿にされていたのだ。
『ギルドはどうでしょうか』
『そこなんだよ。ビールも金持ちの収入源になってるからね。下手に作れないんだよね。だから、このエリアでこっそり作ろうかと』
『醸造所がギルドの管轄エリア外ならば、文句を出しようがないということですか。運送も転移魔法で楽々ですから問題なしですな』
ただ、販売についてはひと悶着あるだろう。
間違いなく、どこかのギルドが文句を行ってくる。
しかし、売り場を鍛冶ドワーフの故郷、
つまりドワーフの里としたら?
◇
『ダリアン、喜んでよ。酒を大々的に作ることにしたよ』
『なんと!その言葉、待ってたぜ!』
『まずさ、僕の住んでる学園都市に来てよ。話はそれから。
ああ、相棒の、えっとダニエルだっけ。彼も呼んでね』
『よっしゃ』
『あとさ、ここを引き払うことになるけど、いいかな?』
『問題なし!』
『じゃあ、明日またくるから、ダニエルと一緒に1日開けといてよ』
『1日でいいのか?』
『うん。十分だよ』
◇
翌日。
僕たちはドワーフの二人をつれて、
城のそばの僕たちの最初の森の拠点に向かった。
『ダリアンとダニエル。この魔方陣、なんだかわかる?』
『やけにでかい魔法陣だな。さっぱりだぜ』
『この魔方陣に乗って』
僕・エレーヌ・ロベルトとドワーフ二人が魔法陣に乗る。
『うおっ?』
『少し気が遠くなったと思ったら、さっきとは雰囲気が変わったな』
『なんだか違う部屋みたいだな。このどでかい魔法陣はさっきのも大きかったが、比べ物にならん』
『転移魔法なんだよ』
『はっ?転移?』
『そうだよ。僕たちは瞬間移動したんだ』
『冗談はよせ。転移魔法なんて伝説の魔法じゃねえか』
『その冗談を僕たちは完成させたの』
『はあ?あんたは前からおかしな奴だったが、ついに気が狂ったか』
『はは。じゃあ、もう一回魔法陣にのって』
◇
『ここはどこだ?最初の部屋と似ているが』
『ここが名水の里だよ。さあ、外に出よう』
外に出ると、森の中。
少し離れたところに清らかな水の流れる小川がある。
『飲んでご覧よ、この水』
『?……おお、なんと、清らかでしかもふくらみのある味!』
『僕が名水の里っていうのもわかるだろ?』
『ああ。これは伏流水だな』
『さすが、ドワーフは水に詳しいね』
『ああ。水は鍛冶・酒の基本だからな』
『これで、エールを作る』
『マジか。ちょっとまってくれ。頭が混乱している』
『まず、転移魔法といったな。おとぎ話じゃないのか』
『学院にはアニエス教授という、古代魔法に精通した有名な先生がいてね。彼女と僕が共同研究したんだよ』
『共同研究かよ』
『自慢なんだけどさ、僕も古代魔法の権威の一人なんだよ』
『学生なのにか。うーむ。体がついていけねえ』
『でも、この伏流水で酒を造る。ワクワクするだろ?』
『おう。うずうずしてきやがったぜ』
『ダリアン、醸造機械を倉庫から持ってこようぜ』
『ああ、転移はまかせてよ。僕もついていくから』
ブックマーク、ポイント、感想、大変ありがとうございます。
励みになりますm(_ _)m




