097:銃を磨いてダベりましょ 遠征前夜 #2
トウヤに新兵器が供給されます。
う~元号対応でもうオナカ一杯だよ。
疲れてんのにターボ君が枕元に出てくるし。
097:銃を磨いてダベりましょ 遠征前夜 #2
ケラトサウルスのカイさんとトルヴォサウルスのターボ君が口を滑らせてくれ、空軍の士官に白亜紀のことが漏れちまった。
オレは当事者ではないんだが、恐竜勢のキー・サウルスと言うこともあり、後始末を付けるハメになった。
今、ターク隊長(カニンガム大尉)に連れられ、ジョンソン先生(少佐)と自衛隊からいらっしゃっているVIPの大隈三佐との晩餐会の部屋へ来た所だ。
「どうだった?」先生は、コーヒーカップをソーサーに戻しながら訊いてくる。
「空軍のタカシマ中尉とバーンズ軍曹に、恐竜化シンドロームの真相が漏れました」
自衛隊さんの方も、どこまで真相をつかんでいるか知れないため、更に当たり障りのない言い回しが必要になる。
「なんだ、米軍も周知されているのではないのか?」大隈三佐が訊いてくる。
「目下、本国からの回答待ちでしてな。おそらく恐竜化シンドロームの概略までは通達されるでしょうが、それ以上は秘匿されるでしょう。
しかし、自衛隊の方は、ずいぶんと判断が速いのですな」
「幹部他隊員から恐竜化症を発症した者が多数出た。内数名は、自我を保っている状況で、人間語会話も回復したのだ。ただ…」
大隈さんは、困ったようにオレを見つめる。
「構いません、続けて下さい」
「記憶が混乱しているのか、白亜紀、恐竜時代のことを話す者がいるそうでな。HQ(大本営)から発症者たちにヒアリングをするよう、仰せつかっているのだ」
「雰囲気からすると、それだけではないようですね?」
「トウヤ、君は"人間殲滅派"という存在は知っているかね?」
大隈さんはオレのことをガン見している。
その目は、オレがハイを言おうがイイエを言おうがどちらでも構わない。ただ、真実を知りたい。そう言っていた。
う~ん、ここは答えていいか先生にお窺いを立てるべきだ。
しかし、オレを見つめる大隈さんから視線を逸らせば、どの道分かっちまうことだ…。
「はい」
オレは答えてから、ジョンソン先生の顔色を窺った。
先生は「仕方あるまい」と肩を竦めた。
「大隈さん、あなたと大迫さんは、私たち恐竜を慮った措置をしてくれています。
だから、あなたには話しておきます。
当面は他言無用のこととして下さい。
お願いできますか?」
今度はオレが大隈さんの誠意を見極める番だ。
「分かった。自衛官としてではなく、私自身の立場で約束する」
ジョンソン先生も、ターク隊長も、オレを止めなかった。
オレは、恐竜が第四紀へ渡ってくるに至ったいきさつを話した。その上で、3つの意見に分裂したことを説明した。
案の定、大隈さんもまた顔色を失っていた。
「覚えておいていただきたいのは、殲滅派といえ、方針に疑問を持つ竜も少なくないと言うことです」
「君の立場は?」
「"調査派"でした」
「今は?」
「第4の立場で、人間たちから"狩猟派"と呼ばれています。
オレたちは元々、人間が滅んだ後の時代へ渡る予定でした。
しかし、地球がなくなってしまうタイムラインを軌道修正するために、人間たちの時代に来たのです。
オレ自身は、人間を滅ぼす真似はしたくない。
ならば、破滅を引き起こす人間を探し出して退治すればいい、と考えたのですよ」
「悪いのは、人間なのか…」
「一部の人間、です」オレは、大隈さんの目を見ながら言った。
「恐竜に諭されるとはな」
「彼は、ヘタな人間より、人間をよく知っておるよ。何せ40年ほどこちらの世界でホームステイしていたも同然なのだからね」
「タカシマ中尉には、なんと言うつもりだね?」
「『インベーダーの襲撃から逃げるため、タイムマシンを作ってタイムトラベルしたところ、現代に来てしまいました』というシナリオです」
「まあ、妥当だろうな。
では、出向くとするか。
ミスタ大隈、スマンが野暮用で席を外す。すぐ戻る」
「私も同席させてもらえないか?」
「先と同じく他言無用を守っていただけるなら」
協力的な武官に真相を話すのはやぶさかじゃない。
ただそれが人間だってコトが問題なんだよな。
「トウヤ、君は調査結果がクロだったとしたら、どうするつもりだったんだ?」ハンガーへの道々、大隈さんがオレに訊いてきた。
「本音を言えば、オレはこの時代を見て歩いて回るつもりで来たので、ただ楽しむことしか考えてませんでした」
「キミらしい答えだな」
「白亜紀でもそうでしたが、ホントに退治しないとならない生き物なんていなかった。
みんな、どこかしらかいい所も悪い所もあるし、生きて行くのも大変なんですから。
一部のイカれた連中のせいで、お互いに迷惑するなら、種族だのなんだの関係なしに、協力して退治した方が後腐れない。
だから、これからも手伝って下さいね、ニンゲンの大隈さん」
「まったく自衛隊の佐官に向かって遠慮ない物言いだな、このデイノニクスは」
ハンガーに近付くと、なにやら歌みたいなのが聴こえてくる。
…セイワズ・ダイナッソァズ!!ホンク!ホンク!…
ハンガーのドアを開けると、カイさんとシマちゃんと初顔のハドロサウルス科らしき恐竜にターボ君が加わり、ダンスをしている所だった。
…セイワズ・ダイナッソァズ!!ロワァァァァ!!
踊る恐竜たちはオレたちに気が付き、ピタッと動きを止める。
「何をやっているのかね!?」センセは厳めしい顔で声を荒げる。が、目元の笑いを抑えるのに大変な様子だ。
「おお、ジョンソン少佐。ショーの演目を研究していたのだ」カイさんは愛想笑いで場を取り繕おうとする。
隊長も大隈さんも、顔は平然としているが、全力で笑いを抑え込んでいるのがよく分かった。
軍隊も警察も、体鍛えるだけじゃダメで、顔面も鍛えないとダメだというのがよく分かったシチュエーションだった。
ジョージがそそくさと一同を整列させる。
「なぜ三嶋君と藤田君までいるのかね?」
冠のあるハドロは藤田さんというのか。
「あの、私は明日の準備で相談があって、和尚さ…原田さんを探しに来たんです」
「ワタシは今日の片付けのことで、カイさん探しに来ました」藤田さんはメスのようだった。
「なかなかトウヤと隊長が戻ってこないのでな。ショーの持ちネタのことが話題に出たので、軽く振り付けを」そう言うカイさんは、先生と目を合わせないよう、目を泳がせている。
「レナード大尉、報告を」
「とりあえず、チームの恐竜メンバーが人類に対する害意を持たないことを説明しておりました」モノは言い様だよな。
「よろしい。以後、慎み給え。
さて、タカシマ中尉、バーンズ曹長」
「ハッ。白亜紀から親善交流にやって来た音楽ユニットであり、活動上恐竜個々のプロフィール秘匿厳守とのことを理解しました。よって口外いたしません!」
…それなりに合ってはいるけど、軍曹は何を勘違いしてるんだ?
って言うか、カイさんか!。
カイさんはかすかに首を上下に揺らせ、ニンマリしている。
また想定の斜め上を抜かれた。ので、結果的に今回もとりあずいいか。
「そうなのか?」大隈さんがオレに訊いてきた。
「…あのケラトサウルスは、辣腕のプロモーターなのです」チクショウ、もう破れかぶれだ。
そしてタカシマ中尉とバーンズ軍曹は引き上げた。
「副長とカイさんの機転でこうなったけど、ホント気を付けてよねターボ君!」
「ハイ、スマンこってす!」ターボ君は神妙に十度礼で謝罪する。
「御免なさいね、よく言って聞かせますから」そして、リモさんもターボ君の脇で、叔母として謝罪した。
叔母のリモさんからも謝罪され、さすがにテキサス娘のジェシーも怒る気が失せたらしい。
どっと疲れた。
「ヤレヤレよね」
「まあ、オレも含めてみんなお上りさんなんだ。多少のミスは出るよ」
「街中で大ゲンカやらかしたりね」
「アイタタ~!」
「今日は頑張ってる恐竜君にプレゼントよ」
「え!ナニナニ?」
「ワークデスクの上に置いておいたわ」
さっきまでドラマガを作っていた作業机の上を見てみると、なにやらガンケースらしきモノが。
サイズ的にはSMG(短機関銃)みたいだ。
「ええ~!。SMG支給してもらえるの!サンキュージェシー…」
ケースを開けた瞬間、オレはガッカリし過ぎて魂が飛んだ。
「PDWコンバーション・キット。
カービンコンバーション・キットの派生アイテム。
ハンドガンを内部にセットし、射撃時の安定性や射程距離を延長させるコンバーションキット。
特にサブマシンガンとしての運用を目的としたセットをPDWコンバーションと呼ぶ」
はっ、イカン。精神的ショックのあまり、脳内のウンチク情報をAUX出力しちまった!。
ついでに説明しとくと、PDWとは、Personal Difense Weapon:パーソナル・ディフェンス・ウェポンの略。他の支援なしで敵の襲撃を食い止められる火力を持ち、取り回ししやすくデザインされた携帯火器のこと。
基本的にSMGやカービンサイズのアサルトライフルになる。
「説明ありがとう。その通りよ」
その後ろで、ドロマエオサウルスのトシさんが大ウケで笑い転げていた。
「ヒドいよジェシー、結局ガバじゃん!」
「ドラムマガジン出来たんだし、丁度いいじゃない。見せてもらったけど結構いいデキね。
それに、ライトウェイト・スライドに交換するから、連射速度上がるわよ。
一応カタログスペック上、ブローバックスピードはノーマルの1/4、M1マシンガンの1/3になるわ。
アンタが使うならフルオートSMGと同じよ」
「う~ん…」
カタチはMP5に似た感じ。
内部にガバメントおよびその派生モデルを収容できるよう作られている。
アクセントとして、カバーフレームのケツに四角い大穴が空いている。射撃の際にこの穴からブローバックしたスライドがニョッキリ突き出るんだろう。
この手抜き同然のデザインに、トシさんが再び笑い転げ出す。
ムリもない。
人間がこの銃を構えて撃ったら、ホッペタをスライドにえぐられる作りになってるんだから。
一応、突き出てくるスライドをガードするFRP製のカバーが付属しているものの、この製品自体、欠陥商品もいい所だ。
デザインは悪くないんだけどな。
フォアグリップ仕様になっているから、デイノニクスでも扱いやすくなっているし。
10インチはあるロングバレルも付属していて、命中精度もかなり上がりそうだ。
単にセミオートと言うだけで、性能自体はそれなりに上がる。
じゃあ、なんでカービンコンバーションやPDWコンバーションが流行んないの?と言うと、信頼性という重要なポイントが通常のカービンやSMGに今一歩及ばないからなんだ。
フレーム自体はハンドガンのモノをそのまま流用するため、連射するにせよハイパワー・カートリッジを使うにせよ、耐久性がハンドガンのまま。
フレームがもたないんだよね。
それにキット自体の単価も高く、実売相場はセミオートのAR15と大して変わらない。
この製品自体、ガバメントが好きで好きでたまらない信者でもなければ≪誰も買わないイロモノ≫なんだな。
「いやぁ~~まあ、バントライン・スペシャルよこされるよりはマシだけど、コイツ、サイコー」トシさんは目に涙を浮かべながらまだ笑い続けている。
バントライン・スペシャルは、バレル長16インチのリボルバー。コルトシングルアクションアーミーのカスタムガン。
小説家のバントラインがワイアット・アープ保安官の伝記を書いた際、演出で作り出した架空の長銃身リボルバーを、コルトが真に受けて生産ラインに載せちまったという、瓢箪から駒を地で行く迷銃だ。
ストック付けてライフル代わりにも使ったなんて演出まであり、今で言うカービンコンバーション・キットのルーツとも言える。
バレルが40センチもあるリボルバーなんて、重いわ歩く時に邪魔だわホルスターから抜くのも一苦労だわで、実用性がないも同然なことぐらい銃社会なら分かりそうなもんなんだろうけど、そこはそれ。
風聞を真に受けて欲しがるコレクターやアープのファンもいたらしく、結構売れたらしい。
100年以上前なら、真偽を確かめる方法なんてアープ本人かバントライン本人に会う以外なかったんだからなぁ。
「ジェシー。コレ、なんかのジョーク?」
「半分だけね」
「?」
「このコンバーション・キット自体はただのジョークなんだけど、付属しているパーツが本当はプレゼントしたいモノなんだ」
「なんなの?」
「チタン製の遊底」
「!」
チタンは鉄の約半分の質量で強度はスチール以上。
つまり、コイツを今借りてるガバにパーツ・スワップしてやれば、ブローバックがかなり早くなる。
「まさかそんなレアなパーツが…」トシさんが驚いたようにつぶやく。
「そうか、コイツの付属パーツでしか手に入らないから、コレごとくれるってのか」
「そ!。
ホント言うと、ウチのアニキが売れ残り品を安く手に入れたヤツなんだ。
今はグロック使うようになっちゃったから"ちょうだい"って言ったらくれたのよ。
よかったら使って」
「うわぁ~~、テンキュー、ジェシー!」
オレはパーツを照明にかざしてみる。
滑らかな表面は、構造反射色の虹の幅が狭い。高い工作精度で作られているのがよく分かる。
どの道、試射は明日にならないと出来ないし、後で組み付けよっと。
今は大隈さんもいるし、ターボ君とリモさんを待たせている。
じゃあ、気分のいい所で、ターボ君とリモさんへの説明タイムを始めようか。
トシ :いや~、このキット最高!。
ジェシー:ソレ作者の創作よ。ベレッタ用のカービンコンバーションを参考にしてるそうね。
トウヤ :結局オレにはガバしか来ないのか。
ポール :ナニ贅沢言ってる。お前のガバがチーム内で一番カネかかっているんだぞ?
トウヤ :そうなんだ?
シュン :パーツ代だけでトータル4000ドルくらいだな。89式より高いハンドガンなんて戦闘で使うのありえない。
トシ :同感同感。
トウヤ :オレは壊れないチャカかSMGが欲しいだけなんだケド…。




