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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
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この解呪はどこかおかしい14

 使徒には代わりがきく……それっていくら倒しても埒が明かないんじゃ?

 この世界って勇者があんなのだしなぁ……また立ちはだかることになれば、そのときに何とかするしかないのか。

 一生、立ちはだかって来ないことを祈るばかりだが。


「おっと、この階はここまででござるな。上に行くでござる」

「次は誰の住居なんだ?」

「次は……節制の使徒」


 ラグナか?

 あいつもここで眠っているし問題ないな。

 通気口から出るとトレーニングルームのような場所に出た。

 ベンチプレスにエアロバイク、ダンベルなどさまざまな器具が置かれている。

 強さに貪欲なラグナらしい部屋と言えばいいんだろうな。

 ガラス越しに奥に道場もあるようだ。

 ここでも数人の女性がいる。

 しかも筋肉ムキムキな人ばかり……ラグナってこういう女性が好みなのか?

 まだ、ラグナは亡くなってないからか筋肉メイドたちはトレーニングマシーンで筋トレをしている……汗臭そうな場所だな。


「ぬぉぉぉ!」

「でりゃぁぁ!」


 奥の道場では組手をやっている筋肉メイドたち……ってか、神聖なメイド服を着ながら、筋トレや組み手をしないでください!

 あまりにも似合わすぎる。

 さっきの救恤の使徒の部屋にいた人たちと同じメイド服だし、このタワーでの女性の制服がこのメイド服なのか?


「さてさて、お次は誰の部屋でござるかな――?」


 愛輝、楽しんでないか?

 他人の部屋を覗き見することに興奮して……やっぱ、お前……やってるな?

 再び、通気口を通り上を目指す。


「次は……忍耐の使徒」

「忍耐の使徒……誰だっけ?」

「確か、あの幼女だったでござる」


 パティか……あの子の能力も不明なままだし、ここで何か手がかりを見つけられるといいんだが。


「確か……この階層は……特別……気を付けて」

「何が特別なんだ?」


 通気口から出た瞬間、我が目を疑った。

 真っ暗だ……何もカメラに映らない。


「少し待つでござる。ナイトビジョンカメラに切り替えるでござる」

「そんなこともできるのか?」

「スパイアイテムでござるからな。暗い場所でのすぅんごぉぃことも、しっかりと録画できるでござるよ」


 あちゃちゃ――、そんな目的で使ってるのね。

 愛輝さん、アウト――!

 カメラを切り替えると、スマホの画面に下の階層とは明らかに違う異様な光景が映し出される。

 

「うげぇ……気持ち悪いでござるな」

「あ……ああ」

「だから言った……特別って……」

 

 蛇や色鮮やかな蛙……それは良いとしてムカデやサソリ、見たこともない気持ちの悪い蟲が部屋いっぱいに蠢いている。

 しかも、この階層だけ壁面がガラス張りで無く鋼鉄製の壁で覆われて日の光が入ってこないため真っ暗になっている。

 通気口から蟲が出て行かないのも不思議だ。


「ふむ……これはもしやすると大がかりな蟲毒でござるか?」


 蟲毒……さまざまな毒虫を同じ瓶に入れて生き残った一匹が最強の毒虫になるっていうあれか?

 

「あたしも……データに入ってなかったから……パティの能力は知らないの……それはつまり……ホークも詳しく……知らないと言うこと」

「同じ使徒であるホークでも知らない? 少し気になったんだが、ナデシコが知っていることって……」

「あたしは……ホークのデーターベースと……繋がっている……だから……ホークが知らないことは……あたしも知らない」


 そうだったのか、するとナデシコがいてくれるだけでホークが知った最新情報は筒抜けになるってことでいいのか?

 ……さっき、ホークが口喧嘩をしていた相手をナデシコは知らないみたいだし、データーベースとやらにホークが入力するまではナデシコでも知れないのかもな。

 まぁ、ホークも忙しそうだし時間のあるときに一気にデーターベースに入力してくれることを願うとしよう。


「ホークが他に詳しく知らない能力の使徒もいたりするのか?」

「うん……使徒は仲良しごっこじゃない……お互いがあまり話さない……ホークも……あまり興味が……ないみたい」


 仲間なんだから、連携を取るためにも仲間の能力くらい知っておけよ。


「うわっ、虫のせいで操作が難しいでござる」

「蚊くらいの大きさだもんな。食われたりはしないか?」

「心配でござる。早いところ、ここは抜けるでござるよ」


 パティの部屋と大量の蟲を見れば、なんとなく想像は付く。

 ユーナや雪の急に具合が悪くなり倒れた様子からして毒使いってところか。

 幼女で毒使いとか……バッグベアのおっさんは将来、殺し屋にでもさせるつもりか?

 まぁ、あのおっさんも殺し屋みたいな姿をしているからな。


「しかし、当の本人はいないでござるな?」

「さすがにここに住んでるわけ無いだろ。たぶん、父親と同じフロアだろうな」

「あたしも……そう……思う」

「それじゃ、さっさと上に向かうでござる」


 奥に進むと上の階層は階段で繋がっていた。

 蟲は通気口と同じように部屋から先に進もうとしない。

 まさか、パティが調教してるとかじゃないだろうな?

 となると、能力が蟲使いって線もあり得そうだな。

 やだ……気持ち悪い!

 虫嫌いなんだよ、俺は。

 

「次の階層はバッグベアか?」

「そう……譲渡の使徒の……階層」


 階段からそのまま上の階層にドローンを動かす。

 蟲部屋と違い、全面ガラス張りの壁で日光が入り明るく、全体的に整理整頓がきちんとされている綺麗な居住スペースだ。

 

「パパ――! 早く、早く!」

「パティ……そう急かせるんじゃない。蟲はどこにも行かないだろう」


 バッグベアとパティの声が聞こえる。

 このフロアにはメイドの姿が見当たらないな。

 二人住んでいるなら、メイドの人員が多くてもおかしくないと思うのだが。

 

「ここは慎重に操作するでござる」

「ああ、見つかるなよ」


 そんなことより、バッグベアが女性を抱えている。

 メイド服だし、このフロアで働くパートタイマーだろうな。

 気を失っているのだろうか、ピクリともしない女性を抱えてこっちに向かってくる。


「愛輝、そこの棚の下にドローンを隠せそうか?」

「ふっふっふ、吾輩ともなればそれくらいは朝飯前でござる」


 プーン


 棚の下は埃がたまっている。

 どうやら、ここを掃除している人は見えるところだけ綺麗にするタイプのようだ。

 ドローンの速度を落とし飾り棚の下に潜る。

 やはり愛輝……手慣れているし、頻繁に覗き見を……?

 元の世界に戻ったら、子どもの頃のこいつを通報するとしよう。


「パパ――! 早く、早く! 餌あげないと! みんなお腹ぺしゃんこなんだから」

「わかっている……よっと!」


 なっ……女性を蟲のいる下の階に放り投げる。


「みんな――! ご飯だよ――!」


 下の階に向かって声をかけるパティ。


 グシャ

 ベシャ

 メキメキメキ

 ドシュ


 なんとも嫌な音がスマホのスピーカーを通して聞こえてくる。


「……」

「……あいつら!」

「酷いね……だから、譲渡の部屋の……勤務は……高額だったんだ……」

「死んだら給料なんて意味ないだろ!」


 やはり、勇者軍は悪党だ。

 何がここで働きたい人は働かせているだ……こんなのブラック企業どころじゃないぞ。

 愛輝は静かにしているが真剣な表情をしている。

 静かに怒っているという感じだ。

 

「愛輝……平気か?」

「……後を追うでござる」


 ドローンを操作し、バッグベアとパティの後を追わせる。

 

「この階にはメイドとして働いている女性はいないみたいだな」

「あたしも……知らなかった」

「いや……いるでござる」

「分かるのか?」

「さっきの女性の服装……メイド服だったでござる」


 そういえば、そうだったな。

 ……と言うことは、働かせた後に蟲の餌にされたってことか?

 それとも、何か失敗をしたから餌にされたとか?

 どちらにしろ、虫唾が走ることだがな。

 愛輝は本気でキレているみたいだ、こいつは静かに怒るタイプだったか。

 こういうタイプは怒らせると厄介なんだよなぁ。


「絶対に許さんでござる」

「ああ……俺もだ」

「至高のメイド服を汚す輩はミンチでござる!」


 服のほうなの!?

 やっぱり、こいつもクズだわ!

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