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俺、神様になります  作者: 昼神誠
混沌の世界へようこそ
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この解呪はどこかおかしい13

 ホークが部屋を出てからどれくらい経っただろうか?

 ユーナと雪の治療が済むまでは目を離せない。

 3つの大きな培養槽にユーナと雪の他にラグナが入っているからだ。

 しかも、ラグナの治療はすでに済んでいるという。

 確かにナデシコにぶった斬られた四肢は元通りになっているが、両腕は異常に太く脚部は異常に細い。

 脚部なんて身体全体と比べると筋肉量がまるで無い。

 これで培養槽から出て歩けるのかって言うほどの細さだ。

 しかも、心臓が肥大化しているのか右胸部がはちきれんとばかりに激しく鼓動している。

 なんか、見たことも無い異形モンスターにでも変わるんじゃないだろうな?

 ラグナだけはもう逝かせたほうが良いんじゃないか?

 まぁ、目が覚めてもナデシコが何とかしてくれるとは思うが……。

 それより、ダリアをどうするかだよな。

 ユーナはホークを連れて行こうとするが、助けてもらった恩義もあるし今回は見逃したい。

 呪術がもともとかかっていた誰かからダリアに移したのはホークだが、愛輝の盗聴器で聞いた限りじゃあまり乗り気では無かったみたいだし。

 この辺りの培養槽に自然と戻っている黒子の一人くらいでも捕らえて、そいつに呪術を転移させるというのは……。

 うーん、何も悪いことをしていない美少女に酷い目を合わせるというのもなぁ。

 ならず者をとっ捕まえたいが、下っ端のならず者はどこにいるのかわからないし。

 

 ピンポンパンポーン


「魔界遠征の隊長はブリーフィングを始めます。至急、49階までお越しください」


 49階か。

 そういえば、このタワーって何回も来ているがいつも地下ばかりだな。

 ……そもそも上に用事が無いもんなぁ。

 

「むむむ! リュージ殿、これを」


 愛輝がスマホを見せる。

 ホークにつけた盗聴器を作動させるアプリか?


「よく聞くでござる」

「……から! 何度も言っていますわ! 勇者様の仰る通りスライムを何とかしたいのは私だって同じですわ。でも、あなたは何もしないってどういうことですの! いくらあなたが……からって勇者様のご命令に従わないのは契約違反ですことよ!」

「………………」

「これだから、あなたを復活させたくなかったのですわ! 私の可愛いお人形さんのオリジナルを一人犠牲にしたって言うのに!」

「……………」

「ひっ……わ、わかりましたわ。スライムは私のお人形さんたちに何とかさせますわ! だから、命だけは!」


 ホークが言い争っている?

 無線機の調子が悪いのか、相手の声がまったく聞こえないのが気になるな。

 独り言のようにも思えないし。

 話している相手がダリアの前に呪術にかかってた奴か。

 しかし、ホークが復活させるのをためらっていただけあって仲はあまり良さそうじゃないな。

 最後は相手に脅されたのか?

 ホークが命乞いをするなんて……勇者軍も中身は一つじゃないみたいだな。


「ホーク殿の声はしっかりと捉えるのに、相手の声が聞こえないのが不気味でござるな……これは少し様子を見たくなってきたでござるよ」

「無線機は壊れていないんだよな?」

「海外の軍隊でも使われている闇ルートで購入した無線機でござるよ。考えられるなら、強力なジャミングをかけているとしか考えられないでござる」


 闇ルートでそんな盗聴器なんか購入するなんて……愛輝、お前はやはりダリアにストーカーしているんじゃないだろうな?


「様子を見るって……まさか、上の階に行くつもりか? やめておけ、危険だぞ」

「ふっふっふ、こんなこともあろうかといつも持ち歩いているものがあるでござるよ」


 愛輝がウエストポーチから何やら取り出す。

 あれ、これって……?


「超小型ドローンでござる。盗撮に欠かせない至高の一品でござるよ! なんと8K画質でござる!」


 愛輝が手のひらに乗せたドローンは蚊ほどの極小サイズのドローンだった。

 サイズの小ささには驚いたが、俺の時代より15年ほど未来の世界なら8K画質って大したことないんじゃ……それにしても、盗撮だと?

 やはり、こいつは……ダリアに犯罪まがいなことをやっていたか。


「それ、行くでござる」


 プーン


 ドローンがトンネルの奥へ入っていく。

 映像は愛輝のスマホから見れるようだ。

 この世界の魔法で動くスマホとどうやって連動させたんだ?

 

「なにこれ……面白い」

「そうでござろう。このドローンも闇ルートで手に入れた各国のスパイも好んで使うアイテムでござるよ」


 ナデシコも興味津々だな。

 3人でドローンから映し出される映像を見続ける。

 行き止まりのときは通気口に入り上層へ向かって進んで行く。

 愛輝が言ったとおり、本当にスパイ道具みたいで面白いな。

 

「これってバッテリーはどれくらい持つんだ?」

「12時間は動き続けるでござる。無くなったときはソーラー発電式小型バッテリーで充電するだけでござるよ。曇りのときは電池式バッテリーで充電するでござる」


 そんなものも持ってきていたのか。

 電池式バッテリーだけはえらい前時代式なアイテムだな。

 ……電池……だと?

 そういえば、ニーニャさんから借りた武器があったな。

 ポケットから取り出して、再び底の蓋を開けてみる。

 筒の穴のサイズからして単3電池だが、愛輝が持っていたら使えるかも知れないな。

 

「むむ……リュージ殿、それは何でござるか?」

「ああ、これか? 電池を入れて動くみたいなんだが」

「ふむ、これは単3でござるな。後で入れてみるでござるよ」

「持ってるのか?」

「ペンライトは単3でござる。20本は常備しているでござるよ」


 そのウエストポーチにどれだけのもの詰め込んでいるんだよ。

 盗聴器に盗撮用のドローン、あとはキーピックと睡眠薬が入ってたら完全にアウトだな。

 

「おっと、ここから吹き抜けでござる」


 ドローンが1階のロビーに出たようだ。

 ならず者共が集まっている。

 なるほど、平常時は1階が下っ端の待機場所って感じなのか。

 ユーナと雪の治療が済んだら、1階にいるならず者を一人拉致ればミッションコンプリートだな。


「それで、ホークは何階にいるんだ?」

「トレースによるとまだまだ上の階でござるな」


 トレースか……相手の居場所は魔法で突き止め、ドローンで覗き見する……愛輝に取っちゃ最高の世界なんだろうな。

 

「ホークは多分……77階」

「行ったことあるのか?」

「行ったことは無い……77階は……ホークの家」


 ナデシコによると使徒にはそれぞれ居住スペースが設けられているらしい。

 それで勇者は最上階って感じになるのかな?

 以前、攫われたユーナを助けるために杏樹と来たときも勇者がスピーカーで最上階に来いって言ってたが、そこにたどり着くまでに各使徒の部屋を通り、使徒を倒さなければいけなかったわけだ。

 ……杏樹の変態レーダーもとい嗅覚に助けられたな。


「吹き抜けもここまででござる。また通気口をくぐり抜けて行くでござるよ」

「最初は……救恤の使徒の……居住スペース」

「なら、安心だな」


 雪が倒してくれたから無人のはずだし。

 通気口を通った先には豪華な装飾の施された壁や天井が画面に映る。

 無人かと思ったが、遺品整理をしているメイド姿の女性が数人いるようだ。


「この人たちは?」

「勇者たちがスライムから助けるために襲った町から助け出された人。この町で働きたい希望者はみんな使徒のお世話をパートタイムでするの」


 助けるために襲う……凄く矛盾しているが、それについては今はどうでもいい。

 なんで攫われた人が初めにこのタワーの地下に閉じ込められるのかわかったような気がする。

 

「最初に地下に集め、希望を聞くわけか?」

「うん。働くのを希望しない人たちはスライムが通り過ぎるまで、この町に住んでもらうの」


 思っていたようなすぅんごぉい目に遭わせるわけじゃなさそうだ。

 けど、男は容赦無く殺して回るのがなぁ……やっぱ勇者軍は悪だな。

 それにドローンで見る限り奴隷のような扱いでは無いようだ。

 みんな、綺麗なドレスを着ているし。

 パートタイムと言うだけあって、強制労働のような感じにも見えない。


「けど、たまに下っ端の部下共が一人の女性を無茶苦茶にするから上層部も困っている」


 やっぱ、ならず者共はそうなんだな。


「このメイドたち、なんか悲しそうな顔をしているな」

「使徒が亡くなるなんて……初めてのできごと……だから、みんな戸惑っている」

「そうなのか? この人たちはこの後どうなるんだ?」

「たぶん、他の階層の……お仕事をすることになる……新しい使徒が捨てない限り」


 新たな使徒?

 ああ、別の使徒のもとでメイドとして働くわけか?

 それとも……。

 

「えっと……その……使徒って変わりがきいたりするのか?」

「うん……すでに救恤の使徒の候補を呼びに……小隊がどこかの町に向かったはず」


 な……何だとぉぉぉ!

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