この解呪はどこかおかしい3
ユーナ……あまりにも猪突猛進過ぎるだろ!
もう少し現状を考えてくれ。
欽治や杏樹、ニーニャさんもいないのに敵の本拠地に乗り込んでどうにかできるわけが無い。
愛輝もここで死にかけたんだから、少しは慎重になれよ!
雪は……まぁ、幼いから許す。
「それでユーナ殿、どこのどいつがダリア嬢を酷い目に遭わせたけしからん奴でござるか?」
「白衣を着た長身の女性よ。絶対にあいつだわ! 今すぐにでも目に物を見せてやるわ!」
「女神ちゃん、どこで血がドバドバ出てるのぉ――?」
……この構成、不安でしか無いんだが。
近接メンバーは愛輝で……いいのか?
ユーナは回復役として……雪は……ダメだ。
起きてるし、いつ雪に変わるかわかったもんじゃない。
雪が出てきたら勝てるかもしれないが、言うことを聞かないし、やはり不安要素でしかない。
「まずは勇者城に突撃よ!」
「「お――!」」
お――じゃねぇぇぇ!
自ら捕まりに行くようなものだ。
だが、ここまで来た以上、少しくらいは様子を見てみるのも良いかもしれない。
帰ろうって言っても、絶対に腰抜けやら仲間を見捨てる酷い奴やら言うに決まってるし……はぁ、あんな提案をした俺も悪いんだけどさ。
いちおう、病院で回復薬は補給しておいたし今度はMPをしっかりと確認してステルスが切れないように最新の注意を払おう。
ラグナに出会ってしまったら、それまでなんだが……あいつもニーニャさんの攻撃でそれなりにダメージを受けたし、休んでくれていることを願いたい。
後はダリアに呪術を移した白衣の女性か……確か、ホークだったか?
あいつくらいしか思いつかないし、向かうのは研究所がある地下か?
上層階は近寄るのも無理そうだし、地下にしておくか。
この前の騒動で欽治のホムンクルスがすべて起動しているかもしれないのが最大の不安材料だよな。
どうか、出会いませんように!
「ちょっと待てって。ステルスをかけてやるから突撃はやめろ。また、あのラグナって奴に見つかったら、今度こそただでは済まないぞ」
「わ……わかったわよ。リュージったら相変わらずチキンね」
誰がチキンだ!
みすみす死にに行くような状況じゃ、慎重になってもおかしくないだろ!
とにかく、みんなにステルスをかける。
「それじゃ、改めて……突撃ぃぃぃ!」
「歩いてだ!」
はぁ……不安だ。
渋々とタワーへ近寄る。
正面玄関に黒子がいない。
この前のおかげなんだろうか?
ここの戦力の立て直しも不十分なのか。
どちらにしろ、運が良かった。
「今回は欽治殿のクローン体がいないでござるな」
「ああ、何でだろうな?」
「きっと私たちに恐れをなして逃げたのよ」
そうだと助かるが100%、そうじゃないから黙っておこう。
中に入った直後に見張りをしている黒子もいない。
やはり、戦力の再配置がまだなんだろうか?
「金づるちゃん、抱っこして――」
「了解でござる。代わりに雪殿、50ゼニカほど後で貸してほしいのでござるが……」
こらこら、遂にダリアへ貢ぐ金が尽きたからって幼女にまで駄賃をせがむな。
少しは節制しろ!
「地下に行くわよ……ほら、早く」
「はいはい、そう急かすな」
地下に降りた途端だった。
酷い光景が目に映る。
「な、何よ……これ?」
「……酷いでござるな」
「金づるの背中あったかくて眠くなってきた――」
「雪ちゃんは寝てていいよ……というか、寝ててくれ」
床や壁は血だらけで黒子の亡骸がそこら中にある。
中には肢体がバラバラになっているものもあった。
傷口から大体の推測だが、どうやら鋭利な刃物のようなもので斬られたようだ。
天井や壁、床にも剣戟の跡が残っているし。
杏樹の他にも侵入者がいたのか?
これだけの黒子を相手にできるなんて、相当な使い手のようだ。
敵でないことを祈りたい。
「とにかく、奥に進んでみよう」
「そ……そうね。ひぇぇ、後で浄化しないと……」
「いったい、何者の仕業でござろうか?」
扉はすべて解放されている……というか黒子の亡骸がずっと奥まで続いている。
誰がやったのか知らんが、これはあまりにも惨いな。
杏樹以外の侵入者は研究所へ向かったのか?
そうじゃなきゃ、ここが黒子の亡骸でこんな状態になるわけがないし。
いつごろだ?
俺たちが去った直後か?
味方なら助かるんだが、頭のイカれた殺人狂とかじゃないだろうな?
「あれ……行き止まり?」
「大丈夫だ、ここに隠し扉がある……一つ確認するが、本当に先に進むか? 戻っても良いんだぞ」
「何を言うでござるか! リュージ殿はダリア嬢の心震わせる名曲がもう聴けなくなっても良いんでござるか!?」
「そうよ、まったく! ……ダーリンは大切な友達なのよ!」
はいはい、下手なことを聞いた俺が悪かったよ。
ダリアを助けたいという思いは俺にだってあるけどさ。
このパーティー編成ではな……うん、不安でしか無いんだよ。
「早く、先に進むわよ。ここの可哀想な亡骸が多すぎて肌寒いわ」
「わかったよ。いいか……こいつらホムンクルスをやった奴がいるかもしれない。ここからは慎重にいくぞ」
「わかってるわよ、ドジは踏まないから安心して」
「ダリア嬢のために頑張るでござる」
「Zzz……」
あ――……やっぱ、不安だ。
隠し扉を開け、エレベーターに乗り込む。
行き先は地下の研究室だ。
ヴヴヴ……ガタッ
「ホスピリパの病院にもあった乗り物ね。前のより狭いわね」
「中で暴れるなよ。ワイヤーが切れてしまったら大変なことになるからな」
「はっはっは、映画の見過ぎでござるよ。リュージ殿」
確かにそんなこと滅多に起きるもんじゃないけど。
ここじゃ、何が起こってもありえない話ではないからなぁ。
研究所に着き、扉が開く。
ここにも黒子の亡骸が大量にある。
血で床が真っ赤だ……こんな惨状をあまり長時間見ていると精神がおかしくなってきそうだ。
「ここはまた凄い荒れようね?」
「ふむ……研究室のようでござるな?」
「むにゃむにゃ……だ……大根おろしソーダ」
また、雪の謎な寝言だ……もう、気にして突っ込む場合じゃないんだよ。
この惨状の中じゃシリアス路線でいくからね!
「ここで、この亡骸の黒子たちが作られていたんだ。そして、こいつらを作った奴こそ、目当ての白衣を着た女性だと思う。見た感じは強そうには見えなかったが、そいつも使徒らしいから気をつけろよ」
「大丈夫よ。私の魔法で粉々にしてやるわ!」
「吾輩もダリア嬢の素晴らしさを布教してあげるでござる!」
いや、倒したらダメなんじゃないのか?
気絶をさせて、ホスピリパの大学に連れて行かないとな。
「う、うう……」
「わっ、生きてる?」
黒子の生き残りか。
それにしても酷い傷だ。
ほとんど虫の息だし……どうしよう?
このホムンクルスに何かあったか聞けるかもしれない。
「ユーナ、話せる程度くらいには回復してやれないか? 何が起こったのか聞いてみたい」
「そうね、いいわよ……ヒール!」
「んん……けほっけほっ……」
「大丈夫か?」
「貴方たち……は関係者? ここは関係者……以外立ち入り……禁止……なの」
また、この問いかけか。
ホムンクルスなら、そう言うようにインプットされているのだろう。
以前は何を言っても無駄だったし、やはり話をするのは無理か?
いや、こんな状況だしダメもとで話してみるか。
「関係者だ……ホーク様やお前たちを助けに来てやったぞ。何が起きたんだ?」
「エラー」
エラー?
「エラーってなんだ?」
「エラーが……起きたの」
「もっと詳しく」
「自分達のタイプと別の……ダリア型とか言う……タイプ……合わせて……」
ダリア型!?
あの培養槽に入れられていた時点でクローンを作ることができる状態だったのか?
ダリアのホムンクルスがこんなことをしでかしたのか?
能力的には完全にサポートタイプだと思うのだが……。
「ダリア型がどうなったんだ?」
「エラーが……起き……」
「おいっ……どうした?」
「大丈夫、気を失っただけよ。けど……その酷い怪我じゃ」
「完全回復をしてやっても無理か?」
「わからないわよ。ほとんど、虫の息だったし……」
こいつは今までの黒子と少し違うような気がする。
疑り深い黒子たちにしては、このホムンクルスはすんなり話してくれたし。
俺も甘いのか……いや、だけど。
「ユーナ、頼む。こいつを助けてやってくれ。こいつは他のホムンクルスと違うような気がするんだ」
「……リュージらしいわね。いいわよ、眷属のお願いを聞くのも女神の仕事! 少し待ってて」
ユーナが黒子にヒールをかけ続ける。
「それにしても、ダーリンの偽物まで作ろうとしているなんて」
「あの能力は受け継がれていないはずだ。もし、受け継がれていたら時間や場所に関係無くならず者共が襲いかかってくることになるし」
そう考えたら、かなりの脅威だな。
戻るついでにここは完全に消滅させるくらいの魔法をユーナに撃ち込んでもらったほうが良いかもな。
これ以上、ホムンクルスを作らせないためにも必要なことだし。
この黒子が言っていたエラーっていうのも気になる……ヤバいな。
雲行きがどんどん怪しくなって来ている気がする。
「愛輝にとってはダリアの偽物って嬉しいんじゃないの?」
「そうだな、愛輝。一人くらい持って帰ろうとか考え……」
「ダリア嬢がいっぱい……ダリア嬢がいっぱい……ふへ、ふへへ」
めっちゃ喜んでいる!?
ここはシリアスで行くって言ったでしょうが!





