この解呪はどこかおかしい2
身代わりになる?
それって今のダリアのように眠ったままになるってことか?
解呪じゃないじゃん!
ただ、対象を変えただけにすぎんだろ?
「リュージさん、呪術は伝達させることでしか解くことのできない特殊な魔法なんです。かかっている人は元に戻りますが、移された人が呪術にかかった状態になってしまいます」
「それじゃあ、ダリアを元に戻すには誰かにこの呪術をかけるということですか?」
「そういうことになるわね。治療と言うには程遠いけど呪術はこうやって存在し続けているのよ。今では失われた魔法で新たに詠唱しかけることができる者はいないから、この患者にかかっているのはずっと存在し続けた呪術の一つね」
そんなものがあるのか?
病原菌だって移して移されての繰り返しで存在し続けているわけだし、そういうものだと割り切って考えたのが良いのか?
だが、誰に移す?
いや、そもそも誰から移された?
自称勇者共の仲間の誰かからか?
ずっと眠っていた奴が勇者側にいたのだろうな。
本当に厄介事の塊だな、あいつらは。
「リュージ……どうしよう?」
「大丈夫だ、今すぐに死ぬってわけじゃない。……マリアンナさん、誰か身代わりになる人がいたらいいんですよね?」
「そういうことになるわね。だけど、誰も呪術にかかりたがる人なんていないわよ」
「そうよ、リュージ。ダーリンだって移されたくてかかったわけじゃないのよ。無理矢理、移した人が悪いんだから」
「くくく、そうだ。この呪術を誰かからダリアに移した奴に返してやればいい」
「凄いわ、リュージ! 目には目をってやつね! あいかわらず、考えは下衆だけど!」
「リュージさん……それはあまりにも酷すぎます」
下衆で悪かったな。
だが、相手は勇者軍だったら何も遠慮することはない。
簡単に済ますなら、今でもどこかの町を襲っているであろうならず者を一人捕まえて移せばいいだけだ。
ニーニャさんもそんな目で見ないでくれぇ。
けど、まったくの無関係者に移すより悪くない考えでしょ?
「けど、リュージ。その人を知っているの? 知っていても移す儀式に五日はかかるわよ?」
「私なら二日でできるわ。ここに連れてこられたら、大学に寄ってちょうだい。いつでも儀式はしてあげるわ」
「えっ、二日? ぐぬぬ……さすがに専門家は凄いわね」
ユーナ、そんなことで対抗心をむき出しにするな。
儀式を行えるだけでも十分、凄いと思うぞ。
しかし、二日もかかるのか。
捕まえたとしても、その間に逃げられでもしたら厄介だな。
ダリアはおそらく、あの培養槽に入れられ眠らされているときに呪術をかけられたんだろう。
培養槽……はっ、しまったぁぁぁ!
それって、また首都に行くってことになるんだよな!?
あんなところ、二度と行きたくないぞ!
「ええっと、私からいいですか? 今まで呪術で眠っていた人は誰かわかりませんが、呪術を移す儀式をした人はもしかしたらわかるかもしれません」
「ニーニャん、ほんと!?」
うわぁ……嫌な予感がする。
絶対、タワーで見た誰かでしょ?
はい、そうです!
俺のフラグ予感(仮)のせいで言わなくてもわかります!
「ユーナさん、思い出してください。一緒にグレンへ連れてこられたとき、ダリアさんと欽治さんを連れて行った白衣の女性のことを……」
「あっ……そういえばいたわね。私が女神だって言って静止させようとしたのに無視した奴だわ。あんな、女神をも恐れぬ人間には天罰をくだしてやろうじゃない!」
「まぁ、そこのところは貴女たちに任せるわ。儀式を行いたければ大学に来なさい。貴女たちの名前と私の名前を言えば会えるように受付には伝えておくわ」
そう言ってマリアンナさんは出て行った。
大学って……この町には学校もあるのか?
「まぁ、いろいろと相談することもあるじゃろ? ダリアさんは他のお仲間たちと一緒の病室で入院させるから、いつでも見舞いに来れば良い」
「ありがうございます」
「ユーナ、一度病院から出るぞ。見舞いはいつでも来れるだろ」
「そうね、さっそく戻って作戦よ!」
ユーナは首都に乗り込む気、満々のようだ……頼むから暴走だけはやめてくれ。
もう、お前の一言で首都に乗り込むことが確定になりそうだし。
「リュージさん、私はお母さんの手術が終わるまでここに残りますね」
「わかりました。俺も雪ちゃんたちを探して、ロビーで待っています」
ユーナを無理矢理連れ出し、愛輝たちがいるであろうファーストフード店へ向かう。
杏樹は……戻ってから見かけないな?
どこに行ったんだ?
……まぁ、あいつのことだ。
心配しなくてもいいだろ。
そういえば、ドリアドの捕まった住人たちはどうなっているんだろうか?
ユーナやニーニャさんだけで精一杯だったし……まだ捕まっているなら助けないといけないよな?
確認のため一度、町に戻るべきか?
おじさんもユーナが心配だろうし家に帰るのも良いかもしれない。
なんてことを考えながら歩いているとミャックに着いた。
「いらっしゃいませ――」
「おお……リュージ殿ではござらんか。こっちでござるよ!」
「あ――、お兄ちゃんと女神ちゃん――! 次はどこで血を見るの――?」
もう、この子本当に怖いんですけど!
ほら、他のお客さんもすごい顔でこっちを見ていますよ!
お、俺は保護者じゃないですからね!
愛輝が座っている席には相変わらずハンバーガーが山のように置いている。
雪は……ふむ、おもちゃ付きのお子様セットか……可愛いな。
適当に注文し、愛輝たちの座っている席へ行く。
「それでダリア嬢の様子はどうでござるか?」
「そうだな、とりあえず入院ってことになった」
詳細は伏せておこう。
下手なことを言うと助けに行くって愛輝も言いそうだし。
「それがねダーリンには呪術がかかっていてね……これからそれをかけた奴をぶっ飛ばして捕まえに行くのよ! 貴方たちも来なさい!」
「な……何ですと! 許さんでござる! 今すぐにでもその大悪党を捕獲しに行かねばならぬでござる!」
……んもう、言うの早すぎなんだよ!
ユーナが詳細を省き、全部しゃべってしまった。
愛輝も行く気、満々になってしまったじゃないか!
こうなりゃ、雪だけでもこっち側に味方につけないと。
「雪ちゃんはお姉ちゃんが心配だよね?」
「ん――? お姉ちゃんはいつもお父さんから血をぶわ――ってされてるから面白いよ!」
どんな父親やねん!?
欽治が父親から修行受けてるとしても、大量出血はダメだろ?
まぁ、そんな厳しい修行が欽治のあの強さの元となっているなら良いんだが。
「それじゃ、リュージ! 愛輝! 雪! 早速、突撃よ!」
「了解でござる!」
「やったぁ、次は誰が血をドバァって流すのかなぁ!?」
ユーナが俺の服を掴み、呪文を唱える。
「えっ……ちょっ……まっ……」
「テレポートぉぉぉ!」
ヒュン
………………。
眼前にはラグナから逃げた直後の場所が広がっている。
首都ラグナの町のど真ん中じゃねぇか……。
……何でこうなるんだぁぁぁ!?





