指輪
レッドカーペットを歩き祭壇の前まで進む。そして宝箱にゆっくりと手を伸ばす。眩い光を発しながら出てきたのは、銀色の指輪だった。シチュエーションからしてお宝だとは思うが、指輪自体に凝った装飾が施されているわけでは無い。
手に取ってみる。
莫大なエネルギーを感じる、、、不思議な指輪だ。
するとその時、俺の頭上に、羽の生えた小さな女の子が現れた。手にはくす玉を持っている。
「パンパカパ~ン♪ダンジョン攻略おめでとうございま~す!」
くす玉がパカっと割れ、花吹雪が舞う。
「ありが・・とう。ていうか君は一体誰??」
「私は妖精のラビちゃんなので~す。お兄さんは1つ目のようですね。それじゃあ、かる~く説明しちゃいま~す。」
「え?・・なにを?」
「その指輪はガーディアンリングと言います♪それを7個集めた者は、魔王になるための試練を受けることが出来るようになりま~す♪なので、その指輪は自分の守護者になってくれる者に渡すか、大切に保管してくださいね!」
「え?・・別に魔王とかなりたくないんですけど・・・」
だって完全に悪役じゃん。存在するだけで世界の脅威みたいな扱いされちゃうわけでしょ。
「え~~最近の若者はこれだからもう~!野心が無いと言うか、無気力と言うか、、、、魔王になるってことは自分のダンジョンが持てるってことだよ?すっごい楽しいんだからね~しかも世界に貢献してるんだから!」
「お、おう・・・そりゃ楽しそうだ。」
なぜか知らないがちびっ子から責められている。
「でしょ~?あ、そうそう、ちなみにここのダンジョンからは10年は指輪をゲット出来ないからズルしようとしてもダメだからね!」
・・・そんなこと微塵も考えていなかったのだが・・・
「それより、ダンジョンを持ってるのが魔王なら、このダンジョンの魔王はいないのか?」
「いないよ~もう死んじゃったからね。だからその辺にあるダンジョンコアを壊してもいいけど、そうすると魔物とか宝箱は出なくなるから、するならよく考えてからしてね!それじゃ~ラビちゃんは忙しいのでそろそろ帰りま~す♪頑張っていい魔王になってね~♪♪あ、それとこのことは他言無用だぞ~!じゃあバイバ~イ♪」
嵐のような奴がフっと消えた。ポツンと取り残された俺。
「こっちに部屋があるみたいだぞ。」
「ん?ああ、今行くよ。」
ブラディウスの声によって我に返る。俺がちびっ子と話している間に、周囲を観察していた彼は、脇にある隠し扉を見つけたようだった。
長年閉じられたままであろうボロボロの扉に手をかけガチャガチャやってみる。しかし経年劣化により形状が変わってしまったのか簡単には開かない。そこで半ば強引に扉をぶち開ける。すると薄暗い部屋に丸い黒色の石が置かれていた。
それを見て、俺の中にピンとくるものがあった。それは幼少期から遊びがてら魔力の訓練に使っていたプリズム石だ。希少な物だと聞いたことがあるが、、、、ダンジョンの核だったというわけか。
「どうする?壊しとく?」
ブラディウスが聞いてくる。
「いや・・・このダンジョンに入れる者は限られている。なにせうちの地下にあるわけだからね。今壊すのは勿体ない。とりあえず今日のところはもう帰ろう。」
そうして俺達は来た道を引き返した。
♢
それから2日ほど経ち、学校帰りに冒険者ギルドへ寄った。ダンジョンの底で採れたキラキラ光る鉱物を売るためだ。
正直ギルド長にはあまり会いたくないが、なぜか俺が行くと奥から出てくる。地獄耳でもしているのだろうか。
「今日はこれを売りに来ました。」
そう言って笑顔のマリーさんに、こぶし大のキラキラ光る鉱物を1つ見せる。すると2人の顔が驚きに変わる。何度も見た顔だ。口を開け目が飛び出そうになっている。
「こ、これをどこで!?」
「家の下にダンジョンがありまして、そこで採れましたけど、、、これが何か?」
「こ、こ、これはダイヤモンド!しかもこの大きさ・・・」
「・・・キングオブジュエリーです♡」
通りで綺麗なはずだ。ダイヤだったのか。研磨とかカッティングしたらもっと光るかもしれない。
「高額すぎてここでは買い取れない。ちょうど一週間後にオークションが開催されるからそこに出品することをおススメする。手続きが面倒くさいならこちらの方で全てやっておくが?」
どうやらダイヤはこっちの世界でもすごい物らしい。というか今の反応を見る限り、むしろ地球よりもこちらの世界での方が希少価値も高そうだ。ということは採取した物を全て出してしまうと値段が下がってしまう可能性もある。小出しにした方が良いと判断した俺は、1つだけオークションに出品することにした。
「あ~じゃあそれでお願いします。」
「うむ。任しておけ。」
一応ギルド長のことは信頼しているので、ちょろまかされることは無いだろう。彼は手袋をしてから受け取ったが、そこまでしてくれなくてもと笑ってしまう。なんせ俺の指紋がベッタリなわけだし。
まあ、そんなこんなで用事が済んだ俺は、適当に挨拶をしてから次の目的地に向かった。
ちなみに話題にはならなかったが、岩のゴーレムの残骸は買い取って貰えなかった。なぜならただの岩と変わりがないからだとか。全然おいしくない奴なので金輪際出会わないことを願う。
「こんにちはー!」
続いてやってきたのは小さな工房だ。うちの家を建ててくれたドワーフのメロンちゃんが切り盛りしている。すっかり顔馴染みだ。
「ん。」
相変わらず口数こそ少ないものの、今は喜んでいると分かるようになった。
それぐらい深い仲と言うわけだ。(自称)
「今日は少し武器を加工してもらいたくて来ちゃいました。これなんですけど、、、、」
ダンジョンの宝箱に入っていた何の変哲もない銅剣をみせる。と同時に『炎』と書いた魔石を差し出す。彼女はうちのお風呂に入り魔石を使用したことがあるので、一瞬で俺の意図を理解したようだ。
「この剣の柄の部分にこの魔石を埋め込んでほしいんです。」
これが成功すれば、ルークたちが言っていたようにそれこそ革命になるのではないかと思う。ただの剣に誰でも属性が付与できるようになるのだから。
「ん。それなら今すぐ出来る。」
その言葉通り、ものの15分で出来てしまった。まさかこんなにすぐ出来ると思っていなかったので驚きを隠せない。
じっくり完成品を見せてもらったが、綺麗にはめ込まれている。こうなったら早速実験をしなくてはならない。
試し切りに用意してもらった的に、まずは何もせずゆっくりと剣を当てる。もちろんチョンと当てているだけなので的は切れない。
今度は魔力を込めて、魔石を発動させる。すると剣がボフウっと炎に覆われる。その状態で、先ほどと同じ力で的に当ててみると的が壊れた。上手く魔石が発動している証拠だ。炎が付与されたことで攻撃力そのものが上がっている。
その後、試しにメロンちゃんにもやってもらったが結果は同じだった。つまり実験は大成功。彼女は冒険者でもなく兵士でもない。ゴリラパワーのか弱い女性だ。そんな彼女が出来たということは、一般人にも扱えるということだ。
ここで何となく思い描いていることを彼女に相談してみることにした。ダックスのパパさんにも、後ほど相談に行こうと思っているが、この計画はメロンちゃん無くしては成功しない。俺の知識と、彼女の物作りの腕があって初めて成功する。
「え~と、まだ具体的には何も決まってないんだけど、今後いろいろ開発した物を売り出してみたいな~とか思ってるんだけど、そん時は俺の専属の職人になってくれないかな?もちろん返事は今すぐしてくれなくてもいい。」
断られる可能性の方が高いと思っていたが勇気を振り絞り、練習してきたセリフを言う。大事なことなのでゆっくり考えてもらいたいと思う。
しかし、俺の予想とは裏腹に、なんと彼女はすぐに頷いてくれた。
なんでも、常識に無い新しい物を作れるのは職人として最高の喜びだとか。俺の専属になることによって、彼女の仕事の幅を狭めてしまうのではないかと心配していたが、そう言ってくれるなら心置きなく誘うことが出来る。win-winの関係だ。
「ありがとう!じゃあまた話が進んだら具体的に勧誘に来るから待っててね!」
「ん。」
彼女はよきパートナーになりそうだ。うちに住み込みで働いてもらうのもいいかもしれない。
ちなみに握手した手は洗わないことにする♡
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そろそろ梅雨ですね。ジメジメしてきました。




