表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/6

―プロローグ―

プロローグです



――愛しき人。愛しき人。

  この詩が届いたならば、傍に来て。

  夜だけで良い。どんな姿でも良い。

  ただ傍に来て。ただ傍に居て。

  愛しき人――


 美しい狼を見た。月光を反射させる銀色の毛並みを持つ狼。

 清水の湖の畔。静かに佇むその姿に、目を奪われ、そして自身の何かが“知っている”と訴えた。

 その存在を知っている。

 求めている。

 ただ唯一の、私の銀狼。

 何処までも澄んだ紫の瞳をした銀色の狼は、静かな夜明けと共に、人の姿に変わる。

「愛おしい人」

 声が届かない事は知っている。この社から出ればただの音。声には、言の葉にはならない、風を震わせるだけの音。

 それでも彼に届いている。

 風の震えがふわりと彼の前髪を揺らす時、優しく微笑んでいるのが見えるから。

『ずっと傍に』

 そう呟く彼の言葉が届くから。

 ここには守る者達も居る。だからこそ、強くなくてはならない。それでも、あなたを求めている。自身の全てで。

 何故?

 それは、あなたがずっと見ていてくれた。ずっと、傍で。

 脆く崩れそうな時も。孤独に寂しくなる時も。そっと傍に居てくれた。

 私は天狼(てんろう)。そして禁忌なる子。

 地の全てを統べる力を持ちながら、存在自体を消された禁忌の子。

 だからこそ、あなたの存在を知らなかった事にする。

 この宿命を背負うのは私だけで良い。

 私は生良(せいら)・フィナラム。

 現大守の長の娘にして、禁忌の子ゆえ社に閉ざされた、消された存在。

 だから歌う。社の結界を出れば、ただの風にしかならなくても。ただ、愛しいと伝えたいから。

 唯一、愛した人だから。

 そうして今夜も歌えば、銀狼は姿を現してくれる。

 ――それだけで、良いの。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ