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第二段 パーティー結成

 女性店員は走る。月光堂を飛び出し、広場を抜けて一路郊外へ。南の衛門のそばにある自警団の詰め所に駆け込んだ。

「エイダン、大変よ! 大至急、店に戻って!!」

 屈強な若者たちの内、剣を磨いていた一人が女性店員に訊き返した。

「どうしたんだい、ディアナ? そんなに息せき切って」

 エイダンと呼ばれた青い髪の若者は、磨いていた剣を腰の鞘に収めた。立ち上がると、かなり背が高い。素朴な顔つきながら、筋骨逞しい偉丈夫だ。

「いいから、とにかく店へ戻って! 事情は帰りながら説明するから!!」

「判った。ちょっとだけ待って」

 エイダンは傍らの円卓に置いていた宝玉を懐に仕舞ってから、ディアナと呼ばれた女性店員の後に従った。

 二人は月光堂へ駆け戻る。

「店で何があったの?」

「買い取りを希望するお客様がいらしたの」

「それで?」

「社長が銅貨一枚にしかならないって言ったら、ペリさんが急に来店して」

「ペリが?」

「うん。ペリさんが魔法で鑑定したら、どうやら遺跡の鍵らしいって」

「遺跡って、追憶の遺跡?」

「そう。それが判った途端、お客様がやっぱ売らないってゴネ始めたの」

 二人は月光堂に辿り着いた。

「それで、社長から大至急エイダンを呼び戻すように言いつかって店を飛び出して来たんだけどーー」

 ディアナが言い終わるより早く、エイダンが店の扉を開けた。

「ーーって、ディアナ、社長しかいないじゃん」

 二人が店内に入ると、マーサが一人きりで椅子に腰掛けて呑気に紅茶を啜っていた。

「遅いですよ、二人とも」

「社長、状況を説明して下さいよ!」

「商談なら既に成立しました」

 マーサは泰然自若といった風情でエイダンに答えた。

「鍵を使って追憶の遺跡を探索します。拾得物はお客様とペリさんと店で三等分。探索パーティーは三名で、エイダンさん、あなたが店の代表です」

「遺跡探索は構わないけどさ、お客さんとペリはどこに行ったのさ?」

 マーサはまた一口紅茶を啜った。

「二人とも探索の準備です。ペリさんは孤児院へ戻りました。お客様は床屋と銭湯へ。旅の垢を文字通り落として頂くことにしました」

 ディアナが小首を傾げた。

「あれ? そんなお金、お持ちでしたっけ? お金に困っていたからウチにいらしたのでは?」

「店から前借りして行かれました。借用書ならここに」

 マーサは卓上の借用書をエイダンたちに見せた。

「さあ、準備準備。遺跡探索は危険が付き物だとペリさんがいつも言っています。万全の支度を整えて下さい」

 借用書を引き出しに仕舞ってから、マーサはパンパンと手を叩いてエイダンに準備を促した。

「じゃあ、社長、店のどこかにこの宝玉を置かせて下さいよ」

 エイダンは懐から先ほどの宝玉を取り出してマーサに渡した。

帰陣ホームの魔法を使って帰還するのに必要なものですから」

「この宝玉が?」

「はい。基準点になるんですよ」

「あら、そう。預かって店に展示しておきましょう」

「間違えて売らないで下さいよ」

「非売品の札を貼っておくから大丈夫ですよ」

 マーサは宝玉を店の片隅に設置して非売品の札を貼り付けた。

「では、支度をして来ます」

 エイダンはマーサとディアナに一礼して自宅に戻った。武器は既に長剣を腰に帯びている。防具は革の兜と鎧と盾を身に着けて行くことにした。現時点で用意できる最大の重装備だ。自警団の活動で得た薬草や毒消し草などを背嚢にギッシリ詰め込む。一刻ほどで準備は完了した。

 エイダンが月光堂の前に戻ると、ペリの姿がそこにあった。

 ペリは黒い作業着の上下に革の胸当てと籠手と膝当てを着け、額に鉄板の鉢巻きを巻いている。腰には左右に短剣を帯び、背には万能袋を負っているようだ。

「どこからどう見ても立派な盗賊だな」

「チッ、チッ、チッ!」

 ペリは右の人差し指を立てて左右に振りながら舌を鳴らした。

「ト・レ・ジャ・ア・ハ・ン・タ・ア!」

「早い話が盗掘屋だろ?」

「んもう、エイダンはロマンを解さないんだから!」

 ペリは頬を膨らませて抗議した。

「古代文明の遺跡! 前人未踏の聖域!! 秘匿された財宝の山!!! ほら、エイダンもワクワクドキドキしてきたでしょう!?」

 両手で胸を押さえてうっとりするペリとは対照的に、エイダンは白けきっている。

「やっぱり盗掘屋じゃん」

 ペリは目を三角にしてエイダンを見据えた。

「エイダンの分け前、無し」

「冗談、冗談。楽しみだなあ、お宝の山」

 エイダンの口調は棒読み以外の何物でもなかった。

「よう、お二人さん! 待たせたな!!」

 二人の漫才に割って入るように、先だっての客が大声を張り上げた。

 物乞い風の男は、小綺麗に身なりを一変させていた。茶色い頭髪は角刈りに切り揃えられ、髭は完全に剃り落とされ、鼻を突く体臭はすっかり洗い落とされていた。しかし、エイダンやペリのように防具は身に着けておらず、武器も帯びていない。ただ、頭にはバンダナを鉢巻き代わりに巻いている。

「自己紹介がまだだったな。俺の名はクーロン。見ての通りの修道僧モンクだ」

 エイダンとペリも自己紹介を返す。

「僕の名はエイダン。剣士ソーディアンです」

「私の名はペリ。盗賊シーフじゃなくてトレジャーハンターね」

「修道僧と剣士と盗賊か」

 ペリの念押しをクーロンはあっさり無視した。

「攻撃力過多なパーティーになりそうだな。回復系は俺一人か。まあ、俺だって治癒キュアしか使えないけどな。あんたら、何の魔法が使える?」

「僕は帰陣ホームだけです」

 クーロンはエイダンの肩を叩いた。

「敬語は無しだ。タメでいいぜ、エイダン」

「判ったよ、クーロン」

 エイダンもクーロンの肩を叩き返した。

「んで、そっちの嬢ちゃんは?」

「私は鑑定(アプレイズ)以外は無いわ。トレジャーハンターに攻撃魔法なんて不要だもん」

 あくまでもトレジャーハンターで通したいらしい。

「了解。それじゃあ、大将はエイダンだな。いざって時に魔法で安全な街まで退却できるのは心強いからな」

 クーロンは鼻を指で拭った。

「さあ、大将、こっからはあんたがリーダーだ。指示を頼むぜ、エイダン!」

 エイダンは大きく頷いて深呼吸した。

「じゃあ、行こう。目指すは追憶の遺跡だ!」

 エイダンの号令に呼応し、ペリとクーロンがエイダンの後を追う。

 こうして、一行は冒険に出立した。

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